1. 海を飛ぶ夢
果てしなく広がっていると思った自分の未来が突然絶たれて絶望することもあるだろう。重度の障害を持ってしまったら毎日家族の手を借りなければ出来ない排便の羞恥や屈辱に生きている事さえも疎ましく思うことの連続かも知れない。他人からは荷物のように扱われ無能呼ばわりされたりすることもあるだろう。悲しいことだが世の中には自らの意思で生も死も選択できない状態の人が相当数いる。訪ねてきた人と愛について語らうことも詩を詠むことも出来ない。それでも細胞は残された力を最大限使って生命だけは維持しようとするのに。聞けば動物の中で自ら命を絶つという行いをするのは人間だけらしい。最も「知」を持つはずの人間が動物としては最も愚かな行為に走ってしまう。死のうとする人にどれほどの苦しみがあったのか私には解らないが、強い逆境の中にあっても、或いはどれほど虐げられていようが撥ね退けてもまだ更に花を咲かせようとする程の強靭な生命力を持つのが人間本来の「知」の姿なのであり、そして死のうとする主人公の姿を切々と見せる事により逆に天寿を全うして迎える死こそ素晴らしい最期なのだと再確認させる事がこの作品の狙いだと信じたい。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2006-04-29 01:09:07) |
2. 自由を我等に
社会風刺も自由の意味を問う主題も私には強く響いて来るものがなく、良いという評判を先に知ってから見たので期待が大きくなりすぎてあまり心動かされる物を感じられなかったようです。笑いもなく唯一凄いと思うのはチャップリンの「モダンタイムス」以前にこれが作られていたという事くらいか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2006-03-05 09:40:19) |
3. 永遠と一日
全編を通して恐ろしく長いワンカットと、ゆっくりゆっくり縦横無尽に動くカメラワークに驚かされる。さぞかし役者はタイミングを合わせるのに苦労したことだろう。次々現れるバスの乗客、黄色いコートの3台の自転車、19世紀の詩人など意味は分からないが凝った映像には惹きつけられる。逆に比喩と意訳に富んだ台詞は理解するのが難しく物語がよく分からない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-10-10 15:40:00) |
4. 小さな中国のお針子
苦労して集めた良質の素材を用い、綺麗な器に盛り付けたその料理は残念な事にあまり美味しいとは言えず、総料理長であるダイ・シージエ氏の狙いほどの強いテーマは感じられなかった。中華とフランス料理は違うんですね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-07-23 15:48:19) |
5. バティニョールおじさん
主役は全く冴えない風貌のどこにでも居るような「おじさん」というよりおっちゃん。正義感に燃えるヒーローでもなんでもない。些細なきっかけから子供を匿ってしまったばっかりに、次第に取り返しの付かない大きな嘘に変わっていく様とドタバタ喜劇のようなバティニョールの東奔西走ぶりが面白おかしい。またペーソスあふれる主人公の一喜一憂・喜怒哀楽にしみじみとした生の人間味を感じさせ魅力的に上手く描かれています。隠れる逃げるという程よい緊迫感も加味されてなかなか見応えのある作品です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-07-16 10:12:25) |
6. 過去のない男
台詞や演技よりも画面に映っている絵で物語を理解させる作りは好感が持てる。 みんなタバコ吸い過ぎです。空調の効かない金庫室の中で吸うのだけは遠慮して欲しかった。 過去のない男を何とか拘留しようとする警察に法律を空(そら)で唱えて言い負かす弁護人が一番かっこいい。そして、救世軍の淡谷のり子が毎夜夢に出てきてブルースを切なく歌う。思い出すとまた今夜も眠れない。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-05-15 08:27:55) |
7. ベルリン・天使の詩
冒頭から8割方進んだところまで観ても物語はいつ始まるのかなと感じていた。小難しい言葉を並べて知的に見せてるけど実は大した事を語っていないんじゃないのとしか思えなくてこういう映画を観るとつくづく自分の頭の悪さを思い知らされる。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2005-05-08 10:56:53) |
8. レオン/完全版
ラスト以外はジャン・レノがあまりカッコよくない。ゴルゴ13の様なプロの殺し屋の雰囲気が無くて前半は時々田中邦衛に見えてしまう。行き掛かり上仕方ないとはいえ小娘と一緒に暮らして言われるままに掃除屋の仕事を教えるなんてことは有り得ないし、恋愛感情を弄ばれて過去を吐露する場面は必要ない。殺し屋が小娘とレストランでディナーを食べてるなんてレオンの人物設定を疑う。麻薬取締まり局に乗り込んで人を殺してそのまま待たせたタクシーで去るなんて無茶な脚本を書きすぎている。これ以外の終わり方は考えられないけど、復讐はよくないと言っておきながらきっちりけりをつけてるじゃないか。好きな人ごめんなさい。期待はずれだったのでつい批判ばかりしてしまいました。 6点(2005-03-06 07:53:00)(良:1票) |
9. WATARIDORI
鳥の動きを予測していたかの如くのカメラ位置、逆にカメラに合わせた動きをする鳥たちなど、対自然との千載一遇の一瞬のチャンスを捉えるために何時間も何日間も狙い続けた結果の賜物がこの美しい映像集の醍醐味だと最初は感動の心で魅入っていたのだが、見慣れてくると見せ方に凝りすぎたあまり次第に狙い通りに造られたヤラセ映像なのだと気付く。人間に近づくと鳥達には不幸が訪れるというとってつけたように見えるメッセージは成功していると思う。決してドキュメンタリーとしてではなく渡り鳥を使ってどれだけ斬新で奇抜な絵を作り上げたかを楽しんで鑑賞出来る映画として観るなら10点です。あとこれを観た夜は自分も自由に空を飛んでいる夢を必ず見ます。 8点(2005-02-16 22:35:05) |
10. ひまわり(1970)
生死も分からぬまま探して探しぬいた挙句にやっと見つけたアントニオ。汽車から降りてきたその姿を見た途端何も言わずにその汽車に飛び乗って泣き崩れるジョバンナ。立ちすくむアントニオ、足元に落ちている自分の写真を拾い上げてすべてを悟り、ジョバンナの想いを知る。台詞は全く無い。状況描写だけの絵と誇張の無い自然な演技。僅かこれだけで二人の胸の内に湧き上がる感情を身震いするほどに感じて取れる。素晴らしい。完璧だ。再会の場面では敢えて抱き合うこともせず、こうなってしまったことの怒りをぶつけ罵り合う事も無い。戦争に巻き込まれ、狂わされてしまった不幸な運命を受け入れてお互いを認め合った上で永遠の別離を誓う。素晴らしい脚本の出来と二人の名優の演技力と落ち着いた映像と美しいテーマ曲。それぞれの相乗効果により心に響く感動の名作が生まれた。 10点(2004-12-23 22:48:33)(良:2票) |
11. グッドモーニング・バビロン!
建物や路面電車など二十世紀初頭の撮影所内の様子と雰囲気を再現したのはお見事です。期待して観たんですがどうも背骨とも言える様な中心になるテーマが感じられなくて全体的に散漫な印象でした。なぜいつも自分の方ばかり貧乏くじを引かされるのかと嫌になってしまう気持ちはよく分かるが、仲たがいした二人が敵同士として参加した戦争で偶然にしかも修復した聖堂の前で出会うのはちょっと出来過ぎかな。 5点(2004-11-03 11:27:34) |
12. ミニミニ大作戦(2003)
強奪物としては今までにないほどにテンポが悪く全く冴えない展開に唖然。ハラハラドキドキさせてくれることもなく本当に下手な作りだ。ミニクーパーでのカースタントに期待して見たのにがっかりした。 4点(2004-09-04 15:33:03) |
13. ジョニー・イングリッシュ
良くも悪くも「Mr,ビーン」そのままなので、一連のシリーズが大好きな人にはたまらない作品となるであろう。が、コメディ映画で思いっきり笑おうと期待して見る人には、いつものローワン・アトキンソンの代わり映えしない一人舞台に食い足りない思いを感じさせる。今までは彼に対して他の国より比較的受けが良かったのか、少し日本に向けた笑いを狙っているようだが、同じ目つき、同じ身振りにもうそろそろ飽きてきているので、次の映画は相当難しくなるだろう。 5点(2004-07-25 22:36:16) |
14. ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版
完全版と言うだけあって脚本も書いたトルナトーレ監督の思いがすべて描ききれていたのはこちらの方でしょう。サルバトーレがエレナと会えずに別れてしまうことになった訳も分かるし、またその原因であるアルフレードのとった行動の是非について観客に考えさせることによって、仕事で成功して世に認められる存在になることと愛する者と結ばれることのどちらが悔いのない人生であると思えるかの問いを投げかけられているように感じました。ただしこの映画を観ていて一番気持ちが良いのはトト時代の話で不思議な友情を築いていくアルフレードとの関係や映画に向ける情熱や個性溢れる村の人々の表情を描くそれぞれ小さな宝石のようにきらきらと輝いている逸話の数々で、この前半を中心にまとめられた劇場公開版の評価が高いのは当然かも知れない。 7点(2004-05-04 09:06:34) |
15. ノー・マンズ・ランド(2001)
これほど余韻を残した映画は初めて観た。エンドロールを観ながらしばらく固まってしまった。地雷を背にしたまま助からない恐怖を突きつけて終わるラストシーンの出来の良さで評価が決まった感がある。決して反戦に重きを置いた映画とは言えないが、この戦争を始めたのはお前の国だ、と言い合う場面やお前が刺したから撃つんだというこの二人の人間の論理が、戦っている二つの国の縮図と交錯して見える。戦争状態でなければお互い隣町の住人同士であったのに。遠い国の戦争も生に近い映像を茶の間で見られる事に慣れつつある現在だが、放送局での指示が最前線まで飛び、カメラのレンズが苦悩する兵士の目の前まで迫る様な戦場での報道のあり方に問題提起もしている。観る者の心を揺さぶる素晴らしい映画。 9点(2004-02-29 21:58:36)(良:1票) |
16. 華氏451
映画、ラジオ、テレビ、コンピュータといろいろなメディアや情報源が進歩してきても何千年の間現在まですべての国の人々に手にされている本。本はそれだけで他に何の道具も必要とすることなく電車の中でもベッドの中もいつでも知識と情報を得られる素晴らしい道具。改めて感じることは多い。本が燃やされる場面の度にもったいないと感じた。もう二度と焼かれることが無いようにと口伝えで残していくラストに結びつくのだろうが、本という形で残す事こそこの映画の本意ではないのかと思う。 6点(2004-02-22 18:21:34) |
17. パパってなに?
ロシア語で原題はどんな意味なのでしょうか。パパってなに?この問いの答えが描かれていたかと言えばそうでもないし、これを考えさせようという風にも思えない。どちらかと言えば子供の目から見たおとなの世界の矛盾を描いた映画といえるかも知れない。母親のせいで仮の父親となった泥棒軍人に抵抗しながらもどこかで甘えたい気持ちを持つ主人公の少年が銃でいつかこの父親を撃つのは想像通り。銃を貨車に投げ込むのはなんて頭がいいことでしょう。これも今まで観たロシア映画と同じで暗くて冷たい全体の雰囲気が鑑賞後の疲れを誘います。 4点(2004-02-07 19:54:09) |
18. 黄金の七人
作り方うまいなあ。金の盗み方にはちょっと疑問があるけれど、ハラハラさせる展開は巧み。街中で延べ棒をばら撒いてしまって、けれど手が出せないって言うところが面白い。 8点(2004-01-12 23:02:35) |
19. 戦場のピアニスト
何の躊躇もなく人を撃ち殺していくシーンに心が締め付けられる思いの連続でした。ドイツ人が悪いのではなく戦争状態での狂気が人間を変えてしまったのでしょう。かつて日本も同じ事をしていていたことは若い人たちにも知って欲しい。途中からは逃げ続ける主人公ばかりに目が向けられ、運良くというかあまり苦労せずに周りの人々に助けられて行く姿に嫌悪感を持ちました。事実なんだから仕方ないと言えばそれまでだが、最後にドイツ人将校に見逃してもらう場面は特に。たくさんの賞を獲っていますが高い評価に疑問です。 6点(2004-01-11 12:35:33) |
20. YAMAKASI ヤマカシ
アクションはすごいが絶対見つからないバレない捕まらない展開はやりすぎで終盤に近づくほどに冷めてしまう。 5点(2003-08-24 13:37:42) |