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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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181.  アイ,ロボット
「アニマトリックス」の「セカンド・ルネッサンス」と同じようなお話でした。思えば監督のアレックス・プロヤス、彼は黒コートでカンフーをきめ、2丁拳銃をアクロバティックに撃ちまくるというアクションスタイルを「クロウ飛翔伝説」で発明し、偽りの世界に救世主が現れるというSF物語を「ダークシティ」で見せましたが、それらの要素は「マトリックス」に完全移植され、しかもウォシャウスキー兄弟の手柄と見るのが定説のようになっています。そんな悲劇の人プロヤスが、「マトリックス」へのあてつけとして作ったようにも思えるのがこの映画です。話どころかビジュアルも「セカンド・ルネッサンス」に似ていること、要するにこれも救世主誕生の話であること、そしていつものプロヤスらしさがないことです。プロヤスは常に斬新なビジュアルを見せてきた人なのに、これには新しさがまったくありません。「マイノリティ・リポート」みたいな未来で「猿の惑星/征服」みたいな事件が起こる映画ですからね。ロボットの扱いは「AI」みたいだったし。プロヤスってことで期待した私はちょっとガッカリでした。しかしそんなサムシングを除いて見れば、映画自体はよく出来ていると思います。見せ場を詰め込むだけの普通の大作に終わらず、後半に向けてうまく話をまとめていくなぁって感心しましたから。ゴミの島に投棄された旧ザクみたいな連中が、「人間が危ない」とか言って律儀にもウィル・スミスを助けに出てきて、しかも新型によって無惨にも破壊されるシーンなんて、「AI」に出てきた気持ち悪いだけのロボット達より数千倍感情移入できました。博士を父と慕うサニーの男気にも燃えました。どうせならこれにロボット軍団VS警官隊とか、ロボット革命軍に大型作業ロボットも加勢とか、ウィル・スミスを筆頭としたサイボーグコップスの大暴れとか、考えうるやんちゃをもっとやってくれれば盛り上がったんですけどね。 
7点(2004-10-25 23:25:06)(良:2票)
182.  ボーン・スプレマシー
スターの出ているアクション大作でありながらキリっと締まった作風が気持ちの良いシリーズですが、私的には第1作を上回る出来と面白さだったと思います。普通のアクション大作にしようとする映画会社とケンカしてでも作品の完成度を保った前作の功労者ダグ・リーマンが製作に回り、ポール・グリーングラスという誰も知らない人物が監督に決まった時には「大丈夫か?」と不安になったのですが、結果としてこの監督はリーマン以上の手腕を見せ付けました。この人はジャーナリスト出身で作家を経て映画監督になったという変わった経歴の人物なのですが、そうした経歴のおかげか説得力ある語り口で複雑な話をまとめていくという腕前はそこいらのベテラン監督を軽く超えています。謎が明かされながらテンポよく進んでいくこの映画のストーリー展開は知的で大変心地よく、この完成度なら仮に目立ったアクションがなくても十分に楽しめるスパイ映画になっただろうと思います。また単なるインテリ監督に終わらず画面作りにもセンスを見せているのもさすがで、作品全体を通してクールにして緊張感溢れる映像と編集がなされています。ここぞという時のアクションもスパイならではのストイックさに溢れていて大変かっこよく、無闇に見せないからこそ盛り上がるという前作の良さを引き継ぎつつもそれを超えることに成功しています。それまでクールに淡々と進んでいた話とアクションが収束し、一気に爆発したかのようなクライマックスのしつこいカーチェイスには大興奮しましたとも。マトリックス・リローデッドやバッドボーイズ2がド派手カーチェイスの究極の進化形であるなら、この映画のカーチェイスはリアル路線の究極の進化形です。現実離れした銃撃や爆破などせず、いろんなものにぶつかって車をぼこぼこにへこませ、「街を猛スピードで走ること」の怖さをストレートに伝えるこの手のカーチェイスは、ブリットやフレンチ・コネクション以来久々に見ました。そんなわけでかなり大満足の作品でしたので、同監督が続投するシリーズ最終作にも期待しています。
[DVD(吹替)] 8点(2006-10-28 21:48:49)(良:2票)
183.  オブリビオン(2013)
IMAXにて鑑賞。 映像技術の進歩により、地球レベルの災厄を描いたSF映画は珍しくなくなっていますが、半壊した月や廃墟と化した人類文明、宙に浮かぶ巨大建造物など、本作のビジュアルイメージはかなりのインパクトを持っています。具体的な設定はやや強引で、後半になって明かされる謎の正体についても首を傾げざるをえない部分が多々あるのですが、それでもビジュアルのインパクトによってSFとしての大きな説得力が与えられているので、観ていて不快にはなりません。SFは画なんだなぁとあらためて実感させられました。さらには、『トロン:レガシー』ではビジュアル偏重でストーリーテリングが追いついていなかったジョセフ・コシンスキーの演出も本作では垢抜けしてきており、アクション映画としてもなかなかメリハリのある内容となっています。。。 本作はコシンスキー自身が手掛けたグラフィックノーブルを『ディパーテッド』のウィリアム・モナハンが脚色し、それを『トイ・ストーリー3』のマイケル・アーントが手直しするという、鉄壁の布陣で話が練り上げられています。観客をどうやって騙すか、また、どのタイミングでネタばらしをするのかという映画全体の組立がよく出来ており、非常に求心力のある物語となっています。前述の通り、謎の核心部分には不合理な点が多々あるのですが、脚本家達もこのアキレス腱については重々承知している様子で、真相部分に深入りしすぎることなくサラっと流しているので、少なくとも観ている間は難しいことを考えることなく、純粋に楽しむことができました。。。 トム・クルーズは相変わらずスタントを頑張っているし、彼の個性によって、主人公は観客にとって感情移入可能なキャラクターに仕上がっています。なんだかんだ言われていますが、この人は華があるし、演技も巧いので観ていて安定感があります。また、最近はB級映画への出演が多かったオルガ・キュリレンコも久しぶりのメジャー大作でなかなかの存在感を披露しており、本作のキャスティングは概ね成功しています。ただし、モーガン・フリーマンがいかにもな役柄で出てきた時には、さすがに笑ってしまいましたが。主演のトム・クルーズが50歳を過ぎていることとのバランスを考えると、あの役柄にはモーガン・フリーマンほどの超ベテランを据えるしかなかったのでしょうが。
[映画館(字幕)] 8点(2013-05-31 18:15:45)(良:2票)
184.  キラー・スナイパー
テキサスのDQN一家が保険金目当てに母親殺しを計画するというロクでもないお話。奇抜な登場人物に、適度に捻られた展開にと、脚本はよく作り込まれているのですが、二転三転した末に結局何が言いたかったのかはよくわからないという不思議な感触の映画となっています。。。 本作で注目すべきは、一応はオスカー監督であるウィリアム・フリードキンの大暴走で、御年72歳の巨匠が20代の若手監督をも凌駕するどえらいパワーを見せつけています。何が凄いって、高尚なことは一切なしで、エロとグロに特化した内容としているのです。フリードキンは95年に『ジェイド』という『氷の微笑』の出涸らしのようなエロサスペンスを撮って笑いものになったことをまだ覚えているようで、本作においてはやりすぎなくらいにエロを追求しています。何も履いていないジーナ・ガーションがいきなり姿を現す冒頭にはじまり、ジュノ・テンプルを現実と妄想の両方の世界で脱がせまくったり、マシュー・マコノヒーを脈絡なく全裸にしたり、フライドチキンを思いもよらぬ用途に使ったりと、エロに関しては凄まじい創意工夫を発揮しています。さらには、通常の着衣の場面だって胸の谷間や揺れ、乳首のポッチが気になるようなねっとりとした撮り方をしており、72歳の老人がやることとは思えない演出を続々と披露。念を押しますが、オスカー経験者です。。。 そんな感じで大張り切りだった巨匠からの要望を断り切れなかったのか、俳優達もかつてない怪演を披露。ジーナ・ガーションは49歳にして脱ぐわ殴られるわ、最終的にはあんなことまでさせられるわという大変な役柄を全力でやりきっているし、マシュー・マコノヒーに至っては、一体何の得があってこれを引き受けたのだろうかと思うほどの汚れ役を熱演しています。前半こそ、タイラー・ダーデンのようなダークヒーローの風情を漂わせていたものの、結局はただのヘンタイだったことがわかるというとっても損な役回り。監督のキャスティングセンスの賜物かマコノヒーのハマり具合が絶妙だったため、この役は彼のパブリックイメージに影響を与えかねないほどのインパクトを持っています。。。 観終わった後、特に残るものはないのですが、監督や俳優達のパフォーマンスを観る映画としては、十分なレベルに達していると思います。
[DVD(吹替)] 6点(2013-01-20 03:21:04)(良:2票)
185.  ギフト(2000)
サム・ライミほど、自身のキャリア形成に熱心な監督はいないと言われています。特段ホラー映画が好きというわけでもないが、低予算でも観客から注目される可能性が高いということでデビュー作に『死霊のはらわた』をチョイス。同作のシリーズ化により10年かけて世界中の映画オタクに名を売ったところで、一流俳優がズラリと顔を揃えた『クィック&デッド』に挑戦。しかし、この挑戦が不発と見るや、『シンプル・プラン』を撮って「私には映画監督としての基礎的スキルがあります。決してキワモノ監督ではありません」ということをアピール。そして、ハリウッドへの再度の橋渡しのため、これまた実力派俳優が名を連ねた本作を作り上げ、『スパイダーマン』へと繋げたわけです。。。 本作は、ビリー・ボブ・ソーントンが無名時代に書いた脚本がベースとなっていますが、この脚本は超能力者の悲劇を中心に、田舎町での殺人事件や、家庭内暴力、幼児虐待といった複数のテーマがギューギューに詰め込まれており、もはや闇鍋状態。サム・ライミはこれを驚くほど丁寧に整理し、2時間以内で完結するコンパクトなドラマとしてまとめています。あまりに美しく片付けすぎて、主人公自身の家庭の物語や、DV夫に悩むDQNねえちゃんの話などは途中でどっかに行ってしまいますが、語り口が極めて洗練されているので、そのような欠点も鑑賞中には大して気になりません。人間ドラマとサスペンスが絶妙な比率で混ぜ合わされているし、音でビビらせるというホラー演出も随所で効果をあげており、2時間はきっちり楽しめる映画として仕上がっています。。。 ハリウッド進出して間もない頃のケイト・ブランシェットを中心とし、ジョヴァンニ・リビシとヒラリー・スワンクという実力派に脇を固めさせ、キアヌ・リーブスとケイティ・ホームズがそこに華を添える。完璧に計算されたキャスティングです。ブランシェットは後の大女優の風格と技術をこの時点で見せつけているし、リビシはすべてが良すぎます。こんなメンツに囲まれたキアヌはちょいと可哀そうですが、新境地開拓に熱心な姿には好感が持てました。『スパイダーマン』の編集長やメルおばさんも顔を出し、俳優を見ているだけでも楽しめる映画となっています。
[DVD(吹替)] 7点(2014-07-11 01:18:18)(良:2票)
186.  BLACK & WHITE/ブラック&ホワイト(2012)
『T4』に続く、McGによるジェームズ・キャメロンへのストーカー大作第2弾。今回は90年代のキャメロンを支えた撮影監督ラッセル・カーペンターまでを召喚して21世紀版『トゥルーライズ』を製作しているのですが、これが恐ろしく時代遅れなアクションコメディに仕上がっています。オフィスや自宅、果ては行きつけのレンタルビデオ屋までがおしゃれでピカピカという現実感ゼロの街を舞台に、CIAエージェントが顔バレを一切気にせずバカな騒動を起こすという何ともカックンなお話。80年代や90年代ならばこんな作風でも受け入れられたのですが、ジェイソン・ボーンが汚い路地裏を走り回り、ジェームズ・ボンドまでがリアル路線を選ばざるをえなくなった21世紀においてこのテンションはかなり厳しいと感じました。その上、主演2人も役不足です。この手のアクションコメディを演じるべきはトム・クルーズやピアース・ブロスナンのようなアクションヒーローを演じてきた俳優であって、アクションにおける代表作を持たない若手では様にならないのです。そして、さらに問題なのがヒロイン役のリース・ウィザースプーン。キャリアのピークを過ぎてしまったウィザースプーンでは、伸び盛りのクリス・パインとトム・ハーディに見劣りしています。彼女は相変わらず美人ではあるのですが、それでも二人の戦士を魅了するだけのオーラは放っていません。そして、主人公二人が抱く恋心に説得力がなければ、観客は物語に魅力を感じないのです。
[DVD(吹替)] 4点(2012-10-21 22:47:20)(良:2票)
187.  闇金ウシジマくん ザ・ファイナル 《ネタバレ》 
債務者中心エピソードとウシジマ中心エピソードを交互に出してくる実写化シリーズですが、本作はウシジマ中心エピソードでした。度を越した貧困ビジネスやヤクザ者同士の抗争といったテーマはもはや一般人とは無縁の世界であり、『闇金ウシジマ君』というコンテンツそのものの魅力とは一線を画す内容で、多少のガッカリ感がありました。 また、本作はウシジマのルーツを描くという触れ込みであり、確かに中学時代のウシジマのエピソードは描かれるのですが、中学生の時点で現在に繋がるウシジマの人格はすでに完成した状態にあり、結局、ウシジマを作り上げたものとは何だったのかが分からないという点でもガッカリでした。両親との別離や転校など、要所要所にウシジマ少年の人格に影響を与えたと思われるキーワードは登場するものの、それらは回想の時点ですでに過去の話であり、具体的に描かれることはありませんでした。 今回の敵となる鰐戸三兄弟のキャラ造形も雑。策士タイプの長男と狂犬タイプの三男に挟まれた二男がほぼ存在意義を失っているし、完全にキレた人間として描かれる三男はともかく、頭が良く大局的な視点を持っている長男までもがウシジマに対して中学時代からのパラノイア的な逆恨みを引きずっているという点も、設定間で内部矛盾を起こしているように感じました。 また、これは6年間続いた長期シリーズならではの問題なのですが、キャラクター達の設定年齢と演じる役者の実年齢に乖離が生じており、一部に違和感がありました。テレビシリーズ第一弾から見ており、例えば劇中頻繁に登場する携帯電話がシリーズの進行とともに新しくなっている様からも、現実の時間経過と同じだけ登場人物達は歳をとっているものと思い込んできた私としては、ウシジマや江崎が依然として24歳であり(本作公開時点で山田孝之は33歳、やべきょうすけは43歳)、しかも高橋メアリージュン(本作公開時点で29歳)演じる犀原茜と同世代という点は、さすがに無理ありすぎでした。そこは設定年齢を山田の実年齢に合わせ、実写版オリジナルキャラである犀原は彼らよりも下の年代であるということにしてもよかったと思います。  上記の通り不満点を書いてきましたが、良かった点もあります。力なき善意で他人を救おうとする竹本と、お金という必要な手段は与えるが、部外者である自分が関与するのは元本と利息が返済されるかどうかのみであり、そこから這い上がるか落ちぶれていくかは当人次第との姿勢を貫くウシジマ。この対比が面白いのです。 困っている人を無償で助けてやれば確かに当人は喜ぶだろうが、対症療法的な解決には問題の本質を覆い隠すという副作用があり、その人はまた同じことで躓く。転んだ都度助ければそのうち依存体質が身に付き、自力で立ち上がれない人間になってしまう。しかし救済者側の体力にも限界があって無限に人助けなどできないのだから、いつか共倒れになる日がやってくる。竹本の善意や自己犠牲の精神は本物ではあるものの、「救済者側の体力」と「救われる側の自立」がまるで考慮されていないため、本当の意味で人を救える力にはなりえていません。 他方、ウシジマは徹底的にドライ。貸した金さえ返ってくれば正しい使い道かどうかは関係なく、どんな債務者にも公平に接するのですが、同情すべき背景のある債務者ほどウシジマを非情であると非難します。彼らの主張を要約すると「自分を特別扱いしろ」なのですが、ウシジマも非営利ではやっていない以上、どこかで債権を回収しなければならないし、同情すべき背景のある債務者を免責して取りっぱぐれた分は自業自得の債務者の利息に上乗せするなんてことになれば、問題は余計にややこしくなります。債務者は公平に扱い、その私情には一切立ち入らない。それこそが闇金家業を営むウシジマなりの倫理観なのです。 竹本とウシジマは対立した後、力なき竹本が倒れて終わりとなります。ここでウシジマは親友である竹本にも一切の手加減なく死亡するまでの肉体労働を課すのですが、これもまた他の債務者との公平性を図るウシジマならではの倫理観だったと言えます。ただし、車を一瞬止めさせ、竹本を特別扱いして連れ帰るかどうかの葛藤を垣間見せる辺りの演出がうまく、ここで竹本の主張がウシジマにも届いていたことが分かるため、見ている私の心も揺さぶられました。
[インターネット(邦画)] 5点(2018-01-16 23:20:47)(良:2票)
188.  ブルー・リベンジ (2013) 《ネタバレ》 
情念のぶつかり合いこそが復讐映画の醍醐味なのですが、本作にはそれがありません。冒頭20分にはほとんどセリフがなく、観客に対する状況説明もなし。虚ろな目をしたホームレスが人を殺すのですが、この時点で観客は誰が誰を殺したのかがよくわからないため、そこには何の感情も起こらないのです。その後の説明で、どうやらこのホームレスは親の仇を殺したということが分かるのですが、当のホームレス自身も復讐による高揚感や、人を殺したことへの後悔といったありがちな感情をほとんど表していないという点が、作品の異様さをより高めています。 本作のテーマは復讐の連鎖であり、対テロ戦争開始後のアメリカ映画ではさんざん扱われてきて若干陳腐化の傾向もあるテーマですが、本作ではかつてなかった切り口でこれが描かれています。主人公は両親を殺されたショックで精神をやられてホームレスとなっていたが、現在の淡々とした表情を見るに、親の仇に対する怒りも時間とともに薄れていたようです。しかし、事前にやると決めておいた復讐は一応果たしに行く、失うもののないホームレスだから刑務所に入れられることも怖くないし。主人公がやり場のない怒りや、どうしようもない使命感に突き動かされているのではなく、ただ何となく復讐に走るという点が異様だったし、そのドラマ性のなさにある種のリアリティを感じさせられました。 しかし、事は一筋縄にはいきません。復讐を果たした自分が服役して終わるだろうという見込みは外れ、加害者家族は警察に被害届を出すのではなく、主人公(と姉一家)に報復するという行動に出ます。ここに、被害者一家と加害者一家の血で血を洗う抗争が始まるのですが、ザ・ホワイトトラッシュといった感じのイカつい風体と重武装、しかも貧困層らしくやたら人数の多い加害者一家に対して、戦闘力ゼロに等しく不意討ちをかけるしか逆転の目のない主人公はモルドールに潜入したホビット同然の存在。この絶望的な戦力差が作品に大変な緊張感を与えており、特に姉宅襲撃場面では『ノーカントリー』を初めて見た時並みにハラハラさせられました。 その後、加害者一家側の事情も明らかにされ、序盤で主人公が殺した相手が実は親の仇ではなかったこと、両親殺害の犯人はすでに死んでいることが判明します。しかし、一度始まった復讐の連鎖は誰にも止められず、第一の当事者である親の世代が全員鬼籍に入っているにも関わらず、子の世代はもはや何の目的かもよくわからない殺し合いを延々と続けます。これを終わらせるには、どちらかの家族が全滅するしかない。アメリカの対テロ戦争やパレスチナ問題など、多くの国際問題に共通する論点を主要登場人物10名程度の小さなドラマに圧縮してみせた脚本の出来が素晴らしく、単なるバイオレンスの佳作に終わらせない含蓄ある作品となっています。 監督のジェレミー・ソールニアーは記事によっては驚異の新人扱いされているものの、実際には本作以前にも10年ほどのキャリアを持つ人物です。長い下積みに終わりが見えず本作を最後に引退しようと考えていたものの、その最終作がカンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を受賞して映画祭の目玉作品のひとつとなったことから、キャリアが一転しました。人生とは分からんものです。次回作の”GLEEN ROOM”も引き続き高評価を得ており、今後、大化けする可能性のある監督として要注目なのです。
[インターネット(字幕)] 8点(2016-06-23 18:13:38)(良:2票)
189.  ニュースの天才 《ネタバレ》 
面白かったです。この題材であれば「ジャーナリズムとは何ぞや」を説く小難しい社会派映画になるのだろうと思っていたのですが、そんな予想に反し、本編は部下との信頼関係を作り損ねた上司の物語という普遍的な切り口で作られていたため、非常に感情移入して観ることができました。。。 コミュニケーション不足が原因で一方的に嫌っていた上司が、実は自分を守るために陰で戦ってくれていたということは、社会人をやっていると一度は経験するものです。本作でピーター・サースガードが演じる編集長は、就任のタイミングのマズさや淡々とした仕事ぶりから「人情派の前編集長を蹴落とした冷徹な新編集長」と勘違いされ、現場からの総スカンを喰らいます。しかし、記事の捏造をした部下が他社の追跡取材によって丸裸にされそうになった時、その部下の将来をもっとも案じ、最善の着地点を探そうと奔走したのは彼でした。もし、上司と部下との間に信頼関係が築けていれば、困った時に泣きついていける間柄であれば、外圧よりも先に対応策を打って傷を最小限に出来たかもしれなかったのですが、悲しいかなこの部下は最後まで上司を信用せず、嘘を嘘で隠そうとするうちに時間切れを迎えます。自分に係る誤解を早期に解き、良好な職場環境を作る努力を怠った編集長にも問題があるのですが、そうとは切って捨てられない難しさがあるのも確か。これは多くの組織に存在する問題であり、それを突いたという点で、この企画は非常に鋭いと感じました。。。 ヘイデン・クリステンセンは『スター・ウォーズ』に続き、何でも上司のせいにする青二才を熱演しています。人当たりは良いのだが、点数稼ぎとも受け取れる小手先の親切ばかりでホンネが見えてこないヤツ、こういう人っていますよね。人を騙して利益を得てやろうという意思があるわけでもないのに、まったく必要のないウソをつくヤツ、こういう人もいますよね。主人公を特殊な人格ではなく、誰にでも心当たりのある人物像に設定した点でも、この脚本は巧いと感じました。この主人公にあったのは虚栄心でも功名心でもなく、コミュニケーションの手段として自然についてきたウソが、いつの間にか巨大化して収拾がつかなくなってしまったという程度のものなのです。社会派映画を期待して本作を鑑賞された方にとってはガックリきた結論かもしれませんが、私は事実の一側面を的確に切り取っていると感じました。
[DVD(吹替)] 8点(2013-03-05 01:10:29)(良:2票)
190.  ワルキューレ 《ネタバレ》 
ヒトラー暗殺の物語をよりによってユダヤ系で同性愛者のブライアン・シンガーが撮るというトンデモ企画だったわけですが、意外なことにシンガーはナチス時代の様式美の再現にこだわっています。それは車両や航空機の独特な美しさであったり、パリっと決まった制服のかっこよさであったり、整然とした官庁街の建築美であったりするのですが、私はこれらの描写を眺めているだけでも楽しめました。本作はアメリカ人やイギリス人が主要キャストを占めることで多くの批判を受けているし、私自身もその点は気になったのですが、他方でナチス時代の様式美をこれだけ克明に描写した作品をドイツ人の手で撮ることは政治的に不可能。トム・クルーズという大スターが身元保証人を引き受け、ユダヤ系に監督させたアメリカ映画だからこそ可能となった作品であり、ドイツ人役が英語で演じられるという欠点を補って余りあるほどの存在価値はあったと思います。 内容は極めて禁欲的で、政治的な善悪や人間ドラマといった領域にはほとんど踏み込まず、ヒトラー暗殺計画とそれに続くクーデターの成り行きを描くことのみに集中しています。『ユージュアル・サスペクツ』で映画史に名を残すコンビは端正な語り口でその顛末を描いており、ハラハラさせられる優秀なサスペンス映画となっています。彼らは歴史的事実として結末がわかりきっていることを逆手にとって、計画の首謀者達はどこでミスを犯したのかという視点で物語を組み立てています。現場でのとっさの判断ミスや(シュタウフェンベルクは急なスケジュール変更に対応するため準備していた2つの爆弾のうち1つしか使用せず、ヒトラーに致命傷を与え損ねた)、計画そのものが抱えていた欠陥(官庁街占拠という重要な役割を首謀者自身が担わずヒトラーの忠臣だったレーマーを駒として使い、彼をどれだけ騙しておけるかが鍵という不安定な計画だった)、その他の人為的ミス(一度目の計画失敗からオルブリヒトが慎重になっており、暗殺実行後のクーデターが著しく出遅れた)を浮き彫りにします。この視点は面白いと感じました。それと同時に、暗殺未遂で不意を突かれた後にもヒトラー陣営は腹の座ったところを見せており、首謀者側とはまるで格が違うということも描写されています。そもそもこのクーデターは成功しようがなかったという、冷徹な切り口で描かれているのです。アメリカ映画がここまで突き放した描写をしてくることには驚かされました。また、そんな作風に合わせてか、時に演技を張り切りすぎておかしなことになってしまうトム・クルーズも、本作では熱演アピール控えめで渋めの演技を披露しており、名門貴族出身のドイツ軍高級士官にきちんと見えるのだから大したものです。 禁欲的、それが本作の問題でもあります。人類史上最恐の独裁者の首をとりにいくとなれば、仮に計画が発覚しただけでもすべての関係者は死を覚悟せねばなりません。それほどリスキーな計画になぜ参加しようとしたのかは当然に観客にとっての関心の対象となるのですが、残念なことに本作は各当事者の背景に係る一切の描写を切り捨てています。このあたりを充実させれば重厚な歴史ドラマになったかもしれないだけに、ブライアン・シンガーの潔すぎる采配も考えものです。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2016-08-18 18:20:52)(良:2票)
191.  神様メール
アイデアの奇抜さや、そのアイデアを観客に伝えるためのストーリーの整理の仕方など、この監督の手腕には恐れ入るのですが、『ミスター・ノーバディ』に続き、私との相性は良くありませんでした。 この監督はアイデアで引っ張る一発ネタ的な作風である割りには上映時間が長めだし、極端な設定から人類普遍のドラマを導き出すのかと思いきや、その核にはそれほど訴求力のあるメッセージがなかったりと、結局技巧を楽しんでいるだけという印象がしてしまいます。 比較すべき相手かどうか分かりませんが、例えばチャーリー・カウフマンのように、物凄く奇抜な設定やキャラクターを選択しながらも、見る者の共感を呼ぶような着地点を見出せる作風の方が、より万人受けするのではないでしょうか。
[インターネット(吹替)] 6点(2017-10-31 18:40:12)(良:2票)
192.  ホビット/竜に奪われた王国 《ネタバレ》 
とにかく凄いのがレゴラスのアクション。LOTRよりレゴラスはアクション番長として名を馳せていましたが、本作に登場する若いレゴラスは、LOTRを余裕で上回る凄まじいアクションを披露します。さらには、レゴラスの部下・タウリエルも凄い。動ける戦闘型エルフが二人もいることで、見せ場は「速い!美しい!かっこいい!」の三拍子揃ったとんでもないものになっています。。。 ただし、原作には登場しないレゴラスの存在がマイナスに働いている局面もあります。レゴラスの登場により、われわれ観客は否応なくギムリを想起させられるのですが、LOTRにおけるギムリがレゴラスと並ぶオークハンターだったことに対して、本作のドワーフ達がホビット並の戦闘力しかないという設定上の不整合が気になってしまうのです。ドワーフって、エルフの活躍を指をくわえて眺めてるような奴らでしたっけ?  戦力描写の不自然さは、タイトルロールであるスマウグにもあります。二つの王国を瞬時に滅ぼした最強の火竜という設定ながら、本作のクライマックスでは10人のドワーフとホビットを相手に『エイリアン3』みたいな追っかけっこを延々とやっており、意外とちゃっちい奴なんだなとガッカリさせられました。要らんことをダラダラと喋りすぎだし、かと言って、すべてを見透かされてしまいそうな超越的な知性も感じさせられないし、『王の帰還』のアングマールの魔王のような腰砕け感がありました。西洋のドラゴンと東洋の竜を合わせたようなデザインや、彼が吐く炎の迫力、キングギドラを思わせる飛翔場面など、画としての見所は多かっただけに、本作における中途半端な活躍は残念でした。。。 そして本作最大の問題点は、ドワーフ達のやる気のなさです。宮殿へつながる扉が開かないとなれば、大して粘りもせずに帰ろうとするし、スマウグが眠る階層への侵入もビルボ任せでまったく主体性がありません。前作では、祖国を取り戻そうとする亡国の民という悲哀があったのに、本作ではただ状況に流されているだけの弱者です。ビルボやバルドなど、種族を超えて力を貸してくれる人たちにも悪態をついてばかりだし、彼らの旅への共感の度合はかなり下がってしまいました。。。 本作は、完結編への橋渡しのような場面が多く、その立ち位置の関係から不完全燃焼の多い回となってしまいました。そうは言ってもポテンシャルの高いシリーズなので、次回作には期待しています。
[映画館(吹替)] 6点(2014-03-12 00:48:16)(良:2票)
193.  インセプション 《ネタバレ》 
パンパンの期待で観に行ったのですが、その期待を完全に超えていました。知的で、そして燃える映画。私は完璧に満足しました。難解な映画と言われていますが、物語の骨子は大して難しくありません。ただし映画の雰囲気作りのため、小難しいセリフ回しや情報を提示するタイミングの操作によって観客をわざと混乱させる仕組みになっています。なかなかイヤらしい作りではあるのですが、これはキューブリックやリンチも用いている立派なストーリーテリングの技術だし、積極的に物語を読み解くことを要求された観客は、映画を理解する喜びを得ることができます。これは単純明快な娯楽作では得られない感覚であり、アート作品ならともかくSFアクションでこの感覚を得られたことは貴重な体験でした。また、監督は遊び心も失っていません。哲学的な作品ではありますが、007の大ファンだという監督は本作を燃えるアクション大作として撮っています。産業スパイが困難なミッションに挑む、そしてミッションはどんどん悪い方へと進んでいく、このミッションは成功するのか?高級なスーツを着込んだディカプリオが様になった構えで銃を撃つ姿はまんまジェームズ・ボンドであり(子供の名前もご丁寧に「ジェームズ」)、アフリカからNY(と思われる都市)、そして雪山へという舞台のバリエーションも007を思わせます。この監督のアクション演出は冴えに冴えていて、銃撃戦やカーチェイスは本家007を超えるほどの迫力とかっこよさ。そんな見ごたえ十分のアクションにSF的設定が突如割り込み、空間がビニョーンと歪む中での見たこともない格闘には大興奮なのでした。夢と現実では時間の流れが異なるという設定を活かしてタイムリミットサスペンスにしたこともアクションのスパイスになっており、制限時間が迫る中での戦いには本当にハラハラさせられました。そして素晴らしいのがラスト。詳しくは書きませんが、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかの判断を観客に委ねた素晴らしいラストには鳥肌が立ちました。本作にはその他にも解釈の分かれる点があり、そもそも現実として描かれているパートが現実である保証もないわけで、ビルから飛び降りた奥さんの判断が正しい可能性だってある。観客に多様な判断を楽しせる余裕まで与えた本作は、後々にまで語り継がれる映画になるはずです。
[映画館(字幕)] 10点(2010-07-23 17:21:34)(良:2票)
194.  RED/レッド(2010)
家を襲撃してきたCIAの部隊を返り討ちに合わせたり、ロケットランチャーから放たれた砲弾をピストル一発で仕留めたりと前半はアメコミ原作ならではの勢いのある見せ場が楽しいのですが、後半になると普通のアクション映画になってしまいます。でも、これって逆じゃないといけないでしょ。クライマックスに近づくほど見せ場の派手さ、デタラメさが加速していくべきなのに、途中からマジメになってしまうだなんて。「フライトプラン」等を手掛けた監督さんが本作の演出を担当しているのですが、この人の生真面目さが映画の出来を邪魔してしまったようです。さらに、アクションコメディにしてはややこしすぎる物語も映画のブレーキとなっています。難解というわけではないのですが、なんでもありのアクションコメディの温度感には合っていません。もっと単純明快で、主人公達が暴れ回る様を楽しむだけの映画にすべきでした。役者は驚くほどの有名どころを揃えてきているのですが、主人公をやるブルース・ウィリスはいつものブルース・ウィリスです。「ダイ・ハード4」とほとんど区別がつきません。モーガン・フリーマンもいつも通りでそれほど見るべきものはないのですが、一方で凄いのがジョン・マルコビッチ。「コン・エアー」以来久々のヤケクソ演技を披露するのですが、これがかなり見応えがあります。そして意外と良かったのがヘレン・ミレン。MI6の殺し屋を引退したおばあちゃん役なのですが、この人が飄々とした表情で銃を構える様はかなり味があります。「ホットファズ」でも思ったのですが、おばあちゃんとマシンガンという組み合わせはなかなかいけます。
[映画館(字幕)] 6点(2011-01-30 21:20:44)(良:2票)
195.  ウインドトーカーズ
ジョン・ウーがついに戦争映画を撮る!2002年は戦争映画が多数製作されましたが、製作段階において特に注目度の高かったのが本作でした。しかし、蓋を開けると戦争映画としては史上最低クラスの出来。世間一般からは一瞬にして忘れ去られ、ウーファンにとっては触れてはならない過去となったのでした。超人的な主人公が華麗にアクションを決めるジョン・ウーのスタイルは、大人数が泥にまみれながら命をかける戦争映画とは水と油。前半はニコラス刑事が棒立ちでマシンガンを乱射してるだけで見せ場として全然面白くないし、ジョン・ウーがガマンできなくなったのか、とうとうマシンガンをピストルに持ちかえてしまった後半は、もはや戦争映画のルックスではなくなっています。ジョン・ウーの映画なのに、戦争映画なのに、見せ場がつまらないという致命的な欠点を本作は抱えているのです。また、「プラトーン」以降の戦争映画には、史実に基づいてリアルに作るという条件が課せられるようになりましたが、本作は時代錯誤なまでに適当。サイパン島と言えば年平均気温が27度という高温多湿の熱帯気候なのに、まったくそのような風土に見えないという圧巻のロケーションには驚きました。妙に乾燥している地域があったり、日本の秋口のような風情ある風景があったり、そもそも俳優達が暑さの演技をしていなかったり、こだわって作っていないことが丸出しになっています。また、日本人住民の集団自決のあった悲劇の島でもありますが、本作に登場する住民達は実にのどかなもので、アメリカ兵にいとも簡単に懐いてしまいます。ニコラス刑事の常備薬を一錠飲ませてもらったり、チョコレートをひとかけ食べただけでアメリカさん大好きになってしまうという激安野郎ばかりで、本当に何も調べずに撮ったんだなぁと呆れてしまいました。これに追い打ちをかけるのがニコラス刑事の妙な熱演で、この人が演技を頑張れば頑張るほど映画がおかしくなっていきます。酔っぱらった演技などは加藤茶のレベルに達しており、「リービング・ラスベガス」のアル中演技でオスカーをもらったのと同一人物とは思えません。ハゲヅラのお巡りさんと若ハゲのケイジさんが共演すれば面白いのではないでしょうか。また、「ホリョダ!」「ド~シタノ?」「ベイコクキライ!ニホンダイジ!(ダイスキの間違い?)」等を、恐ろしく気合いの入った顔でやられても困ってしまいます。
[DVD(字幕)] 2点(2010-01-22 20:36:34)(笑:1票) (良:1票)
196.  ドント・ブリーズ 《ネタバレ》 
恐怖シーンにおける豊富なギミックや意表を突く展開など、実によく考えて作られていることは分かるのですが、主人公・ロッキーにビタ一文感情移入できないという点が致命的でした。事故で娘を失った盲目の老人宅に侵入し、事故の示談金を盗んでやろうという発想の時点でクズ。また、自分に惚れていて何でも言いなりになるアレックスを無理に強盗に引き込むという女としてのズルさや、「クズ親から幼い妹を引き離す」という大義名分によって自己の悪事を正当化している点など、とにかくロッキーのすべてが気に入らんかったです。 また、彼氏のマネーがぶっ殺されたり、監禁されている加害者を発見したり、自分自身が孕まされそうになったりと、もはや金なんて言ってられる状況じゃなくなっても金への執着を捨てないという点も受け付けませんでした。最後には、マネーとアレックスに罪を擦り付けて、まんまと金をせしめるという驚愕のクライマックス。空港で妹にオレンジジュースを飲ませてましたけど、ああいうとこのジュースはそこそこ高いんですよ。何人もの命を犠牲にして得た金でオレンジジュース飲ますんかいと、そんな些細な点まで気に入らなかったです。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2017-08-06 13:04:06)(良:2票)
197.  ジョニーは戦場へ行った
この映画の存在を知ってから実際に見るまでに数年あったのですが、あらすじを想像するだけで背筋が凍りました。そして実際に鑑賞すると、夜も眠れないほどの衝撃を受けました。ここまで問答無用に人間の心を刺激するドラマは他にはないでしょう。人類がこれまでに生み出してきた物語の中でも、これは突出した存在ではないかとすら思います。実は私、これを反戦映画とは感じませんでした。たしかに製作側の意図は反戦にあったのでしょうけど、このドラマはすでに反戦というテーマすら越えています。ここで展開されるのは、人間にとっての究極の絶望。死が唯一の希望という深い絶望が、単なる概念ではなく、しっかりと画面に展開されるのです。いかなる形容詞もこのドラマには通用しません。多くの方がおっしゃるように、この映画は1度の鑑賞だけで十分です。もちろん、出来に不満があるからでも、嫌いだからでもありません。あまりに衝撃度が大きすぎて、2度目を見る勇気すらわかないのです。その裏を返せば、一度でも鑑賞すると、一生忘れないほどの深い衝撃を受けるということです。アカデミー賞を受賞したいかなる名作であろうと、ここまで心に刻まれるドラマは存在しません。そんな唯一無二の傑作が、いかなる映画ランキングにも登場しないことを私は不思議に思います。たしかに一般的な知名度はゼロに等しい映画ですが、なぜプロの評論家からも無視の状態が続いているのか。もしかしたら、この映画を正確に評論できる人がいないからなのかもしれません。私だって、この映画のレビューにはかなり気を使っています。あまりに映画がすごすぎて、ヘタな賛辞では作品を矮小化しはしないかと思うからです。それほどの究極の力作です。
9点(2004-09-11 04:09:35)(良:2票)
198.  イーグル・アイ
冒頭から、まんま「ウォーゲーム」。ジョン・バダム作品を多くプロデュースし、監督としてもジョン・バダムをリスペクトしてやまないDJカルーソ監督作品は、超古臭い80年代SFアクションでした。「人類は頭悪いし、これからは俺が管理してやるよ」という伝統的なお節介AI大暴れムービーなのですが、なんの捻りも工夫もなく、80年代そのままの脚本で勝負するという大胆さには驚かされました。何から何まで予定調和、最後まで予想を裏切りません。役者は悪くないし、見せ場もよく作りこまれているだけに(前半と後半の両方にド派手な見せ場を仕込んでおく卒のなさには感心)、お話しの方がもう少し何とかならんかったかなという印象です。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2012-05-01 00:17:03)(良:2票)
199.  ケープタウン(2013) 《ネタバレ》 
差別主義者に父を焼き殺され、自身も犬に局部を食いちぎられて性的不能者になったズールー人・アリと、差別主義者を父に持つ白人・ブライアンがタッグを組むバディムービー。随所に南アフリカの難しい現実を投影したと思われるアイコンが登場するのですが、同国の情勢に詳しくない私にとってはイマイチ伝わらない点が多かったことが苦しかったです。フランス人が監督し、ハリウッドから俳優を呼び寄せて作った国際色豊かな作品なのだから、世界中の人が理解可能な内容にすべきだったと思います。 そんなわけで、作品に込められた裏の意味を理解できなかったので、あくまでバイオレンスアクションという表層部分に絞っての評価としますが、これがなかなかエグイ内容でビビりました。アリの父が殺害される場面から映画は始まるのですが、これがただの焼死ではなく、タイヤネックレス(ガソリンをかけたタイヤを首から被せ、そのタイヤに火をつけて焼き殺す。顔は炎に焼かれ、溶けた高温のゴムが体にまとわりつくという凄惨極まりない処刑方法)だったのでゲンナリ。本編がはじまると撲殺された女性の死体が登場するのですが、これがまた死ぬまで殴られましたということが一目で分かるほどのひどい傷み具合で、本作はハンパなバイオレンス映画ではないなと腹を括りました。 ソフトなイケメンというイメージの強いオーランド・ブルームが、本作でははみ出し刑事を熱演。ハリー・キャラハンとマーティン・リッグスを合わせたような狂犬ぶりを見事モノにしており、意外と良い役者さんだったのねと感心しました。他方、フォレスト・ウィテカーはブレない安定感。ブルームと違って強烈な演技は見せていないものの、難しい部分は彼が引き受け、縁の下の力持ちとして作品の土台部分を担っています。この二人のコンビがなかなか良くて、バディムービーとしては上々の仕上りでした。 残念だったのは、謎解きの答えに面白みがなかったこと。死体やアクションの見せ方等、ディティールにはリアリティへの目配せがあるのに対して、本筋部分には荒唐無稽な部分があって(黒人抹殺兵器ってのはさすがに…)、そこのバランスの悪さが気になりました。「アフリカではこういう酷いことが現実に起こっているのかもしれない」と思わせるような内容であればよかったのですが。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-07-02 00:48:33)(良:2票)
200.  悪魔を見た 《ネタバレ》 
熱い民族性がそうさせるのか、韓国映画のバイオレンスとにかく凄い。当該分野において、韓国映画界は間違いなく世界最先端を行っています。本作も例に漏れず、躊躇のない暴力描写、剥き出しとなった感情の衝突、質の高い演技と、見所の多い作品に仕上がっています。最狂の猟奇殺人犯vs殺人スキルを身につけたエリート諜報員という燃える図式も百点満点であり、少なくとも前半部分は最高クラスのバイオレンス映画としてまとまっていました。。。 ただし、後半になると物語は大脱線をしてしまいます。猟奇殺人仲間が登場したり、猟奇殺人犯が諜報員を出し抜く行動を取り始めたりと、やりすぎ感が出てしまうのです。特に、プロの諜報員であるスヒョンが、殺人鬼とは言えスキルは素人のギョンチョルに圧倒されるという展開は非常にマズく、スヒョンが無能に見えてしまうという結果をもたらしています。このテーマであれば、表面的な主導権を握っているのは終始スヒョンであり、彼は圧倒的な殺人スキルによってギョンチョルを極限まで痛めつけるが、歪みきったギョンチョルの心までは征服することができず、ついに禁断の手段に訴えてしまうという筋書きにした方が良かったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2013-03-07 00:28:02)(良:2票)

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