1. グッドナイト&グッドラック
《ネタバレ》 ニューシネマ的なエンディングはいいですね。顔を正面から捉えたショット=観客に向けたメッセージが多く、ジョージ・クルーニーが現代社会をどれほど嘆かわしく思っているかが伝わってきます。 彼らのスタジオや会議室は密室です。これは彼らが権力から常に圧力を受ける弱い存在であることを示しています。そして、CBSの社長が登場するシーンでは、彼の顔には複雑な影が現われますが、マローの顔は一方向からの照明を受け、明暗がはっきりと現われます。これは彼らがどのようなキャラクターとして設定されているかを如実に表す演出ですね。わざわざ白黒映画にしたのは、照明の明暗を効果的に使いたかったからでしょう。現在ではいいイメージを持たれないタバコの煙も、マローの内面から沸き上がる善意や抵抗心を表す重要な美術装置として機能しています。 社会派監督としてのジョージ・クルーニーの力量がうかがい知れる映画だと思います。しかし、娯楽としての面白さには欠けるので、点数は低め。 [DVD(字幕)] 6点(2017-01-20 10:13:26) |
2. 牝犬(1930)
《ネタバレ》 ラングのリメイクと比べると描写に暖かみがある。しょぼくれ中年と姉ちゃんにしっかり感情移入できるように作られているし、コメディとしても笑えるシーンがあって良い。終盤の展開は人間ってそんなもんだよな、という諦念さえも感じさせる。嫁の元カレが登場するシーンは笑えます。嫁さんも良いキャラしてて好き。 [DVD(字幕)] 7点(2016-12-12 23:46:09) |
3. 突然炎のごとく(1961)
《ネタバレ》 何度見ても面白さが理解できない。もっとジュールとジムの友情に焦点を絞っても良かったのではないかと思う。カトリーヌの存在感が強すぎて、本来の軸が弱くなっている。本作は『明日に向かって撃て!』なんだから…… [DVD(字幕)] 2点(2016-12-11 02:58:53) |
4. パリの灯は遠く
《ネタバレ》 列車に乗ったアラン・ドロンの表情が光る。狂気だ。自由を捨ててでも謎の真相を知りたい。知ろうとするあまり身を滅ぼす。いや、滅ぼしてもいいのかもしれないね。収容所にいるかもしれないし。確認できればそれで満足なのかもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2016-12-11 02:19:01) |
5. ホーリー・モーターズ
《ネタバレ》 人生は演じることだ!ありのままの自分など存在せず、我々は誰かに見られることを常に意識しながら生活を送っているのだ。オスカーは常に完璧なメイクと衣装で他人を演じ続ける。彼の本当の姿は?メイク中の、運転手と会話を交わすオスカーさえ素の姿ではないのかもしれない、なんてことを考えてしまいました。この映画はレオス・カラックスのフィルモグラフィと人生を再現した映画だそうで、難解なのは当然。彼の映画を全部見ていても理解できないよこんなの。引用の多さでヌーヴェルヴァーグの映画群を思い出した。 [映画館(字幕)] 7点(2016-07-05 01:57:56) |
6. オンリー・ゴッド
《ネタバレ》 全く理解不能。めっちゃ強いオッサンの神々しさとライアン・ゴスリングの無表情だけが印象に残る。ホテルの赤い内装が子宮のメタファーだということに気づいた人は映画を見る目がある!私は気づきませんでした。 [映画館(字幕)] 3点(2016-07-05 01:53:26) |
7. インランド・エンパイア
リンチの映画は初期に限る。難解にもホドがあるよ!「すべての夏帆ファンが夢見た理想の夏帆」である裕木奈江が画面に映っているだけで幸せなんだけど、本筋とは何も関係ないシーンだというのが…とか言うと、ほとんどそんなシーンばっかりじゃないかと思ってしまったり、いや、難解な映画を読み取るにはすべてのシーンに意味を見出さなければいけないのだから、この考え方は間違っているな、それにしても裕木奈江は素晴らしい、どのシーンよりも美しい、ところでこの映画はリンチが撮りたいときに俳優を集めて場当たり的に脚本を書いて撮影した映画なんだそうで、リンチの気分で撮ったんならこれくらいの者は出来上がって当然だと思っている時も裕木奈江の事を考えてしまうわけで、菊地凛子みたいに欧米人が考える日本人のイメージに塗り固められてなくて本当に良かったというのが、ごちゃごちゃした文章を書いてみようと思った私が頑張った結果の結論と限界の証明です。あの映像群に一応筋をつけてみせたリンチは凄い。 [映画館(字幕)] 4点(2016-07-05 01:51:35) |
8. アデュー・フィリピーヌ
あふれる生命力に気圧されるも、いまいち乗りきれないまま終了。クライマックスの「青春の終わり」感はとても好き。 [映画館(字幕)] 5点(2016-05-31 00:35:56) |
9. ファンタスティック・プラネット
すげえ気持ち悪いけど、誰でも一度はあんな生き物がいる世界を想像したことがあるのでは?ヨーロッパ的美術のせいで人間がコジコジみたいな格好をしてるのはどうかと思うけど、瞑想中に体がぐちゃぐちゃになるシーンはしばらく忘れられないだろうし、毒ガス噴出基のフォルムなどの人間虐殺兵器が面白かったので高得点。すごくいい。 [インターネット(字幕)] 8点(2016-04-04 00:52:12) |
10. パリ、テキサス
《ネタバレ》 これまでの人生で、マンガや映画、ドラマ、ノンフィクション・ドキュメンタリーなど様々なものに泣かされてきたけど、本作では本当に身体が枯れてしまうんじゃないかと思うほど泣いた。涙をながすことと自慰行為をイコール視する人がいて、彼らの意見には膝を打つ部分もあるんだけど、本作で私が流した涙は人間の根本に関わる涙だったと思う。息子との再会によってようやく人生と、過去と向き合う決心がついた男が身を落とした元妻とガラス越し、電話越しに対面せざるを得ないという非情な現実、徐々に男がかつて愛した夫だったと気付き、ただただ涙を流す女の辛さ。悲劇の中の悲劇だ。本作のことは絶対に忘れられない。 [DVD(字幕)] 10点(2016-03-14 03:06:48) |
11. ラ・ジュテ
私はどうしても伝説のクソゲー『Plumbers Don't Wear Ties』のことが頭から離れなかった。こんな産業廃棄物とは比べ物にならないほど美しいフォトモンタージュ映画映画なんだけどね。しかし、『アルファヴィル』を見た時のような退屈さが襲いかかってきて、最後まで見るのが辛かった。30分にも満たない映画なのに。退屈さを紛らわすために『Plumbers Don't Wear Ties』の司会者やケツ毛の濃い主人公を思い出したりするともう全く別の映像体験に……。 [DVD(字幕)] 6点(2016-02-25 14:24:27) |
12. インターステラ5555
不覚にも感動してしまった。ライブシーンの躍動感のなさに衝撃を受け、「大丈夫かこれ」と思いながら見ていたけど、陳腐なストーリーにDaft Punkの音楽が組み合わさるとなぜか感動が生まれる。Daft Punkの音楽が持つ力というものを思い知らされた。注目したいのは脚本もDaft Punkの二人が担当していることで、音楽業界の内部からキングコング的な業界批判と問題提起を起こす勇気は讃えられるべきではないかと。『Discovery』が二人が子供の頃から大好きだった音楽を全面に押し出したアルバムだということも重要。このことを知っているのと知らないのとでは味わいが違ってくる。 [DVD(字幕)] 7点(2016-02-22 10:00:21) |
13. ターミネーター2
《ネタバレ》 私は悪役のターミネーターのほうが好きです。確かに文句なしに面白いし、前作を踏まえたアクションやセリフがあるのは見ていて楽しい。しかし、キャラクターの魅力という点では2より1のほうがあるのではないかと思います。無慈悲に目標を遂行する、ある意味無垢とも言えるようなキャラクターからジョン・コナーとの触れ合いの中で人間性を獲得することでキャラクターとしての成長を見せるのはヒット作の続編としては正しいのです。しかし、1のような迫力は薄れてしまったように思います。役割が異なるので当然なのですが… [DVD(字幕)] 8点(2016-02-16 02:37:30) |
14. こうのとり、たちずさんで
圧巻のラストシーンがすべて。 [DVD(字幕)] 8点(2016-02-15 15:56:50) |
15. トム・アット・ザ・ファーム
わかりやすく例えると、「ミザリー」のような映画です。主人公は田舎の農家から逃げることができなくなり、次第に逃げようという気持ちが無くなってしまいます。ストックホルム症候群ですね。この過程を徹底的に計算された撮影と編集で見事に表現しています。グザヴィエ・ドランのセンスには敬服するばかりです。いろんな解釈が出来る映画だとは思いますが、まずは表層的なメッセージを楽しむべきではないでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2016-02-11 03:30:01) |
16. ブルー・リベンジ (2013)
《ネタバレ》 前半はまったくセリフがなく、中盤以降も静かな映画です。極力セリフを排し、映像で観客に主人公の心境を訴えようという姿勢が見て取れます。フランスの若手監督クサヴィエ・ドランがインタビューで「映画はセリフに支配されるべきではない」と言っていましたが、この映画はセリフに束縛されず、のびのびと撮影・編集されている印象を受けます。映像のみで語ることができる唯一のジャンルである映画という原点に立ち返り、スタイリッシュな復讐劇を成功させています。ただ画面を眺めているだけではいまいち楽しめないでしょうが、集中して見るとどんどん引き込まれていきます。レビュー数はこれを含めてわずかに2つ。決して有名な映画ではありませんが、見逃すのはもったいないです。セリフが少ない映画だからこそ、クライマックスの会話に生じるカタルシスは大きい。 [DVD(字幕)] 8点(2016-02-11 03:24:02)(良:1票) |
17. トランスポーター
平均以下のアクション映画。リュック・ベッソンの中二魂が爆発しているようにも見えず、煮え切らない映画だという印象を受けました。ヒロインのうざったさも大きなマイナスです。 [DVD(字幕)] 3点(2016-02-11 03:15:24) |
18. 木靴の樹
いくらなんでも長い。リアリズムを象徴する屠殺シーンの迫力はあったものの、ストーリーの展開に起伏がほとんどないため見ているのがしんどくなる。 [DVD(字幕)] 5点(2016-02-11 03:03:27)(良:1票) |
19. クリフハンガー
《ネタバレ》 超軽装なのになぜか絶壁の上まで来れてしまった女性が墜落する冒頭のシーンは良かった。絶望感がヒシヒシを伝わってきて、「おっ、これはいいかも」と思ったんですが、それからはバカバカしくて…。なによりも悪役がバカ。行動・決断に明確な理由がないから全く納得出来ないし、どんな結末を迎えても「いや、それお前のせいじゃん」としか思えないんです。無駄に仲間割れして死んでいくし、スタローンの背中を撃ちぬけないし。スタローンは『怒りのアフガン』状態だから撃ちぬけなくて当然なんだけど、そもそもなぜスタローンを殺そうと思ったのか?『怒りのアフガン』見ていないの? [インターネット(字幕)] 5点(2015-07-30 05:35:59) |
20. 家路(2001)
《ネタバレ》 歪だ。芝居の本番中にバックステージでうろうろする男たちを映したり、会話の声が聞こえてこなかったり、リハーサル中の演技は一切見せずに監督の顔だけを映したり。本来ならうろたえる主人公の姿を映したっていい。アンゲロプロス流のスペースオフを使ったスリリングな演出は好きだ。何が起きているのか観客に想像させる監督も好き。俳優人生の終わりを物語るミスの連続、「もう帰る」と言い家路につく主人公が名優だということに気がつかない歩行者たち。そしてラストの孫の怯えた表情が監督の死・老いへの価値観を見事に表現していると思った。観ている時はあんまりピンとこなかったけど、後でシーンを思い出しながら考えてみるとすごくおもしろい映画だったなぁ、と。 [DVD(字幕)] 7点(2015-06-29 08:44:02) |