1. ホテル・ルワンダ
確かに猛烈に重い…。昔見たオリバー・ストーンの「サルバドル」を思い出した。低予算らしいけど、ニック・ノルティ、ホアキン・フェニックスやジャン・レノら主役以外にもいい俳優が結構出ていて、安っぽさもない。劇中、報道カメラマン役のホアキンが女性2人に聞く。「あなたは何族?」確かにそうだ。私の目から見てもどっちが何族だか分からない。あんな不毛そうなアフリカの土地を何十年にもわたって100万人だかも殺し合いながら奪い合う意味がさっぱり分からない。だが、海外に行くと、私も「中国人か?」とか「韓国人か?」とか、あるいは「日本人か?」と聞かれる。欧米人には区別など無理だろう。そりゃそうだ。でも、私たちも何百年もいがみ合っている。つくづく人とは複雑な生き物だ。イラクじゃ私たちから見たら同じにしか見えない顔をした人々が今現在、宗教ではなく「宗派」の違いでリアルタイムで殺し合いを演じている。何だか救いようのない気分になる。この映画、日本で公開されるまでに署名活動なんかがあったそうで。映画見た後でネットで知った。郊外のミニシアターは満席に次ぐ満席。久しぶりに「映画を見た」という満足感を感じた。映画を見せてくれた人に感謝。この映画を見たいと思った人が大勢いることに少しほっとした気持ちになった。 [映画館(字幕)] 8点(2006-02-28 21:37:22)(良:1票) |
2. ヒトラー 最期の12日間
《ネタバレ》 室内劇のような作りを想像していたら、激しい戦闘シーンもそれなりにあり、ちゃんとした「戦争映画」でもあった。劇中、見ている者はヒトラーの周囲の人物に「何故そんなヒステリックな小男に死ぬまでついていくのだ?」「何故新しいドイツを夢見ないのだ?」と何度も疑問を投げかけるだろう。親衛隊の若者からゲッベルスら政府参謀までが、明らかに精神に変調を来たしているヒトラーに盲目的につき従っていく。考えてみると、独裁者は生まれ持って独裁者になるのではない。独裁者は人々が創り上げるものなんですね。ヒトラーの素顔は秘書の女性にさえ細やかな心遣いを見せる柔和な中年男。一方で、そのどこにでもいる中年男が何百万人の人間を虐殺し、民族浄化を本気で実行させる。悪魔のような独裁者は私やあなたの隣にもいるかもしれないし、それを創り出す私たちの中にも存在すると実感できた。ヒトラーは人々を映す大きな鏡だったのかもしれない。ラストのユンゲのインタビューのように、「目を見開いていなければ」それに気が付かない。そしていつかはゲッベルス婦人のようにわが子を自分の手で殺していくような愚を犯すことになる。あの死人のような無表情の悲しさ。胸が締め付けられるように辛く、そして恐ろしかった。イスラエルはヒトラーを美化していると反発したようですが、第3者として見ると、人間の愚かな性質や戦争の馬鹿らしさをこれほどに描ききっている戦争映画は少ないと思う。 [DVD(字幕)] 9点(2006-02-04 21:17:33)(良:3票) |
3. ブラックバード・ライジング
これ、つくった人の志はきっと高いのだと思います。歩兵戦闘車とか出てきますから、たぶんイタリア軍が撮影に協力したんでしょうね。民族紛争のむなしさとかたぶんいろいろ訴えたいのだと思います。でも…。いかんせん、戦闘シーンが激しょぼでした。派手なパッケージ写真にだまされて「ブラックホークダウン」みたいな作品だと思って借りると、完全に肩透かしをくらいます。 [DVD(吹替)] 2点(2005-06-27 01:36:29) |
4. スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー
もっと子供だましの映画かと思っていたら、結構おもしろかったです。グウィネスは50―60年代の銀幕の「スタア」女優のような雰囲気…どんな場所(ジャングルとか!)でもハイヒールでずかずか入って行って、次々に「殿方」を混乱させる役、ジュード・ロウはどんな時でも「俺に任せろ!」的な一点の曇りもないダンディなヒーロー役ってな感じで、ソフトフォーカスの映像もそうだけど、どこか懐かしいような作りでした。それでいて、アクションはまさに「危機一髪!!」(昔のアクション物の宣伝文句みたいな)の連続で、危なくなると助けが来るのもお約束。にやにやしながら見てました。グウィネスとジュードのやり取りとか小道具のカメラとか細かいギャグも素直に笑えました。変にひねったストーリーとか、ヒーローがつらい過去とかワケありの宿命を背負っていたりとか、そういうのが最近かえって陳腐に感じられ始めていたので、この作品はストレートでむしろ新鮮でした。 6点(2004-12-02 11:10:30) |
5. 炎の戦線エル・アラメイン
「プライベート・ライアン」あたりでリアルな戦闘シーンに慣らされてしまった目には全体に地味に映るけど、戦争の不毛さがちゃんと伝わってきました。最後の別れの場面はなかなか良かったです。前に太平洋戦争に従軍した日本兵の手記か何かで読んだ記憶があるんですが、実際の戦争とは「穴を掘って、メシを食い、敵を待って、移動して翌日また穴を掘って…」の繰り返しなんだそうです。この映画にはたった一人で何人も敵をなぎ倒すスーパー兵士も出てこない。そういう意味でリアリティは十分にあるのかもしれませんね。 7点(2004-07-25 19:44:20) |
6. ひまわり(1970)
好きな映画です。みなさんが書いている通り。画面一杯にひろがる悲しいひまわりのシーンにあのBGM。世界中がきな臭い、殺伐とした空気に包まれている今、この映画に多くの人が涙を誘われることになんだかほっとした気分になる。戦争はどんなに時代が変わっても、政治体制が変わっても、必ず起きる。誰かが死に、誰かが涙にくれる。だから「起こしてはいけない」と常に自戒しなければならないのでしょう。この映画もそれを忘れそうになった時に見たい一本です。 10点(2004-03-31 22:06:41) |
7. オンリー・ユー(1994)
マリサ・トメイは好きな女優なので、点数甘めです。彼女はこの映画で米国のプレスから「オードリーの再来」とかもてはやされたんじゃなかったかな。マリサのショートカットの黒髪に大きな黒いひとみ、恋の舞台はローマという風に「ローマの休日」にオマージュを捧げているのは明らかだけど、こっちはドタバタコメディにハッピーエンド。ロバート・ダウニーとまだ売り出し中だったマリサが主演なのでB級感は残りますが、演技派のマリサのコメディエンヌぶりと美しさに降参する。恋と美食に人生をおう歌し、おおらかでお人好しのイタリア人たち。美しい風景。結構楽しい映画です。それにしても主役の2人はやっぱりイタリア系なんだろうか。マリサ・トメイは美人(しかも個性派かつ演技派)女優だと思うのだが、今ひとつ主役級の女優にはなれなかった。どうしてかなあ…。 7点(2004-03-23 16:54:29) |