1. メランコリア
《ネタバレ》 冒頭に、堂々と結末が示されているにも拘わらず人間ならば誰もか抱いてしまう一縷の希望という物が、針金のワッカを覗き込むワンカットで見事に打ち砕かれてしまう瞬間が、さりげなく凄いです。 パニックに陥る街の様子なんて一切描かずに、細かな現象の積み重ねで想像させてしまう演出力には感動します。 永年仕えてきたであろう執事のおじさんが突然来なくなってしまう、なんていうのも人々の救いようのない事象を強く暗示していますし、1部と2部で描かれた相反する『絶望』と『調和』が、同じ点に向かって収束してゆくという構成も、とても思惑的です。 これがハッピーエンドと言うならば、こんなシニカルなハッピーエンドは見たことありません。 最も静かで、芸術的な気概に満ちたディザスタームービー。 もう四回見ました。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-09-07 18:00:37)(良:1票) |
2. サイレントヒル
あの「三角頭」はジェイソン、フレディーに匹敵するホラーキャラだと思う。もっと有用に使うべきだった。ゲーム版を知る人には既視感のある作り込まれた映像はうれしいが、ストーリーのオリジナル部分が消化不良気味で、終盤はグダグダになっていた。ラダ・ミッチェルが独り健闘。 [映画館(字幕)] 6点(2006-07-15 12:21:32)(良:1票) |
3. アイス・エイジ
《ネタバレ》 まあ無難な子供向けアニメ。ラストで3頭仲良く歩いて行ってしまうわけだが、あそこはサーベルタイガーが「目的は果たされた。おれは行くが、二度と会わないことを祈るぜ。」ぐらいのセリフをはいてクールに去って行ったほうが作品が締ったんじゃないかなと思った。 5点(2004-09-11 17:40:58) |
4. オール・アバウト・マイ・マザー
世の中という大きな水槽からコップいっぱいの水をすくい採り、中ですいすいと泳ぐ人間達の悲喜こもごもをちょっとの間眺めて見る。 どこにでも人は生きていて、それぞれにはそれぞれの都合があり、よろけたりつまずいたりしながらも、しなやかに粘り強く生きている。 コップの中からのさりげない「あなたもそうでしょ?」という問いかけに、軽くうなずきながら観たりする。 自力で泳ぐ、大人の女性向けに作られた繊細な良作だ。 オカマのアグラードがチャーミングに作品のやりきれなさを中和する。 「みんな、がんばって」と言いたくなる様な、言われている様な、ちょっぴりほろ苦いけれど眼差しの優しい映画だと思った。 7点(2004-03-25 12:21:09) |
5. JFK
オリバー・ストーンの忌わしき60年代に憑り付かれたような演出は今回も冴えわたっている。 まるで機関銃のようなセリフによる情報の洪水と、時折挿入される、見てきたような現場のカットバックにさらされるうち、ストーンの構築した疑惑の銃弾をめぐるジグソーパズルを思わず並べさせられてしまう。 フィクションとドキュメントのせめぎ合いによって抽出された粘度の高い糊がピースの間を埋める。 3時間以上かけて「霧の向こうに浮かび上がる藪の絵」が完成した。 ストーンの気迫と執念がこの作品に異様な輝きを与えている。 この「藪」の向こうにはトラが居るのかウサギが居るのか、何やらブーフーとケモノの息づかいが聞こえてくる。 映画の枠を超えた、言いようの無い余韻がいつまでもビリビリと残る。 9点(2003-12-14 12:42:45) |