1. いまを生きる
中学生の時も、高校生の時も、大学生の時も観た。そして、社会人になってまた観たけど、やっぱり私はキーティング先生は個人的に嫌い。ニールの死はキーティング先生のせいだと思っている。私の気分は、いつも、机の上に立たない生徒なのかもしれない。閉鎖的な、管理教育には悪い部分もたくさんあるが、その中でも子供なりに真面目に規律正しく節制のある大人になろうと、努力している生徒がいることを、ドリーマーな大人は認めてはくれないのだろうか? 子供時代にいろいろな大人に出会うことも、成長のきっかけではあるが、あまり出会いたくない教師だ。自由をはき違えているし、あまりに自分が正しいと思いすぎている。努力してきた価値観を勝手に突き崩し、生徒たちに混乱を引き起こす。この混乱は成長過程として必要なことかもしれないが、自分について来ない生徒を憐れむような真似をし、結局は中途半端に去っていく教師はいらない。そもそも言葉の持つ力を知る(詩の朗読)ということと、半端な自己主張というのは違うような気がするのだが。メッセージ性は認めるが、私には受け取れない。 [DVD(字幕)] 4点(2003-10-31 14:11:57)(良:5票) |
2. トロイ(2004)
《ネタバレ》 お金をかけて撮った大作らしい大作で、見応えは十分。ただ、盛り上がりが散漫で、見栄えのする素敵な役者を集めて並べただけ、という印象もまたぬぐえない。CGによる戦闘シーンも最近は食傷気味。とは言え、アキレスを演じたブラット・ピットはさすが。輝かしい不死身の英雄ではなく、あくまで動物的な勇者という感じがして面白い。鍛えた肉体もすごかったし、武術的に完成された動きも上手い演出だ。アキレスと正反対の、国のため家族のために戦う英雄ヘクトル王子も上手い。エリック・バナの地味で寡黙な雰囲気が、悲壮感を盛り上げて迫力がある。妻に何度も、逃げ道は覚えたかと尋ねる場面は、なかなか泣ける。そして何より感動したのが、ピーター・オトゥールのトロイ王プリアモス。なんというか、威厳と慈愛を持ってはいるが輝きと強さを失っている、まさに「滅びるべき運命を迎えた国の王」そのものなのだ。プリアモスがヘクトルの遺体を帰してくれるようアキレスに頼む場面は、まさに名場面である。すべての元凶となったパリス王子の軽率さ・幼稚さや臆病ぶりがまたすごい。けれども物語の中でほんの少しだけ成長をする。そこがいい。かの三部作で美しく完全無欠なキャラを演じたオーランド・ブルームが、同じ弓矢をつがえながら、ここまで情けないキャラに扮してくれるというのも、なかなかツボだった。配役をした人に拍手したい。配役といえばショーン・ビーンのオデュッセウスも素晴らしい。大国の強引な侵略戦争に、小国の王として心ならずも従わなくてはならないが、従うとなったら策謀を巡らせ友を引き込むことを厭わない。仕方ないんだよと言いながら、これ見よがしな苦悩を見せるわけでもない。ずる賢そうな顔をして、しかし、その両肩になにがしか重みを背負ってるようには見える。物語の中で、一人冷めたオデュッセウスを演じたショーン・ビーンは面白い役者だ。彼の語りに始まって終わる演出は、なかなか良かったと思う。トロイ戦争とはむろん「愛のための戦い」ではなく、侵略戦争である。そこには、オデュッセウスも語るように「名を残す」ことへの渇望と、本能的に戦争・戦闘を嗜好する男たちの欲望がある。女たちの人生は眼中にない。だから、戦いを嗜んだアガメムノンとメネラオス、そしてアキレスが死に、戦いに背を向けたパリスとヘレンが逃げ延びるというのは、満足すべき結果なのかもしれない。 8点(2004-05-23 23:00:50)(良:3票) |
3. X-MEN2
相変わらず、マグニートーを演じるイアン・マッケランの怪演が素晴らしい。不気味でうさんくさくて、ヘンテコな衣装を着ても笑うに笑えない絶対零度の冷気が漂っている。そのうえ、自分でも「超ダサイ」と思ってるのね、と観客をちゃんと納得させてくれるとは・・・・・・。マグニートーが今回は味方になるというのでウルヴァリンの活躍度が下がるのではと思ったが、そうでもなくて良かった。「個々は弱いが力を合わせれば強い」という不朽のテーマ、と前作のレビューに書いたが、今回のほうがみんなの「力を合わせた結果」が分かりやすくて良かった。しかし、力の合わせかたをもっと研究必要があるような気がする。それぞれ自分に何が出来るのか、日頃からもっと追求するのも、学園の役割なんじゃないだろうか?と真面目にツッこんでしまった。せっぱ詰まったときに現れる友情と能力、という演出も嫌いじゃないけどね。家族にカミングアウトするシーンは、ありがちな演出・台詞ではあったが、マイノリティの普遍的な悲しみがこめられた印象的な場面。 6点(2004-02-04 20:51:54)(良:3票) |
4. X-メン
発想は面白いと思った(原作が面白いということかも)。冒頭のナチスの部分を入れることで、かろうじてユダヤ人迫害に遭ったことのあるマグニートーが、再び差別され排除される種族になりたくないのだとわかるが、全体としては、わけわかんないストーリー。これだけ能力の方向が違うミュータントが一緒に闘うこと自体が無理な気もするけれど、「個々は弱いが力を合わせれば強い」という不朽のテーマを目指してるような感じで、その辺は面白い。 5点(2003-07-23 19:17:09)(良:2票) |
5. 機動警察パトレイバー2 the Movie
パトレイバーを全く知らないで、日比谷の映画館で暇つぶしに観て以来、何度かレンタルしてきて観ている。漫画は少し読んでみたし、テレビアニメも何本か観たが全くレベルの違う別物だったので途中で投げた。この映画だけが特別に良くできているのだ。リアルな東京の下町の映像。日本でしかあり得ない風景を、ここまで描いているアニメーションも珍しいのではないだろうか。そして日本の防衛の危うさについては、9・11以降なので背筋が凍るような思いがする。思いがするだけで、何もしない自分。それが日本という国・・・・・・そんなふうに思った。本当に日本に有事が起きたとき、この映画を観たことがある人は、たぶん後藤隊長の叫び声を思い出すだろう。 9点(2003-06-03 22:11:45)(良:2票) |
6. スパイダーマン2
《ネタバレ》 この2作目のほうが最初よりも、出来がよい。ストーリーの組み立て、テンポが非常に見やすい。ヒーローをやってるから、いつも遅刻して、金もなくて、お疲れモードの主人公。うーん、金持ちのバットマンとはえらい違いだなぁ~と苦笑して観ていたが、このスパイダーマンの造形がやっぱり良い。冒頭で描かれたオクタビアス博士との会話が、ストーリーの骨格を担い、ラストの伏線になっていくあたり、展開の手法としてはベタなんだけれども、非常に上手い。ただ、ポスターで観たときに、敵があんなに肥満体型だとは思ってなかったので、画面でたるんだお腹を観て、ちょっとビックリした。オクトパスの最期も、うわぁ~なんてベタな展開~、と思うんだけれども「モンスターのままでは死なない」というセリフに、ちょっと泣いた。敵役が良いと主人公も引き立つっていう意味でも、前作よりも格段に内容が良くなっている。オクトパスがブレながらも目的に向かって暴走していることによって、ブレたあげくにその能力を失っていたスパイダーマンが、自分の覚悟を取り戻す。ヒーローに戻るということが、絶望的で悲壮なものだという描写と、ヒーローの素顔を見た町の人々の「まだ子供じゃないか」という素直なつぶやきが、とても強く印象に残った。ついでにハリーやMJにあっさり正体を知られたのだし、第3部が楽しみだ。相変わらず、三白眼のせいで美形なのに愛らしさに欠けるキルスティン・ダンスト。フランス人形みたいなドレスは似合うんだけどね・・・・・・。彼女の婚約者は最初マット・デイモンに見えた・・・・・・。それにしても、結婚式から逃げるのは、ちょっとやりすぎ。 8点(2004-07-12 10:55:53)(良:2票) |
7. ブラックホーク・ダウン
よくもこんな映画をよく撮ったなぁと、感嘆させられた。ソマリアの人々が、自分の年収よりも高価かもしれないような武器を持ち、女性も子供も銃をとって戦闘に参加している現実を、思い知らされた。まさに愚挙としか言いようのない事態を、ドキュメンタリー風にして一つの映画にしてしまったことが、まず、すごい。ソマリアへの軍事介入の意味を、たぶんあまり分かっていなくてやってきている兵士たちは、安直な正義感を燃やしていて、作戦は簡単に成功すると思いこんでいる。オーランド・ブルーム演じる新兵の、現状を何も知っていない無垢さ、きらきらと目を輝かせたあどけなさが、とても印象に強い。たった一つのアクシデントから、なし崩しに悪化する状況。犠牲を増やすことが分かっていながら、兵士の逐次投入せざるを得ないアメリカ軍。迷走するトラックが、戦闘の無意味さを象徴している。指がもげ、内蔵が飛び出し、死んでいく兵士の描写が、よくもここまで、と思うほど描写されていた。冒頭で、兵士たちが高みから同情していたソマリアの民衆は、やがて、襲いかかる敵になり、最後は息も絶え絶えなレンジャーたちを見送る側になる。ソマリア側1000人、アメリカ側19人という死者の数も、考えさせられる数字だった。 9点(2003-10-13 22:44:08)(良:2票) |
8. 戦場のピアニスト
淡々と静かで、力強い映画だった。主人公シュピルマンは無力だ。この映画は彼の気持ちには全く踏み込まないし、ほとんど語らせない。主人公は、ただ自分のために、逃げる。命がけで自分に手をさしのべてくれた人々が、そのために危険な目にあい、命を落とす。彼は手をさしのべてくれる人々と共に闘うこともしないし、何が何でも生き抜くという信念があるようにすらも見えない。「水が出ない」シーンで、私は何だかシュピルマンという人は無邪気に蛇口をひねれば水が出るように、味方が現れるように思っていたのかな、と思った。どちらかといえば「塔のお姫様」タイプである。最後に命を助けてくれたドイツ人将校も、シュピルマンは救えないし、救えなかったことを後悔するようなセリフすら出てこない。感傷的な言葉も全く無いし、自己弁護の一切がない。だから最初に見たとき、私は自分だけが助かる主人公に共感できず、それよりも、映画の中に出てくる名もない人々の悲劇に泣いた。理由もなく虐殺される人々。ある日突然生活が覆り、抵抗も出来ず、殺される。もしかするとそれこそが、ポランスキー監督の描きたかったものなのかもしれない。シュピルマンが目撃した光景だけを描く形なのだが、「シンドラーのリスト」よりもユダヤ人迫害の事実が上手く浮き彫りにされている。生き残った、それだけですごいことなのだと分かる。大禍を運良く生き残った人々は、何かしら誰かの命がけの厚意を受けたことに感謝すると同時に、自分だけが生き残った痛みを心の奥に抱えているのかもしれない。何度かこの映画を観たら、そんな気がした。 7点(2004-01-28 22:10:33)(良:2票) |
9. ジャンヌ・ダルク(1999)
自分の中のジャンヌダルク像に近かったので、ちょっと嬉しかった。そんなに意外だったかなぁ、こういうジャンヌダルクって。狂信的に突っ走る16歳の少女を利用するだけ利用して見捨てたフランス王家の身勝手さや、権威を振りかざし権力のために暗躍するキリスト教会の尊大さなど、ジャンヌダルクを作り上げた人々もあからさまに描かれていてスゴイ。自身の妄想と虚言にうすうす気づきながらも収拾のつかなくなっていくジャンヌが、それでも必死に神を信じようとする姿が痛々しい。史実上、ジャンヌの火刑後に大量虐殺という狂気に取り付かれることになるジル・ド・レを、ヴァンサン・カッセルが好演していて非常に印象深い。ジョン・マルコヴィッチが演じる王太子(シャルル7世)の、ジャンヌを信じているわけでもなく、自分に自信があるわけでもなく、義母の陰謀に加担して淡々と冷めている様子が、感情の起伏が激しいジャンヌと対照的で、庶民と王家の感情の断絶を思わせていた。 6点(2003-07-25 00:01:27)(良:2票) |
10. インディアン・ランナー
《ネタバレ》 痛い。観ていて、ひたすら痛い映画。あまり内容が整理されていなくて、役者の演技で持ちこたえているようなところがある作品だが、兄弟の葛藤物語として良くできている。この兄弟の容姿も性格も立場も極端に違う姿は、あまりにも神話的で寓意的である。喜びも悲しみも内包して、一見無表情で、ひっそりと物静かに幸せを探すかのような兄。じゃれたり甘えたりはしゃいだりしながら、どこか斜に構えて冷笑し、ふいにゾッとするような禍々しさを見せる抑制力の無い弟。この二人の対照的な存在が、あまりにもあざやかで、印象深い。ベトナムから帰ってきて、兄の家までは来たけれども「ママとパパはいい」と会わずに帰るフランク。何度か鑑賞していると、その時点で悲しくなってくる。実の親にたった一目でも会うのがイヤだと言ってしまうほどの絶望。そこにあるフランクのナイーブさ。そういうフランクが妻の出産に立ち会うことが出来ずに逃げ出したくなるのは、分かるような気がする。分かるような気もするが、私は女なので、フランクの自己世界に入れてもらえないドロシーとも気分が同調するので、痛い。イタイ。ラストなどは、ほとんどせりふがないのに、二人の苦しみと絶望が伝わってくる。この辺の演出にはただただ感嘆するのみだ。映像も、禍々しさと不条理に満ちながら、それでもいつも兄のほうへ視点を持っていくので、心にストンとおさまる。締めくくる兄の言葉には、現実を受け止めて生きる男の、万金に値する重さがある。人生はすばらしい。 8点(2003-05-20 21:40:42)(良:2票) |
11. 乱
映像は素晴らしい。様式美の極致である。まあ、設定だとか合戦シーンだとか細部にはツッコミたいところも多いが、その辺は良しとしたい。人によって、好き嫌いは出そうだなぁと思うが、リア王を下敷きにして、こういうモノを創ってしまうのは、日本らしい。仲代は表情に迫力があり、所作が訓練されているので美しく、私は人と調和しない老王をよく演じていると思う。なので、このキャストでオッケーである。個人的には根津氏と隆氏のキャスティングも良かったと思っている。ただ・・・・・・ピーターの演技(と台詞)が過剰気味で、だんだんうざったくなってくる。彼の出演シーンをもう少し減らして、ぴりりと効かせる程度にとどめるべきではなかったか。映像美と相まって、最初は謡曲(能)の舞台を観ているような気分だったのだが、途中から狂言に変わってしまったような、そんな感じがしたからである。謡曲っぽいということは「観るつもりで観ないと、飽きる」ということでもある。 6点(2003-06-05 19:51:11)(良:1票) |
12. トリプルX
《ネタバレ》 時代遅れの007をひやかしているようでいて、後半は完全に黄金パターンを践んでいくあたり、何故007シリーズが長く愛されるのか分からせてくれた映画。オープニングが痛快で、エージェントになるまでのワクワク感が良かったし、主人公の「チンピラ」ぶりが笑えた。海を越えてネットつながりなんて話を盛り込んではあるけど、後半が急速に話がショボくなっていく。チェコの美しい風景とか、ポールダンスする色っぽい美女とか、スパイ・アイテムとか、ゴージャスな車とか、007で使い古したパターンをココまで踏襲して何がやりたかったんだか分からない。後半が面白くなったMIシリーズと比べて、がっかりさせられた。スノボシーンも、期待したほどではなかった。ただ、主演のヴィン・ディーゼルと、ニュータイプのエージェントというキャラクターは面白いので、続編を作ってくれたら観たい。 5点(2004-02-04 20:15:38)(良:1票) |
13. インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
《ネタバレ》 トム・クルーズとキルスティン・ダンストの美貌に圧倒されっぱなし。衣装やセットの豪華さに負けない二人の眩さが耽美的で素晴らしい。二人の傲慢・不遜で強烈な気迫に満ちている横で、白塗りが似合っていないブラット・ピットのうじうじとした存在がまた面白い。ルイが主人公であるようで、実はルイを透過してレスタトの孤独が見えてくる、という話の作りはなかなか良い。とにかく耽美的なヴァンパイアの世界にドップリ浸れる素敵な映画。クリスチャン・スレーターはちょっと出てくるだけだけど、現代アメリカっぽさを象徴するような存在になっていて良いかも。 8点(2003-07-24 21:22:38)(良:1票) |
14. クリムゾン・リバー
とにかく暗い画面。ジャン・レノとヴァンサン・カセルという、個性的すぎるキャラが相乗効果を生むと思いきや、どうも二人とも失速状態なのが惜しかった。吹き替え版で見たのが悪いのかもしれないが、ほんと残念。カッコいいヒロインが、登場したときはなかなか魅力的に思えたけど、これもだんだん失速。つまり、伏線を張ることに夢中で、キャラが全然生かされてない。たとえば主人公の犬嫌いも、単にとってつけたような設定としか思えない。じゃあ、その伏線がうまくいっているかといえば、これも疑問。ストーリーが、テレビドラマの予算程度で制作されても大丈夫な程度で、結末も唐突で安易。大学の人間たちの異常さも、演技が悪いのか監督が悪いのか、非常に安っぽい。フランスの古い村の伝統ある大学というのが、日本人にとってなじみがない存在だからよけいになのかもしれないけれども、ストーリーの根幹を支えるべき「伝統ゆえの禍々しさ」が、画面から伝わってこなかった。画面を暗くしても、話が見えなくなってるだけ。第2作にヴァンサン・カセルが出演する気にならなかったのも、分かる気がする。 4点(2004-06-17 15:11:07)(良:1票) |
15. 陰陽師
もともと話に無理が有りすぎるので、主役二人の好演にもかかわらず、主人公たちの必死さも、危機感・緊迫感も全く伝わってこない映画だった。野村萬斎の所作はたしかに美しい。水干姿があんなにハマっている俳優はなかなかいない。真田広之のアクションや迫力も素晴らしい。でも、どーして、今井絵里子や小泉今日子といった、あきらかに和装が似合わない女優陣が出てくるのか、わからない。 ひどく安っぽい印象になっていて、美しくない。背景の映像も、実際は寺や神社である現存の建物やあまり大きくないセットを、無理に宮殿として撮影しているせいか全体のバランスが悪く、窮屈な印象。そして、どう考えても変なのは、外に出歩く女性たち。貴族の姫君や宮中の女官たちは、基本的に一歩も建物の外に出ません。自分の足で歩きません!! この題材はたぶん、映画には向かない・・・・・・。 3点(2003-07-03 21:05:13)(良:1票) |
16. エバー・アフター
ドリュー・バリモアの顔は写し方によっては、ボッティチェリの絵の女性に似ている。だからルネサンス風衣装がよく似合っていた。王子様を持ち上げちゃうシンデレラはやっぱり笑える。美しいことによってお金持ちと結婚できた継母が、美人の娘を可愛がり、あんまり美人じゃない娘に冷たくあたるというのは、良くできた設定で、単なる継子いじめじゃないところがミソ。王子様は雰囲気がなんだか庶民的で。もうちょっとどうにかならなかったのかと思う。レオナルド・ダ・ヴィンチがモナリザを持ってフランスへ放浪してきているところは、史実をふまえてのことでもあり、楽しい。 6点(2003-07-23 19:28:39)(良:1票) |
17. オーシャン・オブ・ファイヤー
《ネタバレ》 なかなか楽しめる作品だった。何より砂漠の映像は非常に秀逸だった。馬の演技もびっくりさせられる。ただ、美しく過酷な砂漠の場面を見ていれば、当然、かの『アラビアのロレンス』と頭の中で比較してしまう。おそらく比較されることを前提としているのだろう。意図的に『アラビアのロレンス』を思い出させるような演出をしている部分もあるし、音楽も似ている。前半のストーリーが少し冗長で、早く砂漠のレースの話に入らないかなぁと思ってしまう。だが、マイノリティの存在を圧殺するアメリカを描いてから、アラブへ舞台が移ることで、ネイティブアメリカンの血を引く主人公フランクの前に、異文明社会を上手く展開させている。耳が聞こえない男が発砲した一発の弾丸で、悲惨な虐殺へ発展するエピソードは、現在の国際情勢を鑑みると含蓄があって、なかなか印象的だった。そっと「相手への無理解」ということへの批判が込められていると思う。だから、フランク・ホプキンスが初めて出会うアラブ世界に対して払う驚きや敬意は、素直で美しいと思った。今この時点でも「顔を隠して」生きるしかない人々はいるはずで、子供向けとしては良くできている物語だと思う。また『アラビアのロレンス』と比較するならば、そもそも博学で諜報活動に身を投じ、ナルシシズムに酔いながら行動し、結局はアラブ世界に対して勝手に絶望していくロレンスと、この主人公フランクは非常に対照的だ。私生児であったというロレンスと共通しているように思えた主人公の出生のエピソードは、全く違う方向へストーリーを導いている。もっとも、フランクはひたすら「ただの馬好き」であるはずなのに、途中から西部劇の主人公のような感じになっちゃったのは、苦笑するしかない。その点、ちょっと中途半端。他の脇キャラもかなり中途半端。 ついでに残念なのは、『アラビアのロレンス』でアリ首長を演じて、目眩がするほど強烈で清冽な輝きを放っていたオマー・シャリフが、今回は、確かに貫禄はあるんだけれども、なんとなく「普通の人」だったこと。まあ、どういう意味にしても『アラビアのロレンス』抜きに語れないのが、この映画の難点。 7点(2004-04-25 23:34:38)(良:1票) |
18. パッション(2004)
この映画は暴力的で、自制心に欠ける。また、聖書にない描写があって、非常にうるさい。特に冒頭の、イエスが実際に傷を治す奇跡を起こすシーンは、不要なので削るべきだ。この映画を観て、あらためて文字の力を実感した。聖書を何度も読み返し、イエスの苦悩やマリアの嘆きや弟子たちの弱さ、ローマ兵の残虐やユダヤ祭司たちの醜悪さに触れる。男の弟子たちは逃げ、女の弟子たちだけが処刑の場を見守っていたこと。偶然に通りかかってイエスの十字架を共に担いだクレネ人シモンのこと。後に初代ローマ教皇としてあがめられるペテロがした、3度の否認のこと。十字架の下でさいころに興じていたローマ兵のこと。そして、イエスの言葉。すべてが短い描写だ。けれど読むたびに、人の弱さと醜さと強さと優しさについて考えさせられる。ほんの一行の描写について、あとから気が付くことがある。私はキリスト教信者ではなく仏教徒である。だが、聖書の持つ強さには敬服する。そして、キリスト教徒たちが制作した膨大な絵画についても感嘆する。有名無名を含めて膨大なキリスト教の絵画と並べたなら、この映画は、単にその一つに過ぎないような気がする。聖書の持つ普遍的な強さはない。映像と合わさることによって、心に響いてくるイエスの言葉はあるけれども、そう考えるには、この映画の方向が何か違う。私はこの映画を観ていて、フランス映画『ゴルゴダの丘』と比較してしまった。ほぼ同じ部分を描きながら、両者の印象はだいぶ違う。白黒とカラーの差異だけでなく、監督の精神のあり方だと思う。 3点(2004-05-04 11:44:01)(良:1票) |
19. ロード・トゥ・パーディション
《ネタバレ》 スタッフを見て内容を期待してしまったのが良くなかったのか、一言で言えば、非常に退屈な映画だった。何を目指して映画がつくられたのかよく分からない。美しい映像や、達者な役者たちの演技は、職人技的なところがあって、決して悪くはないが感動も無い。最後に生き残った少年は、「農場育ちと思われている」「銃を手にしたことはない」と話を締めくくっているが、おとぎ話のようだ。マフィアに関わり、母と弟を殺され、父の死を見てしまった少年の、心の傷も、その後の厳しい人生も何ら示唆していない。そもそもあんなボスでアイルランド系マフィアがまとまっているというのも、おかしなストーリーだと思うが。コナー役のダニエル・クレイグは、不気味なところがなかなか良かった。ジュード・ロウは単なる脇役を個性的なキャラクターに変えてしまうスゴさがある反面、物語の中で空回りする時があるように思う。それにしても、あえてあの髪型にして、いったい何の意味が? 4点(2003-08-07 23:26:09)(良:1票) |
20. サイン
《ネタバレ》 最初、映画館で観たときには、あまりの肩すかしな内容に脱力したのだが、今から考えると面白い映画だったような気がする。まあ、無理矢理「すべてがサインだったのだ」というオチというのは、やっぱり変だけど、超常現象への一つの答えというか、そういうモノは感じた。つまり、人の能力も悲しみもすべては誰かを救うためにあるというか。シャマラン監督の一連の超常現象モノを並べて観てみるのも面白いかもしれない。でも、ホアキンの銀紙の帽子姿がどうしても脳裏に焼き付いて離れないのが困りもの。 6点(2004-07-13 22:48:41)(笑:1票) |