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コメント数 107
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1.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
過去に原作を二回ほど読んでいたにもかかわらず、内容をあまり覚えていなかった。しかし映画を見ながら思い出した。コントロール、ナイフ使いのリッキー・ター。ギラムが若い。年配の男だと思っていた。妻も若くてギャルっぽい。もっと地味でキャリアっぽいタイプを想像していた。カーラは顔が見えないにもかかわらず、ほぼイメージ通りなのが凄い。孤独な学生と元スパイの交流。さりげないヒューマニズムもル・カレの魅力だと思うが、きっちり描かれていて好感が持てる。運転するシーンがいい。そして何と言ってもスマイリーをゲイリーが演じるとは。太っていないスマイリーなどあり得るのか。しかしこれが見事にスマイリーなのだ。お互いに壁の向こう側にいて、顔も見えない相手に対して、策を弄して人生を破滅させようとする。アクションはほとんどない。書類を漁り、証言を集め、過去を一つずつゆっくりと辿っていく。何もかもが地味な作品だが、冷戦時代の諜報戦のリアリティと恐ろしさを、これほど堪能できる作品は他にないだろう。最初から最後までゾクゾクしっ放しでした。続編が超絶楽しみ。
[映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:28:22)
2.  戦場でワルツを 《ネタバレ》 
夜のシーンがいい。色のない世界をこれほどリアルに表現した絵やアニメは初めて見たような気がする。日本のアニメとは、やっぱり動きが違う。技術的なことには無知なのですが、妙なところにリアリティを追及して、逆にアニメ的に見えたりして、アニメ的に大胆なデフォルメをしてしまう日本人とは表現に対する感覚が違うのかなあ、とか思ったりしたのだがどうなんだろう。イスラエル版「地獄の黙示録」といったところだが、まさにイスラエル自体の状況が万年ベトナム的。もう何もかもが狂ってます。絵も、戦争も、人間も、音楽も、ファランヘ党も、イスラエルも、監督も。兵士がライフルでエアギター始めて、そのまま戦闘のダイジェストに突入。機関銃乱射しながらワルツを踊る。「戦車の中だと安心だった」。やっぱり戦場というのは感覚が麻痺してしまうのが怖いんですね。敵性国家に包囲されたシオニズム自体が、まさしくそういう状態。イスラエル映画界からこのような作品が生まれたというのは大変意義深いことだと思います。失われた記憶で引っ張っておいて、オチが「僕はそこにいた」だけでは物足りないような気もしますが、基本ドキュメンタリーだから仕方ないのでしょう。最後の実写は記憶を取り戻したという解釈でいいのかな?イスラエルが、あるいは世界が意識的記憶喪失になっているというメタファーのようにも思える。西岸では今も「入植」が続いているわけだが、その事実を知っている人はどのくらいいるのだろうか。
[映画館(字幕)] 10点(2010-01-06 01:52:56)
3.  ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 2 ルージュ編 《ネタバレ》 
怒涛の展開だったPart1に比べると、さすがに少々ダレます。まあ2本続けて観るには、このくらいの方がいいのか。しかし作品としてはともかく、本人のやってることは相変わらず滅茶苦茶なわけです。脱獄、強盗、誘拐の末に行きついた先は、ジャーナリストの惨殺。民衆が彼に共感したのは、本人の意図かどうかはともかくとして、国家や社会が抱える矛盾を、その類まれなる行動力で明らかにしたからではないかと思う。まあそういう時代でもあったし。しかし結局つまらない自己顕示欲によって、身を滅ぼす結果となったわけだ。犯罪者の末路とは概してこういうものなのだろう。女の子を殺して逃げ回ってる、不細工な小男とは大分格が違うけど。「バーダー・マインホフ」と双子の作品という感じがするのだが、世間の関心はやっぱり「パブリック・エネミー」のようだ。そっち経由で観てくれる人が増えると嬉しいですね。欧州女優の綺麗さも共通している。特にシルヴィアのギャルっぷりが最高です。「私の犬が」って、耳を疑いました。素晴らしい。
[映画館(字幕)] 8点(2009-12-11 01:26:29)
4.  ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 1 ノワール編 《ネタバレ》 
ジャック・メスリーヌ。フランスでは有名らしいが、私はゴルゴ13で名前だけ知っている程度でした。本作は実にハードでガッツのあるクライム・ノワールであり、アルジェリアの亡霊に苛まれ、革命思想が吹き荒れた70年代のフランスを描いた社会派映画でもある。OASはフレデリック・フォーサイス原作「ジャッカルの日」でも有名ですが、同時代を描いている。戦時中の残虐行為が、彼をあらぬ方向へ導いたと示唆されているわけだが、ここまで凄まじい暴走ぶりだと、動機も心理も全く理解の範疇を越えている。劇中でも、裕福な家庭に育ち、威厳のない父親というところまでは描写されているのだが、果たしてそれだけで、どうしてああいう人間が出来上がるものか、どうにもわからない。この辺はボニー&クライドでも、誰でも似たようなものなのだが。暴走と言えば、カッセルがブルース・スプリングスティーンに見えて、気になって仕方がなかった。あとたまにジョン・レノン。あれは意識しているのか。刑務所襲撃のカオスっぷりが最高。ジェラール・ドパルディって、パンフ見るまでわからなかったな。バイオレンスのカタルシス。
[映画館(字幕)] 9点(2009-12-11 01:24:46)
5.  ココ・シャネル(2008) 《ネタバレ》 
何か英語喋ってるなあ、オドレイ老けたなあ、とか思ってたら、「シャネル」違いじゃん。シャーリー・マクレーンじゃん。もう一作まだ公開してないじゃん。何て紛らわしい。現在に回想シーンを混ぜる構成は、なかなか見事。演出もハリウッド的にわかりやすい。しかし、この辺は評価が分かれるかもしれない。なにせファッション映画なので、わかりやすさよりも、より格調高い芸術性を求める方も多いのではないだろうか。と思いきや、私の大好きな超絶スパイ・アクション「アサインメント」の監督さんであった。ちなみに脚本は、ヴィスコンティ映画で有名なベテランの方だそうで、流石に熟練のセリフ回しである。この辺はフランス版と見比べてみるのも一興かもしれないが、どうしようかな。1本観れば充分という感じだが。シャネルと言えども成功するまでは、挫折の繰り返しだった。父親の不在により、自立心を養われたのだろうが、二人の男たちの存在が、彼女の成功に大きく寄与しているのも事実。仕事と結婚の相克は、やっぱり女性の永遠のテーマなんですね。ファッションは人生を変え、時代をも変える。ただブランドもん着てればいいというものではないのだ。しかし先日、日テレでドキュメンタリーを見てしまったので、ネタばれしてるのがイタイ。いやいや、その番組がなければ、多分観ようとは思わなかったろうし、難しいところだ。マクラーレンがすっかり老人でびっくりした。実に優雅でエレガントな作品。男性も、ファッションに興味のない人も、観て損はない。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-28 01:34:50)
6.  バーダー・マインホフ 理想の果てに 《ネタバレ》 
ヌーディストビーチで、小さな女の子たちが駆け回っているシーンから始まる。これ海外で公開できたのか。その後もおっぱいの連続。しかも女優さんたちが皆揃いも揃って美しい。それはともかく、全編通じて異様な熱気、ハイテンションで圧倒されっ放しだ。現在では、彼らが語る革命理論も、空虚でうすら寒く響くが、当時は皆本気で信じていたのであろう。反体制派のアウトローに民衆が魅かれるのは、いつの時代も一緒である。まさに現代版「ボニー&クライド」。メンバーが逮捕されるシーンはもろに「明日に向かって撃て」だ。しかしヨルダンでは軍事訓練を投げ出し、ムスリムの若者たちの前でヌードになる無神経さ。共産主義や革命といったものは、彼らにとっては、暴れるのにいい理由を与えただけなのか。時代が違えば、嬉々としてユダヤ人をいたぶったりしていたのか。あるいは純粋さゆえの暴走なのか。連合赤軍などは、集団心理が何となくエスカレートしたような、何となく日本的なところがあるが、本作の場合は、何でもとことんやる、ゲルマン気質が作用しているような気もする。オウムの事件も記憶に新しい。コミュニズム、宗教ときて、次は何か。ネット右翼はあえなく玉砕したし。テロをやれとは言わないが、今の若者たちも、もう少しはちゃけてもいいのではないかと思う。とかいろいろと考えさせられます。ちょっと実写を使いすぎのような気もするが、とにかく凄い映画です。
[映画館(字幕)] 10点(2009-09-03 22:06:50)
7.  迷子の警察音楽隊 《ネタバレ》 
いい映画であることは間違いない。しかしとことん地味だ。え?もう終わり?というくらいあっけなく終わる。クライマックスに気付かなかった。完全に宣伝に騙されてます。和平条約を調印したとはいえ、イスラエルとエジプトは敵対国家同士である。しかしそのような事実は、劇中では全く触れられていない。映像でも、そこがイスラエルであることを示すものはほぼ皆無。人々も、実にあっさりと敵国人を受け入れている。例えば、実は夫や息子が中東戦争で死んで云々とか、そういったエピソードが出てくることを最後まで期待していたのだが、結局何もなし。ぎこちなく、気まずい空気が全編を覆っているだけである。しかし案外これがリアルなのかもね。恐らくこれは不親切というより、良心的に寡黙と表現しておくべきなのであろう。主人公の隊長さんのごとくに。あるいはミニマルというべきか。まあストーリーはともかく、映像的にはなかなかのスタイリストだし、ワンカットも効果的だ。ジャームッシュとか、ヴィム・ヴェンダースが好きな人なら気に入るのではないだろうか。女主人と若者のエピソードには驚いたが、年輩者が越えられない壁も、血気盛んな若者があっさりと越えてしまうというあたりに、両国の未来が暗示されているのではないか、と私は解釈した。スイカの切り方がいいですね。
[映画館(字幕)] 9点(2008-01-12 02:19:08)
8.  肉体の悪魔(1947) 《ネタバレ》 
夭折の天才、レイモン・ラディゲによる不朽の名作の映像化である。よってあまり期待せずに観たのだが、そのせいかこれが意外にも良かったので驚いた。しかし原作のウリが精緻を極める心理描写で、映像で再現すべく果敢にもチャレンジしていたフシがあるが、やはり限界があるということもよくわかった。ジェラール・フィリップはとても美しく演技も上手いのだが、いかんせん16歳というには微妙である。それでも駄々をこねたりするシーンで、一瞬子供のように見えるのは、流石と言うべきか、やはり問題なのか。私としては、もう少し陰気で怜悧なガキの方が良かったと思う。それでも作品のメインテーマである、戦時中という特殊な状況とか、若さゆえの過ちといった部分は、映像やストーリーのあちこちに巧妙に織り込まれている。レストランで「ワインにコルク臭がする」と、ソムリエにクレームをつけるシーンが微笑ましい。しかし16歳のガキが目の前でこんなこと言い出したら、フツーはワインの瓶でぶん殴るだろうな。まあ恋愛映画という括りで捉えれば、主役の二人もいいし、メロウな雰囲気を充分堪能できる。原作のファンでも、観ておいて損はないであろう。
[映画館(字幕)] 8点(2007-07-13 03:28:06)
9.  クィーン 《ネタバレ》 
有楽町で観たついでに皇居まで足を伸ばしたが、特に見るべきものはなかった。我が国の皇室もこのくらいはちゃけた姿を見せてくれた方が断然面白いのだが、まだまだ先になりそうだ。元々イギリスは市民革命の発祥国であり、王室の存在が、伝統と国民感情の微妙なバランスの上に成り立っているという事実を、改めて思い知らされる。国家と王室の危機を乗り切った、女王と首相の対応は見事と言うべきであろう。逆に保守党の首相であれば、あそこまで世論に迎合した対応はできなかったかもしれない。政治とは摩訶不思議である。この二人に比べて、周囲の人々がボロクソに描かれているのが面白い。女王の孤独と威厳を、あくまでスマートかつハートフルに描いたイギリス映画界(とイギリス人)の心意気は確かに素晴らしい。しかしそれ以上に私としては、毒舌の応酬と、威厳に満ちた野生の鹿を、一転して断頭台の象徴に仕立てあげる、ダークサイド表現に感銘を受けた。最後にレヴューついでに薀蓄を一つ。ラストで女王と首相が歩いているのは、ワデスドン・マナーの庭園で、かつてのロスチャイルド邸である。現在はナショナル・トラストが管理している。
[映画館(字幕)] 9点(2007-07-13 03:26:27)
10.  ロード・オブ・ウォー
意外と地味でシリアスな作品であった。シニカルな脚本、計算されたカメラワーク、抑制された演出はさすが「ガタカ」の監督といったところであろう。乾いたユーモアのセンスが秀逸である。少々薄味な印象もこの人ならではか。現実のエピソードに基づいたストーリーもたいへん面白いが、本作の魅力は何と言ってもニコラス・ケージであろう。黒いスーツにアタッシュケースを携え、世界の戦場を駆け回るケージの姿は最高にクールだ。私も仕事帰りにスーツ姿で観たので、映画館を出る時は「気分はもう戦争」ならぬ「気分はもうケージ」という感じであった。倫理観や政治に左右されずビジネスに徹する冷徹な姿は、黒ずくめの衣装と相俟ってまさに悪魔の化身である。最高にチャーミングな笑顔で、現地の住民たちに銃をばら撒くユーリの最低ぶりが、身につまされる人も多いのではないだろうか?カタギの商売でも結構ヤバイことをやっているものである。ホテルはヤクザが、印刷会社はエロ本が、自動車修理工場は暴走族が、武器商人はリベリア大統領のチンピラ親子がお得意先というわけだ。本作はあくまでAK47に焦点を絞っており、世界のハイテク兵器大集合という感じではない。戦車も戦闘機もエグゾセも登場しない。幸か不幸か世界情勢の裏側よりも、ユーリの不気味かつ魅力的なキャラの方が印象に残る。そのことが、問題の根の深さをより一層浮かび上がらせている。戦争オタクには多少物足りないかもしれないが、普通のビジネスマンが、ビジネスの極意を学び、少々反省し、世界情勢についての基本を学ぶために最高のテキストとなるであろう。まあ落合信彦みたいなものか。
[映画館(字幕)] 8点(2005-12-25 15:13:45)(良:1票)
11.  バイオハザード(2001)
もちろん現代的な要素満載であるが、基本的には「ゾンビ」以来の、正統派王道ゾンビムービーの流れを汲む作品。ゲーム原作という事実を前に、この基本を忘れていたので、改めて納得した次第。ゲームの方は知らないので、比較できないのが残念。元々ゾンビ映画があまり怖くない性質なので、(「ブレインデッド」で大爆笑した)そういう意味では、あまり怖くなかった。おまけにサイバーパンクなセットと、明るく美しい色彩で清潔感さえ漂う映像は、かつてのどろどろで、ぐちゃぐちゃで、アラを隠すのにも大いに役立ったと思われるダークネスとは程遠い。しかし連続する危機、少しずつ解明される謎によって、ストーリーはスピード感と緊迫感を最後まで維持し、キメ細かな演出と力強い演技がさらにそれを増幅することに成功している。画面の人工的な明るさが、逆に密室感を強調しているのかもしれない。地中の密室という設定は、宇宙船に近いですね。ミラ・ジョボヴィッチの体当たり演技は賞賛に値する。アニメCG顔負けの端正な美しさと脚線美。そして何よりもあの強さ。戦闘美少女という奴ですね。このあたりもひじょうに現代的といえるかもしれない。こういう嗜好は日本製アニメゲームカルチャーの鬼っ子といえるでしょう。 
8点(2004-07-22 23:36:53)(良:1票)
12.  スターゲイト
2003年2月の現在では、最高にタイムリーな内容といえる。ヤンキーどもが、砂漠の虐げられた民を、強大な暴君の手から開放する・・・。穿った見方をすればキリがないが・・・。エメリッヒの演出はまだ、というかいつものごとく粗く、悪役のガキは大根だが、一応最後まで飽きずに観れる。まあSFアクションとしては御気楽に楽しめる作品だろう。砂漠でのスペクタクルシーンは見もの。
[DVD(字幕)] 5点(2003-02-11 07:06:33)
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