1. スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする
《ネタバレ》 レイフ・ファインズの病んだ人ぶりが見事。スパイダーは、母親が父親を迎えに出かけたあの日から、両親が仲良くなってしまったことに耐えられなかったのだろう(真相は、ちょっと長めの夫婦喧嘩の仲直りをしたという程度だったと予想される)。それは、とりもなおさずスパイダーが母親の独占的な愛を失うことを意味するからだ。そこで、もともと精神病質のスパイダーは「現在の母親は以前の母親ではない」としてこの現実を合理化し、とうとう母親を殺害してしまったのである。殺害してしまえば、スパイダーにとって母の愛は永遠となる……という解釈を施してこの映画を鑑賞し終わった。その後にクローネンバーグのインタビューを見ると、スパイダーの病気は遺伝的要因によるもので、環境的要因は関係がない、というようなことを言っていた。なんてこった、病んでいるのはこんな解釈をしていたこっちじゃないか。もっとも、表現はそれがなさた瞬間から、その解釈は受け手に委ねられるのだから構わないだろう(と合理化してみる)。それはともかく、クローネンバーグにしては画面がきれいにまとまり過ぎな印象。 7点(2004-09-27 14:51:44) |
2. 冷たい月を抱く女
《ネタバレ》 この映画は、まずは予備知識なしに観ることだね。途中まで、すっかり騙された。それに、「隣の男の子」のトリックは思いもよらなかったよ。金のためなら何でもやります! というニコール・キッドマンの役柄に説得力を与えているのは、きっとあのお婆さんだ。エンド・ロールでアン・バンクロフト(ミセス・ロビンソン!)と気付きましたが、最近たまたま「卒業」を観たばっかりだったので、この間の歳月の経過が感慨深い。そういえば、ミセス・ロビンソンの演技も説得力あったよなあ。きっとうまい女優さんなのだろう。それに比べるとアレック・ボールドウィンは中途半端で今ひとつ。キャラクタ造形の問題かもしれないけど。 7点(2004-06-29 12:38:03) |
3. 誘う女(1995・米)
観て損したとは思わないけど、語り口がお話作りにうまく合致していないように思えるんだな。これは編集の問題かもしれない。もっと大胆に時間をズラしまくるとか、真相はほのめかす程度にしておくとか、語り口に合った構成はいくらでもできそう。リメイク版「サイコ」を観たときも感じたのだが、ガス・ヴァン・サント監督は、手法がオーソドックス過ぎるのではないか。1960年代くらいまでの映画だったら、これでいいかもしれないけど、90年代の映画でこれではね。少しフォローしておくと、全米ネット局のアンカーウーマンになるというのは、そんなに小さな夢ではないと思うよ。 5点(2004-06-14 13:07:24) |
4. CUBE
全編にわたり、観客に緊張感を強いる映画。箱設計者のような感性(外の世界は生きる価値がない)を持っている人は、この映画の雰囲気にハマっていけるかも。逆に、そこが鼻持ちならないと思う人には(あの警官はそんなタイプだな)、ちょっと退屈でしょうが。終盤は勢いで持っていったようなところがあり、作りの粗さが若干みられました。が、それも映画におけるストーリーテリングの技法ということで。 8点(2003-06-02 22:17:58)(良:1票) |