1. 悪い子バビー
《ネタバレ》 かなり強烈な映画で、冒頭から30分位のグロテスクさ(⇒中身も外身も)には何となくあの『ネクロマンティック』的なヤバさをすらも思い出してしまって居たのですが、根本的には今作は、昨今だと『哀れなるものたち』とドンピシャで同様なテーマを擁している…という作品だったかと思うのですね。その上で今作は、その『哀れなるものたち』と比較して、完成度とか表現の洗練度とかって面では確かに敵わないか…とも思うモノの、逆にその最も描くべきエッセンシャルなナニものかの「熱量」とか或いはソレが「観た人々の心をどれだけ抉れるか・傷つけられるか(⇒ソレこそが今作の最大の目的だとして)」という面においては、全く引けを取らないとゆーか端的に勝っている・優っているとも思えたのですよね。先に、評価としては彼の作品と前後関係を付けずに、この点数としておこうかと思います。 中盤、バビーが元の家に戻って来るシーンが好きですね。「ママの言っていたコトの意味が分かった」私も思うに、世の中は須く「表裏一体」の構造を擁するモノなのであって、そのコトを(嫌と言うホドに)実感させられるとゆーのが、ある一つの重要なステップアップ⇒むしろ「スタートラインに立つ」コトにも近いのかな、と思ったりしてます。今作は、地獄の様な世界ダケしか知らない主人公のバビーが、却ってその「裏表の意味」を知るに至る中盤までの展開には意外なホドのテンポの好さと、そして脚本上の緻密さもが存在していた様にも思えていて、だからこそ後半でその「後」までをチャンと描き切っているコトも含め、全く以て志の高い=人間性のごくエッセンシャルな部分を描き抜くコトに果敢に挑戦している、という意味における素晴らしい作品だと思ったのですよね。 重ね重ね、序盤の描写の衝撃度・尖り具合に比べれば、拍子抜けするホドに平和で平穏なる今作のこの終い方自体とゆーのは、ある種の「尻窄み」「整合性の無さ」や「終わらせ方に対する迷い」というモノに見える様な気も(一瞬)してしまうのがまた確かかとも思います。ただ、私は実はその感覚って『哀れなるものたち』を観終わった時にも何となく感じられたモノだったと思い出したりもしたのですし、その上でソッチと今作と2つ並べて観てみるとゆーと、それってそもそも実に「難しい問い」であったのだな…というコトにも、何となく気付けたと今回思ったのですね。今作(或いは『哀れなるものたち』)のラストに描かれるべきモノとゆーのは、真に「人間性は何処に辿り着くべきか」という、それこそ「神のみぞ知る」という答えにしかなり得ない…と思わされたのです。その意味では最後に、今回の今作のこの終い方とゆーのは、今現在(或いは有史以来で)比較的に最も「妥当なる」この映画のラストシーン=その答えだったのではないかと、私自身は結構納得していたりもするのですよね。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-14 15:48:55) |
2. マッドマックス:フュリオサ
《ネタバレ》 全然フツーにまたメッチャ面白いっすね。ぶっちゃけ、それだけ言えば事足りる…という感じですらあるのですケド、より正確には(ある種奇跡的に)前作とおんなじ様な感じで⇔前作とおんなじ位面白い、みたいな感じでしょーか。更に強いて言うなら序盤(前半)がややドラマ寄りでテンポ重めかとも思われましたが、中盤の大立ち回りな超絶カーアクションシーン以降は再び素晴らしい疾走感で、長尺を気にするコトなど全く無くって実に楽しく爽快に観終われましたよね。是非映画館で。 いちおう、念の為ですが、観てないのだったら前作は+何なら旧作も『マッドマックス2』は(出来ればソッチを先に)観た方が好いかな…とは思ってますね。コレもある種映画鑑賞の「基本」かとは思いますが、今作もかなり「クセ」のある作品だとは思いますので(⇒前作がいきなり超・ポピュラリティを獲得しちゃってるのでふと忘れかけてはしまいますケドも)「何でこんなにイカレてんの?」とならない為の本当に念の為として、シリーズとしての順序は守った方がより絶対に楽しめるとは思ってますね。今ならどこでも観れると思いますので… [映画館(字幕)] 8点(2024-06-01 00:26:48) |
3. ハウリングIII
《ネタバレ》 ほほォ……そもそも何故かオーストラリア製作(作中舞台も撮影地もソコ)になってたり、なんちゅーか「ガラッ」と変わってますね(何もかもが)。お話としても、確かに後半は全くホラーじゃあなくなっちゃってますよね。もし仮に、コレって『ハウリング』?それとも『ダンス・ウィズ・ウルブズ』の方?て訊かれたら、個人的には後者の方に近い…と言ってしまいそうな気すらします。ただ、そのワリには、全体のストーリーとしても展開運びとしても、まあまあ好く出来ていた・組立てられていたという感じもするのですよね(私も、その後半は率直に、何故かそこそこ面白く観れてましたよ)。オーラスのおふざけは一旦置いたとしても、ごく個人的にはⅡよりは全然マシだったかと思いますよね。 とは言え、脚本がそれなり…な気もする一方で、逆に技術的な面がかなりイマイチ…というやや珍しい感じであるコトも否めませぬ。端的にまず、冒頭からも編集・繋げ方がクッソ微妙(雑)に思えたとゆーのが、ちょっと許容できないレベルで非常に唐突に場面転換しまくる(から繋がらない⇒カット数も多分足りてない)のとか、殊ショックシーンなんぞは総じて「肝心なトコロだけ抜けてる(多分撮ってない)」てモロ手抜きだったりとか、後半は更に一瞬で何年も時がスッ飛ばされたりとかでチョ~駆足にも見えたりとか、ザックリゆーなら(B級レベルに達しない程度にまで)手抜き・予算カットが甚だしい…って印象ですかね。当然、たまにチャンと撮ってる特撮シーンも、コレはⅠは疎かⅡよりも頭一つ低レベル…てな具合でして⇒ただし、狼人間赤ちゃんのシーンだけは(出産シーンも+その後の成長していくシーンも)ドレも妙にレベル高かったのですケドね。つまり、最初からそもそもホラーにする気が無かった…てな気もしてます(⇒その一貫性や、却って善し)。 非常にどーでも好いコトかも知れませんが追加で一点、この件の調査をする科学者バディのサブの方の俳優さんが、ナンかどーにも見覚えある…と思ったら、オーストラリアのラルフ・コッテリルって『ウルトラマングレート』のグラント隊長じゃねーですか!!懐かしい…(涙が出るホド…) [ビデオ(字幕)] 4点(2024-02-11 08:42:50) |
4. TALK TO ME トーク・トゥ・ミー
《ネタバレ》 いや、シンプルだケド、コレは中々…滑り込みで2023年のベスト5が一個入れ替わったな…(私が観たのは年明け後だケド) 大筋としては比較的オーソドックスな憑依もののホラーで、かつ変に凝り過ぎるコトも無いコンパクトな尺+テンポも悪くないのがまずは観易くて好いですよね。ソコで多少、憑依ものとしてはその主体が(平時の悪魔ではなく)悪霊=怨霊であるコトとか、ごくネガティブなラストの感じとかも含めてややフツーの欧米ホラーとは趣きが違うっぽい箇所も見て取れはしますが(⇒今作ってよく見たらオーストラリア産なんですね)、どちらかとゆーとソッチよりも端的な映像の力強さに第一には引き込まれましたですね。中々、大胆だな~と言って好い様な構図で禍々しいモノを思い切りバーン!と+結構ネットリと映して来るって感覚が在ったのですが、それでいてキレも十二分に感じられるとゆーか、その辺には(逆に)かなりこだわって準備してた様に思えるのですよね(⇒私もちょっと近いうちにソコだけ再確認の為に観直そうかな…と思ってる位で)。あと、そーいうカメラワークで映してるトコロの若い役者さん達の(異形のモノとしての)演技自体が、コレまた皆(チャンと若いワリにも)頑張ってたかな~とも思いますね(意外なマデの高クオリティ)。 加えて、ココに関してはホラーファンとしての個人的な好みに類する観点かとは思いますが、中盤以降また中々に「ナニが起こってるか定かにならない」という、その不可解さが至極に個人的にドンピシャだったのですね。結局、ミアの母親の死が自死なのか事故なのかも完全に明らかにもならないですし(⇒ごく強力に自死であったコトが示唆されてはいるものの)、クライマックスを踏まえても主人公を除く主要人物達の生死もまた判然としないママ終わってゆくのですし、だからラストなんかだって未だ「コレはナニかの(覚めない)悪夢?」とだって思える様な⇒チャンと終わった様でまだ悪夢の続きが残ってる様な、も~極上の不穏さを湛えて居た…と思うのですよね⇒重ねてコレって、個人的には超々好み!てゆうヤツだったのです。なので、少しだけオマケしてこの点数としておきます⇒映画館でやってるうちに是非々々。 ※以下余談:もう一点、コレは(前述どおりの)オーソドックスな前半を、私がよりホラー的に観てゆくコトが出来たコトの(結構重大な)理由なのかも知れませんが、私にはこの「降霊ごっこ」がもたらした悲劇とゆーのが、ソレこそ「薬物ラリパッパパーティ」が引き起こしたソレ(のメタファー)にしか見えてなくって、結果としてより一層暗澹たる気持ちで痛ましく眺めていた…というコトなのかも知れませんです。件のコロナ禍+例のオピオイド危機を経て、今や米国内の薬物事故による死者は年間10万人のスケール…ってゆーんだからも~トンデモ無い!すよね。そう、薬物って、正に今作で描かれるコトと同じ様に、人に依って or タイミング・体調に依っても諸々の「効き目」が違うから、だから大丈夫そうに見えてても⇒一発で即死するコトだって全然あり得るのだと思ってるのですよね。やっぱ、どの種類だろうが絶対に手を出さないに越したコトはねーです(ソレがホントにそのクスリである保証すらねーのだから)。 [映画館(字幕)] 8点(2024-01-05 23:17:11)(良:1票) |
5. アラビアンナイト 三千年の願い
《ネタバレ》 いや~~、、まさか恋愛映画だったとは…ちょっと流石に予想外……… 確かに(タイトルどおり)ファンタジック要素自体はゴツ盛りなのですが、ソレを全部差っ引いたらモ~その辺のB級恋愛娯楽作品!としか言えませんですよコレ。とは言え、冒頭から三分の二…位はファンタジックなエピソードを羅列してゆくのであって、加えてそこそこ気合の入った映画にも見えていて(ソコで)映像は終始結構凝ってる感じなので、羅列とは言え全然退屈もせずに観てゆくコト自体は可能かとも(⇒でも、単純にファンタジックで美しい…とも言い切れない美醜を重ね持つ様な「クセ」強めな映像だらけだとも思いましたケド)。しかし、そっから先の恋愛映画のナマ本番の方は、劇中の台詞「理性から愛は生まれない」かの如くにちょっと凡人の頭では理解が到底追い付かないって代物で御座いましたので、結果的には「分らなくはないケド・納得までには至らない」+「詰まらなくはないケド・メチャ面白くはない≒ちょい微妙」+「(見た目その他としても)醜いとも美しいともナンとも言い切れない」みたいな、諸々とかな~りもどかしい…てな感覚の内に観終わってってしまいましたよね。それでも兎に角、相当にユニークな作品だとは(確実に)思われるので、暇なら観ても好いかな…位には全然思えますケドも。 前述どおり、結局主人公のティルダ姐さんは今回も(色々と)ブッ飛んでる美魔女役…なので、またハマってるコトはハマってるのではねーかとも思いましたケドね(⇒年甲斐が有るのか無いのかって判断は個々の鑑賞者に任せるしかねーとして)。イドリス・エルバの方だって、ティルダ姐さんが(ナンと)恋愛映画やるって言い出して⇒その相手役に選ばれた…テンなら、コッチも別に如何なる異存も無いのではねーかな、とは。まあ重ねて、オーラスなんてそんな二人でまたもう至極にエキセントリック!な恋愛映画的ショットで終わってってくれやがって、重ね重ね私はちょっと付いて行けない…てな感じで笑ってしまってましたケドね。 [DVD(字幕)] 6点(2024-01-04 23:56:31) |
6. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 時を経て最近は、この~「ドラマになってないサスペンス」とゆーのが(何なら)全映画ジャンルの中でもイチバン苦手!なモノになってしまってまして、唯々「事件=人が殺される」為ダケに状況が設定されて登場人物(=被害者&加害者)が出て来て、で殺されて解決して終わる…みたいなヤツが観てても全く面白く感じられないのですね⇒ガキの時分には大好きだったのですケドも。まあ、ゆーてフィクションなんて全部そう…だとも言えるでしょーケド、ソレでも(もはや)どーにも詰まんないんだからしょーが無いジャン!とは言っておきたく。。 で、今作はその意味でゆーと、建付けとしては完璧に「ドラマになってるサスペンス」てか「ドラマ主体のサスペンス」の方ではあるのですよね。がしかし、結論的には逆に「サスペンスとしては(犯人も意外だし)面白かったケドも⇒ドラマとしては…」という感じなのでして、つーかやっぱちょっと納得いかん…!てな感じだと言いますか。ソレでも、ジミーが法の裁きを受けなかったコト自体は、多少は無理矢理にではありますが納得できないコトもねーのですよ⇒残されたセレステと息子の為でもあるのでしょーし、結果的に余りにも理不尽に殺されたケイティのコトも含めての(旧友としての)ショーンの判断でもあるのでしょう、と。 しかし、だとしても、私にはシンプルにデイヴが(また)余りにも救われな過ぎる…とゆーのがモ~辛抱ならなかったのです。そもそも、大前提となる25年前の事件つーのだって、根本的にはコレはほぼデイヴの災難=ほぼデイヴのみに関わるドラマとしてのキモだと思うのですよね。だから、ソレを前提としてる作品としての「大枠」とゆーのを考慮しても、今作は(ドラマとしては)まずは唯デイヴのモノであるべきで、なのにソレがこう終わってしまうのは(ドラマとしてはまた同様に)流石にちょっとお粗末だな…とゆーのが私の支配的な見方ではあるのですね(⇒何なら、本来どーでも好い筈のジミーとショーンのドラマで誤魔化したな貴様ら…とすら思えてしまう)。重ねて、サスペンスとしてはかなり(⇒個人的にも久し振りに存外に)面白かったな…とも思ったのですが、でも正直ムムムム…てな感じでしたすね。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-08-11 23:26:55) |
7. ピアノ・レッスン
《ネタバレ》 面白い映画だったとは思うのですが、じゃあ細かいトコまでチャンと理解・納得しとんのか?と言われると、そーいうワケでは全くない…としか言えないのですよね。まあゆーて、恋愛なんてある種「理屈じゃない」とは常々思ってるので、コレもコレはコレとして観てゆくしかねーのかな…とは思いますケドね(個人的には、別にソコはそんなに気になっては居ないのですよね)。 前述どおり、その「意味」は確かに好く分からないのだケド、その「観る価値」という点では私自身にとってはごく明確なモノがひとつ在ったのでして、ナニかとゆーと個人的には今作は、シンプルに「ツンデレ」を愛でる映画だったのかな…と思ってますね(もはや死語かも知れませんが)。まあ、ツンデレとゆーよりはツン「エロ」なのかも知れませんが、だから尚更「ツン」が「デレ」るコトに理由など要らない…と思うのでして、またその相異なる二つの要素の共存が産む趣き…という観点からは当然、ニュージーランドのジャングルに降り立った「世紀のツンツン女」ホリー・ハンターとゆーのもシンプルにごく素晴らしいアイデアだったと思いますし、或いは「原始」と「芸術」というトコロのコラボレーションとてまたごく「オツ」なモノだったのではねーでしょーか。重ねて、まあまあ好い映画だったんではねーかな…と思いますね。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-04-25 20:57:39) |
8. ニトラム/NITRAM
《ネタバレ》 今作の主人公は典型的な「自己中心的」無差別大量殺人犯であり(少なくとも、その根本的な動機が彼以外には理解できない・できなかった、という意味では)、実際の作中での描かれ方としても彼に対して冒頭から容易に感情移入してゆける…という作品には全く為って居ないのですね。ただ、また決してその大元の原因が彼の人間性のみに在った…という描かれ方に為って居ないのも事実であって、その部分の描写の質感はむしろ非常に淡々としたモノ、かつまま高度に不明瞭でもある点では、分かり易い「想像」の結論を用意しているとゆーよりは鑑賞者個々の捉え方に任せていると言いますか、ある意味では(不親切なよーで)逆に誠実な映画かな、とも思いました(クライム・サスペンスながらヴァイオレンス・シーンにほぼ頼っていないコトも含め)。尤も、鑑賞後に事件の情報を少し漁ったトコロでも、本作で描かれたコトが全て事実に基づくのかはやや判断付きかねる部分がありましたし、オーラスのインタータイトルには(若干唐突に)銃規制に対するメッセージを含ませていたり、と製作者側の「意図」が完全に抜かれていた(=完全に客観的な映画だった)という作品には必ずしも思えない部分もありましたかね。 しかし、そーはあっても全編を貫く一種の「やるせなさ」に関しては、好きか嫌いかは別として(+ソレが必ずしも「共感」には為り切らなかったコトもまた確かだとして)映画が励起し得る人間の感覚・感情としてはかなり高度だったかな、とも思います。その意味では決して観て損は無かった…と思えましたし、またソレは確実に俳優陣の演技の質の高さに依るモノだとも思われました。個人的にまず印象が強かったのが母親役のジュディ・デイヴィスでしょーか。息子に対して実にアンビヴァレントな感情を抱いて(そしてソレを押し殺して)居る様子からは、率直に実に非常な見応えを感じられました。そして主役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズについては、こちらも全編において実に相反する人間性(=無邪気さと、そして底知れぬ悪意とゆーか)を併せ持つ犯人を見事に演じ抜いている、と思ったのですが、コッチはオーラスのシーンがまた非常に印象的でしたね(何故彼は凶行に及ぶ直前に、あんな哀しい目をして店員に「ありがとう」と言ったのか)。演技面の出来としても(意外なマデに)観て損は無かったと思えましたですね。 [DVD(字幕)] 7点(2023-03-02 19:02:26) |
9. パワー・オブ・ザ・ドッグ
《ネタバレ》 西部劇ってのは、やり方次第であらゆるジャンルになり得る…とは思いますが、今作は最初はどーいう話なのかな~♪と思って観てたら最終的にはかなり純然たるサスペンスだった…というコトで、最初のうちは確かに少しもったりしてるな~とも感じたのですが最後までチャンと観てみると、その寂寥たる雰囲気や重いテンポも含めてこのジャンルの作品として非常に好く纏まった良作だったな…と率直に感じました。いや~西部劇+サスペンスって、中々どーして隅に置けないですね~どーしたって閉鎖コミュニティですから、登場人物たちのサスペンスな緊迫感ある関係性もより危険度高めに感じられますし、その面では特にまずカンバーバッチ、そして終盤にかけてのコディ・スミット=マクフィーのその「危険人物」感も中々に絶妙なモノだったと思います。私は最初(=水辺の件の後)カンバーバッチの方がマクフィーを狙う動機が出来たのかな…と思って観てましたが、よく考えるとマクフィーにだって「逆に」動機がアリアリだ…と気付いて以降は、特にメチャクチャ面白く観れてましたですね。オーラスのそこはかとない不穏さもとても好みです。 各種レビューサイト(当サイト含む)ではソコまでの高評価ではなかった様に見えてましたが、アカデミー賞の結果を受けて劇場に足を運んだ甲斐がありました(実はヴェネチアでも賞を受けてるのですから、然もありなん…なコトかも知れませんケド)。オススメですね。 [映画館(字幕)] 8点(2022-03-29 19:55:05)(良:1票) |
10. 透明人間(2020)
《ネタバレ》 散々コスられまくった題材を、またエラい「力技」で再映像化したな~という印象ですが、全般的にはまずまず楽しめましたよ。難癖を付けるなら少し前半がテンポ重いのと、ラストもこの顛末じゃあ流石に警察も見逃してはくんないだろーなーというトコロなんかは多少気になったりもしますケド、CGの質もまずまずだし話もそこそこ好く練られてアイデア・捻りも在り、まあ悪い作品ではなかったかと。 ただ、少し考えてしまうのは、主人公は早い段階で敵の正体には半ば感づいていたのですから、例えばサーモカメラ的なものの一台でも用意すれば中盤で只ちょっかい掛けに来てるタイミングならかなり有効に対応できたのではないか、とか。こんなの今やAmazonでも買えるのですし、別にもうチョイ安いモーションセンサーライトとかでもある程度効果はありそうです。要は、今どき「透明」てダケではホラーモンスターとしては「キャラが弱っちい」とも思うのですよね(ソコは100年前とは状況が違うかと)。そもそも敵方は基本的には武器も持ち込めないので襲う手段も素手に限られますし、作中でもあった様に雨だの消火器だので透明になれなくなれば即・終了です。そーいう条件においての今作の「攻め込み方」という部分についてもやっぱ「力技」だなぁ…とは思うのですよね。タイトリングからも判る様に全体のコンセプトとして、敵が「透明人間」なのは逆にもう隠さない、という方針だからなのでしょうケドも(確かに散々引っ張った挙句、実は敵が透明人間でしたバーン!は、もうキョウビのホラーとしてはトリックとしてコレもあまりに「弱い」とは思いますしね)。 あと、コレも別にワザワザ言うコトでもねーですが、ちょっと主演の女優さんがイメージと違う…とゆーか。まあゆーて、中盤窶れていく感じや終盤で腹括った感じ、あとはそもそも気力・戦闘力とかが適切に高そーな雰囲気とかはごく役に適していたと思うのですが…一番肝心な「何故あの男が彼女に入れ込むのか」というコトについては、確かに説得力が薄かったな…と。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-03-29 10:59:52) |
11. レリック -遺物-
《ネタバレ》 認知症をメイン要素として取り扱ったホラーとゆーのには、先行として『テイキング・オブ・デボラ・ローガン』とかって作品もあるのだケド、アレはそれこそ認知症だと思ったら実は悪霊に憑依されていた、というアイデアをあくまで展開上のトリックとして取り入れたごく一般的なホラーだったと思う。今作もその部分のアイデア自体は非常に似通った作品だと言えるだろうが、本質的にはかなり異なるとゆーか、今作は認知症によって人が自分自身でなくなってゆく・異質なモノへと変化してゆく、というコトそのものの恐怖と醜悪さとゆーのを、比喩的に、かつ直接的な映像としてもホラー映画という形で表現した、という作品かと思う。多分にアーティスティックな、率直にかなり玄人向けという作品にも感じられる。 いわゆる普通のホラーに比べればこれも格段に緩慢なテンポ等にその「高尚さ」とゆーのが表れている様にまずもって感じるのと、実際に描かれるホラー的展開(不可解な事象)も総じてかなり地味な方であるし、そして肝心の結末も決して分り易いというモノではない。しかし、その緩慢なテンポと終始かなり暗めの画面、そして湿り気を帯びて刻一刻と腐敗し黴て朽ちてゆくかの様な諸々といい、今作が醸し出す雰囲気系ホラーとしての居心地の悪さやその「空気に侵食される」感覚とゆーのは、率直にかなり高度だったと思う(コレは確実に映画館で観るべきホラーですね)。普通のホラーとは使いドコロが違う作品であるのは確かかと思うが、観る価値自体は十分かと思いますね。悪くない。 [映画館(字幕)] 6点(2021-08-30 22:35:07) |
12. 拷問男
《ネタバレ》 この邦題は「罠」ですよ。この映画で真に拷問されるのは作中の浅はかな登場人物ではなく、こんなタイトルに釣られてトーチャーポルノ目当てでホイホイ群がってくる変態どもの方です。正にこの世の地獄の様な、とでも言いましょうか、とにかく全編実に居たたまれないという作品です。お気をつけアレ… キャッチー?なタイトルに比べ、その拷問描写は(低級~中級程度というワケでは決してありませんが)そこまで突き抜けてグロ全開、というホドではありません。個人的な観たままの感覚としては『ホステル』か『ソウ(2以降)』と同程度、ないしは少し下、といった位かと。今作で拷問を手掛けるのは主人公ですが、元々はごくマトモな父親なのですから、激しい拷問とはゆーてもそこにはどこか理性が残されていて、狂気というまでのモノは感じ取れない、というコトだと思います。その分、その哀れな父親の人物像を描いてゆく部分には、前述どおり非常に高度な居たたまれなさを伴う優れた見応えが確実に存在します。たぶん「思ってたんと違う」映画になるコトも多々あるかと思いますが、それでも(チャンと観れば)おそらく観る価値はきっと見い出せるという作品、なのではないかと思いますね。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-08-07 15:55:24) |
13. SF核戦争後の未来・スレッズ<TVM>
《ネタバレ》 結局のトコロ、本作が主張したいこととゆーのは、全面核戦争が起こってしまったら文明の復興は(少なくとも短・中期的には)困難だ(無理だ)ということなのでしょうね(それはある程度しっかりした科学的なシミュレーションでもそーいう結果が出ている、ということだったのかと)。その意味では、その「全面」という部分に関して、本当にそーいうことになってしまう可能性があるのかどーかを含めての一歩踏み込んだリアリティという部分には議論の余地があるのかも知れませんし、個人的にはもう一つ、事前の備えにせよ事後の事態収拾にせよ、もう少し「団結」してやれることとゆーのはないのか、と少しだけ疑問に思う面もありました。ただ、それは私の想定が甘すぎる、ということだとも感じています。例え現実的な対処方法が「人口の間引き」しかない状況に陥ったとしても、それを許容するだけの「逆」の意味での倫理観あるいはフレキシビリティというものを、もはや現代の人間社会は持ち合わせていないだろう、とも思うのですよね。 ある種、普通の映画とは「目的」が違う作品だと言えますし、だからこそ、鑑賞後感とゆーのも極めてユニークに超ネガティブです。単純にちょっと勉強・知識習得にもなりますし、一味違った作品としての観る価値とゆーのも確実にある映画だと言えるでしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2021-04-29 17:04:38)(良:1票) |
14. 共喰山
《ネタバレ》 とある山中のキャンプが舞台ですが、虫、ヒル、そして何らかの感染でグロテスクな人外に為り果てる仲間…意味ありげで不気味な洞窟の存在も含め、かなり気色の悪いモノをテンコ盛りで取り揃えた設えは色々と相当に不快で、ホラーとしてはまずまず上々です。感染という要素からゾンビ系統の映画かと思いきや、感染者に咬まれてもこの状態異常は伝染しません。その代わり、感染者の戦闘力・運動能力は(ゾンビとかいうレベルではなく)飛躍的に向上するというコトもあって、戦闘シーンは非常にスピーディで迫力抜群だったりで、(ある種のミスリードな部分も含めて)ちょっと意外性もあって楽しめるという感じではないでしょーか。 ただ、やや冗長な中盤の展開運び、いくらなんでも事態対処能力の低すぎる無能パーティ、そしてイマイチ話の内容の繋がらないシナリオの出来(ラストの親玉モンスター云々は特に)を踏まえると、完成度という面では決して出来が好いとは言えない典型的なB級、とゆーのが結論的評価でしょーかね。とは言え、前述どおりそこそこ面白く観れなくもないシーンもあり、暇潰しには十分かと。個人的には結構楽しめましたすね。 [DVD(字幕)] 5点(2021-04-27 00:29:45) |
15. プリデスティネーション
《ネタバレ》 シンプルに面白かったです。前半の得体の知れないジェーンの話も、サラ・スヌークの不気味な雰囲気が好いのと、お話自体が中々高度に奇妙奇天烈なもんだから(前半から)かなり引き込まれて観れましたすね。唐突にタイムトラベルの話になって以降は、トリックの切れ味を最大限に生かした勢いのある展開運びが見事でした。いくつものドンデン返しの連続も非常にゴージャスですし、それでいてラストでも「してやられた」感はそこそこ高度で、まずまず以上に痛快に観終われた、というか。普通にだいぶん出来の好いSFかと。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-04-07 23:45:45)(良:3票) |
16. デンジャー・クロース 極限着弾
《ネタバレ》 ベトナム戦争に参戦したオーストラリア軍の戦歴に残る最も過酷な戦闘「ロングタンの戦い」を描いた戦争アクション。米軍その他の圧倒的な航空戦力・砲兵戦力に対抗するべく北ベトナム軍が採ったのが、至近距離での歩兵戦に持ち込むという捨て身の戦術「ハグ・ザ・ベルト」である(ボクシングでいうトコロのインファイト、或いは極真ルールの空手の試合のよーなもんですかね)。その結果、ロングタンでは大部隊に包囲されたオーストラリア軍小隊が至近爆撃(自部隊の居る座標への砲撃:デンジャー・クロース)を要請するに到ったという。確かに、非常にシビアな状況だと言えますね。 ですがコレ、結局のトコロはベトナム軍の陽動に引っ掛かって豪軍が釣り出された(で伏兵に叩かれた)というコトですかね?んで、現場に請われるがままに至近爆撃を実施するも、その影響で通信が途絶するや小隊全滅と判断して置き去り撤退を命令する、というのも、何とも場当たり的でテキトーな差配に思えます。挙句「そんな命令に従えるかェ!」となってアッチャコッチャで好き勝手やり出す、というのは、ここまで来るとコレ史実なのですか?という感じですね(この手のによくあるポンコツ指揮系統)。イマイチ緊迫感が維持されないままダラっと観終わりましたが、ラスト、結局戦死者は108人中18人だった(え、もっと死んでなかった?)というオチからしても、率直に色々と少し「盛った」映画な気がしてます。別にそんなにつまらなくもないですが、ひたすら這いつくばっての銃撃戦(+砲撃)が続くので、ちょっと食傷もしてきますし。 もう一つ、非常に重要なコトなので最初に言ってもよかったのですが、今作はなんとロケ地がオーストラリア国内なのですよ。つまり、その戦場というのはジャングルではなくて、カラッと乾いた雑木林!だという。こ~れは…中々大胆なコトを………まあ、ハリウッドのA級作品ならいざ知らず、世界の色々な映画を楽しむためには「ソコは言わないお約束」というのも比較的大事だとは思いますケド。 [DVD(字幕)] 5点(2021-03-21 02:35:28) |
17. That's Not Me
《ネタバレ》 ムムム…「私じゃない!」というタイトルどおり、成功した妹と間違えられ続けて段々うんざりしていく双子の姉の話だが、おそらくジャンルとしてはコメディなのだろうが、全編通してかなり鬱々・ジメジメとほの暗いよーな話で正直あんまし笑えない(笑い飛ばすというにはチョイ辛すぎる)。かといってヒューマンドラマになっているかというと、特にそっち方面で盛り上がることがホントになんも無くてラストもただ焚火して終わり(何じゃそりゃ)。結論、お話としては完全にイマイチ(正直、最後まで観るのがだいぶん辛かった)。 主演女優(兼共同脚本)は監督の嫁らしいのだが(オーストラリアのローカルな人たちみたいだけど)、設定は27歳なのだがどーみてもアラフォーにしか見えんぞよ(疲れが顔とお肌に出てる、と言うか)。まあ、二役の妹の方にキラキラ感を出すために、比較対象の姉の方を残念な見栄えにした、という意図的な演出なのだろうけど(にしても、主役にこーも魅力が無いのは率直にどーかと思うケド)。 [インターネット(字幕)] 4点(2020-09-06 16:46:13)(良:1票) |
18. ミュリエルの結婚
《ネタバレ》 映画のテーマとしてはよくある、主人公がいったんどん底まで落ちた後で一皮剥ける「人間の成長」を見守る作品、と言えるのですが、本作の主人公は最初から完全に「負け組」で、その描かれ方も木っ端微塵と言える程に残念な方面に振り切れています。トニ・コレット、若いこともあり、本来は決して見た目に全く華が無いという様な女優でもないと思うのですが、通常の役づくりのレベルを完全に凌駕する凄まじいウェイトアップの結果、本作では完全にブヨブヨの肉塊と化しています。やや欧米辺境と言える(田舎)オーストラリアの90年代作品ということもあり、映画の質感が似通ったものとして私が思い起こしたのは『ナポレオン・ダイナマイト』でした。 この残念な主人公が加速度的に残念な行為を積み重ね、最初はまあ笑えるものの、次第次第に残念で片づけるには悲惨すぎる状況に陥ってゆき、周囲の人間も悉く不幸にしつつ終盤は完全にコメディではなくなっています。正直、そこから少しだけ真人間になって再出発していくというラスト付近のシークエンスは、ご都合主義でもあり、必ずしも素直に主人公に共感できるかと言えばそんなん出来っこないという人も多々いるだろうと率直に感じました(主人公の分別の無さは、これも率直に他作品と比べても相当酷いレベルですので)。 ただ個人的には私、単純にこういう話が結構好きだというのと、あと主演と助演の女優2人の演技自体はとても素晴らしかったということが大きいのです(コレットは役づくりは無論、変人ぶりも神妙になった時の演技も抜群でしたし、もう一人、レイチェル・グリフィスの実にキレの有る演技・見た目・キャラ造形は、本作に必要不可欠なアクセントとなっていましたし)。結論、個人的には十分に楽しめました。 [DVD(字幕)] 7点(2020-07-15 21:59:02) |
19. ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷
《ネタバレ》 かなり酷評されている作品なので観るのが遅くなったのだが、観た感想は率直にそこまで酷くもないかも?という感じ。そもそもこのネタ、ホラーになるのかかなり疑問だったのだが、いくつかの工夫(精神鑑定だの悪霊が子供に憑依するだの実はお化けな召使だの)を織り交ぜたシナリオはそこそこちゃんとしたホラーになっているし、役者の仕事も決して悪くないし、セットや小道具なんかもまずまずキッチリつくってあって、普通にB級以上と言ってよい質感に纏まっていると思う。 しかし、言うてシナリオも結局は月並、恐怖描写も単なる驚かし系の平凡、それに加え、個人的に以下の2点がかなり致命的だと思われる。 ・「銃に殺された者たちの怨霊が屋敷を呪っている」というそもそものコンセプトは偏執狂の戯言としては面白いが、これを本気で真面目なホラーに仕立てるのはちょっと勘違いなよーに思う(普通に考えて、そんなことあるワケねーじゃん、としか思えない)。 ・この話、どー考えても「屋敷」が主役のハズで、だから一番の勘所はその広大さ&異様さの演出にあるのは明白なのだが、惜しむらくその部分のつくり込みがこれまた非常に平凡で、とどのつまり少しだけ奇妙な普通の豪邸にしか見えないのだ(これは予算的な問題である気もするケド)。 前述どおり、別にホラーとしては可も無く不可も無い程度の作品にも思えるが、実話であることを含めての「コンセプト」に対しての実際につくり込めたクオリティ、と言う意味では、だいぶんやり残し・手抜かりが多い作品にも思われる。その意味では、確かにこれもまた残念作の範疇にある一品だと言えるだろう。 [DVD(字幕)] 4点(2020-07-09 22:32:02) |
20. ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ
《ネタバレ》 安直な便乗作品かと思いきや、公開自体はアレよりコッチの方が先。しかし、これは完全にタイトル通りの「そーいう」映画ですね(もはやオーストラリアの専売特許と化している気がしますが)。ジャギ様ばりの(見た目が)ヒャッハーな3人組に、ヒャッハーなイカした改造車、ソッチ方面のクレイジーな世界観は大好物です(何故今まで誰もこのコラボレーションをつくらなかったのか)。 内容自体は比較的オーソドックスですが、前述の他にもかなりユニークかつ飛んでる設定上のアイデアが複数盛り込まれているのと、戦闘シーンをはじめ、愛する家族・仲間に手をかけざるを得ない場面やゾンビに咬まれた手を切り落とすシーンなど、オーソドックスなシーンも総じて迫力がかなり高レベルで、とても面白く観れました。ヴァイオレンス面を重視したゾンビものとしては、かなり優秀な作品だと思います。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-06-28 23:03:49) |