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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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261.  スターダスト(2007)
『ロード・オブ・ザ・リング』と『ハリー・ポッター』の大ヒットに触発され、ファンタジー映画が乱発されていた時期に製作された一本。大したヒットにならず終わったので今の今まで鑑賞してこなかったのですが、これが見てビックリ。結構な完成度だったので驚かされました。『ロード・オブ・ザ・リング』のような重厚長大な大作ではないためジャンルの代表作にはなりえないものの、中規模作品としては、実に理想的なレベルでまとめられています。。。 ファンタジー小説では、読者は世界観を一から理解する必要があるし、登場人物の数も多くなりがちです。読み返しの利く書籍ならともかく、観客の側が能動的に情報量をコントロールできない映画という媒体においては、そのような雑多な要素をどうまとめあげるのかが大きな問題となります。『ロード・オブ・ザ・リング』のように、当初より3部作構成で製作されることが決定しており、シリーズを合計すればタップリとした上映時間を稼げる作品であれば、そうした問題への対処も容易にはなるのですが、大半の映画はそれほど恵まれた環境では製作されません。まず1本撮り、ヒットすれば続編を製作。第1作については、単品で成立する程度に話をまとめておく必要があります。そして、多くのファンタジー映画はここで躓きます。物語をコンパクトにまとめるという過程において、原作が持っていた魅力的な要素を多く切り捨ててしまい、焦点の定まらない凡作が出来上がってしまうのです。。。 本作についても、3つのパーティが同時に動き、さらには冒険に絡んでくるサブキャラの数も多く、かつ、舞台の移動も盛んであり、一本の映画の枠に収めるにはなかなか厄介な素材だったと言えます。しかし、マシュー・ヴォーンはこの複雑な物語を、奇跡的な手腕でまとめてみせています。各キャラクターの背景や行動原理を的確に伝えており、また、端正なビジュアルによって世界観の特徴も表現できており、観客に情報を与えるという作業を非常にスムーズにこなしているのです。特に感心したのは、感動の高ぶりとともにイヴェインが光を発するという処理であり、この設定を挟むことで、ドラマが非常にわかりやすくなっています。また、この原作には性や暴力が少なからず含まれているのですが、ヴォーンはそうした毒を描くという点でも躊躇しておらず、その結果、血の通った真っ当な物語として仕上がっています。
[DVD(吹替)] 8点(2013-11-18 00:46:39)(良:2票)
262.  アフター・アース
2000年代には年に何本もの主演作が公開されていたものの、2008年の『ハンコック』以降はそのペースがピタリと止まり、2010年代には『MIB3』にしか出演していないウィル・スミス。見た目は衰えていないので『バッド・ボーイズ』のような役柄もまだまだ行けそうな気もするのですが、当の本人は、40歳を過ぎた実年齢にパブリックイメージをどう合わせていくかで迷っているのだろうと思います。そんな中、自分自身で物語を考え、監督も自身で選任したという本作には、スミスが目指そうとしている方向性が込められているように思います。。。 人類を救った英雄にして軍隊の最高司令官という設定は相変わらずなのですが、その全盛期の活躍は数秒の映像で示されるのみであり、登場場面のほとんどは動けない状態。スミスは、表情とセリフのみでの演技を自らに課しています。従前のパブリックイメージを下地として利用し、人類の英雄という荒唐無稽な設定を観客にうまく飲み込ませているという点は戦略的にうまいと感じたし、その一方で、首から上だけでの演技も、必要なレベルには達していたと思います。本作においては、「若さ」から「成熟」へのパブリックイメージの転換と、高い演技力のアピールという二つのことを同時に行っているのですが、その目的はきちんと達成されているという点では感心させられました。こういうことが出来てこそのスター俳優なのですが、トム・クルーズやブラッド・ピットが10年ほど苦しんでいるこのステップを、たった1作でサラっと流してしまったという辺りに、ウィル・スミスの非凡さが現れていると思います。。。 その犠牲となったのが、息子のジェイデンでした。ウィル・スミスの映画としては悪くない出来だったものの、ジェイデン・スミスの映画としては最悪。彼は終始生意気なガキンチョで、好感を抱かれる要素が皆無なのです。ジェイデン演じるキタイの成長譚という体裁をとっているものの、その点はあまり深堀りされていません。冒頭、キタイは個人としての能力は高いが協調性に欠けるという問題が提示されます。ならば、これはキタイが協調性を獲得する物語とすべきなのですが、結局は個の力を強くすることで危機を乗り切るという、理解に苦しむ内容となっているのです。イヤな奴がイヤな奴のままラストを迎える、これでは観客から嫌われて当然ですね。これを演じたジェイデンには、お気の毒と言うしかありません。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2014-02-24 00:44:22)(良:2票)
263.  コントロール(2004) 《ネタバレ》 
普段はゴミみたいなB級アクションを製作しつつ、たまに「16ブロック」や「ブラックダリア」を作るミレニアム・フィルムズの、メジャーとB級の中間に位置する作品です。B級として見れば傑作の域に入る完成度。凶悪犯リー・レイが変貌する過程が自然で、見ている私達が冒頭で彼に感じた嫌悪感も自然と愛着へと変わっていき、最終的には「彼に悪いことが起こらないでくれ」と思わせてしまいます。コープランド博士についても、さほど多くはない描写の中で背景や心情がきちんと説明されています。特に素晴らしいのが息子の死について話す場面で、感情的にならず淡々としゃべる姿に、深い悲しみやそれを乗り越えてきた重みが込められています。辛い思い出を話した直後にも関わらず「頑張れよ」と笑顔でリー・レイを送り出すところにも、彼の人柄やリー・レイへの思いがよく表れています。ラストで車からコープランドを救い出すリー・レイ、銃弾に倒れたリー・レイを看取るコープランドの友情は、そこいらのメジャー映画にも勝るほど熱く感動的なものでした。最後のオチも単なるサプライズではなくドラマ上の必然性もあり、こういう良いオチをビシっと決めたおかげで映画全体が締まった印象となりました。一方残念なのが、B級専門会社の性か後半が単純な追っかけっこになってしまったことで、ここの安さで予算の少なさがモロバレになってしまい、またせっかく質の高かったドラマが中断されてしまいます。アクションで短絡的に終わらせるのではなく、凶悪犯だった過去を知られて社会的に追い込まれるという展開にした方が本作には合っていたと思います。リー・レイの社会復帰をコープランドや私達は歓迎しましたが、その背後にはかつての彼に傷付けられ、人生が変わってしまった被害者がいます。改心して無害になれば彼は許されるのか?癒されない損害を受けた被害者がいる一方で、彼に人としての幸福を追う自由を与えてもいいのか?という倫理上の問いかけがこの話の背後には存在するはずですが、ここをスルーしてしまったのが残念なところ。「これはあくまでB級映画だから、盛り込み過ぎずシンプルな出来にしよう」という製作サイドの判断もあながち間違ってはいないのですが、せっかく重いテーマにも耐えられる演出や演技が準備できていたにも関わらず、B級止まりにしてしまったのが本当に残念。映画は難しいものです。
[DVD(字幕)] 7点(2009-01-03 13:30:58)(良:2票)
264.  火山高
マンガ(コミックではなくマンガ)の再現度という意味では、「マトリックス」を遥かに凌いでいると思います。「レボリューションズ」はこれから影響を受けたのではとすら思ったほどです。登場人物のキャラ立ちもよく、「これは立派なマンガですね(もちろんいい意味で)」と感じました。ただしお話の方がもう少しなんとかならなかったもんでしょうか。はっきり言って退屈です。主人公以外のザコキャラがわいわいやってるだけで、いっこうに話が前に進んで行かないわけですよ。舞台だってずーっと火山高だけなんだから、絵面にも飽きます。やっぱり主人公の力の出し惜しみが悪かったんでしょうね。普通のドラゴンボール的少年マンガなら、圧倒的なパワーで転校も早々に番長を倒す主人公→一躍学園のトップへ→教師五人衆の登場→主人公大苦戦→番長ら旧勢力の加勢&新必殺技のお披露目で勝利として、少なくとも山場を2つは準備するはずです。でもここでは主人公が戦わないもんだから、話に芯がないままダラダラとラストまで行ってしまい、「冒頭では教師を平気でふっ飛ばしてたじゃねぇか」と見ている側はツッコミ続けるハメになるわけです。あと、主人公のポテンシャルがハッキリしないのも悪かったと思います。バトルものの少年マンガではキャラのポテンシャルってかなり重要なんですよ。こいつはだいたいこのくらいの力を持ってて、あのキャラには勝てるけどこのキャラには勝てないという序列は、ある意味マンガの命です。「天津飯よりクリリンの方が強いはずだ」とか「クーラが悟空と互角に戦えるのはおかしい」などと子供が揉めることからも、キャラのポテンシャルがいかに大事かがわかります。で、フリーザを代表としてパワーを隠してたキャラってのは、いざその力を見せると圧倒的に強いってのも少年マンガの定石です。しかしこの主人公、パワーを隠してたわりにラストのバトルでは苦戦しまくり。これが肩透かしになったんだと思います。だから前半で戦っとけばよかったのに。そうすれば後半も俄然盛り上がったんですよ。点数に関しては、これは作られたこと自体に意義のある映画だと思うので7点を献上します。
7点(2004-10-11 01:00:48)(良:2票)
265.  ラブ & ドラッグ 《ネタバレ》 
アン・ハサウェイのキャリアコントロールの巧さには、つくづく驚かされます。『プリティ・プリンセス』のヒットで名を売ったものの、強力なライバルがひしめくラブコメの世界ではすぐに行き詰まり、早々にキャリアは低迷しました。しかし、『ブロークバック・マウンテン』でスパっと脱いだことで再度注目を集め、ラブコメにとどまらないフィールドを獲得するに至りました。そして、『ブロークバック~』以後の安定軌道から更なる高みを目指して出演したのが本作なのですが、ここでも予想以上の脱ぎっぷりの良さで高い評価を獲得し、後の『ダークナイト・ライジング』や『レ・ミゼラブル』につなげています。普段はセクシーを売りにしていないものの、裸が高く売れるタイミングでは躊躇せずこれを武器として使うという判断力の的確さと思い切りの良さ。長期のキャリア形成に失敗したかつてのスター達(ジュリア・ロバーツ、メグ・ライアンetc…)にとっては、羨ましくて仕方がない資質だと言えます。。。 本作は難病ものであることを徹底的に隠し、エッチなラブコメという先入観を持つ観客に対して、後半パートでショックを与えるという方向での宣伝戦略をとっていました。そのため、原作としてクレジットされているノンフィクションも隠れ蓑に過ぎず(原作にマギーは登場しない)、営業マンのサクセスストーリーを期待して観ると、少なからずガッカリさせられます。では、難病ものとしてはどうかというと、こちらでも微妙でした。本作が提示するテーマには、実に深いものがあります。「いま現在愛しているとはいえ、以後何十年にも渡って苦しい介護をせねばならない相手に対して、自分の人生を捧げるという決断ができますか?」という難題を観客に対して問いかけているのです。主人公・ジェイミーとマギーの間には、愛だけでは乗り越えられない大きな壁がいくつも立ちはだかっています。ジェイミーはその壁の前で立ちすくみ、一度は負けてしまうのですが、それでも最終的にはマギーを抱え込むという決断を下します。その物語は美しいのですが、果たしてこの映画は、介護の苦しさについてきちんと描いているだろうかという点で、私は違和感を覚えました。この映画の作り手は「綺麗事ではない」と何度も何度も繰り返しながらも、結局のところ、汚い部分・苦しい部分を観客に見せていないのです。これでは、底の浅い感動作止まりではありませんか。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-11-17 02:43:17)(良:2票)
266.  ゴーストライター
本作の根幹にあるのは大した驚きも面白みもない陳腐な陰謀論なのですが、ポランスキーはこんなにもどうしようもないB級ネタを実に上品に仕上げています。その仕事ぶりは「さすが巨匠!」と言えるものであり、ベルリン映画祭監督賞受賞という高評価にも納得がいきました。しかし、それと同時に本作ではポランスキーの限界もはっきりと露呈しています。この人は70年代の監督さんなので映画全体があまりにチンタラしているし、観客のテンションを維持するためのイベント作りもできていません。クラシックなサスペンス映画の味わいを懐かしむ観客にはこのくらいで丁度良いのかもしれませんが、現代の観客が要求する適度な娯楽性を獲得するには至っていません。。。 さらに残念だったのは、ユアン・マグレガーという華も実力もある俳優を獲得しながら、彼をただの狂言回しに留めてしまったこと。『フィクサー』でトニー・ギルロイがやったように、謎解きとシンクロする形で主人公のドラマを語れば面白くなったものを、そういう工夫を一切していないのです。その結果、主人公をゴーストライターという特殊な立ち位置の人間にした意味がすっかり失われており、仮にその職業を新任の補佐官や家政婦に変更しても映画が成り立ってしまうという残念な状況となっています。。。 肝心のミステリー部分についても、ポランスキーの老練な演出によってうまく誤魔化されているだけで、よくよく考えてみれば相当に杜撰な内容です。【一般人】さんがご指摘の通り、設定のあらゆる点において納得感が薄いのです。前任のゴーストライターを消したにも関わらず、彼の足跡はそのまま放置というCIAのバカさ加減などは目に余るものがありました。主人公による謎解きにしても、本丸となる点についてはラスト5分で「いきなり気付く」というロクでもない処理がなされており、だったらこれまでの2時間でやってきたことは何だったんだと愕然とさせられました。だいたい、あんなにも露骨なダイイングメッセージに今の今まで誰も気付かなかったという設定は、さすがに不自然でしょ。
[DVD(吹替)] 5点(2012-11-19 18:26:06)(良:2票)
267.  リンカーン弁護士 《ネタバレ》 
自分の依頼者が真の悪人だとわかった時、弁護士はどうするのか?、、、これは『ザ・ファーム』や『真実の行方』等でも扱われた命題であり、弁護士モノにおける王道といえば王道の物語なのですが、主人公であるハラー弁護士の作り込みが素晴らしいため、全体として求心力のある映画に仕上がっています(ハラー弁護士があまりに良すぎるので、TVドラマ化も決定しているとか)。現在では西海岸のチャラいサーファーみたいなイメージで固まりつつあるマシュー・マコノヒーも、キャリアの初期には若きエリートを得意としていました(『評決のとき』『コンタクト』『U571』)。本作では、そんな彼の両極端の個性が絶妙に混ざり合っており、生涯ベストとも言える当たり役となっています。さらには、マリサ・トメイやウィリアム・H・メイシー、ジョン・レグイザモら、一流の脇役達が彼をグルっと取り囲み、万全の布陣を作り上げています。20年ほど顔を見ていなかったマイケル・パレの登場にも嬉しくなり、キャストの充実ぶりには感心しました。二転三転する物語も面白く、勢いのある演出も手伝って最後まで飽きさせません。娯楽寄りのサスペンス映画としては、上々の完成度だと思います。。。 以上、娯楽映画としての完成度の高さは認めるのですが、どうしても気になったのが守秘義務(本作風に言うと秘匿特権)の扱いです。弁護士ではないものの、一応は守秘義務の絡む仕事をしている者としては、かなりの違和感を覚えました。守秘義務とは絶対のものではなく、公益性が認められる場合には解除されることが法律上明記されているのです。そして、容疑者に再犯のおそれが高い上に、過去の冤罪事件にまで話が及ぶ本件であれば、まず間違いなく守秘義務の解除が認められるでしょう。実際、レイプ犯の弁護人を辞退した後、その弁護士が検察側の証人として法廷に現れ、職務上知り得た秘密を法定で証言してレイプ犯を実刑に追い込んだという事例も存在しています。さらに現場寄りの話をすると、守秘義務云々以前の問題として、この弁護士が捜査当局に耳打ちすれば済んだ話でもあります。「実はこういう話があるんだ。俺から聞いたってことにはしないでね」。犯人をぶち込みたい警察・検察はこの話に喜んで飛びつき、万事解決ですよ。娯楽映画に目くじら立てても仕方ないのですが、もう少しリアリティのある設定にして欲しかったという気持ちは残ります。
[DVD(吹替)] 6点(2013-01-31 01:20:42)(良:2票)
268.  アンダーワールド/エボリューション
前作と本作を見た感想は、面白くなりそうな駒を揃えているのに、いまいち不発なのはなぜだろうということです。ブレイドやマトリックスの露骨な後発作品ではあるものの、ヴァンパイア族とライカン族の抗争という新機軸を持ってきた前作にはバカバカしくもはじけた映画になることを期待していたのに、どうにも不発。予算が拡大した続編も前作と作品の質は同等で、いまいち盛り上がりに欠ける印象です。レン・ワイズマンという人物はプロデューサー向きの人物であって監督には不向きなような気がします。このシリーズ、面白くなりそうな駒は揃ってるんですよ。ヴァンパイアとライカンというふたつの種族を登場させることで、ヴァンパイア単品で勝負している他の作品よりもアクションやキャラクターのバリエーションは確実に広がっています。さらに続編の本作は「最強の始祖vs新世代の混血」という燃える構図を準備しており、そこにヴァンパイアの特殊部隊なんかも絡んできて良い意味でマンガ的。撮影は美しいし、出演者も良くハマってるし、アクションやSFXも頑張ってるので普通にやってれば間違いなく面白くなりそうな映画なんです。これだけの駒を揃えてきたレン・ワイズマンはなかなかのもんだと思います。ただし肝心の演出が平板で、作品全体でのテンションの配分が全然できていません。見せ場の連続なのにどこか退屈。ラストのバトルなんて、最強のヴァンパイア&ライカンにパワーアップしたヒロインがぶつかるという最高に盛り上がるべきパートなのに、「さぁいよいよ決戦だ!」みたいな高揚感のないまま戦いがはじまり、それぞれの力量を十分に見せ切らないまま終わります。マンガ的な話なのにマンガ的な盛り上げをしないのがいけないんだと思います。その辺の描き方が抜群にうまいドラゴンボールでも見て勉強すべきですね。決戦をはじめる時の盛り上げやヒーローを登場させるタイミング、各キャラの力量の描き分けなど、ハリウッド映画ができないことを日本のマンガは余裕でやってますから。
[DVD(吹替)] 6点(2006-10-29 21:02:51)(良:2票)
269.  インファナル・アフェア
主演2人が男前の笑い飯みたいでした。
8点(2004-10-11 03:38:29)(笑:2票)
270.  デンジャラス・ラン
ジェイソン・ボーン・シリーズを思わせる音楽、おまけにボーン・シリーズの撮影監督までを召喚して製作されたスパイアクションですが、残念ながらその仕上がりはジェイソン・ボーンの二番煎じがせいぜいというレベルでした。ボーン・シリーズのおいしいところを摘もうとはしているものの、ポール・グリーングラスの神がかったアクション演出と、トニー・ギルロイの緻密な脚色を真似ることは想像以上に困難だった様子です。。。 ボーン・シリーズの魅力のひとつとして、おかしなヘマをやる人間が敵・味方のどちらにも登場しなかったという点が挙げられます。圧倒的な組織力と緻密な戦略で襲いかかってくるCIAに対し、超人的な身体能力と勘の良さでこれに立ち向かうジェイソン・ボーンという図式が燃えさせたわけですが、一方で本作の登場人物達は、皆どこか間抜け。気付くべきことに気付かなかったり、勢いで行動してボロを出したり、感情を抑えるべき場面でプライベートを気に掛けたりと、殺しのプロとは思えない脇の甘さがあるのです。そして、このことが映画の温度を引き下げる大きな原因となっています。。。 さらには、序盤で提示される基本設定を、本筋においてうまく活かせていないという問題もあります。例えば、デンゼル演じるトビン・フロストには、敵を寝返らせることを得意とするという設定がありました。この設定が置かれている以上、主人公マットは「自分はトビンに騙され、うまく丸め込まれているのではないか?」という疑念を持つべきだったし、その疑念が映画全体のサスペンスを盛り上げる一大要因となるべきでした。しかし、完成した映画においてはこの設定がほとんど切り捨てられ、最初から最後までまっすぐに話が進んでしまいます。せっかく面白い設定が準備されていたのに、これでは実に勿体無い。ドラマもうまく流れておらず、ラストの熱い会話も、観客にはうまく伝わってきません。。 ボーン・シリーズだけではなく、『007』や『ミッション:インポッシブル』といった老舗シリーズも優秀な新作を送り出しており、アクション映画界でも最大の激戦区と言える当ジャンル。そんな厳しい世界において、この程度の出来で勝負を挑むのは無謀でした。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2012-12-19 00:46:52)(良:2票)
271.  沈黙の要塞
「沈黙の戦艦」が4週連続全米ナンバーワンというとんでもないヒットとなったことから、ワーナーがセガールに大幅な予算と発言権を与えて製作したのが本作。「環境を大事にしましょう」と言いながら爆破アクションをやるチグハグな構成、趣味の悪いファッション、本筋とはまったく関係のないスピリチュアル描写(セガールが素手でクマを倒したり、裸の女性に誘惑されたり、ばあさんのグチを聞いてあげたり、常人には理解不能な内容)等々、セガールがやりたい放題にやっていて、ある意味見応えがあります。監督セガールは俳優セガールの大ファンのようで、セガールを盛り上げる演出はいつも以上。「セガールが実は凄い奴らしい」と聞いて急にビビり出す悪党というセガール作品お馴染みの描写が普段の5割増しくらいになっていて、かなり笑えます。主人公はヒロインを連れて行動しているものの彼女にはセリフがほとんどなく、クライマックスになると満足に顔も映してもらえなくなり、観客が見るのはセガールの雄姿ばかりという凄まじい状態となります。予算アップに伴い悪役も豪華になっているのですが(ボスがサー・マイケル・ケイン、戦闘部隊のリーダーがリー・アーメイ先生)、彼らもまた赤子のように難なく倒されるといういつものセガール映画の悪役に過ぎないため、良い俳優を連れてきた意味がありません。「ギャラさえもらえればたいていの仕事を受ける」をモットーに、「ジョーズ87復讐篇」撮影のためにオスカー受賞式を欠席したという素晴らしい経歴を持つマイケル・ケイン、またしても金に釣られたようです。同じく金に釣られた組でも、唯一ベイジル・ポールドゥリスだけは素晴らしい仕事をしています。アラスカの雄大な大地をまさに表現していて、オスカー受賞作に使用されていても不思議ではないほどの名スコアーを気前よく提供。引き続き「暴走特急」に起用されたのも、本作におけるマジメな仕事ぶりが評価されたためでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2004-08-05 16:13:49)(笑:1票) (良:1票)
272.  ターミネーター:新起動/ジェニシス 《ネタバレ》 
『3』『4』は不評だったし、シュワはすっかりおじいさんだしと、もはや世界中で誰も待っていないのに勝手に”I’ll be back.”しちゃった『ターミネーター5』。日本より一足先に公開されたアメリカでは興行成績も批評も振るわず、「ほらほら、やっぱ作らなきゃよかったじゃん」という空気が漂っておりますが、映画とは自分の目で見るまでわからんもので、これが意外にも良かった。3D料金に加えてドルビーアトモス特別料金も加算され、しめて2,400円もかかった鑑賞でしたが、その元は十分にとれたと言えるほどの満足感がありました。 『1』からの伝統に乗っ取り、本作も未来戦争からスタートしますが、映像技術の発展の恩恵もあって、かなりテンションの高い見せ場となっています。その後は我々の知っている展開が待っていると見せかけておいて、その場面が次々と覆されていきます。これにより、本作の舞台となっているのはタイムスリップにより改変された後の世界であることが明らかになるのですが、老人タイプのT-800や警官に化けたT-1000の登場場面など、予定調和の壊し方がとにかく素晴らしく、ここで一気に引き込まれます。その後は、このシリーズのひとつのテーマでありながら、これまで重く扱われてこなかったタイムパラドックスを扱ったSF映画となり、誰も予想しなかった方向へと話が広がっていきます。 次から次へと繰り出される見せ場の迫力は素晴らしく、さらには縦の構図を意識したアクションが多いため、3D効果を得やすくなっています。アトラクション映画としてよくできているのです。一方、お話の方は緻密なようでいて、その実かなり適当な部分もあったりしてツッコミを入れたくなるのですが、タイムパラドックスなんて細かくやりすぎると『プライマー』みたいな訳のわからん代物ができてしまうんだし、夏の大作としては、これくらいの密度で丁度良かったような気もします。少々分かり辛い部分もありますが、幼少期よりセワシ君理論に慣れ親しんできた日本人の観客であれば、その辺は何とかなるはずです。 最後に、日本の配給会社による宣伝はどうにかならないものですかね。ネタバレに当たる部分を予告の時点でほとんど見せてしまっていることには、怒りを通り越して呆れてしまいました。そういえば、『T4』公開時にもT-800シュワモデル登場という最大のサプライズをCMでバンバン流していたし、あまりにモラルに欠けるような気がします。
[映画館(字幕)] 8点(2015-07-11 03:20:16)(良:2票)
273.  トゥルー・ロマンス
女にモテず、服装もダサいオタクのフリーターが巨乳の金髪に勝手に惚れられるという、イケてない男子なら誰もがしたことのある妄想が繰り広げられます。エロくて、かわいくて、おまけに趣味の話を聞いてくれる彼女なんて最高ではありませんか!家の外で趣味の話をしないことが大人になることなんだなと学ぶ18の春を男はみな経験するわけですが、このクラレンスは趣味と彼女を両立させるという奇跡を成し遂げます。うらやましい!美人にモテて気が大きくなったクラレンスはバイオレンス一直線に走りますが、これまた学校のヤンキーにビクビク脅えつつ、「こいつらを全員俺の鉄拳で倒し、校内に平和を取り戻してやる」という文科系男子のバイオレントな妄想が素直に実写化されています。ド素人のクラレンスがマフィアや警察を敵に回し、ハリウッドの大物プロデューサー(モデルはジョエル・シルバー?)相手に大きな取引を成功させる展開はうまく行きすぎですが、タランティーノのバイオレントな妄想の実写化であり、オタク青年のファンタジーとして見ると、これは非常に楽しめます。。。「レザボア・ドッグス」で注目されたばかりでまだ「パルプ・フィクション」も世に出ていない時期に製作されながら、意味のない会話、B級趣味、度の過ぎたバイオレンス等、本作はタランティーノ作品の特徴を驚くほどよく押さえています。すでに売れっ子監督だったスコットが、昨日今日注目されたばかりの若手クリエイターの個性を殺すことなく、よくぞここまで「タランティーノらしい」映画を作ったものです。同時期に製作され、一方こちらはオリバー・ストーンが好き勝手にいじり倒してタランティーノを激怒させた「ナチュラル・ボーン・キラーズ」とは対照的です(「ナチュラル~」の後、親友のロバート・ロドリゲスを除いてタラは自分の脚本を他人に監督させなくなった)。トニー・スコットは見せ場だけの大味な映画を作る監督だと思われがちですが、本作を見ると企画の良さを的確に理解し、従来の自分のスタイルにこだわることなく企画本来の良さを活かす工夫のできる、器用で謙虚な監督という印象に変わります。
[DVD(吹替)] 8点(2009-08-14 17:41:57)(笑:1票) (良:1票)
274.  ディセント 《ネタバレ》 
最近は聞かなくなった表現ですが、昔のニュースでは雪山で遭難などが起こると「○○大学のパーティーが行方不明になりました」と言っていました。それを聞いて「そんなとこでパーティーなんかするからだよ」と思ってた子供の頃の私。この映画を見ると、その頃の気持ちが甦りました。金と時間にそこそこ余裕があって気力・体力も自信のある女性方が、入っちゃいけない洞窟に入ってえらい目に遭うというお話。「そりゃ入ったあんたらが悪いよ」と、若者のやんちゃを戒める町内会の年寄りのような冷めた目で見てしまいました。この映画、演出・演技・視覚効果はどれもなかなかのレベルです。飛び上りそうなショックシーンがいくつもあるし、最初は自信まんまんのみなさんが「あ、ヤバイかも」「これは本格的にマズイ」「あ~~~助けて~~~!」と追い込まれていく心理的圧迫感も表現できていたし、洞窟も本物にしか見えません。地底人だって本当にそういう生き物がいるかのようなデザイン、質感だったし、天井にぶら下がる場面などではいかにも「吊ってます」とは見えない絶妙なサジ加減で身体能力が表現されていました。以上なかなかよく出来ているのですが、どうしても「入ったあんたらが悪い」に邪魔されて乗り切れなかったのが残念です。一方、職業探検家がスポンサーからの指示を受けて洞窟に入り、地底人に襲われる「地獄の変異」は好感を持って見られたことを思うと、やはり登場人物に憐れを感じられなかったのは大きいようです。こちらではむしろ地底人のことをいろいろ心配してしまいました。長年誰からも気付かれずひっそり生きてきたのに、突然の侵入者が大騒ぎして仲間が大勢殺されてしまう地底人のみなさん。女性地底人も登場しますが、地底人にも性別があって若いうちは恋愛とかしてるんでしょうね。あのルックスでもモテるモテないの差があったりして。なのに、それをブチ壊してしまうパーティー達。目が見えるやつとの勝負なんて卑怯じゃねぇか!という地底人のみなさんの焦りと憤りが画面から伝わってきました。ラストはパーティーによる大殺戮。そして誕生日会の場面で映画は終わります。以上、パーティーにはじまりパーティーに終わる映画でした。
[DVD(字幕)] 6点(2009-01-11 21:28:16)(笑:1票) (良:1票)
275.  欲望のバージニア 《ネタバレ》 
実話であることを売りにしている本作ですが、ハリウッドにおける”based on true story”は非常に範囲が広く、本作についてもフィクションとして見るのが無難のようです。と言うのも、原作を書いたのは主人公・ジャック・ボンデュラントの孫にあたるマット・ボンデュラントであり、幼少期におじいさんから聞かされていた自慢話を小説化したものだとか。年寄りの昔話ほど信用できないものは他にないわけで、実際、ありえない程イカれた捜査官に、ありえない程生命力の強い次男と、実話と言うにはムリのある展開のオンパレード。話半分どころか、話3分の1か4分の1くらいのつもりで鑑賞なさってください。。。 内容は、ハリウッドで頻繁に製作されるアウトローものであり、特段に変わった試み等はなされておらず、一から十まで王道に徹しています。際立った傑作・秀作の類ではないが、この手の映画の黄金率に当てはめて堅実に作られてはいるので、深く失望させられることもありません。監督は、ひたすらに陰鬱な終末SF『ザ・ロード』で世界中の観客の心を粉々に砕いたジョン・ヒルコートですが、『ザ・ロード』に続き、本作でも湿っぽい演出を披露しています。物語は一家の三男・ジャックの成長譚であり、中盤にはジャックのちょっとしたサクセスストーリーも織り込まれているのですが、この監督の個性の賜物か、まったく爽快感を味わえないという点は、唯一、本作で独特に感じた点でした。展開はチンタラしており、インパクトある見せ場もないのですが、この湿っぽさのおかげで、物語には一定の緊張感が維持されています。どこまで意図されたものなのかは分かりませんが、なかなか面白い塩梅の映画だなと思いました。。。 この手の映画は若手俳優の豪華共演を売りにする場合が多いのですが、例に漏れず、本作もなかなかのメンツが顔を揃えています。登場場面の多さは役者の知名度と完全に比例しており、ジェイソン・クラーク演じる長男がいてもいなくても変わらない程の薄い存在感だったことはお気の毒でしたが、一方で、トム・ハーディ演じる次男のかっこよさは頭一つ抜けていました。いざとなればメリケンサックを取り出して相手をボコボコに殴りつけるバイオレンス野郎にして、惚れた女に背を向けて死地へと向かう任侠野郎、最高ではないですか。シャイア・ラブーフなんてどうでもいいから、もっとこいつを見せて欲しいと切に願いましたとも。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-11-13 00:36:13)(良:2票)
276.  マネーボール
オスカー大量ノミネートも納得の仕上がりで、欠点らしい欠点がないほどよくできた映画でした。この映画がうまかったのは野球映画として作られていないところで、変革者の苦悩や人生における決断の重要性といった普遍的なテーマを中心に扱っているおかげで、間口の広い映画となっています。野球をまったく観ない方でも楽しめるのではないでしょうか。。。 本作が興味深いのは、スターの存在を否定するマネーボール理論とは正反対の方法論で製作されていること。なんせ、主演は世界一のスターであるブラッド・ピットですからね。脚本は、これまたハリウッド一の脚本家であるスティーブン・ザイリアン。金満ディノ・デ・ラウレンティスをして「ザイリアンは良い仕事をしてくれるが、その分ギャラが高い。本当に高い」と言わしめたスター脚本家が本作を手掛けているわけです。監督は『カポーティ』のベネット・ミラーが担当していますが、当初は、これまたスター監督であるスティーブン・ソダーバーグが予定されていました。マネーボール理論を扱った本作が、マネーボール理論の根本的な発想を否定しているという構図は非常に興味深いと思いました。
[DVD(吹替)] 7点(2012-06-28 00:27:14)(良:1票)
277.  イナフ 《ネタバレ》 
午後のロードショーでやってたのを録画して鑑賞しました。往年の名作からD級アクションまでを幅広く扱う午後ローでは必然的に視聴者の懐も広くなるものですが、そんなオープンな気持ちで鑑賞してもこの映画はよく理解できませんでした。DVに苦しむジェニロペが子供を連れて旦那から逃げるという話なのですが、その行動がいちいち頭悪すぎ。警察に届ければ根本的な解決に至らなくとも一応の歯止めにはなるし、届け出の事実によって後の親権裁判も圧倒的有利に進むはず。なのに彼女は「子供を連れて姿を消す」という最悪の方法をとってしまいます。逃げるなら逃げるで旦那が仕事に出ている昼間に姿を消せばいいものを、深夜にこっそり夜逃げしようとして案の定旦那に気付かれてしまうという大馬鹿ぶりを披露。以降は旦那による常軌を逸した追跡が開始されるのですが、これについても「警察に駆け込めば解決するだろ」の連続で呆れてしまいます。バカとバカの追いかけっこの末いよいよ追い詰められたジェニロペはようやく弁護士の元に駆け込むのですが、すると「あんたの行動がメチャクチャすぎたんで、今さら裁判やっても勝てませんよ」と至極当然のことを言われます。ひどく落ち込むジェニロペ。しかし、DV男にかわいい娘を渡すわけにはいかない。そこで思いついたのが「格闘技を習得し、旦那とサシの勝負でケリをつける!」。もう理解不能でした。つっこみすら入れられない驚愕の展開。訓練に励むジェニロペの表情が真剣そのものなのが、さらにトホホ感を高めます。旦那の殺害に無事成功し、駆けつけた警察もうまく誤魔化し、笑顔を失っていた娘も元の良い子に戻り、次の旦那候補は良い人そうだし、すべてめでたしめでたしで映画は終わるのですが、格闘技の特訓をしていたことが分かれば故殺は成立しますよ。。。この映画、DVという重いテーマを扱っているのにその理解があまりに不足しています。DVは「逃げれば済む」という単純な話ではなく、被害者である女性と加害者である男性が精神的に依存し合っているために、逃げればいいのに逃げないという点が問題だったりします。「やられたらやり返せ!」と斬り返せる女性は一般的なDV被害者の人物像からはかけ離れています。そもそもジェニロペはたくましすぎて「耐え忍ぶ妻」には全然見えないし。テーマがテーマなので、もっとマジメに作るべきでした。
[地上波(吹替)] 3点(2011-01-19 22:21:14)(良:1票)
278.  キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
つまらなくはないが突出して面白くもない、アメコミ実写化作品としてはものすご~く標準的な仕上がりで、「ジ・アヴェンジャーズ」のために突貫作業で製作された作品であることが丸出しとなっています。70年代からヒーローの実写化企画に挑んできたマーヴェル・コミック社が、その失敗と成功の歴史から学んできたノウハウをまんまブチ込んで作っただけの作品という印象で、本作独自のアイデンティティには乏しいと感じました。。。愛国心の強いアメリカ版のび太くんがスーパーヒーローに変身する物語なのですが、もやしっ子が突如アスリートを超える身体能力を手にしたことの爽快感がうまく表現できておらず(「スパイダーマン」第一作では表現できていたんですけどね)、変身ものの醍醐味を活かしきれていません。ロジャース少年はその善良さと正義を愛する心を評価されてスーパーソルジャー計画の被検体に選ばれたのですが、彼の人柄もうまく表現しきれていませんでした。同様に、レッドスカルの残忍さの描写も不足しているため、悪役の存在感もイマイチ。レッドスカルはヒトラーをも超える誇大妄想にとり憑かれてナチスを離脱し、独自の軍隊「ヒドラ」を率いて世界制覇に乗り出したという素晴らしい悪党なのですが、映画ではそのスケール感がうまく表現できていません。また、その戦闘能力を発揮する見せ場が少なかったことも、悪役の存在感を低下させた原因となっています。ヒューゴ・ウィービングは相変わらずよくハマっているだけに、脚本と演出の手落ちが惜しい限りです。その他のキャラクターの描写も薄く、ヒロインであるペギー・カーターはキャップの心の恋人としての魅力に欠けるし、トミー・リーは缶コーヒーのCM並のやっつけ仕事ぶりを隠しきれていないし、キャップが選抜した特殊部隊のメンバーにもこれと言った見せ場がありません。唯一素晴らしかったのはクライマックスに登場したニック・フューリーで、サミュエル自身が持つスターオーラの賜物か、「ジ・アベンジャーズ」への期待感がそうさせるのか、尋常ではない大物感が漂っていました。最後に、本作は3D上映もなされていますが、悪名高き後付け3Dであるため3D効果は薄く、それどころか3Dメガネを通して見ると画面が暗く感じるため、2Dでの観賞をお勧めします。
[映画館(字幕)] 5点(2011-10-14 17:41:30)(良:1票)
279.  エクス・マキナ(2015) 《ネタバレ》 
つい最近も経産省が国会答弁をAIに作らせる実験を開始したというニュースがあって、AIはかなりホットなテーマと言えるのですが、ことSF映画においては随分昔からの定番ネタでもあります。映画に登場するAIキャラには大きく2種類あって、ひとつは暴走して人間に危害を加えちゃう系。『2001年宇宙の旅』のHAL9000、『地球爆破作戦』のコロッサス、『ターミネーター』のスカイネットがこれに当たります。もうひとつは、人間と同じ自我や感情を持っているのに機械扱いされて可哀想系。『ブレードランナー』のロイ・バッティや『A.I.』のデイビッドがこれに当たります。本作が面白いのは、AVAは人間に似た姿に作られていることから観客に可哀想系AIを連想させるものの、実は危害を加えちゃう系でしたというオチの作り方であり、定番ネタの折衷に成功しています(裏を返せば、本作は世間で言われているほど斬新な内容ではなく、伝統的によくあるネタの見せ方を変えているだけとも言えるのですが)。 さすがはアレックス・ガーランドの作品だけあって物語は緻密に考えられており、サスペンスとしての大ネタもきちんと仕込まれています。ケイレブが呼ばれた目的はチューリングテストではなかったという話のひっくり返し方は特に面白いと感じました。人間と遜色ないレベルのAIはキョウコ以前のモデルで既に完成しており、社長はAIと接触した人間側の反応を見ようとしていたのです。 この社長の人物造形も理詰めでよく考えられています。社長はムキムキに体を鍛えており、さらには格闘技の特訓までやっているのですが、オチまで見ればAIの抵抗に備えてのものであることが分かります。また、キョウコは社長の理想像を投影したモデルと考えられますが、キョウコが言葉を発することができない仕様にされていることから考えると、研究開発過程において社長もまたキョウコに愛着や同情心を抱いたために何度か危険な目に遭わされてきたということが推測されます。社長は自分自身と同じ失敗を他人も犯すのかどうかを見るために被験者としてケイレブを選び、ケイレブの理想像を投影してAVAを作ったのです。 そんな理想の女性像を映像化するにあたっては、誰からも文句のつかない美貌を持つ女優さんをキャスティングする必要がありましたが、そんな要望に完璧に応えてみせたアリシア・ヴィキャンデルの美しさには本当に驚かされました。さらにはただのお人形さんにはならず、抜群の演技力、人を超えた雰囲気、必要な時にちゃんと脱ぐ女優魂も見せており、あらゆる点でこの人は突出していると思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-01-07 23:28:19)(良:1票)
280.  ジェヴォーダンの獣
フランス貴族に並んでインディアン風の男が立っているポスターを見た時点で「これはバカ映画だ」と確信したのですが、いざ鑑賞すると意外にも時代劇としてまっとうな出来なので驚きました。ヴァン・ヘルシングのように「設定だけは時代劇ですが」みたいな軽いものではなく、衣装やセットも手がこんでいるし演出にも重厚感があってよくできているのです。登場人物の演技やセリフもバカっぽくなく、怪しい時代の怪しい田舎の雰囲気も良く出ていて、少なくとも前半はどこの大河ドラマかとでも言わんばかりの仕上がりとなっています。問題のカンフーインディアンも撮影や編集がよかったためか視覚的にはそれほど浮いて感じられず、マニという人物もキャラクターとしてきちんと完成されているので、フランス貴族とカンフーという無茶苦茶な組み合わせなのに巧く見せるなぁと感心しました。ただし話の展開が単調なので後半になると猛烈に退屈になってきます。確かに後半は獣がついに姿を現し見せ場も増えるのですが、話自体が求心力を失っているので見ていてもまったく盛り上がらないのです。「実は○○は~~でした」などという短絡的な怒涛の展開が起これば起こるほどチープ加減に拍車がかかり、クライマックスに行き着く頃には完璧なB級映画になってしまいます。監督もその自覚があるのかないのか、最後のバトルは無茶苦茶で笑ってしまいました。文科系の学者さんで得意の武器は銃だったフロンサックが、インディアンばりのフェイスペイントして二刀流で大暴れ。ブレイドばりに敵のど真ん中へ飛び降りて大見栄を切ると、武闘派マニですら勝てなかった敵一味をひとりで殺しまくります。あんた、そんなに強かったのか?と驚いていると、今度はヴァンサン・カッセルが伸びる剣で対抗。重厚な時代劇としてはじまった話のクライマックスがこれかと、高級フランス料理のデザートがガリガリくんだったような気持ちになりました。安易にアクションで決着をつけるよりも、ジェヴォーダンの獣に関する陰謀や駆け引きをもっと見せて欲しかったような気がします。モニカ・ベルッチの正体をもう少し早く暴いて、闇の勢力とバチカンとの知的な駆け引きを後半の山場にすれば良い映画になったと思うんですけどね。
[DVD(字幕)] 5点(2006-11-25 19:42:54)(笑:1票)

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