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プロフィール
コメント数 646
性別 女性
自己紹介 2006年のレビュー本数4本ってあんまりですわね。
2005年には「姑獲鳥の夏」まで見ていたクセに。
ってこういう使い方やっぱ邪道ですよね。来年こそは。

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1.  ライフ・イズ・ビューティフル
人類史上屈指の過ちをファンタジーにしてはいけない。
0点(2003-11-22 20:23:45)(良:3票)
2.  キル・ビル Vol.2
これ誉めちゃっていいのかなあ。レビューワーとしての良心は著しくとがめるんですけど、映画ファンのハートが「誉めて誉めて誉めちぎれ」と悪魔の声でささやき続けるんですよね。つい昨日、「コールドマウンテン」を「これは映画じゃない」とコキおろしたわけですが、じゃあ「キル・ビル Vol.2」は映画なのか、と。前半とつなぎ合わせて考えてもね、これってただのタランティーノの好きなものコラージュですよね。悪く言えばほとんど思いつきだけで出来ている。過去の作品にも十分あった傾向だけど、過激にエスカレートした結果、ストーリーもへったくれもない話になっちゃった。これが許されてしまうっていうこと自体が、タランティーノの実は最高の才能なんであって、普通こんなの絶対に許される物じゃない。言うなれば公開マスターベーションなわけですよ。実際、そういう映画ってけっこうあるし、たいていは誰からもハナもひっかけられない。ただしこの作品の場合は、あらゆるカットから監督の映画に対する熱い情熱がほとばしり過ぎてしまっているのが素人目にもあまりにもわかってしまうので、この狂おしいまでの愛情を誰も否定できないんだと思います。クライマックスだけあって前半のVol.1よりもはるかにテンポは良いし見やすいです。意見がハッキリ分かれた前作である程度客層が絞り込めた結果、劇場内は純粋なタランティーノファンだけで占められており大変雰囲気の良い鑑賞となりました。「Natural born killer.」とか、ビルの倒れるタイミングとかね、必要な場面でちゃんと笑いが取れてましたしね。この客層は本当に良かった。はっきり言って、タランティーノにある程度理解のある人以外は、見ても完全に無駄だと思います。これは彼の「好き!」だけに突っ走ってる映画だから、冷めた観客には通用しない。でも私は好きです。どこまでも、おつきあいしたいと思います。無茶苦茶で問答無用でセオリーもへったくれもないんだけど、これはタランティーノが本当に作りたかった映画。なんだかねえ、優等生みたいな人たちばっかり増えて、誰もがお利口になって行く中で、一人いつまでもガキ魂を失うことに決死の抵抗を続けている姿が泣かせてくれます。少なくとも、21世紀にはタランティーノがいる。これは大変な救いになっていると思います。
10点(2004-04-26 23:29:55)(良:4票)
3.  スナッチ 《ネタバレ》 
「ロック・ストック&トゥー・スモーキングバレルズ」で見せてくれたあの複雑怪奇なパズル感が、ブラッド・ピットの乱入でブチ壊しか?と危ぶんだけど、さすがの一言に尽きました。アメリカ訛りのブラピに敢えてイギリス訛りの特訓をさせるのではなく、パイキーのワケわかんない語で喋らせちゃったセンスも天才的。ポットカバーをかぶったまま、あちこちで転がされているベニチオ・デル・トロの存在感といい、ガイ・リッチーと愉快な仲間+ハリウッド大物スターのごった煮にごちそう様と言いたいところ。あの可愛くないイヌの妙な可愛さといい、実に爽快な1作です。ところで・・・始まりと終わりでダイヤが微妙に目減りしていたのは何故?
9点(2003-11-22 19:40:54)(良:1票)
4.  めぐり逢えたら
あまりにもリアリティに欠けるお話なので、ひたむきにファンタジーを求めるには良いんだろうけど、ノーラ・エフロンで主演がメグ・ライアンで、という条件から期待したものとはかけ離れた感じがしました。もうちょっと辛口でもいいんじゃないかと思いますが、まあ世間の期待したものがこれだったんでしょうね。出会ってみて、相手が著しくダサい人だったりしたらどうするんでしょう。そういう意味でもまあ、めでたしめでたしなワケですが。これ観ていったい何を感じろと言うのか。
5点(2004-01-01 12:36:18)(笑:1票)
5.  シービスケット
私は感動体質というか比較的映画を観て泣きやすい方だが、この作品には非常に安心して泣くことが出来た。実話であると言われれば、どんなに出来すぎた話であっても受け入れざるを得ないだろう。後で調べたら感動させるためにかなり脚色された部分はあったようだが、2時間21分にまとめるためには細かい部分を相当そぎ落とす必要もあったわけで、ある程度は仕方がないのかな、と思う。登場人物の背景を比較的丁寧に描く前半から、シービスケットが活躍を始める中盤以降とのつながりがやや薄いような気もするし、投げっぱなしの伏線もある。そもそも前半の謳い文句であったはずの、シービスケットが当時の人々にいかに夢と希望を与えたか、という話は途中から関係者3人の夢や希望にすり替えられてしまい、人々はただ競馬場に群がって騒いでいるにすぎない。だからどうした、と普段の私なら当然ツッコむところなのだが、すっかり巻き込まれてしまって観ている最中はさほど気にならなかったので忘れたふりをする。トム・スミスの前半生とか、ハワーズの別れた奥さんとか、レッドの生き別れたままの家族とか、盛り込もうとすればお涙頂戴に幾らでも持って行けたネタが潔く切り捨てられ、シービスケットの活躍のみに特化させた後半は、正しいエピソードの整理の仕方を知らない最近の無駄な長尺映画に比べれば圧倒的に素晴らしいと言える。実際のレッドは重傷を負って入院中に看護婦と恋に落ち、復帰戦直前に結婚したそうだが、ハリウッド感動系に最もふさわしいこういうエピソードが切り取られたことにこそ、この映画の作者達の映画作りに対する良識が伺われるような気さえする。あざとく持って行こうと思えばいくらでも持って行けたところを、涙を呑んでここまで絞り込んだ心意気が伝わって来るといった感じか。ウィリアム・H・メイシーも名バイプレイヤーの面目躍如といったところ。やはり特筆すべきはトビー・マグワイヤのなり切りぶり。自暴自棄の暴れん坊と言うにはちょっと線が細い気もするが、タフなばかりではなく心に傷を負ったナイーブな一面は彼でなければ出せない味になっている。体長150センチ、誰もが見捨てた足の曲がった馬が、どんな馬より凄い走りを見せる、そのレースシーンには競馬とはほとんど縁のない私でさえも叫び声を上げて応援したくなった。アメリカの劇場では、さぞ大変な騒ぎになったことだろう。
9点(2004-01-27 00:47:07)(良:3票)
6.  ホテル・ルワンダ
楽しい映画ではありませんし、映画としての出来も決して素晴らしいと言えるものではない。ただしこの映画のように、作られることに意義のある映画というのは実際にあるものですし、その意義が極めて高いので文句なく10点をつけました。観るべき映画だと思いますし、例えばカメラっていうのはこう回すんだよ、シナリオっていうのはこう書くんだよ、という映画では全く無いですが、映画というものにはこういう使命も間違いなく存在しているんだという一つの例ではあると思います。何が起こっているのか知りながら世界中の人々が何一つ出来なかったジェノサイド、人類史上でも稀に見るほどの大量虐殺を、せめて後世に語り継いで行こうとすることは大切です。ドン・チードルはその謙虚な個性で、無力ながらも出来るだけのことをしようと務めたごく普通の一人のホテルマンに非常にハマりました。ウソ臭い感動のツボや、ありがちなハリウッド的盛り上がりには欠けますが、人間が正気を保つことの難しい状況の中で、ヒロイズムでなく平凡な人間のあり様を貫いた主人公には尊敬の念を覚えます。久しぶりに善玉を演じたニック・ノルティ、理想に燃えて現地に入りながらも志半ばで帰還せざるを得ないホアキン・フェニックス、電話一本で主人公を救おうとするホテル・オーナーのジャン・レノ、皆それぞれに素晴らしい演技を見せてくれました。観たことを忘れない映画であると思います。
[DVD(字幕)] 10点(2005-05-07 03:20:07)(良:6票)
7.  メリー・ポピンズ
技術が古びても、ストーリーが古い時代の物になっても、古びないものってやっぱりあると思う。時代はどんどん過ぎて行って、もう子供たちは「ジョーズ」を観ても眠れなくなることはないのかも知れないし、次の時代の子供たちは「マトリックス」を観てチャチなSFだと鼻で笑うのかも知れない。でも、やっぱりどんな時代でも、小さな子供たちには空を飛ぶ夢を見てもらいたいし、絵の中に入っちゃう!指先をパチンと鳴らすと部屋があっという間に片付いちゃう!煙突掃除のおじさんたちと、街じゅうの屋根の上を駆け回っちゃう!そんなことが出来たらいいな~、と思っていてもらいたい。空想は、人類だけに許された最大のパワーです。この映画を観るたびに私は、どんな時代がやって来ようと、この映画だけは大人からも子供からも、愛されていて欲しいな、と思います。
10点(2003-12-26 22:57:38)(良:3票)
8.  メイド・イン・アメリカ(1993)
精子バンクって当時としてはかなりインなネタだったんだろうな~、とか思いながら普通に楽しく見ました。普通に楽しい映画として、文句のつけようのない出来だと思います。あくまでも普通ですが、安直でわかりやすく、観客の期待に応えられるストーリーにこそ普通のカタルシスがあるのだということを見事に実証しています。実はこのプロットを思いっきり退屈でどこかで見たような映画にする方がずっと簡単だと思うので、そういう意味ではひそかな傑作と言えるのではないでしょうか。細かいエピソードが意外と自然に良く練り込まれていると思います。ウィル・スミスやニア・ロングといった後のスター俳優の駆け出し時代が見られるのも楽しいですね。人種を超えた恋愛や結婚というヘヴィなテーマを扱いながら、それこそが「メイド・イン・アメリカ」なのだとコメディ・スタンスで白人社会に突きつけた意義は大きいと思います。ブラック・ムービーの一つの転換期とも言えたこの時代、「1つになろうよ」と敢えてベタに呼びかけたこの映画の肯定的な世界観は、アメリカの人種問題の次なるステージを示唆していると感じます。
[DVD(字幕)] 8点(2007-03-31 03:04:54)(良:1票)
9.  ロスト・イン・トランスレーション
良かったです。批評家の焼き直しになっちゃうんであんまり言いたくないですが、ここまで笑いとペーソスに溢れたハリウッド映画というのはこれまでわたしが知ってる限りでもごく僅かだと思います。ただし劇場でげらげら笑い続けているのは案の定私だけでした。こわい顔してた通路の向こうの人、ごめんなさい。名刺を差し出しまくる日本人スタッフ、めちゃくちゃな上に異常に語尾を上げまくる日本人独特の英語で自信たっぷりの通訳、こわいディレクター、ニコリともしないウェイトレス、ひたすら動揺・困惑して途方に暮れるビル・マーレイ、これはオスカー獲ってもおかしくなかったと思います。ソフィア・コッポラ32歳、既に親の七光りは通り越して恐ろしい感性を発揮してます。人生の侘び寂び、若さと円熟、異国の地ならではのセンチメンタリズム、スタイリッシュでありながら決して現実を素通りして行かない鋭さは鳶から生まれた鷹かも知れないとさえ思わされます。描かれた東京、日本の風景は厳選されており無駄がなく、登場する日本人達は圧倒的にフツーです。日本ではまずウケないタイプの映画ですが、私は大爆笑し、素直にしんみりし、じーんと感動して劇場を出ました。後味の良い映画でした。これは傑作かも知れないと思います。だからビル・マーレイって凄い。
10点(2004-07-30 01:06:49)(良:2票)
10.  南極物語(2006) 《ネタバレ》 
すみません、オリジナル版の方をわたしは一生見ないので、わたしのレビューは誰の参考にも絶対ならないのですが、とにかくマヤの可愛さにしびれました。とにかく犬が可愛くて賢くて見どころ満載。イタリアがあんなにすごい雪上車を持っているのにアメリカ基地は何故か犬ぞり(しかも現在南極に犬の持ち込みは禁止されているw)、取り残された犬たちはカモメは襲っても可愛いペンギンには決して手を出さず、抜群の連携プレイで華麗に獲物をゲット。などなど、とにかくツッコミどころには事欠かないが、ディズニーならではのファンタジーだと割り切って見れば「犬が可愛い」、とにかくこの一言に尽きます。わたしは比較的割り切りやすく、しかも動物で涙を絞り取ろうとするあざとい映画よりは、動物を使った可愛くて楽しくて誰もがハッピーになれる映画の方が圧倒的に好きです。よって8点。史実がどうの、オリジナル版がどうの、と文句を言うには、あまりにも現実離れしすぎているのでかえって割り切れました。たぶん「スノー・ドッグス」の犬たち一式、もう1本ぐらい何か撮ろうよ、って感じの企画だったんでしょうけど、「スノー・ドッグス」より楽しいです。しかしまあ、首輪の外れなかったオールド・ジャックに、犬たちが半年間エサを運び続ける展開だったらどうしようかとちょっぴりドキドキしました。一番失敗だったのは、「南極物語」のハリウッド版だと言ってしまったコトでしょうね。関係ないフリしておけば、もっと楽しい映画にできたのに。
[DVD(字幕)] 8点(2008-09-01 00:44:37)(良:1票)
11.  ターミナル
トム・ハンクスはコメディアンであると信じる立場から、本来の彼の持ち味が生かされたコメディ作品は嬉しい。問題は1000人もの観客と同じスクリーンを見ているはずなのにゲラゲラ笑い続けていたのが私一人であったこと。この寂しさはいったい何なんだ。 トム・ハンクスだから、スピルバーグだからと言って大箱でいかにも感動系なコピーをつけて売らなければならないという事情もわからなくはない。だからと言ってクスリとも笑わずに深刻ぶってスクリーンを見つめ、とってつけたようなラストでは涙まで流す観客の異様なまでの主体性の無さに愕然とした。人々は映画に対する感想まで誰かに教えてもらわなければならなくなってしまったんだろうか。自分の頭でモノを考えていれば、この程度の「感動話」に泣ける方がどうかしている。 もはや「大作」にしか出演を許されなくなってしまったトム・ハンクスと、「大作」しか手がけられなくなってしまったスピルバーグにとって、果たしてこの選択が正しかったのかどうかは疑問。これは低予算で低スケールで、地味に撮って味の出るストーリーだったと思うし、泣く泣く大作に仕立てた割には頑張っていると思うのだけれど客寄せパンダのキャサリン・ゼタ=ジョーンズは蛇足だったし主人公がNYへ行きたい理由も実際そんなに必要ではなかった。ただ飛行場から出て行かない主人公というシチュエーションだけが重要だったのであって、優れたアイデアだっただけに潤沢すぎる予算は却って邪魔になってしまった。売れすぎた才能の行き場の無いエネルギーという皮肉。ついにスキンヘッドになってしまったスタンリー・トゥッチの熱演に敬意を表して7点。返す返すも惜しい作品ではある。「トゥルーマン・ショー」にとても似ていると感じたのは私だけだろうか。
7点(2005-01-02 00:18:35)(良:1票)
12.  ストーリー・オブ・ラブ
世の中には、すご~く良い人なのに、たった一つの致命的な欠点があるために周囲から疎んじられてしまう人もあれば、反対に、欠点だらけでどうしようもない人なのに、たった一つの長所のために何故か憎めない人もいたりする。映画も同じである。この映画にはほとんど良いところがなく、ブルース・ウィリスとミシェル・ファイファーの若作りははっきりと滑稽で、ストーリーはベタベタで誰にも容易に先が読め、だから何なんだ、という展開しかしないのに、ミシェル・ファイファーのちょっとあり得ないほどの熱演でうっかりボロ泣きさせられてしまった。だいたい私はミシェル・ファイファーという女優に芝居が出来るなんて20年近く想像したことすらなかったし、「眠れぬ夜のために」で初めて観た時は「すごく可愛い」と思い、「デンジャラス・マインド」で観た時には「いい女になった」とは思ったが、「演技が出来る」と思ったことは唯の一度としてなかったと断言して良い。その彼女が、あれだけの長回しで堂々と演じてくれた名シーンたった一つだけで、箸にも棒にもかからなかった単なる倦怠期を迎えた夫婦の物語が、なんだかとても素晴らしい、忘れ難いものに思えてしまうのである。私のようにココロの冷たい女でさえコレだ。彼女と似たような境遇にある人だったらもう、ボロ泣きどころじゃすまないだろう。だからこの映画、ほとんど良いところも新しいところもないのだけど、なんか憎めない良い映画になってしまった。救いがあるっていうのは、それだけで素晴らしいことなんである。
7点(2003-12-06 00:15:24)(良:3票)
13.  大脱走
たとえば「映画はスターである」という意見があり、「映画は娯楽である」という意見があり、あるいは「歴史の一部を後世に伝える」という意義があり、さらに「人々に夢や感動を与える」という価値がある。この作品ほどあらゆる点で広く一般大衆が「映画」というメディアに求める要求を満たす作品は多くはない。これが実話であるという信憑性に確固たる裏づけを与える魅力溢れる主人公達のみならず、悪の象徴として通り一遍に語られかねないナチス・ドイツの軍人達にもそれぞれの抱える苦悩や人間味を持たせ、数々の悲惨なエピソードをちりばめながらも物語はポジティブに、知恵をめぐらし目的を遂げることの素晴らしさを、そして勇気を、戦時下という特殊な状況にありながらも決して人としての心を失わない捕虜と看守たちそれぞれの崇高な魂を見事に描き切っている。互いに異なる目的を持ち、ある者は脱出に命を賭け、またある者は失敗が即北方戦線勤務を意味する、究極の利害関係を背景に、双方が持てる知恵の全てを注ぎ尽くした騙し合いの小気味良さ、個性溢れる演技陣の活き活きとした表情の豊かさ、かの有名なマックイーンVSマックイーンの壮大なオートレースシーン、緻密なシナリオとダイナミックな演出、無駄なカットが一つもないとまで絶賛される完璧な演出は、3時間に及ぶ長尺を一瞬の飽きも感じさせずタイトに、しかも様々なドラマの一つ一つをあくまでも丁寧に描き尽くしている。何度失敗してもボールとグローブを片手に飄々と独房に入る独房王マックイーン、17本目のトンネルに命を賭けるトンネル王ブロンソン、書類の偽造のために視力を犠牲にした盟友を最後まで見捨てずにかばおうとする調達屋ガーナー。彼らの卓越した存在感に、全編を通して語られた男達の美しい友情と任務遂行への狂おしいほどの情熱に、人々は今なお拍手を惜しまない。「これが映画だ」と心の底から自信を持って言うことのできる、数少ない作品の一つである。
10点(2004-03-29 23:51:25)(良:2票)
14.  パニック・ルーム
娯楽映画と割り切ればかなり高レベルの作品だとは思うのだが、いかんせん観客はデビッド・フィンチャーの最新作を期待している。そういう意味で、これはマスを相手にした普通の娯楽作品でしょう。設定もおもしろいし、キャスティングもかなり成功している。ストーリーは安易とも取れるが、支えている着想がオイシイのでそれほど質は下がっていない。ついにジョディ・フォスターがお母さん役になったか、という感慨や、フォレスト・ウィテカーが最後まで信じ切れないキャスティングの妙でラストまで飽きずに観られる。あくまでもフィンチャー作品としてではなく、娯楽作品としての合格点。ただし期待するものとはやっぱり少しズレている。
8点(2003-12-28 11:29:37)(良:2票)
15.  アナライズ・ミー
作品のスケール感を正確に見極めてミニシアターなんかでひっそりやればよかったものを、「デ・ニーロ主演」「アメリカで大ヒット」の2点に騙されて大箱で公開してしまったために客席のしらけっぷりがバカ寒かった作品。一部の品ある客だけをターゲットに絞り、クスクス笑わせてくれれば観るべき物はあったのに、なんだかもう「ジュラシック・パーク」に集まる週末のデート組みたいなのが押しかけてしまって、彼ら一般客の落胆ぶりが暗闇の中でも手に取るように伺われてしまい、気の小さい私がまるで自分のせいみたいに不条理な罪悪感を感じてしまった。内容的にはいかにもアメリカ人好みのおバカなコメディなのだが、日本でマスに受けるのが難しいことぐらい配給会社に入るぐらいの人間なら新人だってわからなきゃ駄目だろう。こういう風に、公開ルートを間違えてしまったために起こる不幸について私は非常に憤りを感じる。が、個人的に自宅でビデオで鑑賞する分にはそこそこ問題ない仕上がりであるとは言える。重ねて言っておきたいが、「デ・ニーロ主演」で「アメリカで大ヒット」の「爆笑コメディ」を期待したらバカを見る。小粒でクスッと笑える地味なコメディぐらいを想像して見れば、アメリカ人でなくてもちゃんと楽しめる映画だと思う。
6点(2003-12-20 03:39:35)(笑:1票)
16.  テルマ&ルイーズ 《ネタバレ》 
20世紀の「俺たちに明日はない」として語り継がれるにふさわしい作品。アメリカン・ニューシネマの心意気を今なお持ち続ける最後の1人がイギリス出身のリドリー・スコットだというのは実に不思議なところだが、「青春をモチーフとしたアンハッピー・エンドのロードムービー」をニューシネマの定義付けと見るならば彼ほどその流れの中心に居続ける作家は珍しいであろう。「エイリアン」など一見してそれとわかりにくい作品も多い中、これはベタベタに真正面からニューシネマの再現を目指した異質な作品。加えて女に本当の友情はあるか、という人類永遠の命題にも取り組み、いくらかファンタジックすぎるきらいはあれど女性にとってはある種のカタルシスを感じられる仕上がりとなっている。男に依存して生きることしかして来なかったテルマが、逃避行の中で女を取り戻し、やがては予想外の方向に羽ばたいて行く様子など、絶望的な負のベクトルに突き進みながらもネガティブな「解放」を描いて小気味良い。ハーヴェイ・カイテルの報われない善良さ、心に傷を負いながらもひたむきに生きていたはずのルイーズの失墜ぶり、実にドラマティックに、不条理そのものを正攻法で描いた作品として、長く心に残る映画である。おそらく映画史上どこを見回しても、オンナがカッコよく死んで行く映画はなかった。だから私はこの映画を、永遠に支持する。
10点(2003-11-29 14:14:03)(良:1票)
17.  カジノ
他のスコセッシ作品と比べてどうの、というのはフェアではない気がするが、個人的にはオチの甘い「グッドフェローズ」よりこちらの方が好き。なんと言っても圧倒的な存在感を見せつけたシャロン・ストーンの心意気に敬意を表したい。徹底した悪女ぶり、欲得の権化として女ならではの貪欲さでヒステリックにスクリーンを駆け抜けるジンジャーの後ろ姿は鮮烈である。何より「普通っぽさ」が人気のカギとなる昨今のハリウッドにおいて、これほどの毒気と華を誇るシャロン・ストーンほどの女優に合った役がどこを掘っても出て来ないという現実の方が問題だ。女優というのはゴージャスの代名詞だと考え、スクリーンに後から後から湧いて出る一山幾らの「隣のお姉さん」たちにうんざりする私にとって、シャロン・ストーンは最後の「女優」なのである。そしてこういう「女優」にふさわしい役が珍しく与えられたという意味で、この映画は最近滅多に見かけない、強烈な「女優」映画なのである。そういえば「グッドフェローズ」にはイマイチ女優っけがなかった。そういう部分が男性ファンからはあまり支持されないところなのかも知れないが、ロバート・デ・ニーロやジョー・ペシといったハリウッドやくざ映画の大御所たちが揃いも揃ってシャロン・ストーンに映画をかっさらわれている様子は、一種爽快でさえありましたね。時には映画に夢を見たい。身近なストーリーやリアルな話もいいんだけど、一瞬のゴージャスなムードに酔いたい私のような人間には、まさにうってつけの作品でありました。
10点(2003-12-10 22:45:05)(良:1票)
18.  ツイステッド 《ネタバレ》 
「ラストは仰天のどんでん返し!」で、主演がアシュレイ・ジャド、サミュエル・L・ジャクソン、アンディ・ガルシアだったら誰が犯人なのかくらい観る前から誰にでもわかるだろう。だからこそ興味の大半はそこに至るまでの経緯に必然的に絞られて来るのだが、アシュレイ・ジャドが眠る→携帯のベルで起こされるというひたすら単調な繰り返しには相当な忍耐を強いられた上、意外でありさえすればリアリティなんか知ったこっちゃないと思いっきり開き直ったラストのいんちきぶりには怒りを通り越して感動すら覚えてしまった。寝て起きては呼び出されるアシュレイ・ジャドがいったいいつお風呂に入っているのか、その心配だけで最後まで観てしまったようなもの。この手のネタ物ってはっきり言ってもう出尽くしていると思うのだが、何年かに1回「おっひょー」とぶったまげさせてくれるお宝も混じっていたりするのでどうしても心のどこかで期待を捨て切れない浅はかな自分がいる。だからと言って面子だけで容易にネタが割れたり、主要キャストとはまったく無関係な犯人をラストで突然登場させたりといった工夫のカケラもない"サスペンス"が99%なわけで、ある程度の知性とネタ物への期待感をお持ちの賢明な方には逆立ちしてもお勧めできない凡作としかだけ言っておく。アシュレイ・ジャドは出ずっぱりだがはっきり言って老け込み方に物悲しいものがある。二重アゴになっちゃっても思いっきりセクシーなアンディ・ガルシアにこの4点を捧げたい。しかしこれ、本当にわざわざ輸入してまで公開するほどの映画だったんだろうか。
4点(2004-10-11 02:59:10)(良:1票)
19.  グッドモーニング,ベトナム
これは観た順序に左右されるんじゃないでしょうか。78年の「ディア・ハンター」から「プラトーン」、「ハンバーガー・ヒル」あたりまでの一連のベトナム戦争回顧映画を一通りリアルタイムで観ていた世代には、かなり新しかったし、ある意味ブームの終焉にふさわしい作品ではあったと思います。正直、ロビン・ウィリアムスという役者にまだあまり飽きてない頃だったのも正解でした。この後エンエンと続く彼の幸せ配達人ぶりを押しつけられた後では、はっきり印象も変わると思います。関係ないけどこれが初めて地上波で放映された時、ロビン・ウィリアムスの吹き替えをやった広川太一郎は本当にスゴかった。話芸で回す作品をよくまあここまで頑張ったものだと、彼の底力を感じました。ロビン・ウィリアムスの人情役者ぶりと戦場で起こった「ちょっといい話」みたいな作品にお腹いっぱいの今観ると、さすがに陳腐さは否定できませんが、当時としては力いっぱい善良な、偽善的ではあるけれど人の心の美しさを一生懸命描こうとしたこの作品には心を打たれました。ベトナムの真実を描こうとした映画はたくさんありますが、この映画でアメリカ人はようやく、そろそろベトナム(または戦った自分たち)を許そうという境地に達して来たということではないかな。
9点(2003-12-13 12:56:54)(良:2票)
20.  セブン
恥ずかしながら、20年以上映画を観ていてこれほど「映像」そのものの雄弁さに気づかされた作品は初めて。引退を間近に控えた老練な刑事と、活気逸る新米刑事のコントラストを軸に、前半は雨、雨、雨の陰鬱な街をカメラは人の腰から下の位置で水平に移動する。対象的な後半は、晴れ渡る郊外に舞台を移し、空撮を多様した縦のラインでカメラはちっぽけな人間達を見下ろす目線。7つの大罪はストーリーを組み立てるためのモチーフにすぎず、映像のダイナミクスにあっと驚かされながら最後まで一気に引っ張って行く手腕には脱帽した。刑事部屋や図書館で見られる完璧なパンフォーカス、執拗なまでに遠近法を強調したラインの美しさや図書室のグリーンのライト、ミルズの追跡をどこまでも下から追い続けるカメラの目線、光と影、色と形、映像そのものが持つ凄まじいまでの存在感が、ストーリーの異常なまでのウソっぽさを全て忘れさせてくれる。何度でも観たくなる、神々しいまでの美しさがここにある。
10点(2003-12-02 01:00:47)(良:9票)

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