21. 天使の分け前
《ネタバレ》 表面的なストーリーはハートフルなんですけど、結局は主人公たちのような労働者階級の人間は、人並み外れた才能と宝くじに当たるくらいの運がなければ「負の連鎖」が渦巻くコミュニティから中々抜け出せないというイギリス社会の問題点が背景に隠されていて、さすがケン・ローチだなと思いましたね。 この作品の本当の主役は、実は主人公のロビーではなく彼を取り巻く人々の方ではないですかね。で、ロビーのサクセスストーリーもどこか違和感を伴うものとなっていて、その違和感が何なのかを我々に考えさせることがケン・ローチ監督がこの作品を作った狙いなんじゃないかと思ってしまいました。 まあ、やり切れないラストよりも一応ハッピーなラストの方が好きですけどね。 [DVD(字幕)] 8点(2013-12-23 23:59:29)(良:1票) |
22. 穏やかな暮らし
《ネタバレ》 最初から最後まで緊張感溢れるサスペンス映画でした。裏社会の掟から逃れるために何もかも捨てた男に襲い掛かる悲劇はやるせないとしか言いようがありませんでした。 主人公役を演じたトニ・セルヴィッロの熱演が印象に残りました。 [映画館(字幕)] 8点(2013-11-09 08:15:30) |
23. ル・アーヴルの靴みがき
《ネタバレ》 なんというか、昭和の日本の人情喜劇映画を思わせるような作品で、人情味あふれる街の人々の姿やラストの桜の花等非常に日本人の心の琴線に触れる要素が満載でしたね。 しかしながら、移民問題という現代社会が抱えている非常に難しいテーマに対して、カウリスマキがこのようなアプローチで作品を作った意味として、先進国(だけではないですが)各国で不寛容で内向きな考え方が蔓延してきている厳しい現状に対する問題提起も含まれているのかなと感じる部分もあって、いろいろ考えさせられますね。 まあ、オープニングからいろいろな仕掛けが満載で、カウリスマキファンとしてはストーリー以外の面でも楽しめる作品となっています。 [DVD(吹替)] 8点(2013-06-24 00:42:25) |
24. 最強のふたり
《ネタバレ》 お互いを尊重し、受け入れられるものは受け入れる、多少の過ちも反省の心があれば許してあげる・・・というような「寛容と受容」という理想がおとぎ話ではなく現実に起こっているという事実こそが、この映画の最大の魅力であると思います。 ただ、この2人の物語に多くの人が心を動かされたということは、逆に現実では中々起こりえないということでもあります。この作品の中でも、ところどころに移民問題が深刻な社会問題となっているフランスの実情も描かれています。 しかしながら、そういった状況の中でも共生は決して不可能ではないのだということを、ユーモアを交えながら伝えてくれるこの映画を私は評価したいです。 [DVD(吹替)] 8点(2013-06-08 00:23:56) |
25. イル・ディーヴォ
《ネタバレ》 スタイリッシュにそして戯画的に描かなければ、直視するのが憚られるくらい醜悪なイタリアの政治そして闇社会の姿が赤裸々に描かれています。 もう、オープニングに流れるCASSIUSの「toop toop」にあわせて映し出される事実の数々から「トホホ・・・」という感じでしたね。 全体的には、コスタ・ガブラスの『Z』を思わせるような腐敗に対する怒りをブラック・コメディの手法で伝える政治ドラマでした。 なお、アンドレオッティ元首相はこの5月6日に亡くなりました。こうして真相は永遠に闇の中に・・・・・ [DVD(字幕)] 8点(2013-05-04 16:42:58) |
26. 白夜(1971)
《ネタバレ》 一見無機質ですが観れば観るほど味わいが深まっていく映画。いわゆる、「ミニシアター系」が好きな人なら必見の非常に個性的で洒落た作品です。レオス・カラックスの「ポンヌフの恋人」もこの映画に影響された部分があるんじゃないですかね。 ポンヌフをはじめとするパリの街の映像が素晴らしいのが印象的でしたね。そして、感情を抑えたシンプルな演出でありながら、カメラワークや音楽、ストーリーのテンポ、テレコのような小物、リアルに響いてくる雑踏の音(ドキュメンタリー作品のようでした)等々を効果的に利用することで、人間の本能の生々しさを見事に描ききっています。 [映画館(字幕)] 8点(2012-11-11 01:08:59) |
27. サラの鍵
《ネタバレ》 ドイツ占領下のフランスでフランス人もホロコーストの手助けをしていた事実を伝えるだけでなく、ホロコーストの傷跡が現在の世の中にどのように残っているのかについても描いていて非常に興味深かったです。 基本的に現代劇で、主人公が我々と同じ目線で事件を追っているのでとても身近な感じがして良かったです。 原作もぜひ読んでみたいと思わせる素晴らしい映画でした。 [映画館(字幕)] 8点(2012-01-15 00:12:11) |
28. 人生は、時々晴れ
《ネタバレ》 しかしまあ、徹底してリアルさを追及したキャスティング、どのような展開になるのか全く想像がつかない巧みな脚本・演出はさすがマイク・リーといったところですね。特に、No Futureな閉塞感の下で、日々を惰性で生きているような人々の描写は見事です。 まあ、厳しい現実から目を背けてばかりいないで、時には立ち向かうことも必要なんだよというマイク・リーのメッセージが良く伝わってきました。 [ビデオ(字幕)] 8点(2011-10-08 10:56:04) |
29. さよなら子供たち
《ネタバレ》 子供たちの無邪気な日常に、大人たちの世界が理不尽さ残酷さと共に侵食していく様を、淡々としたタッチでありながら無駄の無い演出で描いている作品です。 ナチスドイツ占領下のフランスの人々の動きも、親独・反独がいろんな事情で入り混じっていて切なかったですね。まあ生きていくための選択ですから今の感覚で批難はできませんが・・・・・・。 [ビデオ(字幕)] 8点(2011-07-31 10:59:19) |
30. 愛の勝利を ムッソリーニを愛した女
《ネタバレ》 最初から最後までマルコ・ベロッキオ監督の才能に圧倒され続けましたね。ストーリー的には、女好きの独裁者に捨てられた女性がストーカー化して云々ということなんで、正直個人的には興味の持てない題材ではあったのですが、とにかく監督はそういう我々の心情を想定しているかのように爆発音や古いニュース映像、そして当時のプロパガンダを思わせるようなスローガンの羅列等々興味を惹くような手法を絶妙のタイミングで挟み込み全く飽きさせることがありませんでした。そして、どこか日本的な趣さえ感じさせる美しい映像が、この昼ドラ的な物語を芸術にまで昇華させています。 特に主人公が雪の降る中を病院の柵に登りながら手紙を外にばら撒いているシーンはモノクロで本当に美しくて印象に残りました。 [映画館(字幕)] 8点(2011-06-18 09:15:18) |
31. フェアウェル さらば、哀しみのスパイ
《ネタバレ》 冷戦時代の緊張感を思い出させてくれる、見応えのある作品です。エミール・クストリッツァの圧倒的な存在感がとても印象的でした。終盤の展開は事実に基づいた作品であることが信じられないくらいでした。 また、当時の各国首脳も出てきますが、演じる役者が微妙にそっくりさんで中々笑えます。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-27 21:56:40) |
32. エリックを探して
《ネタバレ》 エリック・カントナの幻が出てきたり、クライマックスの展開などコメディ色はあるものの、やはりケン・ローチらしいイギリスの日常風景で起きる様々な問題を描いた作品でした。途中の絶望的な状況なんてまさに「いつもの」という言葉を使いたくなるような展開でした。で、「いつも」なら我々に強烈な問題提起を叩きつけて物語は終わるのですが、この作品についてはやはり「KING」エリック・カントナのカリスマ性が為せる技なのか一味違う印象を受けましたね。カントナの語る格言やアドバイスが中々心に沁みました。一番印象的だったのは「最大の復讐は赦すことである」ですかね・・・・・。 カントナの現役時代のプレー(本当に威厳があって格好いいです)もところどころに散りばめられていますし、マンチェスターユナイテッドがアメリカの実業家に買収された後に反対するサポーターがFCユナイテッド・オブ・マンチェスターを新たに結成したことなんかも触れられていたりして、サッカーファン(プレミアリーグ好きなら特に)の方には是非劇場で見ることをお勧めしたいですね。 [映画館(字幕)] 8点(2011-04-17 16:01:40) |
33. 君を想って海をゆく
《ネタバレ》 サルコジ政権下のフランスの移民政策がいかに非人道的であるかを告発する作品です(サルコジも一瞬テレビの画面で登場していたような・・・)。ただ、決して堅苦しい作品ではありません。大人の恋愛、スポーツドラマ、コメディ、人情等々いろいろなエッセンスが詰め込まれた非常に見ごたえのある社会派人間ドラマです。 まあ、不法移民が留まりたがらないくらいですからフランスのやり方は徹底しています。店で買い物もさせない、炊き出しもダメ、それだけでなく不法移民にかかわっただけで犯罪・・・・・(日本もかなり厳しいですけどね)。 不法移民の問題は本当に難しいですね。ミクロの視点で見れば同情的になりますけど、マクロの視点で見れば非情にならざるを得ないわけですから・・・・・。この作品を観ている最中も、その2つの見方が頭の中で葛藤していました。そしていまだに決着は付いていません。 [映画館(字幕)] 8点(2010-12-28 22:28:04)(良:1票) |
34. オーケストラ!
《ネタバレ》 旧ソ連時代のユダヤ人排斥政策がもたらした悲劇を背景にしながらも、ややブラックなエスニックジョーク満載の笑えて泣ける人情喜劇音楽映画に仕上がっていてとても楽しめました。なんと言っても、演奏シーンの素晴らしさが際立っていて良かったですね。雑多な要素が見事にハーモニーを奏でている作品でした。 [DVD(吹替)] 8点(2010-12-27 00:43:44)(良:1票) |
35. 冬の小鳥
《ネタバレ》 主演のキム・セロンの素晴らしい演技に最初から最後まで惹き込まれっぱなしでした。親に捨てられた少女が苦しみながらも寂しさや悲しさに負けずに成長していく姿が本当に意地らしくて可愛らしかったです。何よりも終盤で見せる笑顔が本当に印象的でした。 そして、過剰なフィクションを盛り込むことなくその姿を静かにそして繊細に描いたウニー・ルコント監督の技量も見事でした。 [映画館(字幕)] 8点(2010-12-01 00:08:32) |
36. アメリ
《ネタバレ》 この作品については、とやかく論じたりするよりも、ジャン・ピエール・ジュネ監督のセンスとオドレイ・トトゥをはじめとする役者陣の演技が織り成す幸福な世界にひたすら浸るのが良いでしょう。フワフワとしながらも、時折毒が混じってるのも中々いい感じでした。 [インターネット(字幕)] 8点(2010-09-02 00:15:54) |
37. ジョニー・マッド・ドッグ
《ネタバレ》 いきなり脳天をガツンと叩かれたような感覚に陥ってしまう強烈な作品でした。貧しい少年達の純粋さと衝動、パワーを悪用し、用が済んだら無責任にもポイしてしまう汚い大人たちに本当に腹が立って仕方ありませんでした。 ドキュメントを見ているかのようなリアルな少年兵達の演技には本当に驚きです。 観ていて気分が悪くなる作品でしたが、世の中にはこのような醜い現実があるということを教えてくれる貴重な映像記録であると思います。 [映画館(字幕)] 8点(2010-06-26 09:34:16) |
38. ボーン・アルティメイタム
《ネタバレ》 最初から最後まで途切れることのない緊張感と、ポール・グリーングラスの作り出す臨場感溢れるアクションシーンがお腹いっぱいになるぐらい堪能できる作品でした。ここまでくると、映画というよりはアトラクションですね。 本当にこのシリーズのアクションは映画館で体験すべき、素晴らしいクオリティです。 [地上波(吹替)] 8点(2010-02-11 16:17:37) |
39. 隠された記憶
《ネタバレ》 すべてが綿密に計算されており、全く以って隙が無い映像を我々に提供(というか挑発)してくれるハネケ監督には感服するしかありませんね。そして、誰しもが抱えている問題(秘密や嘘そして罪)をサスペンスという緊張感に満ちた形式をとりながら突いてくるその嫌らしさは、まるで悪夢を見ているかのようでした(でも面白いからついつい見てしまうんですよね)。 何というか、何回も見返して、その緻密さを確認したくなるような映画でした。 [DVD(字幕)] 8点(2009-12-28 23:40:58) |
40. 13歳の夏に僕は生まれた
《ネタバレ》 何というか、感想を述べるのが非常に難しい作品ですね。生きていくために決して他人を信用することなく必死になって行動している不法移民の少年と妹(実際は兄妹かどうかもわからないが)、不法移民たちの乗った船に救われ本性を探ることもなく前記の兄妹を何とか救おうとする主人公の少年とその家族のどちらにも感情移入できるような、できないような微妙な感じで、本当に移民問題の難しさを痛感しましたね。 一番印象的だったのは音楽の使い方が非常に効果的だったことですね。オープニングのトム・ウェイツの「ルビーズ・アームズ」でぐっと心を掴まれましたし、クライマックスの場面でのエロス・ラマゾッティの曲の使い方が本当に巧みで何ともいえない切なさを見事に表現していましたね。 [DVD(字幕)] 8点(2009-12-20 23:32:49) |