1. 複製された男
《ネタバレ》 原作は未読です。自分的には、原作を先に読むか?はたまた原作を後に読むか?問題というのが長年ありまして、ノベライズ版の小説だったりすればどっちでもいいのですが(出来れば映画が先)、本作のように原作者はノーベル文学賞作家なんていう場合には、やっぱし原作に敬意を表して先に読むべきかと思ったりもします。 つまりは後悔しきり。これは原作を先に読むべきでした。若干ミスリード気味の邦題があるから尚更です。SFっぽ過ぎますって、邦題。 結局、全てはひとりの男の意識下から出ることなく、二人の男は同一人物の思念の産物。いや潜在意識の産物?潜在意識そのもの?妄念の具現化とでも言いましょうか。 とは言え、矛盾も避けられないです。それぞれの妻の存在。妻も同一人物?主人公の意識下で全てが成立しているのであれば当然の如く同一人物かも知れません。作品の全体が彼の妄念そのものであるならば矛盾もないのですが、仮令断片的にでも覚醒している部分があるのであれば、妻の存在は矛盾をはらみそうに思えます。自分以外の者の思念において死亡してしまう訳ですから、彼女自身の意識の行き処はどうなっているのでしょう?そもそも彼の思念が作り出した虚像・偶像だから関係ない? 秘密クラブで裸女のハイヒールで踏みつぶされそうだった蜘蛛。部屋全体を満たすほどに巨大化した蜘蛛。ハイヒールも蜘蛛も重要なアイテムとして作品テーマの一端を暗喩しているのでしょうけれど、かなり解りにくいですね。他の数々のシーンやアイテムも然りです。とてもじゃないけど自説を披露する自信などありません。 心理学的、或いは哲学的なテーマを映像として表現することの難しさを感じさせてくれた一本でした。ジェイクさんと二人の美女の好演に救われた作品のように思えてなりません。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-09-20 11:15:43) |
2. でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード
《ネタバレ》 実に罪がなくて毒がなくて安心して観ていられる動物もの。あくまでもファンタジー、夢物語。どうしてデッカクなったの?とか、デカ過ぎてアパートのドアから出れるわけないし、とか、現実に照らし合わせて疑義を申し立ててはいけませんね。 涙なしでは観ていられないような動物ものは多々ありますが、実話ものとか感動巨編とかだと逆にお約束感が強過ぎるように感じてしまい、個人的にはイマイチ感情移入出来なかったりしてしまうので、フィクションに徹した本作のような作品の方が好みですし感動もしますし何なら泣きます。 子犬が巨大化するというアイディア一発で突っ走ってしまったという感は否めませんが、自称トリ馬鹿の私は、昔から愛鳥が100倍ぐらいになってくれたら羽毛に埋もれて日々安眠だなぁなどと思うこともしばしばあり、この巨大化アイディアには賛同するところです。加えて、小さくてもデカくても可愛いクリフォードに免じるという意味も含めて7点献上します。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-31 23:14:35) |
3. オーディナリー・デイズ 失踪した娘
《ネタバレ》 物語を登場人物による異なる視点で描いていくという手法自体は特に目新しいものではありませんが、オムニバス作品でもないのに各パートの監督が異なるというのは珍しい手法ではないかと思えます。が、パートごとに視点が異なると言うよりシンプルに中心人物が異なっているだけとも言え、基本は3人称で語られているように思えます。 ただし、観ていて一番感じてしまったのは、本作の特徴であるその部分よりも兎に角世界が狭いという点。冒頭シーンでいきなりカーラとブライトビルが出会っていることはまだしも、捜索活動中のブライトビルが投げたマグボトルがカーラのクルマの屋根に落ち、しかも中身を飲み干したカーラが命拾いとか。どんだけ狭い世界で生活してるの?てか都合良過ぎでしょ?みたいに感じました。 台詞なしで語られる後日談も結構お気楽感が出てまして、両親も刑事夫妻もハッピーハッピーって感じですし、一生に関わる大事になってしまったカーラも、また走れてハッピーみたいにニッコリしたりして。物語としては決して軽くも薄くもないと思えるのに、出来上がった作品としては相当ライトな雰囲気になっているのでは? 決して面白くないとは言いませんが、少しばかり肩透かしを食った感が否めず5点献上に留めます。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-06-26 14:12:59) |
4. エスター
《ネタバレ》 観よう観ようと思いつつも微妙な尺の作品なので、鑑賞作品(ホラー系)を選ぶ度に手頃な尺の作品を観てしまっていた私。それもこれも本作が「ホラー」であると認識していたからで、今回やっと意を決して?観てみれば一番の感想は「ホラーじゃないじゃん!」でした。確かにWikiとかでホラーの定義を参照すれば本作は紛れもないホラー映画なんでしょうけれど、あくまでも個人的カテゴライズでは「サイコサスペンス」なんです。もっとも、「ホラー」「サスペンス」「スリラー」の境界なんてものは元々無いに等しいような気もしますが。 などと意味のない拘りで書き始めてしまいましたが、「ホラーじゃないじゃん!」の趣旨は「恐くないじゃん!」でして、それは決して「つまらないじゃん!」ではありません。実に楽しく鑑賞出来ました。これだけの有名作ながらネタバレ記事を回避し続けて来たことも功を奏したようで、肝心要の種明かしは今回の鑑賞で初見でした。 斬新なアイディアとは言えないでしょう。しかし、それを巧みに包み隠しつつしっかり伏線は張る。そして見事にその演出を生かし切ったイザベルさんの怪演。称賛されて然るべき出来栄えだと思います。 子どもの持つコワさを見せつつ、実は本当にコワいのは大人というお話。登場する子どもたちは皆子ども然としています。子どものコワさは無邪気にも通じるある種の清らかさであって、大人の濁り切って垢まみれのコワさとは本質的に違うもの。エスターのコワさが子どものソレから大人のソレに転じる流れが素晴らしかった。 少々しつこいような演出や多くの皆さんが指摘しているラストシーンの良し悪し等々、気になるところは少なからずありますが、約2時間飽きることなく楽しませてくれた作品にほぼ8点の7点献上します。 ちなみに、少々変化球気味の原題よりもさりげない邦題の方が良いかと思います。原題は、せめて不定冠詞を付けて欲しいところです。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-05-13 11:24:27)(良:2票) |
5. 美しい湖の底
《ネタバレ》 時間逆行型の手法を用いた作品を鑑賞するのは初めてではありませんが、一度観た限りでは何かしっくりと来ず全体像もボヤけたまま。もう一度見直して漸く了解した感じです。私の理解力が乏しいだけなのか?? 一見物語的には見応えのある感がするものの、仮に時間を逆行させずに描いたならば特に意外性がある訳でもなく、一番まともそうな人物が実は一番悪党でしたという一種王道的なミステリー。それを時間を逆行させて種明かしをしていく演出と、随所に挿し込まれるコメディテイストによって観る者を惹き込む作品に仕上げたという点で作り手を称賛すべきかなと思うところです。 ただ、それにしても少々描き込みは足りないように思えます。エドが自らの子と思っていた子どもが実は…という意外な事実を用意しつつ、その子どもがどういう経過で爆発事故に巻き込まれたのか、ステファニーとジークは何故エドが子どもを殺したと言っているのか、また判事の弱みのテープの件もサラっとしすぎているような。 短めの尺の中であれもこれも入れ込むことは、かえって作品の魅力を損なってしまうことになるのかも知れませんが、もう少し丁寧な描き込みが欲しかったと思うところです。 さらっと観るには面白い作品。ミステリーとしての深みが欲しいという方にはお薦めしにくい作品。6点献上します。 ちなみに、保安官の姪・サリー役のイザベル・ダヴという子役さんがとても可愛らしかったです。その後の出演作が見当たらないのが残念。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-05-04 00:01:24) |
6. パラレル 多次元世界
《ネタバレ》 パラレルワールドと標榜しつつもタイムパラドクスものとの区別がつきにくい構成の作品。基本部分の説明はほぼすっかり割愛されているので、本作をもってして「SF」と言って良いのかどうか、微妙です。 そもそもこの姿見(鏡)はどういう仕組みでパラレルワールドと繋がっているのか?角度を変えると何故繋がらなくなってしまうのか?何故パラレルワールドでは基本の世界の180倍の速度で時間が進行しているのか?(本来は先行他作等で見られるように逆では?)全てのパラレルワールドが180倍速なのか?だとしたら何故基本の世界だけが異なるのか?等々、数え上げればキリがないというくらいに謎だらけの設定です。 そんなことはどうでもいい。肝心なのは結果だ、ということであれば説明不要という理屈も無きにしも非ずですが、それにしては都合よくパラレルワールドを利用し過ぎています。他の世界の人間とのスリ替えだとか技術や表現の持ち出しだとか。時空を跨いで併用すれば時間や空間に必ずや不整合が生じるはず。重量バランスが破綻してしまうとか時間に歪みが生じてしまうとか。その辺はほぼ無視して物語は進行して行きます。だいたいからして生身の肉体がどうして耐えられるのか? 理論的とか科学的とか、この手の作品の下支えをしてくれるべき基本的構造が欠如または崩壊していることが本作の最大の弱みかなと。いっそファンタジーやコメディ、場合によってはヒューマンドラマに特化してしまえば気にならなかったかも知れませんが、あくまでもSFサスペンスとして鑑賞しようとしたために面白味を感じられなかったというのが結論です。 ただし、パラレルワールドを時間軸に重きを置いて表現した、と言う部分にオリジナリティを感じたので若干甘めの6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-02-22 15:08:10) |
7. パペットシャーク
《ネタバレ》 基本的には劇中劇的にオムニバス形式を採っている本作。ただし、メインのストーリーを筆頭に、どの話についても特筆すべきものはない、と言っても過言ではないでしょう。要所要所?で語られる蘊蓄的な事柄も、作り手の過去作を観ていなければピンと来ないものばかり。要は、観る人を大いに選ぶ作品です。監督の悪ふざけに同調して初めて楽しめる作品とでも言いましょうか。 殆ど監督家族によるホームメイドビデオ作品とでも言うべき本作は、パペット(どこかで見たような造形)によるサメ映画という飛び道具的性格のみが存在意義ではないかと思います。 ただ個人的には、予算がなくてCGも活用出来ず、窮余の一策としてパペットの鮫を使う、というのであれば何とか理解出来るし微笑ましくもあります。が、ここまで潔くパペットのみで作られてしまうと引いてしまうというのもあり、止むを得ずパペットを使用するのと、パペットだけで作って皆を驚かせてやろう、ウケを狙いに行こう、というのは別物だと思うのです。 本作は狙い過ぎかも知れません。パペットの使い方はそこそこ巧みですし、人形そのものの出来も良いと思います。オリジナリティという意味では、大丈夫かな?という不安もありますが。 もう少し何とかならなかったものでしょうか?小ネタに頼らず大真面目にサメパニック作品をパペットで作り上げてみせるとか。それは予算的に無理かもですね。それでも、折角のアイディア。もう少し楽しませて欲しかったです。でも、作り手はこれで満足しているのかも知れませんね。 (追記)監督さんの登録要望をしようと思ったものの、ブレット・ケリーなのかスコット・パトリックなのかケリーコレクティブなのか、いずれにしても同姓同名の事実関係からして確認しきれず、要望するには至りませんでした。 [インターネット(字幕)] 3点(2024-01-25 00:28:08) |
8. ウィジャ・シャーク2
《ネタバレ》 前作の激しいB級(Z級)感も記憶に新しい「幽霊ザメ」。本作では前作のヒーロー、アンソニーが愛妻クレシーダの「愛の力」によって地獄から蘇り、再び超能力を駆使して「幽霊ザメ」と激闘?!かと思いきや、ビル街で「幽霊ワニ」との肉弾戦! 若干前作よりクオリティが高くなった?と言いたいところですが、むしろパペット鮫はチャーミングになりつつあるようで、対するパペット鰐も決して恐くないです。超能力パワーも前作どおりで特に進歩なし。さりとてコメディとも言い切れず、作り手は低予算に苦しみつつも結構大真面目に作っているようにも思えたりして。 そんな不安定感極まりない印象の際立つ作品なのでまともにレビューも書けず、かと言って○ソ映画と切って捨てることも出来ず、結局振り返ってみれば思いのほか楽しんでいる自分が居た、と言う次第です。 極めて個人的な感想としては、愛すべき「サメ映画」(今回は「サメ映画」とカテゴライズするのもどうかとは思いますが)ですが、少しでも客観的に評価しようとすれば、3点献上が妥当或いは限度かなと思うところです。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-12-22 11:30:52) |
9. ラベンダー 妖精の歌
《ネタバレ》 田園風景や古家など全編通じて美しい映像が多々登場します。冒頭のストップモーションを組み合わせた事件現場は、凄惨な事件なのにそれを感じさせない美しさ。心理的な部分にスポットを当てたサスペンス劇が始まるのかなとの期待が高まります。 が、蓋を開けてみれば幽霊譚と評しても大きく間違ってはいないような展開。ヒロインの生家に舞台を移してからは、霊的存在・現象がストーリーを引っ張る感じ。冒頭の映像表現に期待させられた流れは、既視感のある、と言うか結構オーソドックスな「霊が助けてくれました系」作品に転じます。 ただ、それは決して否定的な感想ではありません。特に目新しくはないストーリーではあるものの、必要以上におどろおどろしくはなく、必要以上に謎めいた伏線が散りばめられてはおらず、必要以上に深刻さや悲惨さが強調されることもありません。ほどよく纏まったシンプルな作品、サスペンスあるいはミステリーホラーの王道的な物語と言えそうです。 強いて言うならば、と言うかそこが一番の問題点なのですが、ラストシーンはどう受け止めていいものやら。真犯人を捉えたまでは良いのですが、監禁して放置?殺して復讐?それとも、あの後警察に通報して逮捕してもらったとか?作り手はドラマチックなラストで終えたかったのかも知れませんが、受け取りようによっては結構なバッドエンドかと…。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-11-29 12:17:15) |
10. イン・ザ・トール・グラス 狂気の迷路
《ネタバレ》 評価の分かれる作品と思います。必要以上に謎めいた雰囲気を詰め込み過ぎて、結果「不条理系」としか言いようのない作品になってしまっているようにも思えますし、逆に複雑に絡み合った超感覚的な世界観を映像化すると必然的にこうしかなり得ない、とも思えます。 いずれにしても、草原の中に不気味に佇む黒い岩の存在が一番のポイントであることは間違いないでしょう。触れることによって具体的に何がどうなるのか、触れた人間にどんな変化が訪れるのか、そこは今ひとつ明確には映像化されていないし説明も漠然としています。ロスとナタリー、トービンの言動・行動から推測は出来ますが。 ただ、個人的には脳裏に浮かぶのは「2001年」のモノリス。モノリスとは異なり、人類の知恵と創造の元になるというような壮大で絶対的な存在とは思えませんが、草むらという特殊な環境を支配する神的な存在なのでしょう。不気味な顔面草人間たちは、黒い岩の創造した草むらの中でのみ存在する人類、といったところでしょうか。 草むらの世界を司る黒い岩は、そこに迷い込んだ者の行動や思考を意のままにするとともに、命や時間さえ制御します。一体、どこから来ていつからそこにあるのか、刻まれた文字は誰の意志を示すものか、作品中に明確な答えはありません。 しかしながら、少なくともベッキーとカル、そしてトラビスにはそれぞれのあるべき姿を示してくれたように思えます。そういう意味では、多分に宗教的とも受け取れる作品とも言えるでしょう。特にトービンの在り方を見る限り。 原作は未読。登場人物の設定は違うようですね。映像化された本作に関する限りでは、自分なりに多様に考察できるタイプの作品は好物なので7点献上します。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-10-22 12:43:35) |
11. ピース・オブ・マインド
《ネタバレ》 パックスの見ている、語りかけられている亡霊たちは本当に所謂幽霊なのでしょうか? 幽霊など存在しない!という人からすれば精神疾患故の幻覚・幻聴ということになるでしょう。あくまでも彼自身の心が作り出しているもの。自殺を求める亡霊の言動は彼自身の自殺願望でしょうし、一緒に居たいと求め続ける元カノの亡霊は、彼女の自殺を悔いて止まないパックス自身の願望。概ね説明がつくように思えます。 ただ、歌手志望の若い女性については、パックスはその死を知らないのではないかとも思われ、亡霊の登場によって死亡した事実を知ったようにも見受けられます。だとすれば、彼の周囲の亡霊たちは亡霊に違いないのでしょう。しかし、省略されているだけで彼は彼女の死亡(自殺だったかどうかは不明)の事実を知っていたのかも知れません。 要は、亡霊たちは幻覚と見ることも亡霊と見ることも出来るわけです。ですから、そのこと自体は本作の核心ではないということだと思います。 病んでしまった、或いはとり憑かれてしまった彼の魂が如何に救われるか?方針を転換し、彼の全てを受け入れるようになった主治医による治療効果なのか?はたまた、純粋な彼の精神を只管に受け入れようとするモリーの愛なのか?これもまた、どちらも成立するように思えます。 どのように受け止めるか、作り手は観る者に託しているようにも思えました。 主演のローグ・ジョンストンという俳優さんは初見ですが、自然な演技に好感が持てた点に+1点の7点献上します。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-09-26 17:51:14) |
12. アンチ・ライフ
《ネタバレ》 公開当時の「アルマゲドンから22年、ブルース・ウィリス再び宇宙へ」なんつうコピーが頭に残っていて、え?あのハリーが主役なの?などという疑問と混乱が脳内を巡ってしまいました。んな訳ないですよね?私が浅はかでした。 「地球」と「人類滅亡の危機」そしてブルースさん以外、「アルマゲドン」とは縁もユカリもない本作。何とも既視感に満ち溢れた作品でした。 未知のウィルスによる人類滅亡の危機、別天地となる惑星への選ばれし人々の移住計画、船内で乗員が冬眠中に起きる異常事態、謎の寄生生物による人体と精神の乗っ取り、寄生された人間は狂暴で死なない、そして英雄的殉職者によって主人公と恋人が脱出、辿り着いた安住の地には新たなる脅威と恐怖。などなど。 それぞれにコレはあの作品、アレはあの作品と、既視感の原因がアッサリ判明。つまり、オリジナリティが感じられないのです。 元ネタ的な類似作を知らなければ、否、知っていても、決して面白くない駄作とは断じられないと思います。結構楽しませていただきました。されど高評価していいものかどうか?やはりもう少しオリジナリティが欲しかった。金属さえも溶かしてしまう超強力洗剤とそれを原料とした密造酒だけでは何とも淋しい限りです。 如何にも続編ありみたいなエンディングですけれど、今のところ予定は聞きません。でも、あのエンディングで続編を作ったら、またしてもアノ作品みたくなりそうなのでシリーズ化は望みません。そんな感じの微妙な5点献上です。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-08-21 10:50:00) |
13. ゾンビ・リミット
《ネタバレ》 冒頭いきなりのゾンビカットで始まるものの、物語としてはヒューマンストーリー感がかなり強いですね。 医師としての倫理に背を向けてでも夫のために貴重な治療薬を不法に確保してしまう妻。偶発的かつ正当防衛による射殺でありながら秘密の暴露を避けるために警察を呼ばず死体を遺棄してしまう妻。妻に一目会いたいがために自らを拘束し死への恐怖を必死に耐える夫。親友のために彼の妻が必死に集めた貴重な薬剤を自らの妻の命を守らんとして奪う夫、等々。いずれも、常軌を逸した混乱の中で愛する人のために選んでしまう究極の選択。 そのあたりの心の移ろいはそれほど丁寧には描かれていないものの、八方塞がりの劣悪な状況に必死に立ち向かおうとしている人間の強さと弱さはしっかりと表現されていて、思いがけず出逢った佳作でした。 それだけに、復讐に燃える身重の妻のラストシーンが必要なのかどうか?少なからず疑問に思え、その分マイナス1点です。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-07-06 21:33:21) |
14. パペット・キラー
《ネタバレ》 幼い頃から日々ホラーばかり見せられてれば(それもスプラッター系)、そりゃ心の発達に影響が出ますよ。ジェイミーが挙動・言動不審な高校生になっていても何ら不思議はありません。彼女(唯一の理解者?)がいるというのが奇跡かも。 そして、たった一人?の親友がパペットのサイモンで、幼少時のジェイミーなりの願いから我が血によって命を与えたくなってしまったというのも理解出来ます。 それ故、嫌いだった継母が行方不明になったのは、自分が命を与えた親友のサイモンが殺してしまったから、と今に至るまでずっと信じているというのも頷けます。 更に、思い出の?別荘に恋人や友だち(本当の友だちなのかは判りませんが)と連れ立って夏休みを謳歌したいという気持ちも解ります。僕にはこんなに仲良しがいるんだ。どうだい、サイモン?みたいに。 つまりは、決して目新しいものではないにせよ物語の筋としては真向批判したくなるような作品ではないのです。 何が問題かって一番の問題はキャスティングじゃないでしょうか?主人公も彼女も友人たちも、どう見ても高校生じゃありません。保護者会とまではいかないまでも大学生にだって見えないです。見始めて何よりもこのキャスティングに唖然としてしまい、その後は作品世界に入れず、出演者の演技やら各シーンの演出やらストーリーの展開やら、何かにつけて???だらけ。 サイモンを某有名狂暴呪いの人形の真逆をいくようなオトボケハンドパペットにすることでひと味違うコミカルなホラーに出来そうなのに、はたまたセクシーなダイナマイトバディのお姉さん方が活躍してエロティックなホラーにも出来そうなのに、すべて空振りといった感となってしまうのは、個人的にはひとえにキャスティング故です。 結果、どこに寄せて作り上げたらいいものか方針決定しないままに製作してしまったような不完全燃焼感溢れる作品に思えました。なので辛めの評価です。 ちなみに、ジェレミーのお父さんは何でラストに登場したのでしょう?何しに来たの?ほぼ存在感なし。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-05-01 13:14:59) |
15. キラー・ジーンズ
《ネタバレ》 前回鑑賞した「キラー〇〇」は「キラー・ソファー」。あの作品は原題も同じだったけれど、本作品の原題は「Slaxx」。しかも「スラックス」であれば「Slacks」なのに何故か「xx」。更に、ジーンズは「Slacks」の範疇じゃないし。これってスラングか何かなのでしょうか? いきなりタイトルが気になってしまいましたが、題名が謎なのとエンディングロールの特別映像が今ひとつスベっていることを除けば、短か目の尺だということとも相まってなかなかの面白さです。 キラー・ジーンズがいきなり犠牲者第1号を文字通り血祭りにあげるかと思えば、しっかりお掃除した上に獲物を綺麗に収納するあたり、ブラックながらしっかりコメディ要素も用意されています。キラー・ジーンズを必要以上に怖ろし気に描いていないところに好感が持てます。 インド生まれの高級綿で作り上げられただけあって往年のインド映画名作を彷彿とさせるようなキラー・ジーンズのダンス場面など、笑いの要素を備えたコメディ作品であると同時に、綿花収穫に関わる大企業の非人道的な経済活動に切り込む社会派作品でもあると言う骨太(?)なホラー。しかもエンディングには超悲劇が待っているというコメディらしからぬ正統ホラーな結末も控えています。 思わぬ佳作に出逢えました。7点献上です。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-04-04 10:49:22) |
16. シェルター 狂気の秘密
《ネタバレ》 ※思いっ切りネタバレです! 何のひねりもない原題(直訳すると「危険な場所」かな?)だと内容がまるで分かりませんが、観終わってみると邦題のサブタイトル「狂気の秘密」には二つ意味がありそうです。 ひとつはビーの「狂気の秘密」。逃げて来た女性への仕打ちですね。一定期間監禁し、おそらくはその後殺害してコヨーテの餌にしてしまう。ただ、詳しく語られることはないので彼女が何故そんな行動に走るのかは想像するしかありません。それはそれで短い尺の作品としては良いのかも知れませんが、ここは多少尺を延ばしてでもビーの心理や背景を描いて欲しかったです。 もうひとつは母娘の「狂気の秘密」。暴力夫殺害後の後始末は描かれているものの殺害シーンはエンディングまで登場しません。登場してなるほど納得でした。 逃亡中の車中もシェルター生活開始後も、二人の間には微妙な距離感というかズレを感じていましたが無理もないことですね。ダーリーンは夫の存在から逃れた後もビクトリアに新たな恐怖或いは不安を抱いていたということでしょう。 一方ビクトリアも、肉切り包丁や果物ナイフを寝床に忍ばせていないと安眠すら出来ない。父が母に暴行を加える家庭内で身に付いた自己防衛手段なのでしょう。なるほどPG12ですね。 短めの尺の中でシンプルに纏め上げられた作品。上に書いたようにもう少しビーの秘密や心理、その背景を描いて欲しかったと思いやや低めの6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-04-04 10:43:05) |
17. ルーム
《ネタバレ》 理不尽な犯罪によって7年もの間自由を奪われ性暴力に晒され絶望の淵に立たされながらも、望まない妊娠だったとは言え健やかに育っていく我が子に一筋の光を見出し生きる力を取り戻した若い母親。 生まれてから5年間、日々暮らす小さな部屋こそが全世界であり自分以外の現実の存在は母親と定期的に訪れる男性だけという異常な状況にありながら一歩ずつ成長を重ねている息子。 実話をモチーフにした原作の映画化と考えると、尚更にこの悲惨で恐ろしい事件は重く心にのしかかって来ます。 作品の前半は監禁された母子の異常な日常が描かれます。敢えて事件の経緯や実態は具体的に描かず、妊娠し自力で出産し赤ん坊を育てた状況も全く描かれていません。このシンプルな表現が事件の異常性や悲惨さを逆に強く訴えて来ます。 強いて野暮なことを言わせていただけば、脱出劇が少しばかり上手く行き過ぎたこと。とは言え、そこを描き込み過ぎても作品全体を壊してしまいかねないですね。あの流れで良かったのかも知れません。 そして救出後の後半。恐ろしい犯罪の被害者である母子がそれぞれに異なる視点や立場から異なる変化を見せて行きます。 母親はかつての生活を取り戻そうと実家への帰宅を急ぎ、結果として自らの現状を真正面から見つめることになってしまい心を病んでしまいます。息子は見たことのない世界に怯え、生まれてから母親とずっと過ごして来たあの部屋に戻りたいとさえ思ってしまう。 共に運命共同体の如く暮らして来た二人が、部屋で暮らす以前の日常の有無により部屋の外の世界の受け止め方が大きく異なってしまう。脱出したことでかえって希望を失ってしまう母親と、見るもの全てから日々学び続ける息子。部屋では母親が息子の絶対的な守護者でしたが、外の世界では部屋との繋がりを断ち切ることの出来た息子が母親を救います。 二人を取り巻く人々。母親の両親は既に離別しています。7年ぶりに帰って来た愛娘と5歳の孫。それぞれに複雑な心境をもって迎えますが、7年の間に二人の間に何があったかは、会話や表情から浮かび上がって来ます。 そして祖母の新たなパートナー。実の娘や孫ではないからこその冷静で暖かな眼差し。母子の再出発になくてはならない存在だと思います。 限定的に捉えればハッピーエンド。後半のドラマに救われました。非常に丁寧に描かれたドラマ。子役は勿論のことオスカーに輝いた母親役を始め出演者の演技が素晴らしかったです。ひさびさに10点献上します。 [インターネット(字幕)] 10点(2022-12-28 11:35:05)(良:1票) |
18. フェイシズ(2011)
《ネタバレ》 相貌失認をモチーフにしたミステリーということで、どんな仕掛けを用意してくれるのか期待していたのですが、肝心のストーリーがいまひとつ盛り上がらず拍子抜けの感があります。早々に真犯人も浮かび上がってしまいますし。(実に解り易い) ヒロインが顔の識別が出来ずに苦しむ様は、ビジュアル的にはかなり丁寧に造り込んでありますが、故意なのかどうか分かりませんが結構似ているタイプの役者さんをキャスティングしているので紛らわしい。折角の映像的造り込みがイマイチ生きていないような気がします。 ヒロインと担当刑事のロマンスもいけませんね。運命の人だから識別出来るみたいな設定は、折角の緊迫したミステリーを安っぽくしているような。だいたいからして懲戒処分モノの行動ですよ。更に、ラストの対決シーン、そして大ラスの子ども生まれましたシーンも、何だか予定調和に徹してしまった感がします。 相貌失認をビジュアル化する段階で製作陣は力尽きてしまったのか。魅力的な設定をもっと生かして欲しかったと思います。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-12-25 22:55:07) |
19. ANON アノン
《ネタバレ》 作品のテーマとも展開とも全く関係ないのですが、いきなり主人公が煙草に火をつけるのを見て萎えてしまいました。高度な科学技術によって人間の記憶までが一括管理されている未来社会において、公共の場の喫煙て有り得ないのでは?てか、そもそも喫煙文化が存続してる訳ないのでは? 道路事情も変です。なぜバカでかいセダンばっかり走っているのか?どう見ても大排気量のガソリン車。そりゃおかしいですって。 殺人事件の被害者にカミングアウトしていないレズビアンのカップルが出て来ますが、どうやって関係を隠して来たのか?だいたいからして、後から出て来る男女のセックスシーンも同様ですが、全ての記憶を管理されているのに堂々と出来ます?公衆の面前で営んでいるようなものですって。あぁ恥ずかしい。 そもそもここで行われている記憶の操作とかは、ほぼ超能力の世界。これがあくまでも現実世界のことならば。「マトリックス」の世界みたいな状況だったら話は違いますが、生身の人間に出来る技じゃないでしょう。 どうもアイディア先行で製作決定したものの、ストーリー自体に厚みを持たせられずにツギハギ的になってしまったように思えてしまいます。 いきなりヒロインの全裸が出て、その流れで彼女と刑事さんが良い感じになっちゃってみたいな軽さもマイナス点かな? 期待して観始めただけに、余計に残念な仕上がりでした。 [インターネット(字幕)] 4点(2022-12-02 21:45:40) |
20. ムーンフォール
《ネタバレ》 SF作品には大きく分けて3通りあると思っています。 一つ目は哲学的なテーマで描かれる壮大なファンタジー、二つ目は科学的根拠を正確に積み上げて表現される緻密な物語、そして三つめは多少非現実的であろうとも只管エンターテインメントに徹した娯楽大作。 言うまでもなく本作は三つ目のジャンル。いきなり月が落ちて来るのは、月が巨大な人工建造物であって内部には何かがいる。それも、人類の祖先にあたる生物とそれに敵対する進化したAI。その争いの果てに月が軌道を変えつつある。このアイディアには初めて出逢いました。新しい! AIと言いながらトレマーズ、或いはザ・グリードみたいな怪物が不気味ですね。なんでAIが進化するとあんな風になっちゃうのか、すんなり受け入れるには結構抵抗ありますが。 でも、基本のアイディアがぶっ飛んでるんですから、この際細かいことは言いっこなしってことで。 そもそも、月の激突が避けられたって既にある意味遅い訳で、全世界で一体全体何千万人、いや何億人が犠牲になっていることか。破壊の限りを尽くされた文明が再建されるまでに何十年、いや何百年かかるのか。その前に突如として世界戦争が起きて世紀末状態になってしまわないだろうか。そして、そんな先の見えない状況の中、主人公一家は貴重な犠牲を払いつつも、結果助かり軍用ヘリを専用に飛ばさせて貰う特別待遇でハッピーエンド。そんなんでいいのかしらん? でも、そういったことをいちいち考えることなく楽しめちゃうのがエンターテインメント作品の強みというか、考えちゃいけないんですよね。 只管アイディアと映像とハル・ベリーさんの美しさに酔いましょうという観点からの7点献上です。 [インターネット(吹替)] 7点(2022-12-01 23:29:22) |