1. ユナイテッド93
余りの衝撃に映画館の中が凍りつきました・・・・・。まるで、その場に自分たちが立ち会っているかのような迫力が怒涛の如く押し寄せて来る作品でした。 あの日からもう5年が過ぎようとしていますが、この作品はまさにテロの犠牲となった人たちへのレクイエムですね・・・・・。心から全ての犠牲者の方々に哀悼の意を表したいと思います。 [映画館(字幕)] 10点(2006-09-08 23:26:12)(良:1票) |
2. カビリアの夜
《ネタバレ》 もう、ジュリエッタ・マシーナの演技が最高です。「人生を変えたい、幸せな生活を送りたい」と願いながらも、裏切られていく女性の姿を見事に演じています。非常に悲惨で切ないストーリーではあるのですが、ラストシーンで見せる彼女の笑顔によって、非常に希望を感じさせてくれるから不思議です。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-04-16 21:54:26) |
3. アンダーグラウンド(1995)
あらゆる意味ですごい作品です。この作品に出会えて本当に良かったです。 荒唐無稽なストーリー(ただブラックな部分も多く、明るいだけではないですけど)がゴラン・ブレゴヴィッチの超ハイテンションな音楽に乗って展開されていき、3時間近い長編ながら一気に駆け抜けていきます。 もう出だしの場面から、その勢いに引きずりこまれてしまいました。私の場合基本的に、徐々に気持ちが映画の中に入っていくのですが、この作品はいわゆるつかみが上手くいきなり出だしから入り込んでしまいました。(もうあの音楽が今も頭から離れないくらいです。) これから見る人は簡単にユーゴスラビアの歴史をチェックしてから見ると非常に良いと思います。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-04-16 21:13:31) |
4. ハンナ・アーレント
《ネタバレ》 この作品が現在の日本でヒットしてしまうことが喜ばしいことなのか憂慮すべきことなのかは良くわかりませんが、多くの人が彼女の考え・行動に触れる機会を得たことは大いに意義があると思います。 正直、私はアイヒマンが「全体主義の下で思考不能に陥り事務的に残虐行為に加担した小役人」だとは全く思えないし、ユダヤ人の多くが「人間を無用の存在にした極悪人に報いを!」と怒りをぶつけたくなる気持ちも理解できます。 しかしながら、そこで「思考不能」に陥ってはいけないというのが彼女の訴えだと思いますし、我々がどのような状況であってもしっかりと思考し善悪を区別する能力をつけていくことが肝要であることは間違いないことだと思います。 作品的には、非常に分かり易く彼女の主張・行動を伝えており、特にアイヒマンの姿を俳優を使わず実際の映像を使ったことがとても効果的でしたね。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 00:09:29) |
5. 11'09''01/セプテンバー11
《ネタバレ》 9.11を題材に世界のさまざまな地域の映画監督がそれぞれの思いをこめた短編映画集です。この作品集を観て、我々があの事件に対して感じた思いが決して世界共通のものでは無いということに気づかされましたね。 その中でも一番印象的だったのは、フランス人のクロード・ルルーシュ 監督の作品でしたね。このような残酷な悲劇をモチーフに、美しいラブストーリーを作ってしまうその精神は不謹慎でありながらも惹かれてしまいました。その他印象的なのは、「もう一つの9.11」を描いたケン・ローチの作品と世界の舞台とか別に関係ないねとばかりにドロドロの日本映画を提供した今村昌平の作品ですね。 [DVD(字幕)] 9点(2013-11-13 00:08:39) |
6. ソウル・キッチン
《ネタバレ》 本当にこのファティ・アキンという才能と同時代を生きている幸福を感じましたね。やはり同世代ということもあって、ツボというか感覚が合うんですかね。何というか、芸術性だけでなく、ところどころにB級テイストがちりばめられていて娯楽性も上手く共存しているんですよね。それと、この人は音楽の使い方が抜群に上手くて、今回の作品でも堪能させていただきました。一昔前のソウルカルチャー風のエンドロールも最高でした。 ストーリーやキャスティング、設定もしっかりと荒々しいながらもツボをそつなく押えており、楽しい時間を過ごすことができました。 [映画館(字幕)] 9点(2011-04-17 15:58:52) |
7. レスラー
《ネタバレ》 華やかな80年代のプロレスやロックの世界が忘れられない夢の亡者たちに向け、夢の世界でしか生きられない男の因果な生き様を静かに熱く描いた傑作です。そして、この20年の間、知らぬ内にいろいろなものが失われていってしまったことに気付かされました・・・・・。 とにかく、ミッキー・ロークの体を張った演技が素晴らしかったです。完全にレスラーになり切っていて、全く違和感は感じられませんでした。 しかし、ガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet Child O' Mine」が流れた瞬間に涙腺が崩壊してしまったんですが、この曲が懐メロ的に使われる時代になったんだなあ・・・・・・ 時折、痛々しい描写があるのとプロレスの舞台裏が赤裸々に描かれすぎているのがちょっとアレですが、本当に良い映画でした。 [DVD(字幕)] 9点(2010-01-30 02:09:01) |
8. 戦場でワルツを
《ネタバレ》 非常に衝撃的な作品でした。アニメーションが内容のショッキングな部分をやわらげてくれはするものの、現実に登場人物たちが体験したことであるという事実にはやはり恐怖を感じてしまいました。 当事者の目から戦争というものの姿をありのままに描いたこの作品は本当に多くの人に見てもらいたいですね。 音楽(OMD「Enola Gay」やPIL「This Is Not a Love Song 」そしてバッハ等)の使い方もよかったです。 [映画館(字幕)] 9点(2009-05-24 00:36:14) |
9. 秘密と嘘
《ネタバレ》 「お見事」と拍手を送りたくなるような、設定・キャスティング・台詞・テンポ等々全てが上手く融合した大傑作ドラマですね。 私も含めて何かしらの「秘密と嘘」を抱えて生きている人間にとって、このビターではあるけれども暖かいこの物語は非常に救いになりますね。 まあ、ちょっと理想的すぎるかなとも思いますが、非常に観終わった後清々しい気持ちにさせてくれる素晴らしい映画でした。 [ビデオ(字幕)] 9点(2008-10-30 18:38:14) |
10. シティ・オブ・ゴッド
《ネタバレ》 テーマはひたすら重く暗く全く持って救いようが無いのに、サンバのリズムが不思議とマッチしてるし、時折陽気さすら感じるアクション映画(ブラジル版「仁義なき戦い」みたいな感じ)に仕上がっているんですよね・・・・。 これまで、いろんな国の映画を見てきましたが一番カルチャーショックを受けましたね。何というか自分のモノサシでは全くはかることの出来ない価値観と遭遇してしまった感じです。 ホント、世界は広いなという感想しか無いですね・・・・・。(あまりの救いようの無さにマイナス1点です) [DVD(吹替)] 9点(2008-10-14 18:16:40) |
11. 悲愁(1979)
《ネタバレ》 華やかな映画界の裏側を描いた作品です。スターがスターであり続けることの大変さがよくわかりますね。(整形手術の話とか結構あるんですかね・・・・・・)自分の娘を犠牲にし、なおかつスターであることを選んだフェドラの生き方には恐ろしさすら感じました。 しかし、フェドラはグレタ・ガルボをモデルにしているみたいなんですが、ガルボの引退後もこんな感じだったのかな?と思いながら見ていると結構引き込まれました。 [ビデオ(字幕)] 9点(2006-07-09 00:08:52) |
12. パーフェクト・サークル
《ネタバレ》 見終わった後、寂寥感に襲われました。ボスニア紛争時、セルビア軍に包囲され孤立したサラエボ市内の緊迫した状況が描かれている作品です。水を汲みにいくのにも、見えない敵からの銃撃を避けるように頭を低くして危険な場所は駆け抜けていかなければならないような極限状況の中で、2人の子供の難民と家族を国外に逃がして一人サラエボに留まった詩人の心の交流が繰り広げられます(子供達の無邪気で健気な姿が非常に心を打ちます。)。それだけに、この作品の結末はあまりにあっけなく、そして哀しいものになっています。 この作品は、ドラマとしても、そして当時のサラエボ市内の市民生活のドキュメントとしても非常に良く出来た作品だと思いました。(内戦さなかのサラエボで撮影されており非常にリアルです。)。 [ビデオ(字幕)] 9点(2006-04-16 22:35:17) |
13. 戦場のピアニスト
《ネタバレ》 いろいろな意味で凄い映画でした。感動モノなのかと思って見始めたのですが、前半部分のユダヤ人にたいする余りに酷い差別の状況や後半部分の主人公の生に対する執着心の凄さ、ワルシャワという一つの都市が廃墟になる様等々圧倒され続けました。見終わった後は、もう感動とかそんなものではなく放心状態になるほどでした・・・・・。(マスコミは上映時に感動の作品みたいに言ってたけど、そんな甘い作品じゃないですよ、これは。)主人公を助けたドイツ軍将校(他にもユダヤ人の命を救ったそうです。)が最後に捕虜となり、主人公の知人に助けを求めるシーンは、いわばホロコーストを国の命令のもと実行せざるを得なかったドイツ軍兵士もまた戦争の犠牲者であったんたんだなと思い非常に考えさせられました。 [ビデオ(字幕)] 9点(2006-04-16 22:29:27)(良:1票) |
14. バティニョールおじさん
《ネタバレ》 見終わった後とても爽やかな気分になりました。(まあ、決してハッピーな話ではないのですが・・・・)素晴らしい作品だと思います。 普通の肉屋のおじさんが、自分のせいでナチスに捕らえられたユダヤ人家族の子供を中立国のスイスまで送っていくのですが、様々な難関が待ち構えていて、最後までハラハラドキドキの連続です。(ただ軽快なテンポで進んでいるので、暗さは無いです) ユダヤ人の少年と主人公の関係も、最初は家族や家を奪われたこともあり、わだかまりが残っています。でも、主人公の熱意がその垣根を徐々に取り払っていきます。(完全に無くなる事はないでしょうが)。そして、おそらく親が教育熱心だったのでしょうけど、この少年が機転の効く賢い子なので、主人公といいコンビを見せてくれています。(結構小憎たらしいところもあったりしますが) とても、心が温まる作品でした。 [DVD(字幕)] 9点(2006-04-16 22:26:42)(良:1票) |
15. 黒猫・白猫
とても楽しくハッピーな作品です。登場人物がみんな魅力的だし、音楽が最高にいいですね。テンポが良いので、あっという間に見終わってしまう感じです。(「カサブランカ」を事前に見ておくと、より楽しくなるかもしれません・・・・) [ビデオ(字幕)] 9点(2006-04-16 21:16:56) |
16. 家族を想うとき
《ネタバレ》 労働者の権利向上に伴い、経営者は労働者のためにいろいろな手間やお金をかける必要が出てきました。「こんなの面倒くさいし、コストもかかるしなんとかならないかな」と経営者は考えに考え、ある日、あるアイデアがひらめきました。そのアイデアとは「そうだ、皆経営者にしてしまい、対等な立場という体にしてしまえばいいんだ!」というものでした。これが今作のテーマです。 本当に、毎回毎回引退をしようとするケン・ローチを引き留めようとしてるのかどうかはわかりませんが、面倒くさいことを省いて稼ぎたいと考える経営者の思考は、ほとんど犯罪者の思考と変わらないですね。 残念ではありますが、ケン・ローチには死ぬまで、人間から人間性を奪おうとする社会の歪みをどんどん映像化して我々に問題提起していただきたいと本当に思いました。 絶望しかない物語なのですが、その中で主人公の家族だけは崩壊させずに終わらせたところに、ケン・ローチが持つ「あきらめない」姿勢を感じました。 [DVD(字幕)] 8点(2021-02-22 23:46:26) |
17. わたしは、ダニエル・ブレイク
《ネタバレ》 この作品には、強者は出てきません。システムと規則の奴隷と化し、「情」を奪われた弱者と、「尊厳」を奪われた更なる社会的弱者がお互いぶつかり合っているだけです。人々に利便を与えるためのシステムだった筈なのに、今では人々がシステムの利便のために不便を強いられてしまっている現状、そして、その現状を、惰性で受け入れている私たちにケン・ローチは「それで良いのか?」と問いかけてきます。「わたしはダニエルブレイク(I,Daniel Blake)」という何てことのないタイトルが、観終った後に非常に重く感じました [DVD(字幕)] 8点(2018-01-18 19:08:17) |
18. 独裁者と小さな孫
《ネタバレ》 野映画を思わせるような、どこかユーモラスを感じさせながらも乾いたタッチで、残酷な寓話を描きつづけているのですが・・・ 最後に「独裁者を殺したところでどうにもならない、踊らせるのだ」というセリフに監督の熱い思いがこめられていて、非常に感銘を受けました。 [DVD(字幕)] 8点(2016-10-23 00:35:40) |
19. 無人地帯
《ネタバレ》 3.11直後の福島第一原発付近の状況を記録した貴重な映像です。そして、それだけでは無く原発、放射能の危険性があまりにも喧伝されたがために、見捨てられたものがあったことを冷静に伝えていることは評価したいです。ただ、オーディオコメンタリーで監督が語っていましたが、現地で空き巣被害が相当数あったというような負の部分が、映像の美しさ、被災された人々の力強さに消されてしまっているのがちょっと残念でした。 [DVD(邦画)] 8点(2015-07-25 12:32:55) |
20. スペシャリスト/自覚なき殺戮者
《ネタバレ》 アイヒマン本人も言っていましたが、「人類への警告」として後世に残すべき作品。 よくアイヒマンは大悪人ではなく小役人のような「普通の人間」であったといわれていますが、この作品を観ると彼は決して「普通の人間」などではなく、悪魔のような怜悧狡猾さと残虐さを持ち合わせた「怪人」であると私には思えました。 裁判の中でのアイヒマンは「普通の人間」を装いながら、ひたすら「なぜお前らに裁かれなければならないのか、犯罪というがそもそも自分は法に基づき業務を遂行しており罪など犯していない、これは罪に罰を与える裁判などではない、単なる報復だ!」というメッセージを伝え続けています。 このような「怪人」を生み出してしまった、「国家権力が役人の権限・責任を曖昧にし、逃げ場を作っておきながら厳しい命令を遂行させることができるようなシステム・組織」こそ「人類への警告」として後世に伝えていかなければなりません。 そんなことを考えさせられる作品でした。 [ビデオ(字幕)] 8点(2014-07-19 17:24:19) |