1. プラン9・フロム・アウター・スペース
《ネタバレ》 「エド・ウッド」未見。この映画は意外に話のテンポも良くて楽しめるエンターティメント作品だ。「史上最低」なのは各シーンの圧倒的な低クオリティ。カーテンでごまかしまくるセット、昼・夜・内・外が目まぐるしく入れ替わる大胆不敵な編集、大声で棒読み台詞を唱え続けるパイロットの妻・・・(UFOについてはもはや何も言うまい)。アラ探しなどしなくても全編アラで出来ているので不思議な統一感がある。終始腹筋のプルプルが止まらない。大して悪くない上に強くもなく、殴り倒された挙句爆死させられる宇宙人達はとても気の毒なのだが、そんな後味の悪さを救ってくれるのがラストに登場して「これはすべて事実なのです」とぶちかますクリズウェル。色々と絶妙なバランスで成り立っていて人気があるのもうなずける。ここは正直に楽しんだ分の点数を計上しとこう。 [インターネット(字幕)] 7点(2011-09-13 07:45:21)(笑:1票) (良:3票) |
2. ロッキー
《ネタバレ》 長年うろ覚えでしかなかった名作をちゃんと観直してみました。おおこれはたしかに名作だ。そして後の派手な大作群とはまったく違う、とても地味で心のこもった丁寧な作品。 まず若いスタローンが美しい。まるでギリシア彫刻のようで、それがしゃべるとまったく学のない粗野な、しかし根は悪くなさげなイタリア移民の若者そのものになる。もしこの映画がスタローン自身の企画だと知らなかったらよくこんな役者を見つけてこられたなと思うところだ。そして物語も当時の売れない俳優スタローンの境遇をなぞる。 初代『ロッキー』のロッキーは大した才能もなく、さらにはやる気すらなく底辺の生活に甘んじている、ただ友人の妹の地味ぃ~な店員に恋するだけの若者。ミッキーは名伯楽どころか罵詈雑言ばかり吐き捨て、あげくビッグマッチが転がり込んでくると手のひらを返してすり寄ってくる。その「ビッグマッチ」の相手、アポロはボクサーとして完璧なら頭も切れて茶目っ気がありプロモーターの才もある。ロッキーを指名してしまったのはうかつだったが、彼に落ち度はない。 この映画には悪役はいない。そしてロッキーもエイドリアンも無名のセコンド陣もみんな本物。その本物が織りなす重苦しさの中でバート・ヤング演じるポーリーが唯一「上手い俳優」っぽさで軽やかな風を吹かせてくれる。そういう奇蹟のバランスで成り立っている。仮にもし『ロッキー』1作で終わっていたらこの映画自体の価値はさらに高いものになっていたかもしれない。ただそうならなかったことでロッキーはただの名作映画の地位に収まらずあらゆるカルチャーに影響を与えていく存在になった気がする。 [インターネット(字幕)] 9点(2019-08-18 21:53:27)(良:3票) |
3. シン・仮面ライダー
《ネタバレ》 『シン・ゴジラ』には乗れなかった自分としては世評も微妙なこの映画はスルー予定でしたが、あまりに色んな人が話題にするのと、予告編がかっこいいので気になって観に行きました。うむ、予告編通りかっこいい!とこもある! まずライダーキックが必殺技であるというのを迫力ある映像として見せているのが良い。特撮で見ていたあのキックは本当はこんなに凄かったんだなと思える。他にも新鮮なアクション、怪人やそのアジトの美麗さなど魅せられる要素は数多い。 一方問題点は挙げればきりがない。登場人物が全員思っていることをぜんぶしゃべる、しかも嘘がつけないようで裏腹なことは言わない、というのはこの監督の作家性らしいが、にしてもほんと会話が多い。そして場面展開の強引さは昭和の特撮を越える。そこまでこまけぇことに気にしないんならいっそ採石場で戦ってほしかった。 121分は今どきの映画としては長い部類ではないが、それでも長いと感じる人は多いようだ。が自分は意外と気にならなかった。それはやはり全体の玉石混交ぶりにあるだろう。良いシーンではアガるし駄目なシーンではリラックスできるのでメリハリがあって疲れない(笑)。だったら編集し直して切り詰めれば名作になりそうなものだが・・・残念ながら肝心のクライマックス、ラスボス戦が映像としてグダグダなのだ。 演じた森山未來のキャラ造形は本当に素晴らしかったのだが、そのラスボスとしての凄さはFXではなくちゃんとアクションで見せてほしい。映画全体として後半になるにつれアクションはどんどん何やってるのか分からない誤魔化しになっていくのが辛いところ。一本足したぐらいでは幸せになれない。 この映画を端的に言うと幼稚。かっこいい人物をかっこよく登場させてかっこさよさげなセリフをクールに(?)言わせる。漫画みたいなカット割りに解説セリフ。子供が考えた大人の世界。とはいえ本当に光るものはいくつもあって、これを「大人の鑑賞に耐える」レベルにまとめられなかったのは残念だ。決して駄作ではないが、とにかく惜しい!映画。 [映画館(邦画)] 6点(2023-05-01 22:21:20)(良:3票) |
4. スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
《ネタバレ》 どんな小さな窓にも外の無数の船が描き込まれている。信じられないほどの映像の作りこみ。しかし肝心の「人」にはリアルさがまったくない。「汗をかかない」、この壮絶な違和感はこれに尽きる。服も汚れない。思えばEP1はアクションが連続していなかった。前作からその違和感が明らかになり、EP3ではもはや脳内修正不可能なレベルになってしまった。彼らは今戦っていたのではないのか?灼熱の世界から生還したのではないのか?シーンが切り替わるたびに洗い立ての服、仕上がりたての化粧、セットしたての髪・・・。たしかに不満な点は他にも色々ある。正体を明かしたパルパティーンと一瞬対決しようとするのが実に意外だったくらい元から黒すぎるアナキン、無抵抗で惨殺されるジェダイ・マスターズ、質感はリアルでも動きがディズニーアニメなクリーチャー達、シーンを作りたかっただけの無駄なプロットの数々・・・しかしすべてをぶち壊すのはやはりリアルさをまったく欠いた「人」の演出である。「人」を見なければいい映画なのかもしれない。それをいい映画と言ってよいかわからないが。評価点1というのは冷静な評価と言えないかもしれないが、この残念感、がっかりした気持ちを他に表す方法がない。 [DVD(字幕)] 1点(2009-03-28 20:09:41)(良:2票) |
5. スター・ウォーズ/フォースの覚醒
《ネタバレ》 自分はどうもJ・J・エイブラムズとは相性が悪いらしく、観終わった後に釈然としない思いが渦巻いている。観ている間はすごく面白いが後から思い出すと、おい、ちょ待てよ!と言いたくなる。 新シリーズになっても敵はまた帝国・皇帝・シス卿・ナチス官僚のセット?おまけにもまたもやデス・スター登場。親玉の大豪院邪鬼(胎児)はハリポタやロード・オブ・ザ・リングで見たようなデザインでげんなり。ルーカス版と違って(←重要)各役者の演技はとても良いのでつい引き込まれるが、よくよく考えると全体の話がおかしい。かっこいいポー・ダメロン、お前のせいで何人死んだよ?虐殺シーンとかやりすぎなんだよ。ルークは反省して隠れたが隠れたせいでまた騒動になる。この話だけじゃルークは駄目過ぎるぞ。ヒトラーばりの凄演説をする総督は頑張っているがいくらなんでも若すぎる。なんだこの愚連隊組織。ソロも駄目親父になってしまっているし息子はもっと駄目だしこの映画駄目人間ばかりじゃないか。 そしてJ・Jお得意の「がけっぷち危機一髪×3回」。い い か げ ん に し ろ 。映画を観てる時に「これは単なる作り物のエンターティメントなんだ」なんてことを思い出したくないんだよ。BB-8も可愛いと評判だが、ちょっとあざとすぎる。そしてインフレ状態のデス・スターは恒星を吸い取ってビームってもはやSF要素は完全放棄か。 これだけ文句言ってなぜ7点も入れているのかというと、キャリー・フィッシャーの演技に胸を打たれたからだ。この人はこんな名優だったのか。亡くなってしまったことを今さら再び嘆くことになるとは。ハリソン・フォードとの熟年(元)夫婦喧嘩シーンもとても良いが、ここで開口一番クソ台詞「髪型変えたね」。これで古い観客をクスっとさせようってか?何年経ってると思ってるんだ脚本家表へ出ろ。(え?『帝国の逆襲』の人なの?) [DVD(字幕)] 7点(2017-05-09 21:48:15)(良:2票) |
6. スーパーマン(1978)
何十年かぶりに観てみました。特撮は今でも意外に見れる。質感は明らかにプラスチックだったり発泡スチロールだったりするのだが、シーンが要求する風景をきちんと作り上げている。なにせ原作があるのでスター・ウォーズみたいに上手く作れるシーンだけで構成するわけにはいかない。そのほぼ翻案なしのアメコミ世界を現代(当時)に直でつなげてしまうのが凄い。 しかし悪役のおもしろ演出はいいかげんくどい。笑ってる間に垣間見える残虐さにドキッとする展開は上手いがあざとい。他にも変なところ、矛盾してるところ、ダサいところ、冗長なところは山ほどあります。それを全部救ってしまうのがクリストファー・リーヴ。 あの顔、あの体格はスーパーな男そのもの。スーパーな笑顔、スーパーな怒り、スーパーなイケメン声、それがメガネ一個でガラリと印象を変える。よくあんな俳優を見つけてこられたものだ。 CGなんかなくても超人のパワーを感じさせるクリストファー・リーヴ。赤青スーツが史上唯一似合う男クリストファー・リーヴ。クリストファー・リーヴはスーパーマンでスーパーマンはクリストファー・リーヴ。クリストファー・リーヴよ永遠なれ。 [インターネット(字幕)] 7点(2017-08-18 23:03:10)(良:2票) |
7. ボヘミアン・ラプソディ
《ネタバレ》 名だたる評論家たちが年間ベストに挙げ、巷も大絶賛。どうやら僕はそこに乗れない少数派のようだ。 たしかに良い映画だとは思うが、この映画の「感動」って元のクイーンの曲の力にあるんじゃない?それは別に悪いことじゃないし再現度はそりゃ素晴らしいが、そこが大事ならもっと音楽に焦点を当てればよかったのにと思う。しかし長い上映時間の大半を占めるのはフレディのセクシュアリティの葛藤。果たしてこれはストーリーとして何度も繰り返して表現すべきプロットだろうか?。フレディのソロ活動がカネまみれでクイーンを裏切る「完全悪」みたいな扱いなのもよく分からない。もっと分からないのはライアン・メイとロジャー・テイラーがこの映画のかなりの権限を握っているらしいこと。つまりその他史実の改変もこの二人の意向てこと?(少なくともOKは出しているはず) ライブ・エイドの演奏場面はもちろん素晴らしいのだが、当たり前だけど本物のライブ映像の方がもっと良いんだよ(笑)。このへんは音楽やスポーツの伝記映画の宿命ではある。しかしこれをクライマックスにするのならそこに至る雌伏の時期が物語上必要だが、それは「無駄な」ソロ活動や乱痴気騒ぎに「うつつを抜かしていた」フレディが「ファミリー」の元に帰る、という話なんだな。それでいいのかブライアン&ロジャー? 個人的にはフレディ役は当初の予定だったらしいサシャ・バロン・コーエンで観てみたかった。ラミ・マレックは確かに頑張っているが、フレディ・マーキュリーという人のとんでもない「強さ」を表現しきれていないように感じる。そりゃフレディは繊細で闇も弱さもある人だったろうが、どんな大観衆も圧倒する強さがこの役には必要だろう。サシャならそれができたように思うのだが。 [映画館(字幕)] 6点(2019-01-01 20:43:25)(良:2票) |
8. スター・トレック(1979)
《ネタバレ》 スター・トレックの記念すべき第一作目の映画。派手なアクションとかは皆無ですが、スタトレってそもそもこういうものなんですよ。冗長なシーンが多いと思う人は多いだろうが、それがこの映画の見どころなので仕方がない。それまでTVシリーズの予算の枠から解き放たれ、想像力の赴くままに未知の光景を存分に作り倒す。驚くべきことにこれCGがほとんどない時代なのでほぼ全部特撮なのだ。同時代のスター・ウォーズに比べればチープに感じるかもしれないが、あちらは徹底して具象なのに比べてこちらは抽象表現の嵐。よくぞ作りました。 フラストレーションが溜まる場面は「若手の突き上げを食らうカーク」という落ちた英雄像を見せられることか。名声と裏腹に実力のピークを過ぎてゆく中年クライシス。スポックも母星の試練に落伍し、人間臭いヨレヨレ中年軍団のストーリーが展開される。時代性なりの古さを感じる点は特撮よりもむしろよく語られるテーマである「哲学性」。人類や生命そのものの進化というテーマは今の時代にはかえってリアリティがない気がする。 とはいえこれはSF映画の金字塔の一つであるのは間違いない。今からこの映画を予備知識なしで観て、迫りくる強大すぎる謎の存在に絶望感を感じられる人は幸いなるかな。 [DVD(字幕)] 8点(2016-10-03 01:39:35)(良:2票) |
9. トロン
リアルタイムでは本でしか接することができなくてかなり後になってネットで観た映画。今は配信にあるので改めて観てみました。 こりゃすごい! まずですね、コンピューター世界の造形、衣装、戦車や戦艦、帆船(?)、そしてバイク・・・etc。このデザインがぶっ飛んでる。そして超かっこいい。このオリジナリティの塊の「異世界感」の創造性は比類がない。 驚くのはそれが1982年当時のCG技術(に似せたアニメ)や合成などの技術の限界こそが「コンピューター世界の擬人化」という、まったく非現実的な設定に、あろうことか「リアリティ」を与えていることだ。当時もそう思ったが2023年の今でも、いや今だからこそ余計そう思えるとは。 音楽は現実世界では生オーケストラ、コンピューター世界ではシンセサイザーと使い分けられている、と思いきやそれらは微妙に混ぜられていてそれがまた素晴らしい効果を生んでいる。 ストーリーもテンポが良いしラストもサクっと締める(重要)。全体のテーマも意外に現代に通じる話だしなぜこれがシリーズ化、ユニバース化されなかったのが不思議なほどだ。思うに多分この映画の奇跡は計算されたものではなかったのだろう。だから安易にリブートできないし「続編」ともなると・・・。 しかしこのローファイな未来感覚はこの映画1本で終わるのは惜しい。ゲームだってドット絵のスマホゲームが人気じゃないですか。こういう技術を反転させたデザイン勝負のSF映画をいま作っても良いんじゃないかなあ。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-05-03 23:53:30)(良:1票) |
10. グリーン・ランタン
《ネタバレ》 評価が低いので気軽に流し見するつもりで観たらけっこう楽しめた。ていうかむしろ出来が良い部類なのでは?ライアン・レイノルズの3枚目っぷり、ヒロインの完璧彼女ぶり、親友と屈折したライバル、いかにも議員ぽい議員と演技のレベルは高い。スーパーマンを遥かに凌ぐ大設定ながらみんなそんなに強くなさそうなのはご愛嬌。 この映画は明るく楽しく爽快で「ちょっと」無理があるという正統派アメコミ映画だと思うが、生まれた2011年はシリアスヒーローが大流行の時代。おそらくそういう風潮に抗いたかったのだろうがあえなく撃沈した。しかし主人公ハルの苦悩はもうちょっと前面に出しても良かったのでは?そして「恐怖に立ち向かう勇気」という手垢まみれのテーマをもうちょっと刺さる言葉で鋭く表現してほしかった。せっかく雰囲気は良いシーンなのに。 良いシーンと言えば基本的にシーンはどれも丁寧で退屈しないのだが、特に群衆のシーンは良かった。どんなにCGが発達しても「必死で逃げ惑う大群衆」を撮るのは意外に難しい。よく見ると画面のすみで「ジョギング(ただ指示通りに走っている)している人」が写ってる名作映画はいくらでもある。この映画の悪役は「恐怖」を餌にするという設定だからこの点は重要だ。子供の集団まで必死感を出していたのは感心した。 この映画はコケてしまったせいか劇中で「予告」される続編はアニメになったようだ。制作陣は同じらしい。つまり彼らはきちんと志とヴィジョンを持って作っていたわけだ。時流に合わずに敗れたがいずれ再評価されることを願う。(とまで言っておいてなんだがそれほど深いメッセージ性とか感動があるわけではないのがつらいところ。) [インターネット(字幕)] 7点(2017-12-31 18:00:05)(良:1票) |
11. トロン:レガシー
《ネタバレ》 『トロン』が技術の限界やB級感を含めて奇跡の作品だったのでこの作品には期待しておらずずっと放置していましたが、やっと観てみました。 正直言って不安は的中。2010年の技術で上手いこと作ってやったぜい!ってそれ違うんだよ・・・。ただ前作をリスペクトしてすごく丁寧に作られているのは分かる。ゲームセンターの時代感、80年代と2010年代の対比は上手、くはないが頑張ってる。 しかし最大の問題点が「グリッド」世界の描写。風が吹いて稲光が光って蒸気が吹き上がってる?おいおーい、オリジナルが持ってた異世界感のモダナイズがこれか?靴音や物音もことごとく普通の現実世界の音。これを少し変わった音にするだけでもだいぶ印象は変わるはずなのだが。 その「音」という意味ではダフト・パンクが作ってるエレクトリック音楽は本当に素晴らしい。しかし合間に入り込むオーケストラ音楽とその使い方が壊滅的にダサい。これぞ全くの玉石混交。劇伴音楽はエモーションを揺さぶるので観てる方はアガったり下がったりで忙しい。 そして最大の問題点、て「最大」が2つ目だがこれは言わざるを得ない。デザイン。何でオリジナルのウェアデザインを踏襲しないの!これこそ「レガシー」でしょう?ヘリコプターや戦艦のデザインは踏襲してるが明らかにダサくなってるし帆船はとんでもなく改悪されてる。 特にひどいのがバイクバトルで助けに来る4輪バギー。昔のF2レーシングカーまんまじゃん!そりゃメビウスやシド・ミード並のオリジナリティを発揮しろとは言わないよ。でももう少し頑張ろうよ。 一つとても良かったのはラストの決め方。そうそうそう、ラストはバシッと決めてすぐエンドロールに行く!後日談とかだらだらやらない!わかっとるね。と思って1点上げようと思ったが、配信だと「次の動画」でオリジナル『トロン』の画面が出てくるのね。そのデザインの落差に「現実に戻されてしまった」のでやはりこの点数。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-05-17 23:29:36)(良:1票) |
12. ワンダーウーマン
《ネタバレ》 スーパーヒーロー映画を観る時はどうしてもSF的な理屈で自分を納得させる癖があるのだが、これはそれが不可能な神話ファンタジー。ガドットがそんな神様キャラにぴったりはまっているし、クリス・パインのちょいへたれなイケメンぶりもちょうどいい。映像も頑張っている。 第一次世界大戦中の描写はお見事。そこにワンダーウーマンがねじ込まれるとどうなるかという違和感が面白い。ただこの設定で話が進んでいくとどうなるのかという着地には特に工夫が感じられずそのまま進んでいく。そして圧倒的な敵に勝つロジックも「本気で怒って実力出した」だけ(笑)。 アレスおじさんの意外なキャラとかはまあまあ面白いのだが、本性現わしたら髪型変えるとかなんか神様っぽい演出しても良かったんじゃね?鎧着ても顔がちょび髭の貧相な親父のままではなあ。そしてガル・ガドットは最初からうっすら化粧していてどんな時でも髪が乱れないし埃も付かない。こういうのは背景にグリーンバックの存在を感じてしまう。 ここまで荒唐無稽なキャラを実写化して他のシリーズと同世界にするのなら映像の「現実感」にはもうちょっとこだわってもいいんじゃないだろうか。そしてあのかっこいいテーマ曲を劇中でもっと使ってほしかった。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-12-18 00:31:14)(良:1票) |
13. ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
《ネタバレ》 原作未読。一作目から観ているが今回はどうも後味が悪い。いずれも原作のストーリーが原因のようなので気持ちよく叩くことすらできないときた。まず終始キモくてウザいアンブリッジ先生。物語の大半はこの人との戦いだ。見えない部屋の壁をブっ飛ばすパワーをお持ちなのにケンタウロスの集団にあっさり連行される。おいおい奴らはあんたを弓で射殺そうとしてたんだぞ?よく五体満足で帰ってこられたな。五体だけは無事?それはちょっとまずいな。児童文学だし。おまけにこんなにウザいくせに最終的な本筋にはからまない。このピンクの障害物を赤の他人に始末してもらってからようやく本来の戦いが始まる。その死闘(ほとんど人任せだが)が終わると孤独に追い詰められていたハリーが仲間の大切さを思い出す。いい話だ。でチョウは?彼女は捕まって自白剤で吐かされたんだぞ?ちゃんとスネイプ先生が劇中で教えてくれる。その前に2人で話くらいするだろ?なんかお前、見損なったぞ。ロンの双子の兄貴達が校庭にバイクで乱入する不良よろしく暴れ回るシーンはとても良かった。ラスト近くからは大人の魔道士同士の闘いが観られる。光る杖を剣のように振るったり雷みたいのを出したり物を操ってぶつけたりと格好良い。違う映画みたいだが。全体に一見さんお断りのこのシリーズ、それはアリだとは思うが話はもう少し何とかならなかったものか。特にオバハンをようやく退場させてから「ロンドン」の「光る玉が陳列されている部屋」に行かなきゃいけない理由がよく分からない。しかし今更ながら若い役者達の演技は素晴らしい。冴えない奴は本当に冴えない感じがいい。可愛いルーナと暴走族兄弟に+1。 [DVD(字幕)] 5点(2010-03-26 01:38:51)(良:1票) |
14. 故郷への長い道/スター・トレック4
《ネタバレ》 SFは基本的に現在の延長線上にあるので現代劇よりもむしろその時代性を反映しすぎるということがある。この映画もそういうところがあるが、スター・トレックは昔からその困難な未来予測SFというミッションに真正面から取り組んでいるシリーズだ。 23世紀の世界と20世紀のギャップを描くのはオリジナルTVシリーズの得意技だが、この映画ではタイム・トラベルを扱いながらタイム・パラドックスを避けるシナリオの妙を見せる(完全に避けきれてはいない点はご愛嬌)。珍しくチェコフにスポットライトが当たるが冷戦時代のこのソ連ネタが面白い。キャストはみな年齢を経てもろ中年集団ではあるが年齢なりの輝きを放っている。ドタバタコメディのくだりもオリジナルTVシリーズによく見られたパターンだが、これも時代変化に対してスタトレが本来持つ社会的洞察があってこそだ。 かようにスタトレらしいスタトレな本作だが物足りなさは残る。それは映画版1作目にあったような哲学性と芸術性だ。スター・トレックという作品はただでもシリアスな成立が難しいSFというジャンルに哲学性と芸術性を持ち込むことでことで別格の存在になった。このシリーズは単なるエンタメではない。クジラと交信を試みて地球を危機に陥れる謎の存在、あれこそがスタトレ世界のテーマになるはずなのだが、この映画では単なる「設定役」としてだけ現れ消えていき、結論をクジラ・エコ・スピリチュアリズムに丸投げしてしまった。 音楽は最初のファンファーレ以外はTVシリーズとも映画シリーズとも違う本作オリジナル。楽曲自体は素晴らしいのだがシリーズにはシリーズの音楽が必要と改めて思わされた。良い音楽だけにもったいない。字幕で観た後で吹き替え版も観たが、よく言われるようにスタトレは吹き替えが良い。まず字幕版はSF設定やストーリーに必要な情報量が少なすぎる。吹き替え版は矢島正明のカークが圧倒的なだけでなく他のキャストも力が入っている。正直力入り過ぎで全体的にくどめだが、元が薄すぎるので素直に感動したければ吹替版だ。 [DVD(字幕)] 7点(2017-05-28 00:06:47)(良:1票) |
15. スター・トレック/イントゥ・ダークネス
《ネタバレ》 この映画は評判良くないようだが、それ原因はもちろん人気作である『カーンの逆襲』のプロットの安易な流用にある。で、僕は『逆襲』には大いに不満があったので多少溜飲は下がった(笑)。ここでのカーンはちゃんと強く賢く狡く冷酷で勇気があって熱いというスーパー人類キャラを表現している。少なくとも旧シリーズの胸筋見せて歩くだけの奴よりは強そうに見える。 しかしお話の方はもう滅茶苦茶だ。シーン作りのためだけのプロット、完全に運だけで助かる危機一髪イベント、フラフラと定まらないSF設定・・・etc。あとまたニモイが出てきたが本筋に意味あるか?ん? 『逆襲』終盤の話を裏返しにするのはいかにJ・J・エイブラムズがウケ狙いしか考えていないとしてもやりすぎだ。後の話と辻褄合うのか?パラレルワールド?勘弁してくれ。 JJ版スター・トレックではカークとウフーラは完全に新キャラだと考えたほうが良い。対してスポック、マッコイ、チェコフは一応元キャラを踏襲していてTOSの延長線にいる。ただし台詞はどれもヌルくてどうしようもない。ちょっと気が利いてるように聞こえる台詞はたいていTOSからの流用だ。だいたいやな、「人物の有能さを表現するために次のシーンを予告させる」なんてのはもう安直すぎるが、前作からこれが何度も何度も出てくる。最近は漫画ですらあまり見かけないぞ。 というわけで観てる間は面白いが観終わると突っ込み所ばかり思い出す「おもろうて、やがてハァ?」ないつものJJ映画だが、『カーンの逆襲』に逆襲かましてくれたということで6点くらいくれてやろうじゃないか。分かったらJJアイス買ってこい。 [インターネット(字幕)] 6点(2017-08-08 00:39:39)(良:1票) |
16. 惑星ソラリス
《ネタバレ》 こう言うとタルコフスキーは草葉の陰で激怒するかもしれないが、この映画の魅力の大半はハリー役のナタリア・ボンダルチュクが負っている。容姿の美しさもさることながら「地球外生命体によって造られた人間のコピー」という難役を完璧に演じ切っている。赤ん坊のように天真爛漫で聞き分けのない登場序盤、思春期のように不器用な中盤、生の感情を爆発させ、突然悟る終盤。 ハリーは男の記憶から造られた女で、「男の夢」を具現化している。この映画に惹かれる人の67%(当社比)はハリーに惹かれている。おれもソラリスに行ってハリーみたいな女が欲しい。タルコフスキーはそれに途中で気付いてラストシーンで慌てて否定するがもう遅い。みんなハリーの虜。 終始陰鬱でアンハッピーエンドな作品にもかかわらず不思議と後味は悪くない。タルコフスキーはSF要素を邪魔と感じていたらしく、SF映画と思って観るとかなりのおあずけ感を食らう。映像的暗喩に次ぐ暗喩、特に前半は暗喩による伏線なので一度観終わってからでないと意味がわからない。この映画は何度か見て初めて真価が分かる作品なのだろう。幸い美しいハリーが待っていてくれる。 [DVD(字幕)] 8点(2015-09-24 21:43:28)(良:1票) |
17. 銀河ヒッチハイク・ガイド(2005)
くそーこんなバカ映画で感動してしまうとは(笑)。もっとB級臭い雑な感じかと思っていたら映像は美しいし音楽は素晴らしい(こんな話にシリアスで立派な音楽を付けること自体がネタなのかもしれないが)し、ゾーイ・デシャネルは可愛いし、あとなんと言ってもあの愚かで無様なヴォゴン人の造形!実物のパペットなんですと?「役者にとっても実物がある方が演じやすい」ってそりゃそうでしょうよ。「ガイド」が写す(設定)のアニメーションもセンスがいい。あらすじだけ読んだらただただ滅茶苦茶でバカバカしいだけのこの世界、映画を観てすごく気に入ってしまった。 [DVD(字幕)] 9点(2011-05-29 23:57:37)(良:1票) |
18. アベンジャーズ/エンドゲーム
《ネタバレ》 前作の終わりからどうなるのかと思ったら始まってから超展開に次ぐ超展開。先が読めないと言うより、まっすぐ読める先の先を行く展開。終わってしまえば前作終わりの超展開は増えすぎた人員の整理だったのかと思えるが、急に仲間が減って絶望の中で細々と暮らす寂寥感もいい。そのぶん全員集合のカタルシスも文句なしにある。「合戦」の最中に止まって会話しすぎという問題はあるが。 心身ともに憔悴したスターク、自堕落な生活でデブになったソーの描写はすごい(スタークは回復するがソーは最後までデブのままかよ!)。気に入ったのはソーママがロケットにとても可愛く挨拶するところ。こういうディテールはどこまでもすごく良く出来てる。 ここまで広げまくった話をまとめたのは一つの偉業ではないだろうか。そりゃ設定はおかしいが、もはやそれを言う段階は超えている。有無を言わせぬ物量もある。ナターシャとバートンのあれは意味分からなかったが。(お前らいつの間に?) 終わってみれば無理がある話だなーと思わなくもないが果汁と砂糖気とアルコール分で観てる間は存分に酔わせてくれる。そしてサイドストーリー以外にもう直接の続編は作らないよ、と宣言する終わり方。ラストシーンは長いがこれは仕方ない。ちゃんと終わらせるのは大事。 [ビデオ(字幕)] 8点(2021-08-15 22:57:10)(良:1票) |
19. リオ・ブラボー
子供の頃TVで観てすごく面白かった記憶がある。のでDVD買って観てみました。長ぇ(笑)。洋画劇場の長さで調度良かったんだな。登場キャラがみんな凄く魅力的なのだが、つくり手がキャラ萌えに走るとどうしても冗長になる。だから各シーンに素直に浸れるタイプか、もしくは「このシーンはどういう意味か」と考えるタイプで評価が別れるのだろう。僕は後者なのでちょっと中身が薄い印象を持った。 ディーン・マーティンとリッキー・ネルソンが歌うシーンは上手すぎ。この二人が音楽も本職だと知らなかったら他の歌手の吹き替えだと思うだろう。ぼくもしらなかったのでそうおもいました。ヒロインのアンジー・ディキンソンは後光が射す美しさ。酔っ払った演技がとてもいい。各脇役陣の演技が光ってるので正直ジョン・ウェインが大根気味に見えるほど。個人的に気に入ったのは宿屋のカルロス。お前が何であんな美人の嫁もらえるんだよ! [DVD(字幕)] 6点(2016-01-03 23:32:12)(笑:1票) |
20. ハリー・ポッターと謎のプリンス
《ネタバレ》 原作未読。ストレス満載だった前作からするとこれはかなり気持ちよく鑑賞できた。これまでハリーの敵役、と見せかけて実は単なる道化に過ぎなかったドラコ・マルフォイがいよいよ前面に立ちふさがる。親父があれだったしな。しかしこいつが闇の一味入りを拒めないのも、それでいて悪に徹しきれないのももう分かってる。頑張れマルフォイ!白い鳥をタンスに入れたり出したり死んでて嘆き悲しんだりする場面は意味がわからないがまあいつものことだ。「原作読んでたら分かるんだな」と思って次に進もう。ハリーとハリーよりは第二次性徴が早そうなロンの間にはハーマイオニーのようなちゃんとした言葉はない。優しい気遣いとかもそんなにない。ただ粗っぽい信頼だけがある。男のガキ同士ってこういうもんだよ。よく分かってるな。ジニーの配役は第一作の時点ではまさかこういう展開になると思っていなかったのだろう。地味だが意志が強そうな感じはいい。ハリーは普通に可愛い子には興味なさそうだしな。ハーマイオニーもそんなとこあるな。だからあいつらくっつかないのか。久々に自分の「あの時代」に引き戻されるハリポタを楽しめたので点数高め。 [DVD(字幕)] 7点(2010-05-06 15:02:55)(良:1票) |