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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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1.  逆転のトライアングル 《ネタバレ》 
全編にわたって寄せてしまう"眉間のシワ"。 原題は美容外科用語から来ている。  監督の前作『ザ・スクエア』は視聴済み。 2作連続でカンヌパルムドール受賞の快挙らしいが、他に相応しい作品はあったのではないか? 格差社会を描いたテーマは過去にもたくさんあれど、 本作はその対象物(男性と女性、富裕層と労働階級、白人と非白人、健常者と障害者、資本主義と共産主義)を広げすぎてしまい、 ブラックコメディとしての切れ味がイマイチだった。 居心地の悪さと気まずい空気を生み出す巧さは相変わらずだが。  割り勘を巡り、インフルエンサーの彼女と長々と揉める立場の低いモデル男性の卑小なプライド。 「スタッフを休ませなきゃ」という思いつきで無理矢理泳がせるセレブばあさんの偽善。 ファーストフードも高級ディナーも口に入れば、吐瀉物も排泄物もみんな一緒。 無人島漂着時、セレブ全員にサバイバルスキルがないために、唯一持っている女性清掃員が女王に君臨するグダグダな一幕。 どこかで見たことのあるような展開で、いくら皮肉たっぷりに金持ちも貧乏人も全方位的にコケにしたって、 前者からしたら免罪符、後者からしたらガス抜きにしか見えない。  今の資本主義社会の権力者の横柄に"ノブレスオブリージュ"は必要だが本作を見て襟を正す人はいるのか(財○省とかね)。 金で買える"安全な場所"がある限り、ヒエラルキーの頂点に立つ者はどこまでも無礼になれる。 無人島がリゾート地だと判明した瞬間、女性清掃員にはその金がないし、いつまでも平穏は存在しない。 社会構造が転覆しようが、これからもずっと誰かが割を喰らい続ける。
[インターネット(字幕)] 4点(2025-03-11 23:46:31)
2.  消えた声が、その名を呼ぶ 《ネタバレ》 
「娘に会いたい」。 処刑から生き延びるも声帯を切られ声を失った父親が地球半周を渡り歩き、生き別れの娘たちを追う8年間。  シリアスドラマからコメディまでジャンルを分け隔てず活動する、 ファティ・アキンのフィルモグラフィーの中では最もスケールが大きい。 1910年代のオスマントルコによるアルメニア人虐殺を題材にしたあたり、 加害者のトルコをルーツに持つ監督の思いはあるだろう。  アルメニアはキリスト教を国教と認めた初めての国であり、 オスマントルコでも富裕層として成功して政治にも関わる影響力があったものの西ヨーロッパとの関係を強固にしたことで、 オスマントルコ側のムスリムとしてのアイデンティティーが脅かされる恐怖が虐殺の背景にあったようだ。 これがアルメニア人のディアスポラになった。  信仰で救われることなく強制労働で次々に倒れていく同胞、生き残るためなら簡単に棄教する現状を目の当たりにし、 死にかけの義姉を手に掛けなければならない苦しさに、宗教がどれだけ愚かで虚しいものであるかを突き付けられる。 避難先のアレッポで初めて見たチャップリンの無声映画に自分の境遇と重ね合わせ、 娘たちが生きていることを知って、生きることの根源を取り戻していく。 たとえ盗みも暴力も働き、獣に墜ちてしまおうとも、死ぬわけにはいかないという執念。  いくらでも傑作になりえた題材なのに、国家の罪と罰をストレートに描かなければならないわけではないが、 最終的に単なる親子の感動ドラマにスケールダウンしてしまったのが惜しい。 娘と再会するまでの過程が終盤につれて偶然で片付けられていく脚本の杜撰さが鼻につくし、 心震わせることなく次第に冷静に見てしまいました。
[インターネット(字幕)] 6点(2024-09-08 23:20:15)
3.  雪の轍 《ネタバレ》 
全員が悪人ではないのに、ふとした擦れ違いとプライドが話を拗らせ、何も解決しないまま現状維持で終わる。 アスガー・ファルハディ監督の愛憎劇を彷彿とさせるが、グイグイと引き込むような話術も詩情もなく、3時間強のほとんどを室内の鬱屈した対話で占めるため、淡々を通り越して睡魔で幾度か分けて観るはめに。3時間以上描くほどの密度もなく、理屈を捏ね繰り回す議論はただただ空疎でしかない。理想主義の妻と現実主義の夫がエゴとエゴの衝突を機に、互いに見えなかったものに気付くエピソードに答えがあるのだろう。カッパドキアの雄大な雪景色がつまらないことで諍いを起こす人間の小ささを際立たせているようだ。そんな深刻な事情も汲み取れない日本人観光客が愚かに見えた。それは、この映画の良さが分からない自分そのものか。
[DVD(字幕)] 3点(2016-04-19 20:59:11)
4.  海難1890 《ネタバレ》 
トルコとの合作だけあって比較的お金が掛かっており、邦画特有のチープさは何とか避けられている。作りは感傷的で臭みを感じるが、台湾映画の『KANO』も似たようなものなので伏せておこう。ただ、1890年のエルトゥールル号と1985年のテヘラン脱出劇との繋がりが希薄で、前半のエピソードで多く割いている分、後半の別ジャンルを見ている唐突さが否めない(『アルゴ』を意識?)。トルコ大使館員の説得でこれだけ動かせるには説明不足というか、エルトゥールル号の件がなくても事が進みそう。もし、輪廻転生を匂わせるなら同時進行で描くエンタメに徹するか、事実を重んじ、エルトゥールル号のみに絞ってドライに描くべきかと。これはどちらも描き方が中途半端だから煮え切れない印象が否めない。『KANO』のように作り手の本気が感じられたら違っていたかも。
[映画館(邦画)] 6点(2015-12-14 21:08:10)
5.  そして、私たちは愛に帰る 《ネタバレ》 
親子3組の愛の物語が個別に交錯する『アモーレス・ぺロス』を彷彿とさせる構成。互いに異国で死んだ二人の女性が交差するように祖国に移送されるショットが印象的。娘の遺志を継いだ母を演じたハンナ・シグラの存在感が圧巻で、死のきっかけを作った娘の友人を助けるなんて日本では絶対に出来ない。そういう宗教的な土壌の違いもあるのだろう。トルコ系ドイツ人監督のファティ・アキンは、移民問題の亀裂を見つめながらも死によって生まれた微かな愛と希望を提示する。もっとも、今のシリア難民問題を見るに、何でもかんでも純ドイツ人から寛容さと愛で受け止めよ、ってある意味で都合良すぎはしませんかね? 脚本は巧いが、そういう裏読みを感じてしまう。
[DVD(字幕)] 6点(2015-12-14 19:16:05)
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