21. 最強のふたり
《ネタバレ》 お互いを尊重し、受け入れられるものは受け入れる、多少の過ちも反省の心があれば許してあげる・・・というような「寛容と受容」という理想がおとぎ話ではなく現実に起こっているという事実こそが、この映画の最大の魅力であると思います。 ただ、この2人の物語に多くの人が心を動かされたということは、逆に現実では中々起こりえないということでもあります。この作品の中でも、ところどころに移民問題が深刻な社会問題となっているフランスの実情も描かれています。 しかしながら、そういった状況の中でも共生は決して不可能ではないのだということを、ユーモアを交えながら伝えてくれるこの映画を私は評価したいです。 [DVD(吹替)] 8点(2013-06-08 00:23:56) |
22. チキンとプラム ~あるバイオリン弾き、最後の夢~
《ネタバレ》 なんというか、作風はファンタジックですが内容は非常にシビアでしたね。主人公の思いも、周囲の人たちの思いも結局は自分の中で秘めたもので終わってしまい、悲しい結末を受け入れざるを得なくなってしまいましたからね・・・。 相互理解の大切さ、そして難しさを痛感させられる映画でした。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-05-23 00:23:34) |
23. イル・ディーヴォ
《ネタバレ》 スタイリッシュにそして戯画的に描かなければ、直視するのが憚られるくらい醜悪なイタリアの政治そして闇社会の姿が赤裸々に描かれています。 もう、オープニングに流れるCASSIUSの「toop toop」にあわせて映し出される事実の数々から「トホホ・・・」という感じでしたね。 全体的には、コスタ・ガブラスの『Z』を思わせるような腐敗に対する怒りをブラック・コメディの手法で伝える政治ドラマでした。 なお、アンドレオッティ元首相はこの5月6日に亡くなりました。こうして真相は永遠に闇の中に・・・・・ [DVD(字幕)] 8点(2013-05-11 14:28:13) |
24. 白夜(1971)
《ネタバレ》 一見無機質ですが観れば観るほど味わいが深まっていく映画。いわゆる、「ミニシアター系」が好きな人なら必見の非常に個性的で洒落た作品です。レオス・カラックスの「ポンヌフの恋人」もこの映画に影響された部分があるんじゃないですかね。 ポンヌフをはじめとするパリの街の映像が素晴らしいのが印象的でしたね。そして、感情を抑えたシンプルな演出でありながら、カメラワークや音楽、ストーリーのテンポ、テレコのような小物、リアルに響いてくる雑踏の音(ドキュメンタリー作品のようでした)等々を効果的に利用することで、人間の本能の生々しさを見事に描ききっています。 [映画館(字幕)] 8点(2012-11-11 01:08:59) |
25. ルート・アイリッシュ
《ネタバレ》 コメディだった前作「エリックを探して」から一転して、本来のケン・ローチ監督らしく世の中の酷い現実を怒りをこめて告発する社会派ドラマに仕上がっています。 今回は戦争を商売にしている民間会社が取り上げられていて、かなり重苦しい内容ではあるのですが、途中からまるで必殺仕事人のような展開になり見応えがありました。ただし、決してスカッと溜飲が下がるようなヒーロー物ではなく登場人物の一人ひとりが人間としての弱さを抱えていて、やはりケン・ローチ作品だなと感じましたね。 [DVD(字幕)] 7点(2012-11-11 00:47:53) |
26. メランコリア
《ネタバレ》 ラース・フォン・トリアーは相変わらずイカれてることは良くわかりました。でも、これなら、日本ではもっと凄いイカレっぷりを富野由悠季が「伝説巨神イデオン」で見せてくれてるんですよね。(ちなみにイカれてるは褒め言葉です) まあ、とにかくかなり私小説的な物語の世界の狭さと惑星が地球に激突するという設定のスケールの大きさのギャップが、美しすぎる映像に引っ張られていて非常に興味深い魅力を産み出しています。 ただ、第1部のグダグダな展開はもう少しカットできるような気がしましたね。第2部後半の終末に向かう緊迫した展開が良かっただけに勿体無いと思いましたね。 [DVD(吹替)] 7点(2012-09-28 12:37:59) |
27. 狂った血の女
《ネタバレ》 なんというか、「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉を思い起こさせる作品でしたね。本当に世の中の趨勢を読み取る力の重要性を感じさせてくれました。 ベネチア映画祭がムッソリーニによって国威発揚の手段として使われてた事実等当時のイタリアの状況も描かれていて非常に興味深かったです。 [DVD(字幕)] 7点(2012-04-08 22:55:22) |
28. ドリーマーズ
《ネタバレ》 夢を見ることができた時代に夢をみたいと願いながら不安定に揺れる日々を過ごしている若者たちの物語をジミヘンやジャニスといった60年代ロックとセンスの良い映像(特にオープニングは秀逸)で綴った作品でした。また、過去の名画のシーンをところどころに織り込んでいて非常に興味深かったです(観たことあるのは「フリークス」「勝手にしやがれ」「少女ムシェット」くらいですが・・・)。 [DVD(吹替)] 7点(2012-02-11 11:24:43) |
29. アンチクライスト
《ネタバレ》 まあ、露悪的でアホな作品にしか思えないのですが、それでも最後まで飽きずに観ることができたのはラース・フォン・トリアー監督の力量(というかブランド力)なんでしょうかね。それにしても、この監督病んでるとしか思えませんが。 内容的にはなんと言えばいいのでしょうか・・・・、例えるならば子供が放送禁止用語を叫びながら無邪気に走りまわっている姿を芸術的に映像化しているような・・・そんな感じでしたね。 [DVD(吹替)] 6点(2012-02-05 00:48:45) |
30. サラの鍵
《ネタバレ》 ドイツ占領下のフランスでフランス人もホロコーストの手助けをしていた事実を伝えるだけでなく、ホロコーストの傷跡が現在の世の中にどのように残っているのかについても描いていて非常に興味深かったです。 基本的に現代劇で、主人公が我々と同じ目線で事件を追っているのでとても身近な感じがして良かったです。 原作もぜひ読んでみたいと思わせる素晴らしい映画でした。 [映画館(字幕)] 8点(2012-01-15 00:12:32) |
31. 殯の森
《ネタバレ》 西洋人には受けるかもしれないですね。正直、森に入ってからの展開は良くわからなかったのですが、それもまた「東洋の神秘」「日本の死生観」を表現していると考えれば、カンヌで賞を取ったのも納得です。そして、このような難解さを持ちながらも最後まで不思議と退屈せずに観れたのは河瀬監督の才能の為せる技であったのかなと思いました。 まあ、森の風景はとても美しく非常に癒される作品ではありました。 [DVD(邦画)] 6点(2011-10-18 23:11:08) |
32. 人生は、時々晴れ
《ネタバレ》 しかしまあ、徹底してリアルさを追及したキャスティング、どのような展開になるのか全く想像がつかない巧みな脚本・演出はさすがマイク・リーといったところですね。特に、No Futureな閉塞感の下で、日々を惰性で生きているような人々の描写は見事です。 まあ、厳しい現実から目を背けてばかりいないで、時には立ち向かうことも必要なんだよというマイク・リーのメッセージが良く伝わってきました。 [ビデオ(字幕)] 8点(2011-10-08 10:56:04) |
33. 大人は判ってくれない
《ネタバレ》 自分の力で生きていかなければならない「大人」とその大人の庇護の下で生きている「子供」の間にある深い溝を鋭く描いていますね。子供と社会の間には常に目の前のたんこぶのように「大人」が介在していますからね・・・・。(まあその「たんこぶ」には子供を社会の危険から守ってくれる役割もあるんですけど) 非常に、子供が抱える苛立ちが上手く表現されていると思います。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-09-24 11:38:12) |
34. ニューヨーク、狼たちの野望
《ネタバレ》 華やかなマンハッタンの隣にひっそりと位置し、NY市の行政区の一つでありながら存在感のないスタテンアイランドと、同じように己の存在感の薄さを感じながら生きている3人の男たちのドラマです。 とにかく、主演の3人の配役が見事で面白かったです(マフィアの親分役は、あの「フルメタル・ジャケット」のデブを演じたヴィンセント・ドノフリオです)。また、同じ事件を3名の異なった視点で描く手法も効果的で良かったと思います。スタテンアイランドの存在を上手く設定に取り込んでいるのも興味深かったです。 [映画館(字幕)] 7点(2011-08-24 00:37:49) |
35. 戦場カメラマン 真実の証明
《ネタバレ》 悲惨な戦争の現場を、カメラを通じてであれば冷静に見ることができる戦場カメラマンも、自らの目で自らが悲劇的な状況に置かれた時には心に大きな痛手を負ってしまう・・・・そんな戦場カメラマンの苦悩をコリン・ファレルが熱演しています。 [DVD(字幕)] 7点(2011-08-10 00:17:27) |
36. ヘヴン
《ネタバレ》 「そこに愛があれば、それで良いのか?」というのが観終わった直後の正直な感想でしたね。復讐のために、何の関わりの無い人たちに、この世の地獄を味あわせておきながら、愛にすがりながら罪を償おうとする心理がどうしても受け入れ難かったです。何せ、夫の復讐を果たした後で他の男を愛するようになるわけですから。 まあ、逆に言えば、このような終末的な状況にありながら愛情に包まれる事こそこの世の天国なのかもしれませんね。 後半出てくるイタリアの田園風景は非常に美しかったです。 [地上波(字幕)] 6点(2011-08-06 00:01:26) |
37. さよなら子供たち
《ネタバレ》 子供たちの無邪気な日常に、大人たちの世界が理不尽さ残酷さと共に侵食していく様を、淡々としたタッチでありながら無駄の無い演出で描いている作品です。 ナチスドイツ占領下のフランスの人々の動きも、親独・反独がいろんな事情で入り混じっていて切なかったですね。まあ生きていくための選択ですから今の感覚で批難はできませんが・・・・・・。 [ビデオ(字幕)] 8点(2011-07-31 10:59:19) |
38. 神々と男たち
《ネタバレ》 「神の沈黙」というフレーズが浮かんでくるような、殉教者の葛藤、そして覚悟を極めて美しく芸術的に描いた作品です。 素晴らしい作品であることは間違いありません。「白鳥の湖」が流れるシーンは本当に見事でした。ただ、アルジェリアとフランスの過去から現在にいたる関係を考えると手放しで賛辞を送るわけにはいきません。 たとえば映画の中で修道士がイスラム教徒の過激派に「キリスト教とイスラム教は隣人だと言ったりしてますが、かつてフランスがアルジェリアを植民地支配をしていたときにはイスラム教徒を押さえつけてたわけですからね。 それに、あまりにも「修道士たち=神に殉じた崇高な男たち」、「イスラム過激派=野蛮で無知なテロリスト」という構図が明確に打ち出されていてちょっといかがなものかと思いました。 [映画館(字幕)] 7点(2011-07-30 11:41:37) |
39. 愛の勝利を ムッソリーニを愛した女
《ネタバレ》 最初から最後までマルコ・ベロッキオ監督の才能に圧倒され続けましたね。ストーリー的には、女好きの独裁者に捨てられた女性がストーカー化して云々ということなんで、正直個人的には興味の持てない題材ではあったのですが、とにかく監督はそういう我々の心情を想定しているかのように爆発音や古いニュース映像、そして当時のプロパガンダを思わせるようなスローガンの羅列等々興味を惹くような手法を絶妙のタイミングで挟み込み全く飽きさせることがありませんでした。そして、どこか日本的な趣さえ感じさせる美しい映像が、この昼ドラ的な物語を芸術にまで昇華させています。 特に主人公が雪の降る中を病院の柵に登りながら手紙を外にばら撒いているシーンはモノクロで本当に美しくて印象に残りました。 [映画館(字幕)] 8点(2011-06-18 09:15:18) |
40. フェアウェル さらば、哀しみのスパイ
《ネタバレ》 冷戦時代の緊張感を思い出させてくれる、見応えのある作品です。エミール・クストリッツァの圧倒的な存在感がとても印象的でした。終盤の展開は事実に基づいた作品であることが信じられないくらいでした。 また、当時の各国首脳も出てきますが、演じる役者が微妙にそっくりさんで中々笑えます。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-27 21:56:40) |