1. スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする
《ネタバレ》 レイフ・ファインズの病んだ人ぶりが見事。スパイダーは、母親が父親を迎えに出かけたあの日から、両親が仲良くなってしまったことに耐えられなかったのだろう(真相は、ちょっと長めの夫婦喧嘩の仲直りをしたという程度だったと予想される)。それは、とりもなおさずスパイダーが母親の独占的な愛を失うことを意味するからだ。そこで、もともと精神病質のスパイダーは「現在の母親は以前の母親ではない」としてこの現実を合理化し、とうとう母親を殺害してしまったのである。殺害してしまえば、スパイダーにとって母の愛は永遠となる……という解釈を施してこの映画を鑑賞し終わった。その後にクローネンバーグのインタビューを見ると、スパイダーの病気は遺伝的要因によるもので、環境的要因は関係がない、というようなことを言っていた。なんてこった、病んでいるのはこんな解釈をしていたこっちじゃないか。もっとも、表現はそれがなさた瞬間から、その解釈は受け手に委ねられるのだから構わないだろう(と合理化してみる)。それはともかく、クローネンバーグにしては画面がきれいにまとまり過ぎな印象。 7点(2004-09-27 14:51:44) |
2. スパイ・ゲーム(2001)
ビショップは、スパイとしては精神的に不安定すぎるのではないか? という疑問もあるものの、まずまずの出来だと思います。ネイサンがビショップを救おうとするのは、ビショップの行動が自分の責任であると感じたためです。回想シーンは、そのいきさつを説明するものになっています。また、この映画はネイサンが「とんち」を繰り出してCIAの同僚たちを煙に巻くところが見所なのであって、その辺がスパイ・ゲームなわけです。バハマの衛星写真の使われ方が分かったところで「くすっ」とも笑えない人には向いていません。あと、映画でちょっとでも複雑な話になるとついていけないという人は観ない方がいいでしょう。 7点(2004-07-27 17:00:23) |
3. マルホランド・ドライブ
この映画はそう単純ではない。しかし、内容の分析については、ネットで検索すればいくらでも見つかる。そこで整合にして緻密な解釈を発見し、本作が細部まで作り込まれていることに気付いて感心したが、逆に理解してしまったことで、この作品への評価が下がってしまった(それでも8点)。やはり、いくつかの手品のタネのように、わかってしまうと面白くないことがある。人生はそう単純ではないものだ。もっとも、もう一度見てみればまた印象が変わるかもしれない。繰り返し見る気が起こらないという方は、奇矯な言動や性的倒錯が生み出す「濃さ」に辟易してしまったのだろう。10年以上前、映画「ツイン・ピークス」を見た時、私も同じように感じたと思う。しかし、年を経て色々なことを見聞し、体験していくうちに、多少の刺激では動じなくなった。今後、本作を繰り返し観ることになるとすれば、それは自分が鈍感になったからというわけだ。鈍感であるからこそ、物語の奥深くに向けて鋭敏になれる。人生はそう単純ではないものだ。 8点(2004-05-20 13:29:25) |
4. スズメバチ
敵に甘いところがなく、プロフェッショナルな非合法軍隊に徹しているところが良い。ありがちなアクション映画のように悪者がたらたらともったいぶって進撃を遅らせているのではなく、この映画では最終の銃撃戦が遅れるにはそれなりの必然性がある。何も考えないで見れば「それなり」の映画であろうが、画面から自然に感じられる緊張感をもってこの映画に臨めば、登場人物の成長と警備員(元消防士)の奮闘ぶりに感動できる。その意味ではアクション映画には珍しいタイプ。あれれ? と思うシーンが全くないとは言わないけど。 蛇足ながら、この他のナディア・ファレスの出演している映画を見たい方は、「クリムゾン・リバー」などいかがだろうか。 7点(2004-04-27 16:19:49) |
5. YAMAKASI ヤマカシ
公開当時,有楽町の映画館にまで観に行ってがっかりした記憶がある。ベッソンらしさは,特殊部隊の突入シーンくらいですかね。まあ,ベッソンが監督してるわけではないけど。多くの方がおっしゃっているように,スタント無しのアクションが見せ場である。が,それでも挽回できないお話作りは,いかがなものかと。 2点(2003-08-11 09:46:17) |
6. オープン・ユア・アイズ
「何が真実なのだろうか?」と考えさせる知的な面白さがある。しかし、別様の解釈があり得るとはいえ、やはりオチが今ひとつだったと思う。トリックに乗ることまでも楽しめれば、最後まで面白く観ることができたのかもしれないが。もっとも、監督がまだ20代の若手であることを思えば、こうしたオチの映画を作る感覚も理解できなくはない。 6点(2003-08-10 21:20:39) |
7. アザーズ
どうも私には、ゴシックホラーというジャンルが肌に合わないみたいです。伝統的な表現で描写される幽霊には、何も感じません。最後の視点の転換があまりにも鮮やかだったので、「月下の恋」よりは高い点数を付けたいと思います。 4点(2003-08-01 21:07:43) |
8. ディーバ
好きな映画は、たいてい「わけのわからない迫力」のあるものなのだが、この「ディーバ」は例外。非常に真っ当な作りである。というより、ほとんど完璧な作品といってもいいのではないだろうか。サスペンスでもあり、ロマンスでもあり、ドタバタコメディでもあり、刑事ドラマでもあり、青春映画でもある。さまざまな要素を詰め込みつつ、一本スジの通ったストーリー展開。緻密に構築された端正な映像。ディーバと主人公との恋にリアリティを感じられるかが評価の分かれ目だと思うが、さすがにそれを感じられない無粋な人はここにはいないようで、嬉しい限り。フランス映画にありがちな、「話のわかりやすさよりも画の美しさを優先する」部分が見られたことだけが減点事由。そこがフランス映画のいいところ、という人もいるとは思うが。 9点(2003-08-01 21:07:29) |
9. ジェヴォーダンの獣
この物語には、いくつか運命の皮肉が含まれてますね。人々のためを思って獣退治をした若侯爵はあんなことになるし、マニに至っては見ての通り。アクションシーンはなくても成り立つ物語であっただけに、もう少しフロンサックが強い理由を明らかにする必要があったという意見には賛成です。ただ、フロンサックはマニより強かったわけじゃなくて、マニが優しすぎたんでしょう。 蛇足:マリアンヌはそこそこ可愛かったと思うのですが・・・ 7点(2003-06-06 22:30:10) |
10. イル・ポスティーノ
詩は人生を変える(こともある)。そんな一見陳腐なテーマを生真面目に取り上げた映画。「ニュー・シネマ・パラダイス」が映像的とすれば、こちらは文学的。淡々としつつ、終盤、静かに盛り上がっていく。この流れがすばらしい。そしてユーモアの込められたシーン・台詞の数々が、この流れの中に控え目ながら散りばめられている。同じような時代を扱った「ニュー・シネマ・・・」と比べても、数等お気に入りです。イタリアでは、当時、良くも悪くも政治の季節だったわけですね。それをドラマのネタにしているだけであって、政治的なメッセージがあるわけではないと思います。 9点(2003-05-02 18:03:31)(良:1票) |