1. ラ・スクムーン
《ネタバレ》 本作は、仏蘭西国きっての任侠作家であるジョゼ・ジョバンニが、自らの原作を監督した“男心に男が惚れる”フィルム・ノワールの”泣ける”映画だ。 (詳細はブログにて)[地上波(吹替)] 10点(2007-05-29 16:01:48) |
2. ダーク・ブルー
《ネタバレ》 戦争によって、主人公は、祖国を失い、愛する女性を失い、愛犬を失い、親友を失い、そして己の自由をも失う。そんな彼にも幸福な瞬間はあった。収容所に差し込む暖かな日差しを浴びて、主人公が見た一瞬の夢=記憶。彼は亡き友と並んで夕日を背に受け大空を飛んでいる。しかし、そんなひとときすらも、一機の離脱=フレームアウトで一瞬に終わりを告げる。映画と共に。 [DVD(字幕)] 10点(2005-04-13 20:48:33)(良:2票) |
3. 神の道化師、フランチェスコ
天地の間に棲むことを喜ぶひとびとは ただ笑い ただ泣き ただ祈る。 ただそれだけのことが途方もなく美しい。 P.S.こんなことを言ったら、まじめな映画ファンや敬虔なキリスト教徒の方にお叱りを受けるかもしれませんが、この映画って、マキノの『次郎長三国志』シリーズにとてもよく似ている。 [映画館(字幕)] 10点(2004-04-07 17:22:53) |
4. 気狂いピエロ
「恋」なんて理路整然としたもんじゃあ、ない。恋に落ちてしまえば人は皆訳が分からなくなる。あの娘の心も己の心も、みんな。それが片思いとなれば、なおさらだ。恋は、人から驚喜=狂気を産みだし、人を詩=死へと導いていく。次章、絶望、地獄の季節。逝ってしまった空と海だけが蒼く、眩しすぎる ←くーっ、自分で書いてて、鳥肌立ってきたよ。四十過ぎたおっさんの書くセリフじゃないね。ただ、オイラが言いたかったのは、これはヒッチコックの『めまい』と並ぶ、恋愛映画の「不滅の傑作」ってことだな。 03/02/05追記:ゴダールって、その時々の己の心の有り様を忠実にフィルムに投影してきた人だと僕は思う。だから、時にははしゃいで見えたり、時には憂鬱に見えたりと結構極端なところが、特に若い頃の作品には感じられるから、観客は余計に戸惑うのかもしれない。それから、「分からない」ってことは「つまらない」ってことではないと思う。むしろ、誰もが分かりきったことをただ見せられても退屈なだけだ。 この世の中は、まだまだ理不尽さと不可解さに満ちている。 それを恐れることなく、その中に潜む真実を求めて、ひとり敢然と分け入っていくゴダールの姿は、いつも僕に勇気と感動をもたらしてくれている。ブラボー、ゴダール、ブラボー! 10点(2003-12-16 17:49:27)(良:6票) |
5. Mr.レディMr.マダム
すてぃんぐ様↓ってば、このサイト一番の人気者だというのに。やっぱりあのお噂は、本当でしたのね。「俺と一緒にチーク・トゥ・チークしようぜ」って、私におっしゃってくださったのは、あれは、カモフラージュだったのね。ヒ・ヒドすぎるわ! ほんとうに、運命は残酷(←皆さんもつなげてみよう!)。 冗談はさておき、これは今観ても新鮮な上質のコメディーだと思います。アメリカではリメイクされ、日本では舞台化されたほど評判を取った作品です。ウチのカミサンもおススメです。 7点(2003-11-10 21:17:32) |
6. シェルタリング・スカイ
《ネタバレ》 旅の途中でマルコビッチが正に息絶えようとしているその時に、カメラは一瞬小屋の外に出て「空(シェルタリング・スカイ)」を映し出す。その演出には唸ったが、その後の展開は、どちらかと言うと紀行映像で、ほとんど映画になっていなかったと思う。撮影監督のストラーロにおまかせで、あんた酒でも飲んでたんじゃないの?と邪推したくなるような弛緩した演出。「ベルドリッチよ、お前もか!」と思ってしまった作品。 6点(2003-09-27 15:03:13) |
7. 裸足の伯爵夫人
《ネタバレ》 何よりも映画的=感動的なのは、踊る素足のクロースアップから登場するエヴァ・ガードナーのテクニ・カラーによる美しさ。(『カサンドラ・クロス』とかでしか彼女を観てないそこのあなた、これは必見ですぞ!)こりゃあ、伯爵ならずといえどもぞっこん入れ込むわな。『めまい』のキム・ノヴァクと同様、あまりにも身勝手な男の思い込みによって、結局女の方が悲劇的な結末を迎えるというのが、逆に男性映画ファン(って、もちろんオイラのことですけど)の琴線をくすぐる。故に、妖艶な魅力により男を破滅に陥れる「運命の女(ファム・ファタル)」と呼ぶには、ちょいと可哀想か。それでも、終始ハード・ボイルドを押し通すボガードの身振りと語りも含めた確信犯的なマンキウィッツの演出は、大胆かつカッコ良く決まっていて、これも、れっきとしたフィルム・ノワールじゃん!とオイラは思うんだな。 10点(2003-08-09 17:53:03) |
8. ロベレ将軍
《ネタバレ》 一寸の虫にも五分の魂があるように、ヘタレな国の人間にだって魂はある。 本作は、イタリア屈指の”魂”の映画人、ロベルト・ロッセリーニ(監督)とヴィットリオ・デ・シーカ(主演)の二人によって作られた、言わば「意気地」の映画である。「イタリア映画万歳!」 [地上波(吹替)] 9点(2003-05-30 20:40:46) |
9. ドイツ零年
確かにあまりにも痛々しいかもしれないが、本作は、トリュフォーの『大人は判ってくれない』と並んで(というより先駆けて)、ひとりの少年の心の真実を描いた素晴らしい傑作だと思う。 以下は、監督自身の言葉、「『ドイツ零年』を作るに当たっての私の意図は、私の全ての作品と同じでした。愛することのできる心と、考えることのできる頭脳を持った世界中の観客のために、カメラが捉えたままの正確な真実を再現したかったのです。」(「映画作家が自身を語る ロッセリーニ 私の方法」編者:アドリアーノ・アプラ、訳者:西村安弘、フィルムアート社刊) P.S.妻となったバーグマン主演作品なら『ヨーロッパ1951年』をお勧めします。ハリウッド的装飾を排した、彼女の聖女のような生の美しさが堪能できます。ファン必見! [映画館(字幕)] 10点(2003-05-13 17:41:03) |
10. 予告された殺人の記録
フランチェスコ・ロージは、私の大のお気に入りの監督である。彼独特の、登場人物への感情移入をあくまでも拒絶した冷徹なまでの対象に対する距離の置き方と、それでいて長回しを安易に多用せず、シャープなカッティングによる小気味良い演出が大好きなのである。彼はまた、『シシリーの黒い霧』では地元マフィア、61年の『都会を動かす手』では右翼、70年の『総進撃』では軍部、72年の『黒い砂漠』では大資本、76年の『ローマに散る』では司法などと、常に社会《権力》の暗部に光を当て、そこに巣くう者達の存在を浮かび上がらせるといったことを一貫して行なってきた映画史上屈指の硬派な監督でもあった。ところが、79年の『エボリ』(原作は、カルロ・レーヴィ自らの体験を綴った『キリストはエボリに止りぬ』)では、今までの作風とはうって変わって、タビアーニ兄弟やエルマンノ・オルミの傑作群にも似た、レンズが捉えた対象全てをいとおしくもかけがえのないものとして描いて、彼の異色作にして最高傑作となった(と私は思っている)。その後、83年に『カルメン』、87年に本作と続くのだが、(私はファンであるが故に気づくのが遅かったのだが)映画監督フランチェスコ・ロージは、既にこの時、作家としては”死んでいた”のである。したがって、本作『予告された殺人の記録』は死んだ作家の抜け殻をただ見せられているに過ぎない。だから、彼のファンとして、(原作はノーベル賞作家マルケスの傑作なので一読をお勧めするが)本作は決してお勧めできない。 思えば『エボリ』のラストで、村を去る主人公の乗る車の後方のガラス越しに、別れを惜しむ子供らが追いかけてくる姿と共に、ポツポツと降り出した幾粒もの雨粒が捉えられていたのだが、それは主人公の涙であると同時に、監督フランチェスコ・ロージの惜別の涙でもあったのだ。「さらば、ロージ」 0点(2003-04-20 16:18:04)(良:2票) |
11. 穴(1960)
昔の才能のある監督は皆そうだと思うが、余計なものを描かない。つまり、省略が上手い。掘って溜まった土を棄てるシーンを撮らなかった↓のは、単にこの映画の展開に適わなかったからじゃないでしょうか。この辺の処は、自身の実体験に基づいて原作を書いたジョゼ・ジョバンニに聞いてみない(あるいは原作にそういう描写がある?)と分かりませんが・・・。そういう訳で、この映画の評価が下がることには決してならないのでは? 確かに、『肉体の冠』は傑作です。というより、全部を見たわけではありませんけど「ジャック・ベッケルに凡作なし!」と宣言してしまいましょう。 10点(2003-02-07 17:29:04)(良:1票) |
12. グッドモーニング・バビロン!
うーん、一体どうしたんだろうか、タビアーニ兄弟。こんな題材だったらきっと素敵な映画になるはず、と思ったら肩透かしを喰わされた。彼らだけではない。80年代前半頃まであれほど輝いていたオルミもベロッキオもフェレーリも、そしてベルドリッチも突然急速に光が失われていったのはなぜだろうか? 6点(2003-01-04 17:35:46) |
13. ルナ
超大作にしてベルトルッチの最高傑作『1900年』の後だっただけに、確か公開当時は"燃えカス"のような言い方で批評家たちから酷評されてたけれど、個人的には好きだな。少年が自転車で田舎道を疾走するシーンとか月夜のシーンとか、相棒ビットリオ・ストラーロの撮影が相変わらず冴えてます。 8点(2002-12-27 18:01:08) |
14. 父/パードレ・パドローネ
《ネタバレ》 確か?(オルガンではなくて)アコーディオンとフルートを使って山向こうの同じ羊飼いの友人と語り合うシーンが素晴らしい。「こうもり序曲」の使い方も絶妙。村の少年たちはどの子も個性的なのだが、成長して村を出て行く時の各人の容貌があまりにもそっくりなのが笑えました。 9点(2002-11-20 17:52:40) |
15. 映画に愛をこめて/アメリカの夜
映画を描く映画の名作。テーマ曲の"Grand Choral"は正に映画賛歌と呼ぶに相応しい名曲で、私自身を盛り上げるための賛歌として今も愛聴しています。20代の頃、この映画の雰囲気を呼吸したくて、思わずニースにひとり足を運んでしまいました。 9点(2002-11-20 16:16:04) |