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プロフィール
コメント数 1693
性別 男性
自己紹介 基本的に3~8点を付けます。それ以外は、個人的に特別な映画です。

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1.  アンダーグラウンド(1995) 《ネタバレ》 
色々と映画を観ていると、稀にどうしようもなく「天才性」を感じさせる作品に出会うことがある。本作は特に(通常の辻褄を超えて展開し始める)後半は、もう殆どがその類いの「常人の才覚では撮れそうもない」映像となっている様に思う。  「何故、どうして」という点で全く常人の理解が追い付かない本作は、初見では十分に理解するのは難しいかもしれない(少なくとも私はそうだった)。しかし、そういった細かい点を超越して作品全体から迸る得も言われぬパワーとメッセージは、初見だろうが何だろうが多くの人の心に確実に響くであろうし、そして二度三度と観直すと本作もまた、細部まで精密につくり込まれた類稀な完成度を誇るクストリッツァの仕事だということが分かってくる。生涯に渡って何度も楽しめる、素晴らしい映画だと思う。  シーンとしてひとつ、空飛ぶ花嫁の結婚式は、全ての映画の中で私が一番好きなシーンだと言ってよいかも知れない(初めて観たときはやはり疑問と、そして感動と笑いが止まらなかった)。もう一つ、演技面ではどうやってサルにあれ程に上質な演技を仕込んだのか、そのうち聞いてみたい。  もう一点だけ、批判されることも少なくない本作のテーマ面について、私は監督の「歴史を肯定する」姿勢には賛意を表したい。人間と、人間の生業(としての歴史)は、全て多面的なものであると思っている。本作は決して、歴史の負の側面を虚飾で覆い隠そうという作品ではない。清濁併せ呑み、醜さもさらけ出した上で、ポジティブな側面を力強くかつノスタルジックに描いた本作は、テーマ面の表現についても傑出した作品であると強く感じている。
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2020-03-29 02:37:06)
2.  黒猫・白猫
気が付くと、珍しく幾度も観直しているという作品。溢れ出る生命力を浴びることで、明日への活力を分けて貰えるような気がするからだろうか。この映画の登場人物の様に、愉快に、力強く、無頓着に歌い踊る様に生きてゆきたいと、無意識に願っているのかもしれない。  とは言え、クストリッツァの才気炸裂・真骨頂な内容は、一見は適当なようで細部まできめ細やかにつくり込まれた実に高い完成度を誇る。今作ではそれをコメディ面に全振りしており、とにかくとてもユニーク・唯一無二な「笑える」要素が満載。しかし、何と言ってもこの作品の魅力は、これこそが「生きてる」ってことだという様な登場人物(あと動物)たちの無軌道で型破りな活力・生命力だと思う。何度見てもこう思う、「人生は、生きることは素晴らしい」と。
[DVD(字幕)] 9点(2020-03-28 18:24:58)
3.  ブリキの太鼓 《ネタバレ》 
極めて特異で奇怪な主人公が設定されているが、彼が紡ぐ物語はこれまた外形的にも内面的にもこの上なくグロテスクで、ハッキリ言って本作はグロ映画の類だと言って過言ではない。主人公本人からして極めて不愉快なサイコパスで、目なんて(子役の癖に)半ばイっちゃってるし、あくまで日常風景をベースにしていながらも、とにかく映像がグロテスクで中々観るに堪えない。個人的に特にキツかったのはウナギ(シュヴァンクマイエルとかでも思うことだが、マズそうな食物ほど意外と心を「エグる」ものは他に無いようにも思う)。また、性的にも中々インモラルで、これほど濡れ場が全然嬉しくない作品もある意味珍しい。  ただ、この奇妙な設定と醜悪な演出によって本作が描き出そうとするものは、この時代のドイツ(取り分けて大きな社会的矛盾を孕んだダンツィヒ)の病的で狂った「時代の空気」なのだということはより良く理解できるように思う。その意味では、これだけ荒唐無稽な話でありながら、その伝えんとする雰囲気が寧ろより直感的で鮮烈に伝わって来るのは確かであり、映画としてテーマ面の表現が優れていることは間違い無いと言える。文芸映画としては屈指の傑作。
[DVD(字幕)] 8点(2020-01-16 22:24:54)
4.  パパは、出張中! 《ネタバレ》 
決して、美しいばかりの映画ではない。ふとしたことで密告されるような社会主義独裁国家の情景は暗澹たる空気に満ちているし、そこに描かれる家族の物語にも人間の負の側面がふんだんに描き込まれ、率直にどこか「醜い」。しかし、それでいて本作からは、祖国に対する郷愁と家族の愛の奥行きの有る美しさが、映像から滲み出るように感じ取れる。  もうひとつ感じられるのは、人の世の物事の「多面的」なあれやこれやを全て受容する、という懐の深さか。具体的には、色々と巻き起こる事象・登場する人物のどれもを、取り立ててピックアップするということ無くひたすら淡々と描くことで、良いとか悪いとか、そういう価値判断をあまり感じさせない独特の穏やかで「醜くも美しい」作風をつくり上げている、という様にも思われる。  何度も繰り返されるメロディも、同じ調べながら挿入される箇所は多種多様で、聴くたびに違った感情が去来する。中々見事な演出だと思った(後の作品でも見られる音楽センスの高度さは、本作でも十分に感じられる)。
[DVD(字幕)] 8点(2019-11-19 20:38:54)
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