4. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 生乾きのコンクリートに刻まれた名前が痛々しい。デイブの名前だけが途中で切れているのが、とても印象深い。ただ、全体を通してみるに、どこか消化不良な感じがぬぐいきれない。レイのエピソードは余計だろう。一度も姿を見せないレイのことを、誰もが何度も口にすれば、レイは大きな象徴性を持ってしまう。その分、主要キャラ3人のむごい過去がおきざりになる。レイという人物が3人と大きく係わっているならともかく、ジミー1人を中心に描かれているのは残念。それくらいなら3人の確執をもっと密に掘り下げた方がいい。デイブの死は、深く考えさせられる。本人自身が「デイブは死んだ」と口にしていたにもかかわらず、命乞いをする矛盾した言動が興味深い。友を殺害した翌日のジミーの姿は、それこそ「ジミーは死んだ」そのものだ。だが、友が自分の娘を手にかけなかったことが分かると、自分の落ち度に落ち込むものの、安堵感も垣間見える。むしろ、あれほど犯人を憎んでいたにもかかわらず、デイブでなければ犯人は誰でもいい、といった感じだ。ジミーは恐らくとことん不器用なのだ。だからこそ、車に乗らず友を見捨てたコンプレックスからチンピラの道を選んだのだろう。ジミーの妻がデイブの妻に同情を寄せないのは、自分も娘を失っているからだろう。肉親を失う痛みは、五分五分だ、亭主を信じなかった本人が悪い、と自己弁護の態度に出たのだと思う。自分や、自分の亭主の方が格が上だ、という女性特有の優越感も表れている。不愉快には違いないが、ラストはとてもリアル感があった。 [DVD(字幕)] 8点(2005-05-01 16:13:22) |