1. ニキータ
《ネタバレ》 初鑑賞は社会人1年生の時に映画館で。 「リュック・ベッソンの新作だから」と言う理由で銀座の映画館に馳せ参じ、 その斬新さ・面白さに全身鳥肌状態となり、鑑賞を終えたその足で山野楽器のCD売り場でサントラ買って帰りました。 この手の暗殺者ものにありがちだった定説を見事にぶち壊し、粗削りが過ぎるものの強引にラストまで持っていくその勢い。 リュック・ベッソンの若さが炸裂した傑作だと思います。 特に秀逸なのはラストシーン。「手紙は破いた」と言うマルコの台詞にニヤリと笑うボブ、 「お互い寂しくなるな」「ああ」と言う短いやり取りの後に画面が暗転し、エンドロールが始まる... エリック・セラの"The Dark Side of Time"も他には考えられない位にベストマッチ。 この終わり方、映画館で一瞬唖然とした後で思わず「かっちょえ~」と口走ってしまいました。 [映画館(字幕)] 10点(2024-07-23 14:25:46) |
2. フェラーリ
《ネタバレ》 観応え有り。 但し、「RUSH プライドと友情」や「フォードvsフェラーリ」の様なスポーツ系のノリを期待して観ると肩透かしを食らう事必至。 往年のフェラーリのレーシングマシン達の雄姿(どうやって撮影したのか? 本物?CG?レプリカ?)は堪能出来るが、 映画の大半はタイトル通りエンッオ"コメンダトーレ"フェラーリの人となりと、彼を取り巻く二人の女性の描写に終始。 本作では敢えて彼の一生涯の中でもごく一部の期間だけを取り上げているので、間延びする事も無く濃密な雰囲気を感じる事が出来る。 それにしても、このフェラーリと言う男は一般常識的にはとんでもない駄目男である。 会社を一緒に起こした正妻との中は冷え切り、愛人とその息子には人間性の有る一面を見せる一方、正妻と刹那的な情事に及んだりもすると言う、とにかく得体の知れない訳の判らない男。 もっとも、ある意味「不完全」な男だったからこそ、世界に名だたる超高級スポーツカーマニュファクチュアラーを興す事が出来たのかもとも思う。 自社の創業者の「恥部」をこうして伝記映画の形を借りて映像化する事を、よく残された人たちが許可したものだ。 現フェラーリ社副会長のピエロ・フェラーリは、正妻が亡くなる事で会長職に就いた。 それまで永年の間、それこそ本作で描かれていた時期から相当な期間、彼とその母(フェラーリの愛人)は辛い立場に居たと思われる。 本作がピエロ氏からエンツォ氏への一風変わった復讐の一つと受け取るのは邪推が過ぎるか。 最後に、正妻を演じたペネロペ・クルスは物凄く良い演技をしていた。 [映画館(字幕)] 7点(2024-07-19 09:49:08) |
3. ロング,ロングバケーション
《ネタバレ》 良作。 身近に認知症や末期症状の病の状態の人がいる方は他人事として本作を観られないだろう。 それ位に物凄く重いテーマを取り扱っている作品ながら、百戦錬磨の芸達者であるドナルド・サザーランドとヘレン・ミレンの軽妙洒脱 ながら重厚な演技が絶妙にその重さを取り払っている。 幕引きの仕方は賛否両論あるかも知れないが、私的には崇高な終わり方だと思えた。 自分の身に置き換えた場合、私は周囲の人に迷惑を掛ける位なら自分の手で人生の幕引きをしたいと思っているので、 欧州の様な安楽死制度の合法化に付いて否が応でも考えさせられてしまう作品だった。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2023-10-20 16:53:03) |
4. 勝利への脱出
《ネタバレ》 本作で最高のシーンは、連合軍側名プレーヤー達の妙技に目を細めながら一人悦に入っていたマックス・フォン・シドーが、 ペレのオーバーヘッドキックを目の当たりにして感情を爆発させ、周囲の白い眼など眼中にせずスタンディングオベーションを送る所でしょう。スポーツの持つ崇高さ・偉大さを判り易く描いた名シーンだと思います。 それにしても、彼が演じた将校さんは試合後に・・・ やっぱり銃殺刑なんだろうなぁ(泣)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-08 13:23:49) |
5. ほんとうのピノッキオ
《ネタバレ》 至極真面目な語り口が何とも言えず心地よい作品。 世界中に名の知れた説明不要の童話を今の時代に送り出す作り手側の熱意が感じられる。 木彫りの人形、お猿さん、マグロ(!)、コオロギ等々、特殊メイクが本当に手が込んでいて感心。 今更ながら、「よく考えて行動する事」「人の忠告は聞く事」を肝に銘じたい。 それにしても、本作で久しぶりにロベルト・ベニーニさんを拝見した。 元々どちらかと言うと老け顔な風貌が、ライフ・イズ・ビューティフルの本国公開から実に22年(2019年時点)の歳月を経て 素敵な歳の取り方をしたんだなぁと思える味のあるお顔になられていて、これだけでも加点。 私、ロバに弱いんです。 長いまつ毛に愁いを帯びた黒い瞳。何故かいつも悲しそうに見えるあの顔。 お金と場所が有るなら家族に迎え入れたい動物の筆頭です。 なので、足を怪我したロバ(=ピノッキオ)が石を括りつけられ海に沈められるシーンは見ていられませんでした。 海中シーンは当然CGなのかと思いますが、崖の上で見せる恐怖の仕草は本物のロバなのかと。 映画とは言え、胸が締め付けられる一瞬でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-02-02 16:51:18) |
6. ジョン・ウィック:チャプター2
《ネタバレ》 亡き妻との思い出が沢山詰まった我が家を爆破された事への復讐譚。 キアヌ扮するジョン・ウィックのキャラは冴えているが、 作品自体のパワーは1作目には及ばない。 設定では前作から5日後の出来事なのだそうな。 ここは物凄く斬新。 3作目は劇場に観に行こうかと思う。 [インターネット(字幕)] 5点(2019-10-15 13:39:05) |
7. 沈黙 ーサイレンスー(2016)
《ネタバレ》 原作未読・予備知識ほぼゼロで鑑賞。 満員(!)の映画館で濃密な時間を堪能。 良かれと信じて赴いた異国の地に於いて経験した筆舌に尽くしがたい出来事の数々。 幸せにしたいと思う市井の人々が、自らのアイデンティティとも言える信仰の存在により命を落とす。 私だったら間違いなく発狂してしまうだろう。 この地球上に様々な国籍・人種が存在する様に、信仰/宗教も多種多様に存在する。 その意義は一様に「人を幸せにする事」である筈。 形では無い、ましてやお布施や寄付額の大小でも無い、信仰=自らの心の中に存在する「何か」と、 人それぞれどの様に相対するのか? 貴方ならどうするのか?? 私はマーティン・スコセッシから強く問いかけられている様に思えた。 私は信仰・宗教に対し特に敬虔な人間では無いが、人間に取って「心の拠り所となるもの」とは何なのか? と言う事を強く・深く考えさせられた。 ロドリゴは死出の旅に出るまで、あの様な辛い体験をしながら、祖国に帰れない運命をも受け入れ、 心の奥底で自らのアイデンティティである信仰/宗教を失わず、文字通り周囲にその事を「沈黙」し続けて生きてきた。 日本式に火葬されるラストシーン、私には棺を燃やす炎よりも強く、静かに燃え盛るロドリゴの内なる焔を垣間見た思いがした。 このラストシーンは賛否両論有る様だが、私にとっては身体が震えるほどのものだったと明言しておきたい。 登場する俳優陣は皆、素晴らしい演技をされている。 2016年を代表する映画の一つで有る事は間違い無い。マーティン・スコセッシに感謝。 [映画館(字幕)] 8点(2017-02-21 18:09:01) |
8. 鑑定士と顔のない依頼人
《ネタバレ》 「人間性善説」を固く信じる私の様な人間に辛口のキツい一発をお見舞いする、捻りの効いた怪作。 さすがはトルナトーレ、簡単な作品は創らない。 主人公の人となり… 極度の潔癖性に加え、かなり悪どい狡猾な奴…である事を、 台詞では無く演技で観せる冒頭の描写でつかみはOK、 後は主人公と同様に、「この後、どうなっちゃうの?」 と思わせる進め方もなかなか。 肝心の詐欺自体が余りにも出来過ぎな感は否めないが、 本作はある意味一つの御伽噺なのだから、目くじら立てずに悲惨すぎる主人公の描写を楽しむべき。 巷のチープな詐欺映画とは一味違う。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-13 17:22:34) |
9. ラストエンペラー
《ネタバレ》 【再投稿 2023/5/8】 「前書き」 まるでタイミングを合わせたかの様に、心酔していた日本の偉大なミュージシャンが二人も亡くなられてしまった。 悲し過ぎる。 その中のお一人、坂本龍一氏のファン達へ贈り物の様にオープンした「109シネマズプレミアム新宿」。 音響監修だけでなく館内で流れる各種音楽も坂本龍一氏自らが手掛けたと言う。 入場料金は最も良い席で6,000円もしたが、坂本龍一氏への感謝とご霊前の意味も含め奮発した次第。 「本題」 映画鑑賞と言うものは、やはり鑑賞した時の自らの環境や、直面している問題・悩み、その時までに新たに得られた知識によって より芳醇な経験になるのだと言う事を改めて強く再認識した次第。 坂本龍一氏が手掛けた音響は素晴らしく、贅沢極まり無い豪華なシートの座り心地も良く濃密な3時間を過ごす事が出来た。 残念ながら坂本龍一氏の演技は大根(偉大なる)だったが、それを補って余りあるほどに見応えの有る作品だった。 奮発してよかった。 【前回投稿 2010/7/13】 私に取って、鑑賞する事で気持ちが「昇華」した作品の一つ。 23年前、YMOのファンだった私は「坂本龍一が音楽を担当しているから」という不遜な理由だけで劇場に足を運んだ。 確かに音楽は素晴らしかった。 だがそれ以上に、近代日本史に興味が有った事も手伝い、時代に翻弄されながらも気丈に生きる主人公に感情移入する自分が居た。 終盤、観光地と化した宮殿で主人公が王座の後ろから楽しそうに壷を取り出し、中からコオロギが出てくる~主人公の姿が何処かに消える・・・と言う描写に私は身体の震えが止まらなかった。 壷の中のコオロギ=囚われの身だった主人公に他ならず、壷から出てくる事即ち主人公が精神的にも・身体的にも文字通り「解放」された事で有り、それまでの長い間の主人公の境遇を思い返し、言葉で表現する事が難しい感情の昂ぶり=「昇華」を感じた次第。 淡々とした展開で人に因っては眠くなる映画かも知れないが、良作です。 [映画館(字幕)] 8点(2010-07-13 10:28:18) |
10. 天使と悪魔
《ネタバレ》 冒頭のシーンから「ユアン・マクレガーが怪しい」と何故か感じてしまった。恐らく私は魂が汚れているのだろう。 原作、読んでみます。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-02 16:10:48)(笑:2票) |
11. グレート・ブルー
学生時代に新宿の映画館で鑑賞。 まだ公開してから一週間経っていなかったが客は私も含めてたったの3人。 ロザンナ・アークエットのキュートさに痺れまくり、ラストシーンでイルカと共に海に溶けていくジャックを見送りながら、私は感動が「昇華」する感覚を始めてこの作品で味わいました。 しばらくは本作品を独り占めしているかの様な優越感に浸る事が出来ましたが、その後のビデオ販売~「グラン・ブルー」公開を経て本作がどんどんメジャーになって行く事が妙に寂しかった。 私はロングバージョンよりも、こちらの方が好きです。 [映画館(字幕)] 10点(2008-01-31 22:01:13) |