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コメント数 348
性別 男性
自己紹介 「昔は良かった」という懐古主義ではなく
「良い映画は時代を超越する」事を伝えたく、
 昔の映画を中心にレビューを書いてます。

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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  嘆きのテレーズ 《ネタバレ》 
「良い脚本(脚色)と脇役によってサスペンス映画はより良くなる」事を教えてくれるフランスサスペンス映画の古典。人間の業を深く描いた文豪ゾラの原作は上下2巻の長丁場なんだけど、不倫の恋から生じた犯罪計画の破綻というサスペンスに重点を置いた脚色(合わせて原作には出てこない水兵の存在)が上手い。またこの度何十年ぶりかの鑑賞だったんだけど、主演の男女二人以上に、脇を固める役者陣がビジュアル的要素も相まって演技が上手すぎ。特に「目が口ほどにものを言いまくり」な主人公の継母を演じたシルヴィ・アルコーヴェのインパクトが凄く心臓に悪すぎる。暴力行為を示さずとも観客に緊張感を味合わせる手法として、古典的かもしれないが今の映画も踏襲してゆくべき要素でありますよね。予定調和的因果応報なラストだけが玉に瑕なんでこの点数なんだけど好きな一本。機会が有ればまずは30分我慢して鑑賞くださいませ。
[ビデオ(字幕)] 8点(2024-05-26 15:58:22)
2.  暗殺の森 《ネタバレ》 
監督の伝えたい事を念頭におきつつ、台詞からではなく 「映像上の隠された比喩や引用から意図を想像する」 そんな映画の楽しみ方を伝えてくれたという点で印象的な1本。  原題「体制順応主義者」とは主人公マルチェロその人を指すだけでなく、 イタリアのファシズム政権を誕生させてしまった数多くのマルチェロ =社会に無関心・無責任な大衆への糾弾を伝えたかったのではないか。 年少期の出来事が影響したとはいえ信念の欠けた、未熟な生き方を 続けてきた男は(落語で言う「でも医者」ならぬ)「でもファシスト」。 反体制を主張する恩師の調査追跡によって感じたのは自身の生き方とは 真逆の、「人権を声高に主張し自由に生きている」人間の姿。  女性二人のタンゴ。平凡な生活を余儀なくされていた婚約者が 恩師の若い妻と踊るそのシーンは、女性としての真の生き方ってのか 心身の解放を教授してもらうというシーン、だと思ってる。  人間らしい生き方に触れたにも関わらず、全く動かない主人公。 恩師を暗殺する段になっても、その対応を同僚になじられる。 大勢の暗殺者によってナイフでめった刺しにされる恩師の様は 「無責任な大衆によって少数の良心は潰される」様を見ている様で 痛々しい。一度は気にかけた恩師の妻が惨殺されてゆく様子を ただ車窓から見ているだけ。無関心が悲劇を増大させる。  でそんな情景を映し出す映像美。巨匠ヴィットリオ・ストラーロ30才。 青・赤・白を多用した色彩は主人公のフランス旅行に結びつくだけで 無く、国旗:トリコロールにも関連付けられてるとは今回知った事実。 青:自由/白:博愛/赤は平等なんだけど、どちらかというと暴力に よる流血と合わせて、「血の色は同じなのに考えが異なる多様性」 を明示した隠喩と思っている。あと光と影の使い方。「カラヴァッジオ (イタリアバロック絵画の巨匠)を参考にした」との事だが、絶対これ エドワード・ヤン、影響受けてんだろ。「牯嶺街少年殺人事件(’91)」  ラスト、主人公夫婦にとってあのフランス旅行の喜びは一過性 でしかなかった事に愕然とさせられる。そしてファシスト政権の 崩壊と同時に目撃した出来事。何もかも失ってしまった主人公 はどう感じたか。「おまえら全員ファシストだ」  自分は無責任な傍観者になってないか? 映画館を後にする自分にも、その声は響いてるのだ。 長文失礼しました。
[映画館(字幕)] 9点(2023-11-06 20:52:08)
3.  愛のコリーダ 《ネタバレ》 
吉蔵演じる藤竜也にレビュー点数全振り。  70年代の修正版リバイバル→2000年完全ノーカット版 →2009年クライテリオン版無修正ブルーレイ→2021年2Kリマスター、が私の鑑賞履歴。 因みに無修正度は丸見え順に無修正ブルーレイ>2021年リマスター>2000年>修正版。  この映画の困った点はあまりにも性器のクロースアップ・性交描写が露骨過ぎるので どんなに大島監督が芸術作品である、とうたっても、周りからは「わいせつじゃん、これ」 と片づけられてしまう事+性描写に尽力注ぎ過ぎで肝心のストーリーが薄い、という事にある。 阿部定事件を描いた作品としては前年に制作された監督田中登/主演宮下順子の 「実録・阿部定('75)」の方が事件の背景・心情もわかりやすい。  ただ私はこの作品、「性愛の行く末」を描いた映画として当時の世界映画史上 徹底的にやり切ったという点に評価をしてあげたいし、何よりも藤竜也のキャラクター に尽きる一本だと思う。「女からの狂おしい愛情を受け止め、死に至るまで付き合う」 という概念は当時の男尊女卑の風潮から考えたら有り得ないだろう感覚で、 『この出演依頼から「逃げちゃいけない」と思った』という藤竜也の想いがちゃんと 表れている事に(実際、彼はこの映画出演により所属事務所を退社し、 約2年間、映画界から締め出される=休業)感心しつつこの点数。  個人的には大島監督の小難しい主張が炸裂する「日本の夜と霧('60)」、 「絞首刑(’68)」「儀式(’71)」よりは好き。機会があれば、と言いたいけど 兎に角露骨でございますので、その点はどうぞご勘弁。
[映画館(邦画)] 7点(2022-06-22 13:21:54)
4.  湖のランスロ 《ネタバレ》 
過度な演出(プロの俳優を使用しない/ストーリーの盛り上がり)を排除し、 最小限の映像表現で世界中の映画ファンから注目されてきた監督ブレッソン。 私も好きな監督の一人として、この度初の劇場公開となる (特集という形での単回上映・ソフト化は過去に実施済)この機会に鑑賞。  ただ率直に言うと、彼の諸作品(例えば「バルタザールどこへ行く(’66)」「ラルジャン(’83)」) と同等のレベルを期待してしまうとちょっと肩透かし、って感じ。 私は彼の作品のテーマとして(キリスト教の教義における)「罪と罰」という点が 個人的に重要なのではないかな、と思っているのですが、遵守すべき「中世の騎士道精神」 という概念が日本人にはわかりづらいし、何より(「演じる」事を排除した結果とは思うが) 登場人物が甲冑を着ている事で表情が窺えない分、スクリーンの人物に感情移入しづらい。 そういった点で彼の作歴上、ある意味失敗作なのではないかな、と。  但この点数にしているのは映画館で鑑賞した分、甘くなってるのですが ①画面の使い方(特に足元を映し出したクロースアップの多用がインパクト有り) ⓶最大の功労ポイントは、「音」。 ブレッソン中級者向けの一本ですがどうぞこの機会に映画館で。
[映画館(字幕)] 7点(2022-03-24 18:09:50)
5.  柔らかい肌 《ネタバレ》 
点数を8点にしたが、私が一番好きなトリュフォー作品はこれ。 というと、たいていの映画ファンからは「あれがぁ?」というリアクションをされる。 だいたいこの映画、レビュアー様の評価もまちまちだし。 フランス本国では不評だった、らしいし。  わからなくはない。不倫を題材にした映画で、尚且つ 「柔らかい肌=若い女性の魅力に溺れる」中年男性の不徳と不実を これでもかと描写した挙句の顛末を描いてるんだから不快にはなりますな。 (そんな意味では主人公ピエールを演じたジャン・ドサイの演技は良い)  私がこの映画が好きなのは監督トリュフォーが敬愛するヒッチコック等の巨匠の 撮影テクニックに触発された上で、「日常での最もスリルある行為=背徳の恋」を 映画的な効果でストーリー化しようとした試みが自分の琴線に触れたわけだ。  冒頭の手の絡み合いから始まるショットからラスト、夫に制裁を加えるべく 移動する車の不安定な動き~銃声。あからさまな裸や性描写を駆使 しなくとも、官能を表現する事は可能だし、感情を表現するのに表情を 映すのではなく、動作やフィルムに映し出された陰影でちゃんと表す事が 出来る、という点で面白い映画だと思う。 なので撮影:ラウール・クタール(ヌーベルヴァーグを支えた名カメラマン/後監督)、 音楽:ジョルジュ・ドルリューもいい仕事してる。 あとはフランソワーズ・ドルレアックを一番美しく捉えた映画として。  「定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー(晶文社)」を読んだ上で、 この題材に問題なければおすすめ、って結構高いハードルだなぁ。
[映画館(字幕)] 8点(2021-08-04 18:52:04)
6.  男と女 人生最良の日々 《ネタバレ》 
ジャン・ルイ・トランティニアンも良いが、アヌーク・エーメ(この時87才)に尽きる。 14歳で映画デビュー。「火の接吻(’48)」「恋ざんげ(’51)」「モンパルナスの灯(’58)」「甘い生活(’60)」、 そして「男と女(’66)」での演技は素晴らしかった。それから53年が経った2019年の続編。  「男と女」のラストシーンでは二人が結ばれる事を示唆して終わったあの後、 結局二人は結ばれる事なく(男が女から姿を消すことで)年月が経ってしまった事が窺われる。 男は老人ホームで昔の記憶が曖昧なまま。心配した男の息子は艶福家だった 彼の心に残っている唯一の女性を探し求め、再び会って欲しい旨を伝える。  作中では前作「男と女」のシーンが度々挿入され、彼らの記憶にあの輝かしい日々がよみがえる。 ただこの作品が良いのは彼らが老いらくの恋に引きずられる訳ではなく、「同じ時間を 過ごしてきた同士」として経験を糧にし、より人生において素晴らしい日々を過ごしていきたいと 感じているというか考えさせられるその演技、特にアヌーク・エーメの「眼差し」が素晴らしい。 実生活でも彼女自身恋多き女であった分、その想いはひとしおのはず。  フランス映画の歴史と文化あってのこの作品、邦画では全く出来ないモンだ。 本当に羨ましい。まずは名作「男と女(’66)」を見てから、機会があれば。  追記 (2024年6月) 結果的にこの作品が主演二人の遺作となったわけだけど、 この作品が遺作で本当に良かった、と思う。二人のご冥福をお祈りします。
[DVD(字幕)] 8点(2021-04-27 11:51:48)(良:1票)
7.  冒険者たち(1967) 《ネタバレ》 
鑑賞年齢によって印象が変わる作品。初見時10代後半~20代だった自分は幸せだった。おっさんになった今再見してみて感じたのはヒロインが海中に埋葬されたシーン(映画史に残る名シーン!)より後半、残された男2人が自分達の青春に折り合いをつけて生きてゆく情景・シーンの方がはるかにインパクトが有ったという点。特にリノ・ヴァンチュラが要塞島の近くに住居を構え、地元の子供に彼の趣味であった自動車エンジンの話をしているシーンは演技を越えた何かを感じる。マイナス点は唐突に表れる強盗団の存在だが、今ではそれすら「人生に起こりうる突然の不幸や暗い影」を表すメタファーだったのではないかと勝手に解釈している。そして最後に強調したいのだが、ヒロインがアラン・ドロンではなくリノ・ヴァンチュラを選んだ点で、この作品は観客に甘い想い出を残している事。そりゃぁ胴長短足禿げ一歩手前、20歳の私は大喜びでしたよ、「リノ・ヴァンチュラを目指せば良いのか!」って。全てが無理と悟るのにそう時間はかかりませんでした...。
[映画館(字幕)] 9点(2017-09-29 09:55:14)
8.  離愁(1973) 《ネタバレ》 
第二次大戦初期ドイツ軍のフランス侵攻が激化する中、疎開の為汽車に乗り込んだフランス人の修理工とユダヤ人であるドイツ女性との一抹の恋。とにかくラストシーンの素晴らしさにつきる。列車での疎開そして別れから3年後、男はレジスタンスとして捕えられた女との共謀を疑われナチスの秘密警察に呼び出される。彼女を「知っている」と認めたら彼もまた死刑になるのは自明の理だ。秘密警察の係員(ポール・ル・ペルソン=隠れた名演)に知らない旨を伝えたはいいが係員は彼女を呼び出し対面させる事で揺さぶりをかけてきた...。でラストは皆様のご想像通りなのだが、知らぬ存ぜぬが出来なかった男の想いそして彼を守る為に必死に抑えていた感情が崩れ号泣する女、ジャン・ルイ・トランティニアンとロミー・シュナイダーの演技とその心情を表す効果音やカメラワークがベタだけどいいんだよなぁ。「旅愁」「旅情」「哀愁」同じようなタイトルの作品多いけど混同しないように。機会があればぜひ...にもかかわらずDVDはもちろん廃盤。おいおい~。(追記:2016年にTSUTAYAの「隠れた名盤発掘コーナー」シリーズで待望の復刻。機会があれば)
[映画館(字幕)] 8点(2015-08-02 17:56:05)
9.  ゲームの規則 《ネタバレ》 
狩猟会における「ゲームの規則」、それは浮世を楽しく忘れる為に偽りの感情を演じきることであり本音が介在することは許されない。そして規則を破った者に降りかかる悲劇。一見するとこの作品は単に「ユーモアが欠落している艶笑劇」なので公開当初フランス本国ではまったく当たらなかった、「楽しい悲劇」を目指した監督にとって最悪の作品となったのも当然とも思う。但現代の視点で鑑賞するといつの世にも変わらない、素晴らしい風刺劇であるというのが私個人の感想。普通こういった階級社会の没落を描いた作品にはその立場に立った人たちへの同情や時代への郷愁といった描き方をする(てか彼の前作「大いなる幻影」などはその雰囲気にあふれていた)のが常だがこの作中の人物に対して描くのは「現実を直視していない愚か者」であり、監督自身が演じたオクターヴに対しても変わらないスタンスで取組み突き放してしまっているのには驚かされる。その上で人として生きる真実=本当の愛・友情を求めることに目覚めた飛行士(この職業設定もつまるところ地に足がついていない、という意図を込めてますよね)が誤射によって射殺された挙句、狩猟会の獲物(ウサギ)の様な軽い扱いをされてしまうという皮肉。1939年の大戦前夜に監督ルノワールが伝えたかったのはそんな時代の流れを直視せずに怠惰な日々を過ごしている人々への警鐘、だったのでしょう。初見の感動がいまだに残っているのでちょっと甘目ですがこの点数。
[ビデオ(字幕)] 10点(2013-12-07 14:24:48)
10.  8 1/2 《ネタバレ》 
「観客をおいてきぼりにする様な」意味のわからない作風/映像表現を世界中に巻き起こした、という後世への影響から考えて「去年マリエンバートで(61年)」と並び仲間内ではあまり評判がよろしくないこの一本。そんな時私はいつも抗弁している「これこそ映画的な話でありとても面白い」と。1.現状の色々な重圧から潰されそうになっている自分+2.そんな自分が描いている妄想+3.作品で撮りあげたい映像、これらのコラージュ。そんな雑然とした風景がラスト主人公の述懐=人生って素晴らしい/登場人物たちが輪になって周り巡るあそこでひとつになる、それを見て感動で胸いっぱいになってしまう自分がいるのだ。あとは主演のマストロヤンニ。この作品が成り立っているのはひとえに彼の存在感があってこそであることは間違いない。
[映画館(字幕)] 9点(2013-04-02 02:50:22)(良:1票)
11.  肉体の冠 《ネタバレ》 
フランス映画が生み出した幾人もの名匠・名監督の中で、私にとってベッケルはたまらなく大好きな一人。監督としての器や世界観だけなら師匠ルノワールの方が上かもしれないが、映像作家としての技量(アクション/日常の穏やかな描写=緩急付けたメリハリのある描写で写し出すところとか)・出演俳優の魅力を存分に引き出しているという点では間違いなく彼の方が上手い、と個人的には思っている。でこの作品。芋みたいなレジアニ、ぽってりなシニョレをここまで魅力的な美男美女に描き出した事自体(特に愛する事を知ったシニョレの表情はまさに官能的)凄いのだが、緩急使い分けた描写=シニョレをのせた船が水面を走り、隠れ家にいるレジアニを尋ねるその美しさ/刑務所からの逃亡劇~親分を射殺するまでの緊迫感あふれるアクションそして断頭台のラストシーンまで、テンポのある語り口で見せてくれる彼の作風にしびれっぱなしですわ。「穴」「モンパルナスの灯」にも負けず劣らずな名作だよ、これは。
[ビデオ(字幕)] 8点(2011-08-21 22:00:32)
12.  イノセント 《ネタバレ》 
この作品は監督ビスコンティ自身の人生の投影ではなかったか。原作では生き長らえる男を作品中「自殺」に追い込ませたのは滅び行く貴族社会=監督自身の人生の終止符、これは「遺言」ですよね。しかし嫉妬深い身勝手な男の虚無感といったらもう。ジャンニー二にとっての最高傑作であると同時に、ラウラ・アントネッリにとっても単なるポルノ映画女優ではない役者としての器の大きさ(役柄が「貞操な妻」なんて、ありえんだろ。だからこそジャンニーニとの情事のシーンはそのギャップに凄みすら感じる)を示した一本。
[映画館(字幕)] 9点(2010-09-11 17:48:51)
13.  ラムの大通り 《ネタバレ》 
同じアンリコの名作「冒険者たち」が輝かしい夢・青春へのレクイエムとするならばこの映画は見果てぬ夢を愚直にまで追い求めた男のエレジーか。禁酒法の時代にカリブ海で酒の密輸に関わっていた男が無声映画で見たヒロインにあこがれ、ふとしたきっかけで彼女と出会い恋におちる。ここまでならこの映画は4点くらいの評価でしかないのであるが、この点数は何と言ってもラストのシークエンスに至るまでがとても良く出来ている事に対して。彼女と別れ投獄、幾月が経った後釈放され(すでに禁酒法は終わっている)酒を飲んだ後入った映画館で見た彼女の歌(「愛の歓びはつかのまの~」)。正直バルドーには演者としての魅力をこれまでは感じていなかったがこれで少し見直した。でもそれ以上にやっぱり良いのはL・バンチュラ。この人「哀愁」の醸し方に関してはベルモンドやドロンにない品の良さを感じる。
[映画館(字幕)] 7点(2010-08-28 23:48:58)
14.  エル・スール 《ネタバレ》 
夜が明ける。愛犬の鳴き声が聞こえる。静かな始まりだがスクリーンには何とも言いようのない緊張感が走る。母親の叫び声が聞こえる。枕元にあった父の形見。少女が父の過去を探ることで得た真実と悲劇。そして希望に溢れた「南」への旅立ち。エリセの映画は観客に対して想像力を想起させる点で本当に良くできていると思う。例えば父親の過去の愛人だった映画女優(「ミツバチのささやき」のフランケンシュタイン、といいこの人映画好きなんだなぁと感じる)や壁に書かれたいたずら書き、自転車に乗った少女が少々大人びて戻ってくるカットはまさに映画。スクリーンで見た時は本当に感激した。ラストもエリセが望まなかった、中途半端な終わり方かもしれないが、この映画を観た観客はもうわかっている。彼女はこの先どんな困難にあっても乗り越えてゆける、少女から立派な大人への段階を経たのだ、と。俳優。やはり80年代最高の男優はデニーロやホフマンではなかった。アントヌッテイその人である。限りなくこれは10点に近い9点。今日、私は南へゆくのです…。
[映画館(字幕)] 9点(2010-01-11 23:41:53)(良:1票)
15.  ピクニック(1936)
素晴らしい絵画を鑑賞した際に感じる「言葉では言い尽くせない」衝撃を、私はこの映画を観て感じ取った。そして恥ずかしながら涙が溢れた。何て美しいのだろうか。愛のささやき、雨の音、水の流れ、風の匂い、鳥の声、緑のそよぎ、何もかもが愛おしい。観よ、この世の中にはかくも美しい世界があるのだ。それを感じていられる内はまだまだ自分は頑張ろうという気になれる。これはルノワールが描いた極上の「人間賛歌」。これに満点付けずに何をつけるのだ!
[映画館(字幕)] 10点(2008-12-19 23:39:19)(良:1票)
16.  フィフス・エレメント
彼が言っていた「構想10年!の映像世界」底の浅い監督だなぁと思っていたが。本当にそうだったのはその後の作品を見ても明らか。素直に「愛は地球を救う」でいいじゃんか。サライ~のそ~らへ~。
[映画館(字幕)] 2点(2008-05-23 02:15:03)(良:1票)
17.  若草の萌えるころ
個人的考えで恐縮だけど、女優ジョアンナ・シムカスで魅了されるのは「冒険者たち」のレティシアではなく、この作品のアニーの方。それは彼女の魅力が健康的な肢体ではなく、「はかなげな」雰囲気によるところが大きいからと感じている。そしてこの映画での彼女は愛する者の死に対してどう対応して良いのかわからない女性を演じ、名女優としての片鱗を見せてくれた。映画ファンにとって残念なのがこの後若くしてシドニー・ポワチエと結婚し、引退をしてしまった事。確かに汚れ役等を演じず、「きれいな」役どころで消えていった点については良かったのかもしれないが何ともいやはや。そして彼女がいなくなった後の監督アンリコの映画は好きな女性を失ったような、痛くやるせない感じを受けてしまうのは気のせいか。彼も彼女の「はかない美しさ」に好意をもっていたんだろうなぁ。
[映画館(字幕)] 8点(2008-04-18 19:57:31)(良:1票)
18.  太陽がいっぱい 《ネタバレ》 
P・ハイスミスの原作のテーマが「自己の喪失」であるのでどちらかといえばリメイク版の「リプリー」の方が原作に近いしマット・デイモンの方が「才人トム・リプレイ」なのだろうと思う。だが作品を流れるそこはかとない哀愁(ニーノ・ロータのメロディ!)そして主演のドロンの名演によってこの作品はサスペンス映画のエバーグリーンとなった。はっきり言ってドロンは好きな俳優ではないのだがここではその「下種な」雰囲気が見事に「背伸びをした成り上がり感」をかもし出していて絶品。ここではヒロイン、マリー・ラフォレはおまけ。モーリス・ロネの方がよっぽど不思議な色気を出している。ヌーヴェル・バーグの若手監督達にさんざん虚仮にされたルネ・クレマンの怒りの一本!
[映画館(字幕)] 9点(2008-01-27 21:26:36)
19.  黄金の馬車
日本初公開の時にスクリーンで見てから何年かぶりに再見。一人の女性としての幸せを求めていたカミーラにとって「黄金の馬車」はそんな夢をかなえてくれた象徴だったのでしょう。だが夢は潰え、彼女は女優として舞台の幕下へと下がっていく。余韻の残る、素晴らしいラストシーンです。この映画もルノワールの「包み込むような」世界を堪能できる一本。
[映画館(字幕)] 9点(2008-01-27 19:54:02)
20.  影の軍隊(1969) 《ネタバレ》 
仏暗黒街映画の名匠、メルヴィルの名作。第二次大戦下の対独レジスタンスの日々を描いたこの作品、下の方も書かれているが戦争映画のスパイ物のような痛快な場面はまったくなく重く、暗い場面の連続。裏切り者を処分するのにガタブルな暗殺者。へこむレジスタンス。ただ戦火の中で生きていかねばならない彼らの行動にはちゃんとした筋があり、それを映し出す映像表現はやはりフランス映画、これが良いのだ。
[映画館(字幕)] 8点(2007-09-21 21:24:18)
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