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 > ザ・チャンバラ さん
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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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501.  エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
こちらの打ち手を知り尽くしている敵が相手では勝ち目がないと、従来メンバーを切って若手隊員をリクルートするスタ隊長。ここからエクスペンダブルズは新たな局面に入るのかと思いきや、大した作戦もなく敵陣に攻め入って力技でターゲットを落とすという、代わり映えのしない戦いぶりだったことにはガッカリさせられました。案の定、メル・ギブソンによる返り討ちに遭い、若手隊員を人質にとられるスタ隊長。その後、スタ隊長は従来メンバーとともに再度出撃し、またしてもノープランで敵陣に足を踏み入れては敵の猛攻撃にさらされるという、ものすごく頭の悪い展開を迎えます。同じ失敗を何度繰り返すんだよ、スタさん。こんなことだったら、世代交代絡みのエピソードは一切落としてしまって、いつもの仲間と大暴れする様で2時間引っ張ればよかったのではないか思います。。。 そんな感じでお話の方はシリーズ最低とも言えるほどのグダグダ加減だったのですが、物量にモノ言わせたクライマックスの大戦闘シーンで、映画は息を吹き返します。大勢のキャストに均等に見せ場を割り当てるという見事な演出に、突拍子もないほどの火薬の量。10人の傭兵が小国の軍隊を相手に戦闘を繰り広げ、勝利するというバカバカしい内容なのですが、アクション俳優達の筋肉とカリスマ性によって道理など引っ込んでしまい、見せ場のコラージュのみで画面を持たせてしまうのです。純粋に破壊を楽しめるアクション映画は久しぶりでした。そもそも、シルベスター・スタローンとハリソン・フォードが組んで、メル・ギブソンを倒すという構図自体が素晴らしすぎます。『2』を劇場で鑑賞した時、これ以上の豪華キャストは実現できないだろうと思ったのですが、本作では『2』を軽く超えるほどの顔ぶれを揃えてきたのですから、スタローンの人脈とキャスティングセンスには恐れ入ります。。。 キャストの平均年齢は恐ろしく高く、画面に映る顔はどれもこれもしわっしわ。しかし、一人一人がとても輝いていて良い表情をしていることが好印象です。作り手と観客との間の、良い意味での馴れ合いこそが、本作最大の味なのです。
[映画館(字幕)] 8点(2014-11-04 00:21:38)(良:1票)
502.  フレンチ・コネクション2
フランス語をしゃべれるという理由だけで雇われたフランケンハイマーですが、さすがは巨匠というか、完全に自分の色に染めてしまってましたね。リアルな雰囲気が主役だった前作とは正反対に、今回はポパイによる男のドラマとなっています。フランスにまで出張して青い目の銭型警部と化したポパイですが、もう彼のパワーがフルスロットル。ジーン・ハックマンの演技はオスカーを受賞した前作以上に鬼気迫るものとなっています。とくに禁断症状の中、野球談義をしながら泣き崩れるシーンは、これだけでオスカー数個分に匹敵するのではと思いました。今回は捜査らしい捜査もなく、冷静に証拠を追いかけていた前作とは別人かのように、怒りにまかせてホテルを焼き払うシーンまであります。今回の相棒となるバルテルミーとは文化を越えて理解し合い、彼が第1作のラソーに負けないほど活躍するのかとのかと思いきや、結局は何の役にも立たないし。もうポパイの映画なんですよ。ドキュメンタリーを見ているかのような前作に対し、今回は良くも悪くもテレビの刑事ドラマのようでした。土曜ワイド劇場みたいな安い音楽、第1作と比べるとあんまりなDVDの画質もその雰囲気をばっちりフォロー。これはこれで面白いんですけど、前作のファンとしては物足りなさを感じました。ただし恐ろしく印象に残ったシーンがひとつ。ポパイがホテルに監禁されて麻薬漬けにされるシーンで、おばあさんが「私はイギリス人だから英語を話せる」って言ってボロボロのポパイに話しかけてくるんですね。いい人なのかな?と思いきや、ばあさんの腕は注射の跡だらけ。ポパイの腕時計を盗みに来ただけだったんです。このシーンにはかなり凍りました。
7点(2004-09-27 02:31:15)(良:1票)
503.  ファイヤーウォール
会話も行動もすべてモニタリングされて身動きのとれない主人公がどう反撃するのかという物語は『24 season1』を彷彿とさせるのですが、これが『24』の足元にも及ばない程つまらない映画で驚きました。犯人側の計画がザル状態だし、おまけに彼らは『ホームアローン』の泥棒クラスの間抜けぶりで、サスペンスがまったく盛り上がらないのです。だいたい、犬一匹殺せない連中に観客が恐怖するわけがないでしょう。この手の巻き込まれ型サスペンスでは、犯人側を描写すると一気にスリルが減退するという好例となっています。それに対する主人公も大バカ野郎で、部外者に助けを求めるチャンスはいくらでもあったにも関わらず、犯人側の要求にバカ正直に応じ続けてどんどん深みに嵌っていくという有様。その割に、妻が自分を裏切っていたとする犯人側の偽装工作はいとも簡単に見破ってしまうという謎の直感も持っており、何を考えて書かれて脚本なのか、理解に大変苦しみました。。。 『フランティック』や『逃亡者』などハリソン・フォードはこの手の役柄を得意としてきましたが、本作ではさすがに歳をとりすぎて映画の雰囲気を損なっています。設定年齢と実年齢の乖離があまりに大きくて子供達が孫にしか見えないという状態であり、家族愛という本作の大きな柱を主演俳優自身がへし折る形となっているのです。そもそも、最新技術を操るエンジニアには見えないし、なぜハリソンさんがキャスティングされたのかがまったくの謎です。 
[ブルーレイ(吹替)] 3点(2013-06-10 00:39:10)(良:1票)
504.  ディア・ハンター 《ネタバレ》 
よく問題とされるアジア人の描写については、それほど気になりませんでした。ベトナム戦争は舞台に過ぎず、本作が扱っているのは戦争がいかに人を壊すものであるかというより普遍的なテーマであって、アジア人を悪く描くために作られた作品でないことは十分に読み取れるからです。。。にも関わらずきびし目の点数を付けたのは、ドラマがいまいち心に入ってこなかったため。まず、役者に問題ありと思いました。地方に暮らす普通の若者たちを主人公としつつも、それを演じているのがデ・ニーロにストリープですからね。どう見ても普通の若者ではありません。シリアスな後半では彼らの演技力が如何なく発揮されるものの、前半のバカ騒ぎでは「普通の若者を演じてますよ」という取って付けたような感じがしました。ルックスに幼さを残していたウォーケンはセーフ、残りは全員アウトでしょう。30代半ばを中心とする俳優達の年齢はキャラクター達に合っておらず、この内容であれば20代の役者を使うべきだったと思います。本作は前半のバカ騒ぎに合った人選をすべきだったのであり、後半を演じられるか否かで俳優を決めてしまったことは誤りだったと言えます。。。次に、本作のキーだったニックの行動があまりに突飛で、私の理解が追いつきませんでした。なぜ、ロシアン・ルーレットのプレイヤーとなったのか。なぜ、マイケルが迎えに来たにも関わらずロシアン・ルーレットを止めなかったのか。「戦争で心を壊したから」ということは分かります。ただし細かい原因を読み取れなかったので、自殺願望を掻き立てるまでに彼を追い詰めたものとは一体何だったのかがよくわかりません。私は、戦場に仲間を置き去りにした罪悪感のためかと思っていたのですが、だったら迎えに来たマイケルの前で死ぬ理由がわからなくなります。戦争により人格が完全に変わってしまい、故郷には戻れない人間となってしまった。だから戦争の終わりとともに命を絶ったとも解釈できます。しかし、そうした背景を匂わせる描写が本編中にほとんどないため、こちらもスッキリしません。前半の日常の光景は長い時間をかけてじっくり描いたのですから、こうした狂気の部分も丁寧に描いて欲しかったです。
[レーザーディスク(字幕)] 4点(2010-06-26 20:48:38)(良:1票)
505.  ヒミズ 《ネタバレ》 
古谷実による原作は未読。古谷氏といえば『行け!稲中卓球部』の作者として知られていますが、常に楽しいこと、面白いことを要求されるギャグ漫画家は精神を病むことが多いらしく、例に漏れず古谷氏の書く物語も相当病んでいます。『稲中』の次に発表した『僕といっしょ』などはギャグ漫画の体裁をとりながらも家庭崩壊や自殺などのテーマを扱っており、本作『ヒミズ』はそれらをより直球で表現した作品なのだろうと思います。。。 本作に登場するのは不登校児、ホームレス、精神異常者、スリ、ヤクザと普通ではない人たちばかり。世の中に確かに存在してはいるが、私たち"普通の人々"が見ないようにしている人たちです。これらの人々が繰り広げるドラマには何やら圧倒的なパワーがあって、脂の乗り切った園子温監督の手腕を存分に味わうことができました。その一方で、観ている間はこの映画が何を言いたいのかを掴みきれず、物語との共感の接点を見出すことができなかったこともまた事実。監督が東日本大震災のイメージを持ち出した理由もわからず、奇人たちのドラマをただ傍観するのみでした。。。 しかし、ラストシーンでようやく監督の意図が理解できました。犯した罪を償うために警察へ向かう住田に対して、茶沢が叫ぶ「夢を持て!」というセリフ。これは序盤に登場した教師のセリフのリピートなのですが、序盤では空虚に感じたこのセリフが、一転してラストでははっきりとした意味を持ちます。大きな苦痛と苦悩を経て、それでも前へ進もうと決意した者の口から発せられる「夢を持て!」というセリフの、いかに重いことか。これこそが、東日本大震災を経た日本に対して監督が贈ったメッセージだったようです。平時においては毒にも薬にもならないこの励ましが、今の日本には本当に必要とされているのです。。。 演技のレベルは総じて高く、ヴェネチアでの高評価も納得です。ただし、10代の男女がここまでの熱演を披露したことは痛々しくもあります。園子温は役者を徹底的に追い込み、真っ白になったところで役柄を注入するという演出方法をとっているのですが、10代の男女がこの方法でコッテリと絞られたんだと思うと、かなり気の毒な気持ちにさせられます。
[DVD(邦画)] 7点(2012-08-14 20:32:30)(良:1票)
506.  ソウ 《ネタバレ》 
《注意!ものすごくネタバレしています。結末を言ってしまってます。未見の方は決して読まないでください。後悔しても私の責任ではありません。》これはすげぇっス!予備知識もほとんどなしで何げなく見に行ったら、これが今年最大の拾い物でした。全編に渡る張り詰めた緊迫感がすさまじく、久々に躍動しまくってるサスペンスに出会いました。サスペンス映画ってのは基本的に「静」の展開をベースにしているものですが、この映画は徹底的に「動」。画面の展開がとかアクションがという意味ではなく、この映画は話が終始動き続けてるんです。次第にベールが剥がされていくような謎解きが全編に渡るのですが、その情報量の割りに破綻を招かない絶妙なテンポ、知らず知らずのうちに張り巡らされていく伏線の数々、そして至る驚愕のラスト。やってくれますよ。映画を見てて久々に「やられた」って思いました。さらに残虐描写が話の緊迫感をフォローし、恐るべき緊迫感を生み出します。スプラッターのキツさで言えば「ハンニバル」など言うに及ばず、「テキサス・チェーンソー」をも越えていると思います。そんな素晴らしい傑作なのですが、欲を言えばもっと登場人物の葛藤を描いてほしいかったです。なにせジグソウの狙いはそこにあった上に、結局この映画はジグソウの思惑通りの結末を迎えるわけですから、やっぱりそこはきちんと落とし前つけとくべきでしょ。主人公達が犯人に怒り、そこから自分の運命に絶望し、そして己の過ちを悔いる場面もきちんと見せてくれれば、ラストがさらに意味深いものになったと思います。それにしてもラストは悲惨でしたけど。妻と娘に危険が迫っていることを知り、ついにゴードンは家族の大切さを思い知るわけです。一方、何とか危険を脱した妻はゴードンの無事を確認するために電話をするのですが、ゴードンはそれを助けを求める電話だと勘違いし、自分の足首を切断してまで脱出を図るのです。しかし、恐らくゴードンを待っていたのは死でしょう。出血多量で死んだか(ワイヤーで死んだデブは脱出時の出血多量が死因とありましたから、それが伏線に当たると考えられます)、そうでなければジグソウに殺されたか。正しいことに目覚めた主人公が、その瞬間に死を迎えるだなんて、これほど悲惨な話はありません。
9点(2004-11-05 01:06:10)(良:1票)
507.  ブリッツ
ジェイソン・ステイサムが刑事を演じるということで、またいつものB級アクションかと思っていたのですが、内容は事前の予想とかなり異なっていました。彼の母国イギリスが舞台ということで刑事も犯罪者も銃を常備しておらず、刃物や棒っきれが主な武器となるという何とも地味なアクション映画となっています。と言うか、アクション映画と呼ぶことすら不適切ではないかと思うほどに見せ場がなく、『トランスポーター』や『メカニック』のような内容を期待するとかなり失望させられます。。。 本作には原作があって、それは映画版でステイサムが演じたブラント刑事と、ホモでインテリのロバーツ警部がコンビを組むというシリーズだったとか。その原作は読んだことがないのですが、恐らくは、男性的すぎる暴力刑事と、中性的なエリート警部が、お互いにないものを補い合いながら難事件に立ち向かうという内容なのであろうと推測されます。一方でこの映画版ですが、そうしたバディものとしての面白さはまったく追求されていません。狂犬・ブラント刑事が抜群の存在感を示す一方で、ロバーツ警部が空気同然の存在感。演じている役者さんは悪くないのですが、ステイサムというカリスマ的な俳優と並べられると、完全に見劣りしてしまっています。彼の存在を際立たせるためのサブプロットでも挿入しておけば良かったのですが、脚本にそうした工夫が一切なされていないために、ステイサム一人で事件を解決したかのような印象を観客に抱かせるに至っています。。。 敵も敵で、かなり小粒。警官を狙うシリアルキラーということでどんな知能犯かと思いきや、過去に自分を逮捕した警官に復讐しているだけという、何ともスケールの小さな男というのがその実体でした。犯人の正体は早々に暴かれ、マスコミを巻き込んだ劇場型犯罪へと発展するという展開は『ダーティハリー』を想起させるのですが、スコルピオと比較しようもないほどチンケな犯人では完全に役不足でした。ステイサムに勝てないことは一目瞭然であり、こんな弱々しい敵が相手では何も盛り上がらないのです。。。 主要登場人物が無闇に殺されていないという点や、本筋と関係ないのにやたら顔を出すキャラクターが何人かいたという点から察するに、本作はシリーズ化の構想があったものと考えられるのですが、第1作がこの出来では、2作目以降の製作は難しいのではないかと思います。
[DVD(吹替)] 3点(2014-02-24 00:43:09)(良:1票)
508.  unknown アンノウン(2006) 《ネタバレ》 
ハリウッドが得意とするソリッド・シチュエーション・スリラーの中でも、アイデアだけを取り出せば史上最高とも言える作品。「自分以外の誰が敵で誰が味方なのかが分からない」という定番のシチュエーションにさらに捻りを加え、「自分が被害者側なのか犯人側なのかすら分からない」という突拍子もない設定には恐れ入りました。監督はよくぞこんなアイデアを思いついたものです。。。 ただし、そんなインパクトある設定と比較すると、肝心の内容は今一つであると感じました。舞台に散りばめられたヒントをつなぎ合せて真相に辿り着くというのがこの手の映画の定石だと思うのですが、一方で本作は登場人物達に記憶が蘇ることで自然に謎が解消されていくという生温い進行となっており、知的な駆け引きを期待すると裏切られます。また、「自分以外の4人のうち、一体誰と組むべきか?」という心理戦にも魅力がないし、「自分は善人なのか?悪人なのか?」と自身の人間性と向かい合うドラマとしても、話がうまく広げられていません。優秀な俳優を多く揃えながらもこれを活かせておらず、設定に頼り切った内容となってしまったことは残念で仕方ありませんでした。。。 それでも、85分というコンパクトな作品としては充分に面白い映画ではあると思います。ラストにはきちんとサプライズも仕込まれており、水準を超えるサスペンス映画であることは確かです。
[DVD(吹替)] 6点(2012-10-09 01:18:04)(良:1票)
509.  三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船
VFXで古典を大胆アレンジという企画は『シャーロック・ホームズ』の二番煎じだし、監督はダメな方のポール・アンダーソンだし、どうせロクでもない映画なんだろうなと期待せずに観たのですが、そんな予想に反して意外な程よくまとまっていて、きちんと楽しめる娯楽作に仕上がっていました。笑いあり、スリルあり、目を楽しませるド派手な見せ場あり、さらには全編に散りばめられた伏線とその回収もスムーズであり、B級アクションとしては過不足ない出来なのです。。。 また、私は3D版を鑑賞したのですが、3D効果もきちんと発揮されており、技術面での努力も充分に伝わってきます。ポール・W・S・アンダーソンのこういう真面目なところは大好きです。。。 なお、タランティーノは2010年度のベスト映画の一本に本作を含めており(いかにもタラが好みそうな『ドライヴ』よりも高評価)、意外な方面からの評価は受けている作品のようです。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-09-01 04:18:06)(良:1票)
510.  パンドラム 《ネタバレ》 
ポール・W・S・アンダーソン(通称:ダメな方のポール・アンダーソン)率いるインパクト・ピクチャーズ製作なので『イベント・ホライゾン』のやり直しかと思ったのですが、微妙な出来だった『イベント~』とは比較にならないほどの素晴らしいSF映画でした。とにかく脚本が良すぎます。『エイリアン』から『猿の惑星』、果ては『宇宙空母ギャラクティカ』まで、既存のSF映画のアイデアを総動員した内容ではあるのですが、それらの元ネタを思いもよらぬ形で料理しており、二転三転どころか五転も六転もするストーリーには驚かされました。『パンドラム(原題も同じ)』というタイトルのチョイスも素晴らしく、このタイトルによって脳内オチ系の物語と勘違いさせておいて、誰も予測しない意外な結末へと導いていくという見事な動線を作り上げています。ここまで見事にやられた映画は久しぶりでした。お見事。。。 これだけ盛りだくさんの内容をコンパクトにまとめ上げた監督の手腕も光っています。観客に与える情報量のコントロールや、ネタを明かすタイミングなどはほぼ完璧。同時にカッコいいメカ描写や音を使ったショック演出などポール・W・S・アンダーソンの得意技はうまく吸収しており、なかなかやってくれます。監督を担当したクリスティアン・アルヴァルドはサイコサスペンスの佳作『アンチボディ/死への駆け引き』を手掛けた人物なのですが、この人のアレンジ力は非常に高く、要注目の監督さんだと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2012-09-05 23:29:43)(笑:1票)
511.  ウォークラフト 《ネタバレ》 
まずウーヴェ・ボルがゲーム会社に映画化を持ち掛けたものの、「お前にだけは絶対に撮らせない」と門前払いを受けたというちょっと良い話もあるこの企画。代わって高い評価を受けているダンカン・ジョーンズが脚本と監督を引き受けたことで、本作はかなりレベルの高い作品となっています。中世風の世界におけるファンタジー作品は『ロード・オブ・ザ・リング』関連を除けばほぼ失敗作ばかりであり、ハリウッドにとっては鬼門ともいえるジャンルなのですが、ジョーンズは原作ゲームのデザイナーを多数起用するとともに、ポストプロダクションに20か月もかけてビジュアルを練り上げ、なかなか見ごたえのある世界観を構築しているのです。 話の内容もかなりの熱量を持っています。テンションの高い合戦シーンに、多くの登場人物が誰かしら身内を失うという情念の入り混じったドラマ。また、きっかけは善意とは言え、禁忌とされる力に手を出して世界を危機に陥れたことを後悔しながら死ぬメディヴと、一度は責任から逃げ出したものの、師匠の臨終の場で守護者としての自覚に目覚めたカドガーのドラマには胸を打たれるものがありました。これまでセンス良い系として通ってきたジョーンズが、これほどストレートな娯楽作を作ったことは意外でした。 ただし問題点もあります。主人公の一人であるデュロタンはいち早く闇の陰謀に気づき、不毛な戦争をさせられそうになっているオークと人類を和解させようと奔走し、最後には非業の死を遂げるものの、彼の死が大勢にまるで影響を与えていないのです。彼が命をかけて挑んだ決闘ではオーク達の心を動かしたかのように見えたものの、結局は何も変わらないまま戦争が始まってしまう。同様に、人間側の王の自己犠牲もまるで報われておらず、一部のドラマがうまく流れていません。これらは続編へ向けた伏線なのかもしれませんが、単独作品としての満足度を下げる方向に作用しているのでは元も子もありません。またポリティカルコレクトネスへの配慮からか、ヨーロッパ風の甲冑を来た軍勢の中に黒人や東洋人が混じっていたことは、せっかくの世界観をぶち壊しにしています。有色人種の姿が見えないと脊髄反射的に難癖をつけてくる一部のクレーマーのせいで、映画の完成度が損なわれていることは残念でした。 以上の問題点が祟ってか批評家からは否定的なレビューが目立ち、興行成績は損益分岐点ギリギリという期待外れの結果に終わりましたが、これだけ素晴らしい世界観や高い技術、張り巡らされた伏線を捨てるには惜しい企画です。ダンカン・ジョーンズも続投を切望していることだし、お願いだから続編を作ってね、トーマス・タル。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-01-14 21:43:11)(良:1票)
512.  フライト・オブ・フェニックス
これはすごいです。超地味なキャスト、超地味なお話のためにほとんど注目されなかった作品ですが、鑑賞後には「本物の映画を見たなぁ」と大満足できる傑作でした。オーソドックスで新しいものは何もないものの、話やキャラクターをちゃんと追いかけることでここまで面白いものができるんですね。あれこれ揉めながらもみんなで力を合わせるという展開はまさに直球勝負ですが、そこに小エピソードを適度なタイミングで挿入して話の緊迫感を維持するという計算の巧みさもあり、これはまさに理想的な脚本のあり方でしょう。そうした話の構成のうまさがあったからこそ、ラストがあれほど爽快だったんです。映画を好きになった子供の頃に感じていた、あの映画の本質的な楽しみを久々に味わったって感じです。そんな極上の脚本に加えて、ジョン・ムーア監督のビジュアルセンスも炸裂。「エネミーライン」のような駄作においてすら独特のビジュアル意匠を見せ付けていたジョン・ムーアのセンスがここでは大きく作品に貢献しています。思わず「もう一回見せて」と言いたくなるほどの圧倒的な墜落シーンの後はすべて砂漠。砂漠を延々2時間も見せられるわけですが、ジョン・ムーアの映像は砂漠の美しさや恐ろしさをあますところなく伝え、2時間の映像を単調にはしていません。「ドーン・オブ・ザ・デッド」のザック・スナイダー、「コンスタンティン」のフランシス・ローレンスと並んで、これからのハリウッド大作を引っ張って行きそうな才能だと思います。願わくば、マイケル・ベイではなくデビッド・フィンチャーのように育って欲しいものです。
[DVD(吹替)] 9点(2005-11-19 19:29:58)(良:1票)
513.  GODZILLA ゴジラ(2014) 《ネタバレ》 
IMAX-3Dにて鑑賞。全世界ほぼ同時上映から日本公開まで2ヶ月もお預けを喰らわされ、期待をパンパンに膨らませて映画館に駆け込みましたが、そんな上がりまくったハードルを楽々越えてきた本作の完成度には感動しました。子供の頃にゴジラにハマった私としては、これこそが夢にまで見たハリウッド版ゴジラです。。。 怪獣映画は、怪獣を出しすぎるとただの怪獣プロレスになってしまう。怪獣そのものよりも、怪獣が出現したことで混乱に陥る文明社会をどこまで克明に描けるかという点にこそ成功の鍵があるのですが、この点、ギャレス・エドワーズは前作『モンスターズ』でも怪獣が存在する世界をほぼ完璧に創造しており、本企画の監督には最適任者であったと言えます。シナリオは理詰めで考えられているし、歯が立たない相手を目の前にした人類の絶望感の演出も見事なものであり、怪獣映画に必要な空気感を作り上げています。また、この監督は怪獣を出しすぎてはいけないという点も熟知しており、溜めて溜めてテンションが最高潮に高まったところで怪獣をドーンと出すという演出も決まっています。。。 東宝ゴジラは破壊者とヒーローという二つの性格の間で耐えず彷徨っていましたが、本作では、その相矛盾する性格を破綻なく折衷することに成功しています。第1作だけに仁義を切るのではなく、駄作も含めたすべてのゴジラ映画を総括するキャラ造形としており、この点に、東宝ゴジラに対する最大のリスペクトを感じました。一方で、その設定には大胆な変更が加えられています。放射能怪獣という最大のアイデンティティを奪ったことをはじめとして、オリジナルではゴジラ自身が担っていた役回りの大半をムートーに譲っているのです。人類との接点は専らムートーに任せることで、ゴジラは人類程度には及びもつかない超越的な存在として描かれているわけですが、このアプローチによって、かえってゴジラはオリジナルに近い存在感を獲得するに至っています。この判断は見事でした。。。 本作の欠点としては、ムートーのデザインは線が細く、どう見てもゴジラには勝てそうにないという点がまず挙げられます。もっと強そうなデザインにするか、ゴジラを追い込むような特殊な必殺技を持たせるべきだったと思います。あとは、核兵器の扱いが相変わらず雑。覆いもかけず剥き出し状態の核弾頭を列車で輸送する場面には失笑するしかありませんでした。
[映画館(字幕)] 9点(2014-07-29 00:48:43)(良:1票)
514.  ハンガー・ゲーム 《ネタバレ》 
【TANTO】さんが詳しく述べられていますが、とにかく設定に穴が多すぎます。指摘事項の多さたるやトンデモ映画の域に達しており、本サイトの字数制限内ではひとつひとつを挙げきれないほど。そもそもの問題として、地区代表の未成年に殺人甲子園をやらせることが、なぜ国家の統治に役立つのかという理由がサッパリわかりません。深作欣二監督は、殺人ゲームに合理的な説明を付けることは不可能だとして『バトルロワイヤル』の背景説明を放棄し、いきなりゲームを開始するという英断を下しましたが、一方本作はゲーム開始までにたっぷり1時間もかけ、挙句に設定を伝え損ねているのだから話になりません。また、本筋においても、「権力者vs民衆」「金持ちvs貧乏人」「虚構を垂れ流すメディアvsメディアの情報を鵜呑みにする愚かな大衆」等々、多くのテーマが提示されるのですが、そのどれもが上っ面ばかりで煮詰めきれていません。これじゃあ21世紀の『バトルランナー』ですよ。。。 肝心のバトルも、これまたヌルくて参ってしまいます。生き残るのはたった一人、嫌いな奴を殺すことは容易くとも、最終的には仲間と殺し合いをしなければならないことがこの設定の最大のキモだと思うのですが、主催者側からの度重なるルール変更によってこの点がボケボケになっています。さらには、登場人物達の戦力設定もいただけません。弓を得意とする以上、主人公が参加者中もっとも有利であることは火を見るよりも明らかなのです。他には格闘に優れた者や、ナイフの名人もいますが、飛び道具を得意とする主人公に狙われたのではひとたまりもありません。そして、主人公が有利すぎるゲームなど、面白くなるわけがありません。そこで監督が考え付いたのが、主人公に弓を使わせないというシナリオ(笑)。見晴らしの良い広場のど真ん中に敵集団が突っ立っていても、この主人公は彼らを狙ったりしないのです。得意技を封じられた主人公の戦いには、当然のことながら緊張感は宿りません。なぜ、こんなにもバカバカしいシナリオが通ったのでしょうか。。。 以上、さんざん悪口を書きましたが、観ている間は不思議と楽しめたことはきちんと明記しておきます。スターなし、製作費も控え目ながら全米だけで4億ドルも売り上げた作品だけあって、娯楽作としてはそれなりにまとめられているのです。ツッコミどころも含めて愛せる映画だと感じました。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-01-19 18:37:43)(良:1票)
515.  アンストッパブル(2010)
味付けについて自由度の高いラーメンには名店も多くありますが、例えばそうめんで客を唸らせる味を作ってみろと言われれば、これはとんでもない難題です。映画の世界でそんな難題に挑み、奇跡的に満足できる商品を作ってしまったのが本作。しばしば「スピード」との類似点が指摘されますが、テロリストとの駆け引きがあり、さまざまなトラップや見せ場を準備することができた「スピード」と比較すると、無人で暴走する列車を止めるだけというシンプルな本作は遥かに難儀な代物だったと思います。シンプルだからこそ監督の手腕がモロに問われ、逃げも隠れもできない素材。私はロン・ハワードのような堅実なタイプの監督に任せるべきで、ビジュアルばかりが先行するトニー・スコットは適任ではないと思っていました。が、観終わればそれは大きな間違いだったことに気付かされます。スコットは驚異的な演出力を披露し、難儀な企画を燃える傑作に変えてしまっているのです。いつものビジュアルセンスはもちろん健在で、他の監督が撮っていれば単調になったであろう本作の見せ場も、スコットの手腕によってかっこいい場面の連続に。列車を追うヘリやありえない台数のパトカーの並走など、乗り物を撮らせるとスコットは相変わらず良い仕事をします。クライマックスに向けて計ったように盛り上がっていくテンポ作りも見事で、どんどんエスカレートしていく物語には手に汗握りっぱなしなのでした。そして、今回のスコットが凄いのはここから。見せ場とドラマのバランスがほぼパーフェクトであり、神がかった職人芸を見ることができます。本作のメインはもちろんアクションでありドラマは添え物という扱いなのですが、映画のテンポを邪魔することなくアクションの高揚感に貢献させるという、アクション映画にあるべきドラマ作りが完璧になされています。ドラマを挿入するタイミングやその分量が本当に絶妙で、スコット兄やスピルバーグですらここまで巧くはできないでしょう。30年ものキャリアにおいてひたすらアクション映画を撮り続け、主要な映画賞へのノミネート経験が一度もないというアクションバカがついに辿り着いた究極の作品。それが本作なのです。。。強いて苦言を言うならば、カタカナにすると語感の悪いこの邦題、作品の趣旨から外れたヘタレな宣伝文句は何とかならなかったのでしょうか。
[映画館(字幕)] 9点(2011-01-16 23:31:49)(良:1票)
516.  ベルリンファイル
銃火器の扱いが明らかに小慣れている、格闘がダンスにならず、ちゃんとクリティカルヒットを狙う動きをしている、表情や仕草が一般人のものではない。韓国のアクション映画は、こうしたディティールがよくできているため説得力が違います。本作においても、ある面では香港やハリウッドをも凌駕する見せ場が連続し、目を楽しませます。 問題は、ムダにややこしい話に魅力を感じなかったことです。多くの登場人物が絡む前半部分は非常に分かりづらかったのですが、一方で作品の骨格は至ってシンプルなものであり、本筋とは関係のないサブプロットや、存在価値のない登場人物が多すぎます。また、凄腕のようでいて全然役に立たないハン・ソッキュなど、主要登場人物の動かし方にも違和感を覚えました。ひとつひとつの展開に意味を持たせる、個々のキャラクターにちゃんと見せ場を作る。それができないのであれば、その展開、そのキャラクターには存在価値がないのだと判断するという、シナリオレベルでの練り込みが不足しているように感じました。 肝心の本筋部分についても、ベルリンという舞台をまったく活かせていません。南北朝鮮のスパイ組織を中心に、モサド、CIA、ロシアの武器商人、アラブ人テロリストまでが絡んでくる国際色豊かな設定をとりながら、結局は南北朝鮮の対立といういつもの展開に収まってしまう尻すぼみ感。ドイツ人は全然出てこないし、これなら舞台をソウルにしても成り立ってしまいます。 見せ場の出来や作品全体の雰囲気はいいだけに、話の内容の弱さが残念でした。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-08-03 18:06:06)(良:1票)
517.  ポストマン(1997) 《ネタバレ》 
物語の発想は良いし長尺の割には退屈しないので最低の評価は付けませんが、映画の出来は良くありません。流れ者がタダ飯を食いたくてついた嘘がひとり歩きするという物語と、ケビン・コスナーの英雄願望とが水と油だったため、主人公のキャラクターが不安定になったことが敗因だと思います。最初は情けなかった主人公が徐々に英雄らしくなっていくのなら話にも筋が通るのですが、例えばアビー救出のために勇気を見せたと思ったら、次の場面では「ケガして動けないよ~」とグータラしはじめるため、主人公の成長物語にもなっていません。後半になるとようやく英雄らしい行動をとりはじめるものの、主人公は最初のウソを取り消さないままリーダー面し、偉そうに説教までたれるので、見ている私達にとってはまったく説得力がありません。新政府を信じた若い郵便配達たちが次々と殺されはじめてもウソだと白状しない段階に至っては、英雄どころか大人としての責任感はないのかとイライラしてきます。「すまない、新政府の話は全部ウソだったんだ」「俺達はアメリカ中を旅してるんですよ。そんなことぐらいとっくに知ってますよ」ぐらいのやりとりを入れておけば物語の方向転換にはなったし、郵便配達たちの仕事への思いを強調することも出来たのではないでしょうか。。。以上は完全に脚本上の不備なのですが、エリック・ロス(フォレスト・ガンプ)とブライアン・ヘルゲランド(LAコンフィデンシャル)という当時気鋭の脚本家を二人も起用しながら、なぜここまで酷い話になったのかと不思議で仕方ありません。不思議なのは製作費についてもで、こんな地味な物語において8,000万ドルもの製作費はどこに使われたのでしょうか?本作は一応SFではあるものの物語は西部劇に近く、自然の山々でロケを行っているため壮大なセットが作られた形跡はありません。また派手な戦闘シーンも大規模なモブシーンもないため、撮影にお金がかかっている様子もありません。ラストなんて、いよいよ最終決戦かと思いきやおっさん二人が殴り合うだけですからね。しかも、スローモーションや編集で誤魔化すという何とも腰砕けなラスト。莫大な製作費がかかっていることは予備知識として知っていて、映画のどこかしらにはド派手なシーンがあるものと思って観ていたので、最後まで何も起こらない肩透かしには驚きました。
[DVD(吹替)] 4点(2010-09-05 18:14:40)(良:1票)
518.  ソフィーの選択 《ネタバレ》 
純朴な青年がほろ苦い大人の恋愛を垣間見て成長するというオーソドックスな青春映画なのですが、そこに壮絶なキ〇ガイ演技を絡めることで、相当にインパクトの強い作品となっています。なかなかブレンドの難しい素材だったと思うのですが、これを違和感なくまとめてみせたアラン・J・パクラはさすがの手腕を見せています。。。 物語の成否は、主人公・スティンゴの行動をどう合理的に説明するかにかかっていました。ソフィーとネイサンは、常人ならば絶対に関わり合いになりたくないカップルです。決して変わり者ではないスティンゴが、そんな彼らと深い親交を結ぶに至る経緯の説明は困難だろうと思うのですが、映画は、その辺りを実にうまく処理しています。ある時は強引に連れ出され、ある時はプレゼントで友情を示され、そのうちにスティンゴはこの三角関係の一員になるのですが、その過程にまるで違和感がありません。出色なのは、ヤれると思っていた女の子とヤれずに悶々としていたスティンゴが、その代わりに、あわよくばソフィーとヤれればと親切な男ぶって話しているうちに、思いがけず彼女の壮絶な過去を聞いてしまうという件。ここから物語は核心部分へと突入していくのですが、正義感や人道主義ではなく、男のスケベ心をその発端とした語り口は面白いと感じました。。。 ホロコーストが主題となる後半パートは、見事な出来だった前半と比べるとイマイチでした。ナチスシンパの父親の元で育ち、その後は一転してレジスタンスの男と交際してアウシュビッツに送られたというソフィーの半生は波乱万丈すぎて作り物感全開だし、収容所のドイツ人達は鬼畜すぎて、かえって生々しさから遠ざかっています。どうすれば普通の人間が殺戮者へと変貌するのかという点までを考えて人物造形がなされていた『シンドラーのリスト』と比較すると、本作のアプローチは表面的すぎて訴求力に欠けます。。。 メリル・ストリープの演技はとんでもないことになっています。業を背負いぶっ壊れてしまった女を、押しの演技と引きの演技を巧みに使い分けながら完璧に演じています。うますぎて嫌味に感じてしまうほど。ただし、魅力的な年上美女というソフィーの設定をストリープが具現化できているかという点には、少なからず疑問符がつきますが。容姿やエロさまでを考慮すると、同年のオスカーを争ったジェシカ・ラングの方が役柄にマッチしたように思います。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-07-30 21:04:03)(良:1票)
519.  死霊館 エンフィールド事件
ホラー映画としては異例の長尺ですが、名高いエンフィールド事件の史実を丁寧に拾おうとしたり、厄介な能力に悩まされる次女とロレインの交流を描いたりと、映画としての完成度を高めることに多くの時間が使われており、なかなか奥行のある作品となっています。「『死霊館』でホラー映画は引退」と言っていたものの、その引退宣言を撤回してまで挑んだこの続編において、ジェームズ・ワンはフリードキンの『エクソシスト』やキューブリックの『シャイニング』をも射程に入れようとしていますが、確かにそれらの名作と並ぶほどの重厚さを持っています。 恐怖演出は、もうキレッキレ。怖い画の作り方はお手の物だし、音響などでビビらせるタイミングも絶妙です。飛び上がりそうになるほど怖い場面の連続であり、観客にもお化け屋敷を追体験させることに成功しています。ただし、悪魔云々の話になると途端に月並みになってしまうことが欠点であり、最後までお化け屋敷もので通した方がよかったと思います。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-01-16 00:05:05)(良:1票)
520.  ヒューマン・トラフィック<TVM>(2005) 《ネタバレ》 
前後篇を2日に分けて見るつもりだったのですが、あまりの面白さに一気に見てしまいました。社会問題を分かりやすく提示することにおいても、また物語のエンターテイメント性においても極めて優れた作品です。もちろん楽しんで見る類の題材ではありませんが、それでもかなりハラハラさせられたのは事実であり、この辺りは劇場用映画で腕を磨いたクリスチャン・デュゲイならではの力技だったと思います。またテレビ映画だったため性や暴力の描写には相当な制限があったものの、こちらも監督の腕前で巧く乗り切っています。人身売買という題材を扱いながら女性の裸の映像は一切使用されていないし、警察組織と犯罪組織の戦いであっても血の量は最小限にとどめられています。それでも題材の衝撃度はきちんと伝わっているのですから、監督の腕前がいかに作品に貢献しているかがわかります。一方でこの手の題材を劇場用映画が扱うと、「現実から目を背けてはいけない」と言わんばかりに露悪的な表現が目立ってうんざりさせられることも多く、節度を保ったレベルに映像の刺激を抑えて多くの人が見やすい作品とした本作は、社会啓蒙のためにも効果的な作りになっていると思います。。。本作は現実の問題をよく研究して作られているようで、私が良心的だと感じたのは東南アジアパートでした。アメリカ人の子供が誘拐されてはじめて東南アジアにおける人身売買が注目されるという設定は、現実の醜さをうまく捉えています。途上国の子供たちが酷い目に遭っていても、私たちは「へぇ、大変なんですね」としか思わない。もしアメリカ人少女が誘拐されていなければ、サウジアラビアに売られようとしていた子供達は救われていなかったはずなのです。この辺りのシビアさ、見ている人間を安易に正義の側に立たせない作りは、社会派作品として見事なものだと思います。
[地上波(吹替)] 8点(2010-07-05 17:54:58)(良:1票)

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