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プロフィール
コメント数 60
性別 男性
ホームページ http://members.jcom.home.ne.jp/varus9/respect.allen.html
自己紹介 「アニーホール」のパンフレットを電車内で広げて見ていた。
ふと視線を移すと、真正面に座った外国人の女性がパンフを指差していた。続けて彼女は親指だけを突き出し、おもむろに軽くウインクをした。
嬉しかった。

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評価順12
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1.  ショーシャンクの空に
下にある「N列23番」さんの感想が非常に正直だと思ったので、それを受ける形で私なりのレビューをしてみたいと思う。もはや本作は、映画本来が持つ力からは離れてしまった所に位置されている作品だと思う。つまり、「ショーシャンクの空に」という名前だけが一人歩きし、ブランド化し、記号化されてしまってる。夢や希望といったヒューマニズムがあり、それでいて人生の苦味もあって、バランス感覚が優れている作品ではある。派手でバカなハリウッド映画でもないし、至極難解な哲学的映画でもない。役者陣はだれも力があって、カメラワークも悪くない。全体的に「良い」作品だ。しかし、本作高評価の背景にあるのは、こうした「映画的なバランスの良さ」からではなく、もう一つのバランスが作用してるからではないかと思う。すなわち、超メジャースターが出ておらず、アカデミー受賞作でもない。ほどよく知的で、ほどよく娯楽性もあるという、観る側のセンスの良さをアピールできるバランス感覚だ。ミーハーでもなければ、マニアックなオタク趣味でもない。前評判の高さも手伝い「ショーシャンク」は見る者のハートをくすぐる。「ショーシャンク」の名は、こうしてある特定の意味を象徴する記号となり、無批判なブランド化を生んでしまったのではないか。であるならば、きわめて不幸な作品と呼ぶこともできると思う。
6点(2004-01-30 00:29:20)(良:14票)
2.  北京原人 Who are you?
この映画は、映像技術がどうの、演出がこうのと、大マジメな観点で見るものではありません。「世の中には一歩間違えば、こんな不条理もまかり通ってしまうことがあるのだ」という哲学的テーマを読み取る作品です(笑)大の大人たちが何の疑問も感じず、反省もせず、「やっぱりおかしいだろう?おかしいよ!」と振り返ることも拒否してしまうと、こんな結実が待っているという、社会への警鐘を促した反面教師の映画なのです。この世にある玉石混交のアイデアは、必ずしも様々な意見の集約や、長い思考の果てに誕生したものではなく、ある種の「勢い」と「打算」によって生まれるものが時としてある。そうしたアイデア、企画に対して誰かがストップや疑問を投げかけないと、とんでもないことになる。社会に抑止力など期待しちゃいけない。止めるのは自分なのです。それをこの映画は強く訴えているのです(笑)
1点(2002-08-21 02:13:20)(笑:1票) (良:4票)
3.  セント・オブ・ウーマン/夢の香り
アル・パチーノの「どうだ!うまいだろ臭」が強い感じがする。確かにうまいよ。でも過度になってしまって、少し嫌味だ。人生訓すぎる脚本もマイナス。人間の高潔さを説いた人間が、買春していちゃ「そりゃないぜ、パチーノさん」と突っ込みたくもなる。ここから先は作品の出来不出来ではなく、完全に個人の好みになるが、高潔さや勇気を描くのにこんなにダイレクトなやり方は芸に乏しいと思った。まるで小学校の道徳の教科書のよう。あからさまな倫理観を表現されても「so what?」というのが率直な感想。
3点(2003-11-18 01:28:43)(良:2票)
4.  スコルピオンの恋まじない
「ロマンティック・コメディ」というジャンルをよく耳にするが、本当に「ロマンティック」な雰囲気をかもし出している作品というのは意外と少ない。かつてのアレン作品にあった「アク」や「クセ」は消えたが、本作は素敵な音楽と相まって真の意味で「ロマンティック」な一本だ。物語は淡々と進んで行き、オチも途中から分かってしまうが、むしろその予定調和ぶりが心地いい。しかし、観客の中には極めてシンプルな作りだけに「物足りない」と感じる方も出てくるだろう。だがそれは、今の映画がいたずらに複雑だったり、不必要に凝った作りをすることが「良作だ」とする傾向に慣れてしまった、現代人の感覚の方が麻痺してしまったせいではないだろうか。ムダを排し、ぜい肉を落とした「スコルピオンの恋まじない」。シンプルであればあるほど、“ロマンティック”はよりいっそうの輝きを放つ。
8点(2003-11-24 22:13:11)(良:2票)
5.  雨に唄えば
「アメリカが誇れる自国文化とはなにか?」と問われたなら、まっさきに「ミュージカルだ!」と、私なら答える。もっと誇れ、アメリカ人!軍事力よりも先に、政治力よりも前に、この素晴らしきOwn Cultureを!!
9点(2004-01-25 22:29:09)(良:1票)
6.  サボテンの花
ゴールディー・ホーンが浜崎あゆみに似てるのではなく、“浜崎が”ゴールディーに似てるのです!と、ゴールディーファンの方は言いたいことだろう(笑)それくらい、彼女のいい意味での能天気ぶりが光ってる作品。宇宙人かのような、大きなクリクリお目めを見開いて、コミカルに演じている。この路線はのちにメグ・ライアンが引き受けることになるが、演技の幅という点ではゴールディーに一日の長がある。ところで「カタブツ女」を演じた、バーグマン。美人ですねぇ、付け入る隙のない完璧な顔の作り。役柄と合っていたかどうかの意見はあるだろうけど、ここまで完膚なきまでの美人だと、それだけで見せる価値があると思う。30年以上前の作品ということで、オチは途中から分かってしまうが、気軽に時間をつぶしたいのなら、オススメできる作品だと思う。
5点(2004-01-13 00:29:33)(良:1票)
7.  時計じかけのオレンジ
「天才」と「狂人」は紙一重だとはよく言われる。キューブリックという監督は、まさしく「狂人」まであと数センチのところに、片足一本で立っている「天才」だ。好悪や嗜好の別を超えて、ただただ「スゴイ!」と感嘆できる位置にいる唯一の人。その感慨をまざまざと、そして不動のものとしてくれるのが本作だ。
10点(2003-11-18 00:52:37)(良:1票)
8.  ギター弾きの恋
障害を持った役柄というのは、役者なら一度はチャレンジしたい役どころであり、また監督も、「純粋」だとか「優しさ」といったメッセージ性を示すために登場人物として盛り込みたがるものだ。ウディアレンが真に凄いところは、チープな人生訓を単純な演出で描く凡百の監督たちとは違い、障害というものを一切ウェットに描かずして観客にメッセージを感じ取らせたことだ。その期待に応えたサマンサモートンの演技力も見事で、これ見よがしに陥っておらず好感が持てる。(ショーンペンの巧さは今に始まったことではないので割愛)細部に至るまで映像全体に決め細やかな配慮が見られ、もはや職人の域に達した感のあるウディアレン。それでいて架空の人物であるエメットを、さも実在したかのように描く「遊び心」までも兼ね備えられては、脱帽と言わずして何と言おう。おそらくハッティとエメットの関係をもっと見せて欲しかったと思う観客もいただろうが、必要以上のことは一切描かず、観客に「抑制」の大切さを示した点も素晴らしい。「僕は何も言わないよ。君たち一人ひとりが感じ取ってね」。ウディアレン、実に大人の監督である。
9点(2003-05-13 23:19:58)(良:1票)
9.  穴(2001) 《ネタバレ》 
いかにもな内容と展開で「それっぽい」気にさせられるが、実はそんなに大したことのない映画の典型。すべてが物足りない。プロット、映像、人物描写どれも未熟でありザツだ。ドンデン返しというほどのエンディングでもないし、この種の作品に付き物の不気味さ、不快さ、窮屈さも足りてない。彼女の殺害動機を「思春期特有の我」で括りたかったのなら、もっと丁寧な心理描写をする必要があった。見る者への恐怖心の煽り方も稚拙。ある意味、本作の完成度こそ皮肉にも思春期的で中途半端だ。ただ単に「すごーく不愉快な女」を見させられてただけ。鬱屈さがない。慰めがあるとするなら、今をときめくキーラ・ナイトレイの初々しさが垣間見れたことだけだ。
[DVD(字幕)] 3点(2006-06-06 00:56:28)(良:1票)
10.  ヴェロニカ・ゲリン
せっかくいい役者を揃えて、テーマも意義深いものなのに、淡白で雑な仕上がりとなっている印象を受けた。編集がヘタだったのか、脚本に深みがなかったのか理由はわからないが残念だ。彼女の生き様を伝えたかったのか、アイルランドの近代史ドキュメンタリーとして見せたかったのか、意図が中途半端。だが!さすがはケイト・ブランシェット。彼女が主演でなければ、この点数すら上げられなかっただろう。特にアイリッシュ英語特有のアクセント、方言を見事に自分のものとして消化していたのには驚く。それも「関東の人が話すインチキ関西弁」のような付け焼刃的な薄っぺらいものではなく、あくまでナチュラルに。おそるべし、オージー、ケイト・ブランシェット!
[DVD(字幕)] 4点(2008-05-06 02:54:35)(良:1票)
11.  マンハッタン
稀代の才人ウディアレンの作品は、初期のドタバタコメディ、男女の関係や人生を問いかける哲学的要素の強い中期、ミアファローとの離別後から始まる楽天思考の後期、と3つに分かれるが、本作はその中期の最高傑作だろう。代表作と言われている「アニーホール」をも凌ぐ。抜群のユーモアのセンス、オシャレなカット割りと凝ったカメラワーク、あまりに美しいマンハッタンの景色、機知に富んだ会話の数々。そして何より、安っぽい美談や誇張を一切排して人間の不条理さ、非合理さ、弱さを真正面から告白していく勇気と誠実さに、やむことのない拍手を送りたい。ちずぺさんが下で「将来何かを生み出そうとする人は見ておくべき」と書かれてましたが、まさしく。“本物”のアーティストやクリエーターを志す人は、見ておくべきでしょう。さらに私なりに言わせてもらうなら、「何度でも」見なくてはならない作品であると付け加えさせてもらいたい。
10点(2003-01-19 01:43:51)(良:1票)
12.  さよなら、さよならハリウッド 《ネタバレ》 
その経歴ゆえ、その知性ゆえ、そのスタンスゆえ。「もっと別の意味があるのではないか?」観る者の深読みを誘うトクな映画作家。それがウディ・アレンである。ベタベタなスラップスティックであっても、甘っちょろい男女の恋物語であっても「もっと複雑で重層的な意図が・・」と意味を訪ねる観客は数知れない。どこまで計算しているかは本人のみぞ知るところだが、誠実な作りをしていることだけは確か。誠実は「自信」と言い換えてもいい。 酔ってホテルに戻ったエリーとハルがスクリーンから唐突に消える。画面に映るは殺風景な部屋の片隅と2人の声だけ。今、こんなシーンを堂々と見せることのできる監督は彼を置いていない。西海岸の気候や文化を茶化すのも、作品に自身を投影し、道化に徹するのも自信あればこそ。自分を最も支持してくれる国を賛美しつつ、しかし一方ではピンぼけでカメラアングルもままならない作品を「芸術だ」と評するフランスの行き過ぎた形而上路線をからかってみせる。そしてエリーとのあまりにも安直な恋物語を見せることで、本作をも皮肉の俎上へと載せてしまうというこの度量。これを送るアレンもアレンなら、受けたカンヌも大したもの。 アメリカに愛想を尽かし、おいそれとパリへ旅立つヴァルとエリーを囲むのは、彼が愛してやまないNYのこの上ない絶景。皮肉と揶揄、そして矛盾。「アニーホール」以来、手を変え品を変え、アレンが追ってきたのは人間こその不条理だ。だからウディアレンは今日も映画を作る。一義的にこのドタバタコメディに笑い転げるもよし、何かの比喩や暗示があると勘ぐりを入れるもよし。人の心を強く惹きつけるものは一色ではなく、相反するような複数の色を持つものだ。解釈する楽しさを教えてくれる当代一の名監督に大きな拍手を。好演したマーク・ライデルにも拍手。着古したラルフローレンに身を包んだアレンよろしく、いかにも人間的な滑稽さで観客を包む本作は、ちょっと古風だけれど、でも気分はすこぶるいい。
[映画館(字幕)] 8点(2005-05-11 15:04:59)(良:1票)
13.  十二人の怒れる男(1957)
脚本の勝利!作家としてこれだけのモノを書けたら、とサスペンス系の物書きたちは思うことでしょう。一貫して論理性という基軸をを保ちつつも、そこに個々の陪審員たちのキャラを重ね合わせることで、単なるいち事件にしか過ぎなかった平坦な一本道に彩りを加えたり、または閑散としたものへと変化させていってる。映画としても十分過ぎるくらい面白いと思うし、将来法律家、法廷弁護士を目指す人は見て損はないと思う。「法廷モノ(厳密には違いますが)」で今作以上の作品はいまだお目にかかったことがない。
10点(2003-10-29 01:18:55)(良:1票)
14.  ボウリング・フォー・コロンバイン 《ネタバレ》 
「自由」とは、どこまでも魅力的で、果てしなく尊いものであると思う。しかし、少しでもその意味を履き違えると、救いがたい状況を作り出してしまう。今、その悪例を端的に示しているのが、United States of America.大アメリカ帝国だ。もはやその誤った認識は、国内のみならず海を越え、山を越え、大陸を越えて世界中へと伝播させようとしている。ラストシーンでNRA会長のチャールトン・ヘストンが亡くなった6歳の少女の写真をしっかりと見つめ、ひと言、お悔やみの言葉を述べてくれたらと思ったが、やはり無理だった。それはそうだろう。彼の考える「自由」の恩恵が、あのビバリーヒルズの大豪邸であり、その引き換えとしてあるのが年間10000人を超す犠牲者たちだ。彼の冷酷なあの背中が「自由」を履き違えた今のアメリカを端的に物語っていた。ドキュメンタリー映画の評価基準をどう定めるのか、正直言ってよくわからない。題材なのか?編集方法なのか?それとも構成の仕方なのか?ライブ映像ではない以上、どうしたって不公平性は残るだろう。自身の意見に沿うよう都合よく編集を重ねたのかもしれない。しかし、本作が提起した事象は紛れもなく現実に起きた、あるいは今起きていることなのだ。アメリカだけに全責任を押し付けても始まらないが、その一端を背負ってるのもまた事実だ。「やらせだ!」「悪意がある!」「偏見だ!」と都合よく目を背けてきたツケと言い換えてもいい。マイケル・ムーアが正義の味方で、100%の善人だとは思わないけれど、それでもまだ彼のような存在があることが、そしてこのような作品にアカデミー賞という極めてポピュラリティある賞を与えたことが、アメリカに残された数少ない「救いの目」であると思う。社会を告発し、権力に物申す姿勢もまた「Free Country」の証明を意味するものだと思うから。
7点(2004-06-24 21:16:48)(良:1票)
15.  初恋のきた道
アジア映画、特に中国映画にありがちなことなんだけど、「純粋」とか「素朴」といったことをテーマにする場合、そこにプラスするαがなきゃ見ている方は、ひたすらに辛い。それはユーモアだったり、人間の業だったり、リアリティだったり、要素はなんでもいいのだけれど、その意味においてもうひと工夫が足りなかった。というのが正直な感想。監督がこの作品をノンフィクション色で責めたのだとしても、それならそれで「甘っちょろい」としか言いようがないほど登場人物が善人だらけだし、「苦味」が圧倒的に足りてない。「チャン・ツィイー はかわいいです」ということしか印象に残らなかった。
3点(2003-01-10 02:14:28)(良:1票)
16.  セブン
暗い。ひたすら暗い。映像もストーリーも何もかもが。雨が降ってる。服が湿ってる。傘はあるが、何の意味も持たない。早く着替えたい。この空間すべてから開放されて陽の光を浴びたい。そんな気にさせる。しかし、これは良作だ。本作以後、日本でも「精神世界モノ」「猟奇、残酷モノ」が一時期大流行して、便乗した映画やドラマも数多かったが、殺人の異常性ばかりに執着して、ドラマ本来とは別の、裏側にある「しだいに感じさせていく恐怖」までは描ききれていなかった。この映画が同類の作品よりも遥かに優れているのは、先見性ではなく、この「裏側にある恐怖」をひたひたと、しかし確実に訴えかけてくる力がある点だ。それは「本当にあったらどうしよう」といった現実的な恐怖ではなく、鑑賞後、あれやこれやと勝手に想像力が肥大していってしまう、抑えようのない働きに対する恐怖感だ。ところで、端役で出ていたグウィネス・パルトロー。本作のせいで「幸の薄い女」との印象が私の中では定着してしまい、シェイクスピアに恋をしても「結局、幸せにはなれないんでしょ、君は?」と、迷惑な邪推が頭の中でもたげてしまうのだった。嗚呼、抑制不能の自己想像力・・・
9点(2004-01-31 23:41:04)(良:1票)
17.  アンフォゲタブル
甦らせる記憶が多かったかなと思う。フラッシュバックもありすぎると飽きてくる。あと1人削ってストーリーをまとめられたら良作だった。ただ、必要以上に泣かせよう、複雑怪奇にしようとする意図がなかったのは良かったと思う。リンダ・フィオレンティーノの演技力は本物。自分の研究に誇りを抱きつつも、しかしどこかでその単調な人生に少し自嘲している女の「陰」を巧みに演じてみせた。スターのいる映画もいいが、巧い役者がいる作品はピシッとしまって、観る側の気持ちまでも締まってくる。
5点(2004-01-25 22:12:25)(良:1票)
18.  世界中がアイ・ラヴ・ユー
「ありがとう、ウディ!」と、言いたくなったよ。ゴキゲン度120%!ストーリーのディテイルとか、「ご都合主義過ぎる」とか、細かな「アラ」を捜そうと思えばいくらでもあるだろうけど、この映画はそんな見方で寸評する作品じゃない。私なんか途中から自然とリズム刻んでしまったほど軽妙で、愉快だった。本当に、幸せになれる映画で、文句なく満点!
10点(2002-06-20 23:53:47)(良:1票)
19.  月の輝く夜に
その昔「クレイマー、クレイマー」でフレンチトーストというものを知った。そして本作ではパンの中央をくり抜き、そこで目玉焼きを作るという新しいパン料理を知った。イタリアではよくある朝食メニューなのだろうか?さて感想だが、「月の神秘性」にかこつけ、シェールとニコラス・ケイジの無理やりな恋の落ち方など、展開や人物描写における脚本の粗さは拭えない。そうはいっても、いかにも家族、親類の結びつきを大事にし、マザコン男が多い「イタリアな国民気質」が描かれていて、ベタではあるが、おもしろい面もある。やはり「人の生」を表現させたらこの国に勝る人種はいない。オスカー受賞のシェールは意図的に淡々と演じたのだろうか?えてして濃くなりすぎるイタリア的暑苦しさを、彼女がおさえたスタンスを維持することで作品温度のバランスが保てたような気がする。もしかしたら、それが現地人ではない、「移民であること」を暗喩させていたのだとしたら、たいしたものだ。
4点(2004-07-20 23:47:19)(良:1票)
20.  マンハッタン殺人ミステリー
小ぶりながら、いち作品としても十分に楽しめる佳作。14年ぶりに復活したダイアンとのコンビが痛快で面白い。恋愛関係は終わっても、今も「一番大事な人だ」と言ってはばからないアレン。そのダイアンとの「友人関係」がよく伝わってきて微笑ましい。本作はちょうどあのスキャンダルの只中で、本来はミアファローのために書いたそうだが、この窮地にダイアンが手を差し伸べたのかな?と思うと、感慨はさらに深い。2人の私的な部分と重ね合わせて際どく言えば、息子も大学に入り、子育てを終えた熟年夫婦の「セックスレス」な関係すら画面から想像できる。愛情よりも友情で結ばれた夫婦、というより、もはや「同士」に近い感じだ。また、2人の代表作である「アニーホール」との比較で眺めてみると、味わいは更に深くなる。たとえば、犯人を車で追跡するシーンで「まったくあなたって方向オンチなんだから」と怒られるが、これも「アニーホール」のラストでアレンがダイアンとのヨリを戻そうと、カリフォルニアで慣れない運転までして追いかけたシーンと重ねて見てみると面白い。「ああ、本当に2人は仲がいいんだな」ってことが分かって、アレンファンならずとも嬉しくなる作品だ。
8点(2003-03-30 22:03:38)(良:1票)

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