1. グランド・イリュージョン
面白い映画です、という小学校低学年のような感想が似合う映画。ひじょうに面白いけど、それ以上でも以下でもない。でもそれは映画にとって最も大切な要素なので、これは観る価値のある作品。以下、私事ですが、ここのレビューもそんなに多くないし、混んでないだろうとタカをくくって新宿ピカデリーに行ったところ、まさかの最前列! 最近のシネコンだから大丈夫だろうと思ったら、とんでもない! 画面近っ‼ マジックのシーンはグルグルして目が回るし、視界が上下も左右も入り切らない。これから観る方には、最前列だけはオススメしません。 [映画館(字幕)] 6点(2013-11-04 21:34:11) |
2. 薬指の標本
小川洋子の小説に漂う世界観は、きっと邦画にしたら泥臭く、生々しい感じになるのだろうけれど、ヨーロッパの乾いた感じと、登場人物たちの色素の薄さで、妙に美しく仕上がっている。PVを観る感覚であればそこそこ楽しめる。映画としては、エロもミステリーも芸術的な空気もどれも中途半端で、学生が理想だけで作った作品のよう。 [DVD(字幕)] 5点(2010-02-28 20:28:06) |
3. ビハインド・ザ・サン
《ネタバレ》 いいところが沢山ある作品。映像が幻想的で、光の使い方がとても美しい。テンポも悪くない。子役の演技は光っているし、主演のロドリゴ・サントロはどこから見てもいい男。でも何だか「馬鹿馬鹿しい」感じがするんだよね。一人づつ殺していくなんて「きりがないじゃん」そんなこと、いい大人があれだけいて、わかりきっているだろうに・・・・「どうしても殺さないといけない」という理由が薄くて、演じるひとたちはすごく切迫した表情なんだけど、何だかな・・・・と思ってしまう。そこを差し引いてもブランコのシーン一枚でも、あの映像の独特な美しさは見る価値ありです。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-12 20:51:12) |
4. エル・スール
《ネタバレ》 幼い頃は、自分が親にとって一番大切な存在なのだと信じて疑わないものだ。でもある時、親も一人の過去がある人間であり、他にも様々な「思い」を抱えていることに気付く。少女の心の襞が一枚捲られる瞬間を描くことに関して、右に出る者はいない監督だと思う。自分でも、自分を産んだ母でもない、他の誰かのことを、父がかつて愛し、もしかしたら今も愛しているのではないかという不安。幼い頃の漠然とした思いが、成長し、自分を「愛している」と言う男の子がいるエストリヤの中で、やっと口に出せるだけの理解をしたときに、父がこの世を去ってしまう。あまりにも美しい情景とその救いのなさ。10点献上。 [DVD(字幕)] 10点(2009-02-18 23:23:30) |
5. ひまわり(1970)
もし日本人がこの内容で映画を撮ったら、主演は細面のはかなげな女性で、 ねと~っとした、ひたすら悲しい映画になるのではないかと思います。 ソフィア・ローレン演じる主人公の、悲しいけれど逞しい感じや、 すごく可哀想な状況なのに悲惨さよりも強さが際立っている感じ。 日本とは違う「悲しい女の生き様」が、新しい感性の発見でした。 タイトルの「ひまわり」が、またいいですね。 [DVD(字幕)] 8点(2009-02-04 20:14:07) |
6. 大人は判ってくれない
13歳って、ちっとも楽しい年齢じゃないんだよね。自分の劣等感に悩んだり、漠然とした不安を抱えていたりする。はやく大人になりたくて、大人になりさえすればどうにかなると思っている。でも実際大人になってしまうと、子どもの頃のそういう微妙な感情を忘れて、13歳はハッピーな年齢だと懐古してしまうんだな。だからふてくされている子どもに向かって「どうしてお前はそんななんだ!」と怒ってしまうんだな。そういう判ってない大人の姿がイタかったなぁ。でもこの要領が悪過ぎる13歳の少年もまた、狂おしいくらいイタいんだな。そういうえぐられるような感情のゆさぶりを与えてくれる映画なのにどこか淡々としていて、最期もまるで通りすがりの風景みたいにあっさり自然。いつの時代の少年にとっても、名画でありつづける作品だと思う。 9点(2004-12-29 14:32:16)(良:3票) |
7. モーターサイクル・ダイアリーズ
私もよく旅行に行く。箱根に行ったり沖縄に行ったり北海道に行ったり。お金が貯まればサイパンやハワイ。時間があればヨーロッパ。そう、お金と時間があれば、誰でも旅に出る事は出来る。でも旅先で、何かを感じ取るには才能がいる。チェ・ゲバラの豊か過ぎる感受性が、南米をまわりながら何を見て、何を感じ、後の革命へと彼を駆り立てて行ったのかが克明に描かれていて、ひたひたと感動出来た。その豊かさが彼を英雄にし(偉い人は沢山いるけれど、英雄の名を冠される人物は、ほんとうにごく僅かだ!)、しかし若くして銃弾に倒れるという末路を導てしまった。人間の幸福について、考えさせられる。南米の煤けた広大な景色と、4色モノクロの撮り方、おざなりとも思えるほど、わざと荒く繋いだ沢山のエピソード(まさにスクリーンで観るべき映画)。その中で時折見せるガエル・ガルシア・ベルナルの美しい笑顔が、とてもキュートで、印象的だった。 9点(2004-10-30 13:23:18) |
8. シティ・オブ・ゴッド
とにかくエネルギッシュ。こちらの体力が充分にある時に見ないと、勢いにやられる。「え?」と思う台詞や、「オイオイ!」という展開も多いけれど、すべてをあのエネルギーが覆い隠して余りある。けれども映画として秀作だとは思わないし、他人には勧めない。死をライトに扱おうとしているのに、内容が切実なドキュメンタリー風だから、すごい不具合を感じてしまう。見ていて疲れる映画でした。 6点(2004-08-30 19:49:17) |
9. 乱
うわぁ~~何かもう凄い・・・という感想しか思いつきません。でもそれじゃあ小学生以下なので、もう少し考えてみます、ハイ。 画面のどのシーンを切り取っても完璧な絵になっている。ワダエミの衣装は、最初は違和感があったけれど、戦国日本に似た異世界とでもいうよう雰囲気を漂わせつつ、キャラクター個々の個性を反映していて、観終わる頃には完全に虜になっていました。仲代達也の大袈裟で型通りの演技も、この非現実の世界に馴染んでいた。しかしこれが映画として面白いかというと・・・・ウゥウウウウウン!! あんま面白くないかも!!! ごめんなさい、中だるみしました。ピーターが・・・鬱陶しい。彼のシーンがせめて半分だったら、もうすこし記憶に残る映画になったかもしれない。彼の鬱陶しい喋りと髪の毛と動きばかりが気になって仕方なかった。 7点(2004-07-13 21:47:49) |
10. 8人の女たち
ただ歌って踊って騒いでいるだけでも、超セ・レ・ブな女優さんたちがやるとエンターテイメントになるのね。羨ましい事です。コレは映画の内容にお金を払っているのではなく、名だたる女優たちのキャリアに献金している感じですな。 ダニエル・ダリュー。一体何歳なんでしょう。1917年生まれですか!?。2002年の映画だから・・・85歳!? 『うたかたの戀』のシャルル・ボワイエも、『赤と黒』のジェラール・フィリップも、彼女の大ファンだった谷崎潤一郎もとうの昔に死んだのに、歌って踊っている・・・ 美人薄命ってウソよね~ そういえばうちのおじいちゃん(故人)も大ファンだったなぁ~「官能的白痴美」とか言って。 ちなみに本作のダニエル・ダリューは、「官能」と「美」が廃れて「痴」だけが残っている感じだ。 しかし、末娘役のリュディヴィーヌ・サニエなんか、それほど美人女優って感じじゃない、どちらかと言えばファニーフェイスだけど、すごく可愛く見える。 ダニエル・ダリューも、ヴィヴィアン・リーと並ぶ世界一の美女と言われたカトリーヌ・ドヌーブも、トリュフォーの愛人ファニー・アルダンも、綺麗っていうより恐い。確かに魅力的だけど、私が男だったらリュディヴィーヌ・サニエ嬢の方を選ぶわ・・・ やっぱなんだかんだ言って、女は若さよのぅ・・・(泣) 6点(2004-07-05 20:06:15) |
11. ウェルカム!ヘヴン
とっても面白い映画になれる要素がたくさんあるのに、どこか重大な部分が抜け落ちて失敗している作品。それはボクサーの魂が持つ意味がけっきょくうやむやに終わったせいかもしれないし、人間になる云々の所が説明不足で、無理矢理纏めた感が拭えないせいかもしれないし・・・う~ん、判らない。判らないけど何かが足りない。キャスティング最高! ファニー・アルダンとガエル・ガルシア・ベルナルの組み合わせって、相当ありえないのにすごく自然で笑えた。ペネロペも可愛かった。彼女のが演じたキャラクターではコレが一番好き。そしてハビエル・バルデム!! 美味しすぎです。絵の見せ方も、お軽い映画なのにヨーロッパらしい濃淡があって飽きなかったし、登場人物が皆でコスプレしているみたいな衣装も楽しかった。う~ん、つくづく惜しい。 7点(2004-06-07 10:56:53) |
12. ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版
《ネタバレ》 随分昔に二時間版を見た時、「良いお話だな」と思った。ほのぼのして、ちょっと悲しくて、優しい。で、この完全版を見た時、私も「えっ!」って思った。あの聡明で快活なトトが、ストーカーおやじになってるし・・・アルフレッド、ヤな奴じゃん!! でも、最後のキスシーンを繋げたフィルムのシーンが、二時間版の時よりずっと深く響いた。社会的には大成功をおさめたサルバトーレの心を埋められなかったものの悲しさが、涙を誘う。これは「淡い初恋の物語」では得られなかった感動だった。この映画が、人間にとて幸福とは何かという、深い深いテーマを描いていたという事を知る事が出来て、完全版を世に出してくれたDVDに感謝です。 9点(2004-05-15 15:55:46)(良:1票) |
13. ピアニスト
《ネタバレ》 何故このストーリーを映画にしなければならなかったのだろうか。あの女性には、たしかに多少、共感できる部分もある。でもその共感が、ストーリーが進むうちに解決出来るわけでもないし、何らかの感動に変わるわけでもない。映画はファンタジーだから、砂漠の様に乾き切った女に、ブノワ・マジメル君が恋をするのはまぁいい。でもそれを無惨にも潰すラストには、何の意味もない。あの意味の無さが芸術なのだと言われれば、「ああそうですか」と無学な私は言うしかないが、この映画を見た私の二時間に、得るものは何も無かった。無かったのに、あのえぐさは一生忘れられそうも無い。成功している作品なのだろうけど、それを認めたくない怪作。主演二人の演技は、賞を取るにふさわしい、素晴らしいものだったと思う。 6点(2004-04-11 08:14:17) |
14. 悪魔のような女(1955)
《ネタバレ》 50年代のフランス映画を観て、「おもしろい」とか「美しい」とか「素晴らしい」と思う事は多々ある。だが「まじで恐い」と思ったのは初めてです。あのラスト・・・ブルブル・・・ 引き際の鮮やかさは、さすが名匠アンリ・ジョルジュ・クルーゾー。この人の映画は本当にラストが上手い。展開も構図も、今観て「現代的」と思えるほどの素晴らしさです。リメイク版も今度観てみよう。 8点(2004-03-22 21:56:51)(良:1票) |
15. アマロ神父の罪
《ネタバレ》 倫理観と動物としての本能。どちらも本来は美しいものであるべきなのに、それがひとりの人間の中で交差する時、毒が生まれるというテーマは、とても興味深かった。また南米の砂っぽさの中の二人のラブシーンが、とても美しい。ハリウッド映画にはない耽美的な空気があって、揺すぶられるものがある。どんなバイオレンス映画よりも暴力的なラストはショッキングだったけれど、脚本はとても優れていると思う。主演のガエル・ガルシア・ベルナルがハマリ役。アラン・ドロンを彷佛させる容姿も◎。 8点(2004-03-20 18:15:00) |
16. シェフと素顔と、おいしい時間
おふらんすの香りがプンプンプンプンして、くらっとしてしまいそうな映画でございました。フランス語って、罵倒する言葉もエレガンスでうっとり。二人とも、若い頃より今の方が素敵で、凄いなぁと思います。日本人で、49歳と56歳でラブコメが出来るカップリングなんてありえないもの。ま、あたしだったらアカプルコで一週間くらいバカンスしてから帰るけど・・・ まさに82分のおいしい時間をごちそう様な映画でした。 6点(2004-03-17 10:08:49) |
17. ミニミニ大作戦(2003)
この映画の撮影は誰? と思わずネットで検索してしまいました。街ごとに、そこの湿度が伝わってくるような色選びをしていて、臨場感たっぷり。ミニをわざと大きな車の脇をすり抜けさせたり、構図もいいんだな~。展開が明確で、アクション駄作にありがちな、場違いな男女のクサイ台詞がなかったのも好感度大。マークがシャーリーズの肩をただポンと叩く仕草に愛情がちゃんと表現されていてGOOD! 天才ノートンが、役づくりで凡庸で想像力を欠いた駄目成金にちゃんと見えるのも流石! ミニがお屋敷を走るシーンが見れなかったのが、少々残念でしたが、久々にサックリ楽しませてもらいました。娯楽映画ってイイねっ! 8点(2004-02-21 13:51:21)(良:2票) |
18. 裸のマハ
豪奢な衣装、サスペンスタッチのストーリー、文句なく美しい女優陣(ペネロペは勿論キュートでセクシー。でも公爵夫人を演じたアイタナ・サンチェス=ヒホンが、また負けず劣らず知的な美貌で素晴らしい)と、楽しめる要素は盛りだくさん・・・のはずなのに、ひたすら退屈。時間があちこち前後するし、長い名前の登場人物が沢山出て来て、混乱気味(だけどこれは、仕方ないのかもしれない。スペイン人なら誰もが知っているお話とキャラクターなのかも。もしスペイン人に新撰組を見せたら、きっと混乱するでしょう。ゴヤを取り巻く人間関係を下調べをせずに、手に取った私が悪いのかも)。かなりマニアックな、見る人を選ぶ作品です。 5点(2004-02-04 00:45:11) |
19. 映画に愛をこめて/アメリカの夜
映画の製作風景は、最近はDVDの特典で頻繁に見られるようになったけれど、ちょっと前はとても興味深い、隠された世界だった。日常からあまりにも離れた映画の世界。それを「わたしたちの仕事って凄いでしょう」ではなく、観客がスッと入っていけるような設定と身近にいそうな人物で面白く見せてくれる。ヌーヴェルヴァーグ苦手意識が、かなり払拭されました。また、この「パメラ・・」の様な内幕がまた「アメリカの夜」の撮影時の内幕にもあるんだろうなと想像すると、笑可しい。ジャクリーン・ビセットの、色素の薄い瞳が引き込まれそうに輝いていて、とても素敵でした。 8点(2004-02-04 00:28:55) |
20. エデンより彼方に
あの雰囲気にヤラレます。カフェの看板の様なミントグリーンの題字から始まって、子供の頃憧れたドールハウスのお母さんみたいなジュリアン・ムーアのファッション。鮮やかなのに、どこかセピアを帯びた色調と、ゆったり走るクラッシックカー。もうムード満点です! しかししかし、肝心の内容はどうも馴染めなかった。なんといっても、ジュリアン・ムーア演じるキャシーが馬鹿すぎる。「それは言っちゃいかんだろう」と、誰もが思う事を口走って玉砕。そして哀愁に浸る。正直途中からイライラしました。デニス・クエイド演じるフランクも、罪悪感があるんだかないんだか中途半端で、いまいちパッとしない。レイモンド演じた男優さんは、優しく強い雰囲気があってとても良かったです。一時間半強という短い上映時間だからどうにか面白く見終える事が出来た作品。 5点(2004-01-27 11:12:42) |