1. シック・オブ・マイセルフ
《ネタバレ》 ヒロインに感情移入するかしないか。出来るか出来ないか。それは彼女を著しく社会性を欠いた承認欲求の塊のような人物として見るか、そもそもの弱さ故ではあるかも知れないけれど、どうしようもない男に引っかかって良いように利用されているうちにミュンヒハウゼン症候群を発症してしまった気の毒な女性と見るかによるのではないでしょうか? 特に専門の勉強をしていないので断言してはいけないのかも知れませんが、間違いなく言えるのは彼女は病気だと言うこと。常軌を逸した自己承認欲求と虚言癖にしても、追い詰められた末のことと思えます。勿論自己責任も相当あるのですが。 彼女の周囲には頼れる相手もいたのに、頼らなければならない段階に至った時点では既に彼女の眼にはその存在は映らなくなっていました。同時に、友人であろうと医師であろうと頼ってしまったら彼女は陽の当たらない弱者と確定してしまう。彼女の前からは、他者への依存という選択肢は既に消え去っていたのでしょう。そして、その選択肢に気付いた時には既に独りになってしまった訳ですね。 一度は頼りかけたものの、そこには自分の居場所を見出せず避けてしまった療養施設のドアを、虚飾を捨て去った彼女は再び叩きました。今度は先頭に立って自己発現しようと。自らの力でリスタートしてくれることを望むばかりです。 風景、街並み、人々の暮らし…北欧映画感に溢れたホラータッチのヒューマンドラマ。感情を逆撫でされる胸クソカットも多々ありますが、観終えてみれば決して胸クソ感の残らない佳作でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-03-31 23:45:49)《新規》 |
2. DOGMAN ドッグマン(2023)
《ネタバレ》 見事なダークファンタジー。敢えてファンタジーと呼びたい作品。ダーク版ディズニー作品と言っても良いかも知れません。 犬が賢すぎるとか主人公がどうやって犬たちを養っているのかとか(一応種明かしはありますが)野暮な疑義は呈しません。勿論主人公が犬を操っているなんて間違っても言いやしません。人間社会が失いかけている純粋な連帯感を犬との共同生活の中で確実に得ている主人公。ご都合主義的展開は多々ありますが、決して教訓的にならずに一人の人間の生き様を描き上げた作り手の手腕には脱帽です。 そして出演者(特にケイレブ・ランドリー・ジョーンズさん)の優れた演技は言うまでもなく、犬たちの存在感が半端ないったらありゃしない。なんと表情豊かに語ってくれることか。涙モノです。 主人公の犯罪行為は許されることはないでしょう。それ故、ラストシーンはある意味ベストチョイスに思えます。彼は神の元に召されたのか?まるで「フランダースの犬」の逆バージョンを観たような錯覚。感動的でした。 最後にもうひとこと。犬が犠牲になっていない。「犬は死にません」をキャッチフレーズにしたサメ映画はありますが、犬を犠牲にすることなく感動出来る犬が主役の作品。これは特筆モノです。 [インターネット(字幕)] 9点(2025-03-20 00:12:38)(良:2票) |
3. 蛇の道(2024)
《ネタバレ》 元ネタ未見です。あくまでも本作のみについての感想です。 物語の中心をなす復讐譚を少々トリッキーに語った作品ですね。主軸に力点を置いて装飾は省いたような。まともに考えてしまったら、例えば拉致の方法が杜撰過ぎて、目撃者不在だったりスタンガンの効果が過剰だったり都合よく意識失ってたりとか、クライマックスで武装した相手が戦闘能力ゼロでヘタレ過ぎだったり等々、「んなわけないだろ!」的な曖昧さとか物足りなさが相当数見受けられます。なので、作品世界を楽しむためにはいろいろと目を瞑らなければならないです。そこまでして観るべきかという根本的な問題はありますが。 結局、ヒロインの復讐譚は帰国した夫を始末して完成なんですか?私は最後まで観ててっきりアルベールの件を含めて真犯人はヒロインなのでは?などと思ってしまいました。だって死体にナイフを突き立てる姿とかドライバーを手にした表情とかが鬼気迫り過ぎていて常軌を逸しているような。あくまでも極度の復讐心がなせる業なのかも知れませんが。 それと西島氏の登場。黒沢作品に多数出演している御縁ですか?の如き唐突感が否めませんでした。ヒロインのマインドコントロール的台詞によって死を選んでしまう役処は、彼女の持つ恐ろしさを浮かび上がらせる上で重要だとは思いますが、サイドストーリーとして必要だったかどうか疑問。それもネームバリュー的に釣り合わないようなキャスティングに思えてしまったりして。だから「御縁ですか?」と思ってしまったのですが。 元ネタの邦画作品を観れば様々な疑問は解消されるのかも知れませんが、やはり1本の作品は独自に存在意義や感動を放って欲しいところ。本作だけを見た印象としてはかなりの消化不良でした。柴崎さんの熱演に+1点しても5点献上までかなと。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-02-15 11:49:13) |
4. シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション
《ネタバレ》 漫画原作世代(というにはやや上ですが)としては、確かに原作愛を感じるものの再現性には疑問がありました。ただ、それは当たり前のことであって、いくら日本漫画、日本アニメ大好きなフランス人文化だとしても、そもそもの民族性や歴史に由来する感性が異なる訳ですから、咀嚼・吸収して産み出されたものは別物であって何一つ不思議はありません。そのあたりは、20年前に大ゴケしたジャッキー版と本質的には共通している部分がなきにしもあらずです。(かたや成功、かたや失敗ですが) そんな訳で、キャスティングは勿論、細かなギャグや台詞を始めとする様々な仕掛けに彩られたお色気付きアクションコメディとしては楽しませてもらえましたが、これをもってして「シティーハンター」ですと言われても俄かに受け入れ難いものがありました。タイトルは敢えて変えて「シティーハンターに着想を得た作品」ということにして欲しかった。その部分で-1して、あくまでも「Nicky Larson et le parfum de Cupidon」として5点献上します。願わくば、もっと突き抜けた下ネタコメディ感とシリアスなハードボイルド感の対比を見せて欲しかった。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-02-11 10:31:35) |
5. バクラウ 地図から消された村
《ネタバレ》 なんとも取っ付きにくいと言うか、何を言いたいのか解らずじまいの作品でした。 バクラウというのは架空の村なんですね?どうも脳内では馬喰と変換してしまう。(すいません、オヤジギャグは思いつくと言わずにいられなくなるもんでして) その小さな村が何で水資源の利権を持っている?民兵組織は近隣市の市長と結託して水資源を狙っている?違法行為あるあるの民兵組織なのに何で襲撃はして来ない?村人は市長を受け入れないのに寄付は貰うし娼婦を提供するのは何故?市長が個人的に武装グループを雇ってるということは民兵組織を出し抜いて水の利権を手にしようとしているから?なにもかもが良く解らないままに進んでいく感じ。 よくよく考えたら登場人物も何だかよく解らない。冒頭帰村するテレサはヒロインかと思いきや思いっきり脇役だし、ギャングのルンガの立ち位置もシンプルなようでいてよく解らないワケアリ感に満ちているし。挿入意味不明な全裸シーンとかセックスシーンとか、貧しい村の印象なのにスマホやタブレットや大型テレビの普及率が高かったりとか、全裸夫妻が自動翻訳機使ったりUFO型ドローンが自由に飛び回ったり…あぁ何もかもやっぱり解らんです。 結局、この村は昔から自分たちの身は自分たちで守るんだという高い自立意識のもとに存在していて、守り切る度に記念品を博物館に飾って来たのです。村人にいろんな職業の者がいるけれど善人ばかりです。これからも頑張ります。みたいな物語だったのか…。 何やら1960年代とか70年代の作品的なオープニングからキャスト紹介し始める時代錯誤感と、予告編から受け取れるSFホラー感と言うか不思議感に期待したものの、妙に後味の悪い作品でした。もうちょっと短い尺なら印象変ったかも知れません。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-02-04 10:04:43) |
6. 催眠術師の家で
《ネタバレ》 言って見れば120年以上前の実験映画、といったところでしょうか。スクリーン上の人物が動くこと自体が一般民衆にすれば驚異だった時代に、催眠術にかけられた女性が瞬時に着替えて行くなどということは、今で言えばイリュージョン、つまりは何らかのタネがあるマジック、なのでしょうけれど、当時の人々の目には魔法以外の何物でもなかったことでしょう。 もしアリス・ギイさんが現代のCGアニメや特殊効果を目にしたら…きっと驚く間もなく「これはどうやって撮っているの?」と探求し始めることでしょうね。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-01-07 15:37:55) |
7. 彼女のいない部屋
《ネタバレ》 レビュー冒頭からネタバレします! これは感想を述べるのが簡単なようでいて難しい作品。簡単というのは、結構アッサリ纏められてしまうから。要は、幸せな生活の中に、否、幸せな生活だからこそ抱いてしまった不満によって家出的な外出をしてしまったものの、一緒に旅行に出発しなかったばかりに家族と死に別れてしまうという物語。そして彼女はその悲しみを断ち切り、家族との思い出の家を出て新たな人生を歩むのだった。そんな感じです。 難しいというのは、現在と過去、それも複数の過去という時系列が複雑に行き来し、更に主人公の空想というか妄想というか脳内イメージが重なり合っていて、それを書こうとするとレビューというより説明になってしまいそうなこと。構成の妙です。 愛娘と主人公を繋ぐピアノが一つのキーになっていますね。冒頭のシーンで主人公がクルマのキーを鍵盤に落として鳴ってしまう音。この音階が全編通じて登場します。それぞれのシーンを繋いでいる音ですね。短音のみならず楽曲も効果的に登場します。演出の妙です。 二回観ました。物語の全容を知ってから観直すとより味わい深い作品でした。8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-12-03 18:43:36) |
8. ペトルーニャに祝福を
《ネタバレ》 ヒロインは理想や夢を大切に生きたいが故に世の中のレールからはみ出してしまった女性。そんな彼女に世間は冷たい。しかもその急先鋒は母親。父親は彼女を擁護するが、彼自身の家庭内のみならず世間での立場も弱く庇護者としては心もとない。同性の親友はいるものの本当の意味での彼女の理解者とは言えない。まさに四面楚歌。しかも、本人は甘んじてその状況を受け入れてしまっている。すっかり斜に構えるスタンスを身に着けながら。 こんな状況に自ら追い打ちをかける女人禁制の宗教儀式への乱入。当初は彼女の心の中にはその儀式が男たちだけのものであることへの反発はなかったと思われます。がしかし、批判され追及され挙句断罪されれば彼女の闘争心にはここぞとばかりに火が付いてしまう。事態は悪化の一途を辿るばかり。 正直なところ、このあたりまではヒロインのことをどうにも好きになれない。普通にしてれば(普通って何だ?)少々太目なだけでそこそこ美貌とも思われるし、好きな歴史を大学でしっかり学んだ知性派でもある。なのに何でそんなに斜に構える?母親や世間に背を向ける?元々個人的には、女人禁制の伝統行事があったとしても長きに亘って育てられ守られ築き上げられて来た文化なのだから時代が変わったという理由で否定や破壊はすべきでない、というのが持論ということもあり、どうにも好きになれない人物でした。連行されて当たり前だろ!みたいに。 ただ、観ていく中で彼女の内なる葛藤が次第に沁みて来て、父親の素朴な理解や司祭の宗教観に基いた理解が得られたあたりからは彼女を否定することへの虚しさを感じ始め、ラストシーンで十字架を司祭に返し晴れ晴れとした表情で帰路につくその後ろ姿にそれまでの反感に後ろめたさを感じつつ観終えました。 彼女が半裸で十字架を胸に抱くポスターは、本作の宗教性を強調してしまうようで如何かなと思えます。キリストの受難(詳しくないのであまり言及は出来ませんが)にあらぬ差別を被る彼女の姿を重ね合わすという観方も出来るのかも知れませんし、女性差別への批判や女性の地位向上みたいな視点で観ることも出来るのかも知れませんが、ひとりの人間の成長の物語として鑑賞しての7点献上です。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-11-15 09:41:47) |
9. 落下の解剖学
《ネタバレ》 他にもご意見がありますとおり、私も予告編を見てサスペンス、あるいはミステリーの佳作と思って期待していました。もっともカンヌのパルムドールというところでそりゃ違うなという予感も並走していましたが。 夫の謎の転落死に係る法廷劇を中心に語られる本作。本作だけ見てフランスの法廷はなんと無秩序?!と決めつけてはいけないと解っていても、一歩間違えばコメディになりかねない揚げ足取りと口喧嘩の応酬。それはそれで楽しめましたが、次第に何だかドロドロの離婚裁判みたいな感じで夫が転落死していることが蚊帳の外みたくなってしまう瞬間まであったりして。録音データと再現フィルム?の場面の緊迫感には凄まじいものがありましたけれど。 結局、これまた既にご意見がありますが、「羅生門」の如く登場人物によって異なる見解が語られ、フランス語と英語が入り混じる中でのコミュニケーション不全も挿し込まれ、敢えて歪な演出と展開(大人と子どもの逆転と言うか、もっとも俯瞰、達観していたのは飼い犬と言うか)をもって語られる家族の日常と非日常を描いたヒューマンドラマといった印象でした。 奥さんの浮気相手は同性。冒頭登場する取材者とのやり取りも同性愛的な雰囲気が込められている。その設定って必要だったんだろうか?交通事故で息子が背負った視覚障害という設定って必要だったんだろうか?そのあたりを挿し込むことによる長尺化って必要だったんだろうか?いろいろと疑問もあり、控えめに6点献上としておきます。 追記1 作品中ダニエルが奏でる「アストゥリアス」は、個人的にはギターアレンジとして大好きな楽曲。ダニエルの心情を表現するのに効果的に使われていて好印象でした。エンディングのピアノ曲も然り。冒頭、夫が鳴らしている大音量の楽曲もまた然り。音楽性については秀逸と思いました。 追記2 スヌープがアスピリンを与えられて仮死状態の如くなっているシーン。どうやって撮影したのか?かなり演技力の高いワンちゃんだとは思いつつ、あの目の演技までは無理なのでは?と思うと痛々しくて堪らなかったです。目はCG? [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-18 09:40:10) |
10. ガンパウダー・ミルクシェイク
《ネタバレ》 これはハマりました。個人的にはコメディとして鑑賞。だって強過ぎるし殺し過ぎるしお約束の大行列だし。理屈は要らないですね。楽しけりゃいい!という作品でした。 ストーリーはストーリーと呼ぶべきなのか微妙なぐらい意外性なし。何回観ただろうかと思えてしまうぐらいの鉄板的物語。ただし、随所に盛り込まれている小ネタや小技やウィットに富んだ掛け合い。アイディア満載の演出にはただただ納得。 登場する女性たちの個性際立つ魅力からは目が離せないし、都合の良い時だけ子役的に使われてる子役の魅力も最高。要塞的図書館の中では飛び道具を手放して戦いつつ、最終決戦では只管ぶっ放すばかりの戦法なんて無茶苦茶過ぎてもう堪りません。マデリンは死なせないで欲しかったけど。 ラスト。サムはネイサンを撃つ気はなかったんだろうな。どうのこうの言っても運命共同体と言うか腐れ縁と言うか。脅しのようでいて脅しになっていないような台詞。 兎にも角にも手放しで楽しめたので満点!と言いたいところですが、自分のレビューの過去満点献上作品とのバランスなんてことを気にしてしまい、優柔不断ながら9点献上します。あ~面白かった♪ [インターネット(字幕)] 9点(2024-08-23 11:19:22)(良:1票) |
11. バッド・デイ・ドライブ
《ネタバレ》 元ネタ及び英語版以外のリメイク版は未見です。 運転するクルマに爆弾を仕掛けられて脅迫を受ける、という設定自体は目新しいものではありませんが、特に恨まれるような覚えもなく(正確には覚えがあり過ぎて判らなくなってる?)、同僚を目前で爆死させられ、しかも後席には愛する子どもたちが同乗していて自分と運命をともにさせられているという緊迫した状態は、特に派手なカーアクションもないにも関わらずなかなかに見応えのあるものでした。(少なからずリーアムさん贔屓ということもあったりしますが) ただ、何にしても犯人にとって都合良く事態が進み過ぎたり(あらゆる事態にも対応可能なように準備して来たとか言っちゃってますが)、警察の動きも都合良過ぎたり(包囲網簡単に突破、大量のスナイパーが無力、ラストでは追跡さえしない?ヘリどこ行った?等々)、そしてミステリーサスペンスなのに真犯人が結構判りやすかったりと、脚本的には粗が目立つと言うか非現実的過ぎるというか。家族の絆的な部分も基本的な家族関係とかが殆ど説明されていないので感情移入は難しいところ。あと、ヘザーやユーロポールの捜査官の電話の声が妙に平板なのが気になりました。 エンタメ的に割り切れば退屈せずに楽しめる作品。深く考えると興覚めしてしまう作品。といった印象でした。古希を過ぎてもまだまだ若々しいリーアムさんに+1点の7点献上します。 ちなみに、邦題はミスリード目的のような原題よりは良いかも知れませんが、カーアクションが目立つ作品でもないので今ひとつかなと。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-09 10:33:48) |
12. セーヌ川の水面の下に
《ネタバレ》 フランス版サメ映画です。ヒロインを始めとする登場人物の行動には只管「?」ばかりで感情移入は困難ですし、よくよく考えれば非現実的で不合理、科学的に語っているようで非科学的、そんな展開ばかりですが、正直なところエンタメ作品として大いに楽しめました。 サメ映画に求められる?笑える要素は登場しません。只管マジに作られています。アメリカ発の(B級或いはZ級の)サメ映画とは随分違いますね。相当トンデモない話なのに意外なほど緊迫感があって、「んな訳ないだろ!」と笑い飛ばす感じではないです。 どんなジャンルの作品でもお国柄というのを感じることは多々あります。本作ではサメ映画としてそれを感じた次第です。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-06-29 18:52:30) |
13. ヴィーガンズ・ハム
《ネタバレ》 なんとも微妙な味付け。イラン豚は多分こんな味?食べたくはありませんが。 アイディアは決して斬新ではないです。なのでアレンジで魅せて欲しいところ。でも、全体的にコメディ感は薄いですね。ヒューマンドラマ的エッセンスを効かせようとしたところが逆にチグハグな感じになってしまったと言うか。 コメディならコメディでもっと笑わせて欲しかった。このあたりがフレンチコメディらしさなのかも知れませんが、もっと豪快にやらかして欲しかったところです。 キャラ設定にしてもグロさにしても不完全燃焼(いや、別に個人的にはグロさは求めていませんし)。なんとも中途半端にエンディング(そのエンディングにも強制着地感がありますし)。ということで今ひとつ納得いかず4点献上です。 ちなみに、ヴィーガンだからって脂肪感たっぷりなビジュアルの人間じゃ全然美味しそうに見えませんから。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-05-24 18:40:01)(良:1票) |
14. エスター
《ネタバレ》 観よう観ようと思いつつも微妙な尺の作品なので、鑑賞作品(ホラー系)を選ぶ度に手頃な尺の作品を観てしまっていた私。それもこれも本作が「ホラー」であると認識していたからで、今回やっと意を決して?観てみれば一番の感想は「ホラーじゃないじゃん!」でした。確かにWikiとかでホラーの定義を参照すれば本作は紛れもないホラー映画なんでしょうけれど、あくまでも個人的カテゴライズでは「サイコサスペンス」なんです。もっとも、「ホラー」「サスペンス」「スリラー」の境界なんてものは元々無いに等しいような気もしますが。 などと意味のない拘りで書き始めてしまいましたが、「ホラーじゃないじゃん!」の趣旨は「恐くないじゃん!」でして、それは決して「つまらないじゃん!」ではありません。実に楽しく鑑賞出来ました。これだけの有名作ながらネタバレ記事を回避し続けて来たことも功を奏したようで、肝心要の種明かしは今回の鑑賞で初見でした。 斬新なアイディアとは言えないでしょう。しかし、それを巧みに包み隠しつつしっかり伏線は張る。そして見事にその演出を生かし切ったイザベルさんの怪演。称賛されて然るべき出来栄えだと思います。 子どもの持つコワさを見せつつ、実は本当にコワいのは大人というお話。登場する子どもたちは皆子ども然としています。子どものコワさは無邪気にも通じるある種の清らかさであって、大人の濁り切って垢まみれのコワさとは本質的に違うもの。エスターのコワさが子どものソレから大人のソレに転じる流れが素晴らしかった。 少々しつこいような演出や多くの皆さんが指摘しているラストシーンの良し悪し等々、気になるところは少なからずありますが、約2時間飽きることなく楽しませてくれた作品にほぼ8点の7点献上します。 ちなみに、少々変化球気味の原題よりもさりげない邦題の方が良いかと思います。原題は、せめて不定冠詞を付けて欲しいところです。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-05-13 11:24:27)(良:2票) |
15. ニュー・シネマ・パラダイス
《ネタバレ》 とある事情でBS放送のインターナショナル版を録画していたものを再見。レビューしていなかったので遅ればせながら書かせていただきます。 感動の名作としてあまりにも有名な本作。イタリア映画らしいコミカルな演出(下ネタ含む)が苦手な方には、決して感動の名作とは映らないかも知れません。かく言う私も、本作を観て無条件に涙を堪えられないほどの感動を得たことはないような気がします。 ただ、それでも涙ぐまずにはいられない本作。それは何よりも、モリコーネという偉大な作曲家の織り成す音楽がもたらす感動であると信じて疑わない私です。 勿論、映像あってこそ、脚本あってこそ、名演あってこそ生きる映画音楽であることは間違いありませんが、本作に限っては全編に自然に染み渡るモリコーネの作品あってこその感動作なのだと思っています。 その上で、コミカルな演出を楽しむも良し、切ない友情や恋愛に感情移入するも良し、登場する古の名作・名優を楽しむも良し、映画鑑賞に伴う様々な楽しさを満喫することが出来るのかなと思って止みません。 不世出の名作として、名作と呼ばれるべき作品のひとつの在り方を魅せてくれた貴重な一本に満点献上します。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2024-04-22 20:46:54)(良:1票) |
16. PLAN 75
《ネタバレ》 少子高齢化で社会保障制度が破綻した国家が「PLAN75」という窮余の一策によって問題の解決を図る、というシナリオは、斬新とは言わないまでも近未来SFのひとつのアイディアとして「今の時代だからこそ」生きて来る設定と言えないことはないと思います。ただ、(元の短編作品は未観賞ですが)長編作品としての掘り下げ方はもう少し何かあったのではないかと思えてしまいました。 登場人物は老いも若きも日本人も外国人もそれぞれに悩み疲弊し、眼前に迫る課題に対しての何らか答えを見つけようと煩悶する。やや削ぎ落した感のあるエピソードではあるものの、主演の倍賞さんは勿論のこと出演者の好演に支えられ、重過ぎず軽過ぎず観る者に(一人ひとりの今のライフスタイルや年齢に応じて)現実味をもって迫ってくるものを感じました。倍賞さん演じるところの主人公の最期の選択には、単に尊厳死を否定することだけではなく、それでは老いても生きることにおける希望とは何か、ということを考えさせられました。 にも関わらず何か絵空事のようにも感じてしまう。その理由のひとつには、「PLAN75」が(もし現実化するのであれば)今まさに必要な施策であって、いつだか分からない未来将来の話だとすれば実効性の低い施策にしか思えず(放っておいても近未来には人口ピラミッドは推移するので)、同時に対象年齢の者にとっては、仮令漠然としたものであっても「死」を現実のものとして受け止めてでもいない限り、さして喫緊の課題にはならないだろうと思えてしまうということがあります。 端的に言わせていただくのならば、興味深いけれども今ひとつ我が身のこととは思えず感情移入しにくいということかも知れません。年齢的には十分片足突っ込んでいる私ですが。 真面目に現代の社会問題を捉えた作品であることは間違いないとは思いますが、何か釈然としない思いが残り6点献上に留めたいと思います。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-04-18 10:12:34)(良:1票) |
17. ニューオーダー
《ネタバレ》 メキシコ人の監督が自国の現状と未来将来を憂いて作り出した作品とのことですが、近未来SF的と言うよりも寧ろモキュメンタリ―的な出来栄えといった印象を受けました。世界中のどこかで今まさに起きている凄惨な出来事を淡々と描いているように。 軍事クーデターであれ、侵略戦争であれ、民族紛争であれ、宗教上の対立であれ、平和な我が国で平和な日々を過ごしていれば全く現実味のない話に受け取れてしまうかも知れません。と言うより、こんなことが現実にあってはいけない、仮令現実であっても見たくない、目を背けたい、そんな物語なのかも知れません。兎に角後味が悪い。それは心のどこかで現実味をひしひしと感じている証拠かもしれません。 人の命はこんなにも軽いのだろうか。認めたくはありませんが、時と場所によってはそうなのでしょう。ここに描かれている大富豪や政界や軍部の上層部たち。彼らの命も同じく軽い。次の瞬間には後ろから撃ち抜かれるのかも知れない。いいように利用されては殺されて行くデモ隊や下っ端兵士、そして市民のように。 ある意味、優れた作品だと思います。しかしながら、何とも嫌な作品を観てしまったというのが正直な感想です。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-04-16 12:26:34) |
18. The Son/息子
《ネタバレ》 両親の離婚が一つの引き金になっているのかも知れませんが、現状に失望し将来に何一つ希望を持てなくなってしまった17歳の息子。自らの経験もあって旧態依然とした親子関係、父親のあるべき姿、息子のあるべき姿に捉われ続けることしか出来ない父親。只管に息子を溺愛することこそが母の愛と信じる母親…。 キャラクター設定はとことんベタです。ですから、その登場人物たちが織りなす親子のそして夫婦の愛憎劇もベタです。大いに既視感があり、特に斬新なドラマとは言い難い作品です。 なので、俳優陣の熱演が楽しめる良作(いろいろ言いつつも2時間超集中して鑑賞していました)とは思いつつも、殆ど感情移入出来ずに(反論する意味で逆に感情移入していたのかも知れませんが)終わってしまいました。ラスト近くの出来事も、その後父親の見る幻影も想定内、と言うかある意味予定調和的に受け止めてしまい、物語の落としどころ的にそれで良いのか?という疑問が残りました。ラストシーンも然りです。 前妻から主人公を奪い取った?今の妻の視点がもう少し欲しかったかなと思います。登場人物中(したたかささえ感じるぐらいに)最も冷静に3人の関係を観察していた人物。ラストシーンではすっかり傷付いているであろう前妻は姿を見せず、今の妻だけがクローズアップされます。その彼女の姿が、仕草が、言葉が意味するものは、果たしてこの物語を締めくくれるものなのでしょうか?ただただ疑問でした。 監督の前作が素晴らしかっただけに残念でした。「家族三部作」の残る一作の映画化に期待したいと思います。 ちなみに、私もドラム式洗濯機が一度ならず登場したことに若干の恐ろしさを感じていました。ホラーじゃないんだから大丈夫、と思いつつも杞憂で良かった。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-03-25 13:24:18) |
19. バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー
《ネタバレ》 観るべきかどうか大いに逡巡しつつも観てしまいました。が、思わぬ収穫。実に楽しい時間を過ごせました。 アマプラでは「G」となっていますが、幼きお子様と見るのは忍びない下ネタ満載のフレンチギャグ。てか、結構イギリス風だったりアメリカ風だったり、完全にフレンチとも言い切れない笑いのツボ。いずれにしても不謹慎な不道徳ネタ(トム・クルーズネタとか幼児ネタとか)も含め、個人的には大いにハマりました。 セドリック役の俳優さんが実は意外な程イケメンでマッチョだったり、妹役と恋人役の女優さんがとっても魅力的だったり、少々イカレタ親友たちや、セドリックのお父さん役、親友のお母さん役、大御所俳優役と、登場人物も大いに魅力的ですね。 恐いもの見たさで観た作品でしたが、思わぬ佳作に出逢えました。フレンチコメディ好きの方に加え、レスリー・ニールセンさんとかマイク・マイヤーズさんのお馬鹿作品がお好きな方にもお薦め出来るかも。甘めの8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-01-08 11:33:26) |
20. コマンドーニンジャ
《ネタバレ》 ストーリー的には極めてシンプル。言い換えれば結構雑ですし、ところどころにコメディ風味を盛り込んだ脚本ではあるものの、決して笑えるものではありません。苦笑はしましたが。 がしかし、「コマンド―」「プレデター」「バックトゥザフューチャー」「ミュータント・タートルズ」「マッドマックス」などなどをパロディ的に盛り込み、クレジットやテーマソング、それにセットや小物にも、作り手が相当拘っていることは十分に伝わりました。冒頭にいきなりサービスカットを入れてみたり、殺害シーンでは必要以上にグロさを盛り込んだり、作り手が思う存分遊び心を注ぎ込んで好き放題作ったということは理解出来ます。 つまりは、作り手の嗜好にピッタリ嵌れる者だけが楽しめる作品。観る者を大いに選ぶ作品です。私の場合は完全には乗れなかったです。鑑賞後の第一声は、申し訳ありませんが「ヒデエなコレ」でした。 と言う訳で、もしかしたらツボにハマって大爆笑する人もいるかもとの思いから4点献上します。(「意外と面白くない。全然期待しないで行くとひょっとしたらひょっとする。」) [インターネット(字幕)] 4点(2023-12-11 11:33:37) |