1. 秋刀魚の味(1962)
《ネタバレ》 まず、岩下志麻が、綺麗だ。 あんな24歳は絶滅してしまっただろうな。 球場を写さなくても、 白いハンドバックを出さなくても、 手に入れたクラブでゴルフをさせなくても、 冷蔵庫をど~んと見せなくても、 泣き顔をアップで撮らなくても、 見合い相手が出て来なくても、 「今までお世話になりました」と言わせなくても、 結婚式を写さなくても、 披露宴を写さなくても、 いいのです。 ということを気付くべきだ。 特に今の監督達、そして監督の周りにいる人達は。 説明に頼らず 人格表現に徹する この美しさ。 小津安二郎に乾杯!! [DVD(字幕)] 10点(2005-11-01 01:59:09)(良:4票) |
2. 七人の侍
《ネタバレ》 まず、役者達の「風貌」を観よ!! それだけでも、そこらへんの「映画」(と同じ形態をしているために、そう呼ばれるもの)との「違い」がわかると思うのですよ。 「風貌」という言葉、 それにふさわしい役者は果たして今何人存在するか? 風貌という言葉がようわからんという方、 土門拳の写真集「風貌」を、立ち読みでもいいからご覧なさい!! 現在、背中で演技できる役者は、果たして何人存在する? 刀を差して、腰をしゃんとして歩ける者は、今何処へいった? また、一人一人の存在感も圧倒的。 極端な話、役者は大根だっていいんです。圧倒的な「華」や、存在感があれば。 ジョン・ウェインは大根で有名だった。しかし何故ヒーローたり得るのか? 圧倒的な存在感だ。 さて、私はご多分に漏れず、志村さんと宮口さんにやられました。 あと 「子供は、大人扱いしてやればよく働く」 という鋭い指摘にも!! ちなみに「荒野の七人」について、黒澤監督は、 ガンマンって時点で違うんだけどなあ、ガンマンはガンマンだから。 元保安官とかならわかるんだけど というような事を仰っております。ご参考までに。 さて、 長い... 音声が... 古い... 白黒.... アクションシーンがCGだったら..... と仰る方が多いですが、 心からこの状況を憂います。 便利になった世の中の悪い面ですね。 去勢されすぎている。 一生、 アルバムを一枚通して熱心に聴くこともなく、 長編小説を手に取ることもなく、 オペラを観ることもなく(なにもこちとら詳しくねえし、オペラが高尚で他が下劣だってんじゃありませんや!)、 たまに意を決して手に取ってみても、 物語や映像、セリフや佇まいを「味わう」前に時間に耐えられない人が増えている。 前にもそのような方はおられたでしょう。 しかし、増えている。 哀しむべきことです。 供給する側にも大いに問題はありますが。 余談ですが、加東大介さんは、様々な名作にご出演ですね。 本作、秋刀魚の味から社長シリーズまで! [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-01 03:11:39)(良:4票) |
3. ラスト サムライ
飛行機の中で観ました。 感想。眠くはならないです。それ以上のものはございません。 映画には、いくら「突っ込みどころ」があってもいいと思います。 それをもってあまりある魅力があれば。 又,製作陣が最初に提示した「約束の線」を自ら超えなければ。 しかし... 例えば、黒澤明、宮崎駿、武満徹,小沢征爾等のインタビュー/対談、スタッフの話、等をお読み下さい。 作る側の心構え,最低ラインというもののご参考になるでしょう。 「突っ込みどころ満載だが、魅力溢れる作品」の代表格として、「太陽を盗んだ男」を挙げたい。 特典DVDもご覧になれば更に「なるほど」と思われるでしょう。 勿論私にとって、そうした資料は「後付け」のもので、 彼らの作品はそんなことを知らなくても楽しめる、とてつもないパワーを持った作品です。 その源泉を知りたくて、その一部に触れて、「成る程!」というわけです。 この作品からはそうしたパワーが感じられない。 何に対してであれ,感動できる心は素晴らしい。 しかし、客が育たねば,映画の質はますます衰退します。 同時に、提供する側の心構えや「ここでOK」というラインが下がれば,作られるものの質も下がる。 そうした作品が全体に占める割合が上がれば、全体が薄まる。 客はその中で相対的な判断を行う。 そしてその中の作品や監督を「目標」にしてプロになる者。 そして彼らの「目標」は「目標」で「最低基準」でないために、さらに質が低下したりする。 料理同様,芸術にも「口に合う,合わない」という要素は存在する。 例えばベジタリアンであっても、近江牛というものは良質のものなのだ、と認める心は持ち合わせておきたい。 この映画がここまで絶賛されてしまうのは、私たち客側にも問題あるのでしょう。 トム・クルーズは現代の大スターであり、ハリウッドの中で最もパワフルな人物の一人です。 彼に「ここでOK」と思わせてはいけない。もう一押し,ふた押しさせるのは、観客の眼です。 「ここで大丈夫と思ったら、もう一押し。それが映画だよ」 と その昔、黒澤明は言われたそうです。 このような現象は、音楽界、マンガ界においても非常に顕著なものですが。 [ビデオ(字幕)] 2点(2005-11-01 01:30:12)(良:3票) |
4. カイロの紫のバラ
《ネタバレ》 ラストシーンに似た様な経験を、音楽を通じてした事があります。 彼女と別れたその日、仕事場で触れた音楽が素晴らしく、 微笑む事が出来たのですよ これって、芸術や娯楽の素晴らしさの中の一つ、ですよね。 また、「その場面」がアステアのダンスと歌、というのも素晴らしい、です。 [ビデオ(字幕)] 9点(2005-11-01 05:07:42)(良:2票) |
5. ルパン三世 カリオストロの城
私がラッキーだと思うのは、初めて観たとき、「これは宮崎駿で云々..」「ルパン斯くあるべき」という先入観無しでいられた事ですね。 今から初めてご覧になられる方々は、それらのうんちくが邪魔してしまうのでしょうね。 アニメどうこうではなく、エンターテイメントとして絶品です。 本当に彼らは「気持のいい連中」だし。 塔の中で、あの有名な万国旗のシーン。 素直に思います「こりゃ、モテるわなあ」 [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-01 09:08:42)(良:2票) |
6. 血と骨
この、じっくりと腰を据えないだらけの時代に、敢えてよく作ったとは思います。 田畑智子ら俳優陣が素晴らしい演技を見せる中、 鈴木京香だけが圧倒的にダメダメでしたが(特に老けてから)、 あれで主演女優賞を取ってしまうあたり、日本アカデミー賞とやらの救いようのない浅さが.... 彼女のスケジュールを待ったという話も聴きますが、アリなんですか?監督。 [映画館(字幕)] 6点(2005-11-01 11:59:32)(良:1票) |
7. プライベート・ライアン
《ネタバレ》 「引く描写」「描かないで語る」という事ができないんですね。 戦争の悲惨さ、哀しさ、矛盾、 それらを抱えて自分の中でなんとか消化して、あの戦場で前に進む、人を殺すということ。 それぞれの人間に語られないストーリーがある、ということ。 親の哀しみ、普通に生きるということの静かな輝き、はわかる、でしょ。 そりゃ。描写わかりやすいもの。ねえ。 で? と穿った見方をせずにいられません。 ドイツ兵の人間性が描かれないのはいわずもがな(マストではないにしても)、 はいはい、そこは差し引きましょう。でもね、、、 指令出す上層部からして「いい人」で、 あの時点で醒める... いっくら偽善も善である場合もある、としてもだなあ。 で、あの星条旗... 繰り返しますが、「引く描写」「描かないで語る」という事ができないんですね。 スピルバーグ先生、もう一度、小津を見直して下さい。 監督違うが、「ブエナビスタ~」のラスト、ライ・クーダーで画が止まるとこ思い出した。 (メンバー紹介最後から二番めがライの息子) 笑。 厚顔無恥。ヴェンダースの指示なのか?小津大好きじゃないのか! これも監督違いますが「パールハーバー」に世界一感動する日本の観客や、 ユダヤにはいいんでしょう。 「客=大衆に合わせた」んでしょう。 観客はそこまで馬鹿じゃないといいのだが、結構じっくり去勢されてるからなあ。 彼の映画は、例えばビートルズの歌の域までは行けない(彼らにも「差別」は存在したりするけど)。 スピルバーグという名に期待しなくなってスゴ~く長い時間が経っています。 あ、小学校のときだけか。子供騙し? 「リアル」な戦闘場面云々もねえ。そうなんだろうけど... 金かけて「リアル」を見せようとするだけの、 「入り口と出口が一緒」の映画、が世に溢れたが為に CGと特殊メイクに毒されている方々~! 例えば、「蜘蛛の巣城」ね。 あれ、本物の矢だよ。手だれを雇って、至近距離からびゅんびゅん放って撮ったんだよ。 本物の弾丸で撃てるわけないだろ、って話じゃないよ 笑 そういう議論じゃない 爆 世間的にパワフル、とされている人は、 責任と自覚を持って、もっとスゴい作品を作ってよ。 客を驚かせてよ という、いち客の無責任さから、この点数。 さもないと、どんどん衰退する。 実はもっと深い、の?ひょっとして 笑 [DVD(字幕)] 2点(2005-11-02 06:09:39)(良:1票) |
8. シェルタリング・スカイ
これに関しては、淀長さんに感謝です。 芸術家同士が自分たちの愛を試すために、若い男を連れて旅に出る。 男があっけなく死んだ後、女の喪失感。 哀しい、哀しすぎる。 失って改めて気付くパートナーの大切さ。 そして心にぽっかりと空いた穴。 それがあまりにも深いが故に、女の人生はあのような展開に... 圧倒的に美しい映像とともに、哀しさが迫ってきます。 いや、悲しみを伴えばこその、あの美しさなのでしょう。 当時淀長さんはとある女性誌にこう書きました。 「今付き合っている男を連れて行って、退屈だと言ったらその男とは別れなさい」 そんな文章もあって、見栄も張りつつ一緒に映画館に足を運びました。 見栄も時には新しい芸術との出会いのきっかけか。 淀長さんありがとう。 [映画館(字幕)] 9点(2005-11-01 06:27:03)(良:1票) |
9. 太陽を盗んだ男
《ネタバレ》 最高に格好いいですねえ。 「突っ込みどころあっても、それを補うパワーが勝った」といういい例です。 後日DVDを買いまして、撮影時のエピソードや監督のインタビュー等が入った、 ボーナス・ディスクの内容がまた非常に面白く、 「だからこんなに作品のパワーがあるんだな」と納得するとともに、 「モノを作るってのは、こういうことだよなあ」と思わされました。 幾つか挙げます。 許可を取らず(取れず)に、バスで皇居に突っ込んだ(いついつごろにバスが一台突っ込んできますから、どうか撃たないで下さい。と言って)~撮影がキツく、逮捕された方が楽と、多くのスタッフが志願した。 許可を取らず(取れず)に、渋谷のデパートの屋上から札をばらまいた(本物も用意した、大きめの偽物を撒いた。ちなみに偽モノでももちろん犯罪)。 何台か車を借りて運転させて道を塞ぎ、高速道路が空いたところで、カーチェイスを撮影した(しかも、頼んだ巨大トラックが来ないで、小さい車が来て、うしろから丸見えだった 爆)。 あのロープ、どっから来てるんだろうなあ フッフッフ(監督)。 あの渋谷のシーンさあ、途中から、銀座なんだよねえ ハッハッハ(監督)。 予算がなくてカーチェイスがしょぼくなったが、アメリカで、「面白いけれどカーチェイスがC級」と言われ、意地で「バカヤロウ、俺はC級のカーチェイスが好きなんだ」と言った 爆)。 等々 機会があればご覧あれ [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-01 03:47:15)(良:1票) |