1. ドライヴ(2011)
《ネタバレ》 好き嫌いの分かれる映画なのでしょうね。わたしはライアン・ゴズリングがこんなシリアスな演技ができるなんて思ってもいなくて、どんどん惹かれました。ちょっと「タクシードライバー」を思わせるところもあって、タランティーノや北野を思わせるところもあって、でも映画全体に流れる空気感はまた全然違っていて、今までにない映画だと思う。黒にスウィートピンクの筆記体で文字が出るのもなんかすごくいい。わたしが一番好きなシーンは、スーパーから出てきたライアン・ゴズリングがスーパーの紙袋を車の上において振り返って歩きはじめる場面。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-04-25 10:23:33)(良:3票) |
2. レネットとミラベル 四つの冒険
《ネタバレ》 映画とは全く不思議なもので、観たあとすぐは興奮してよかった!と思っても日がたつにつれだんだん評価が落ちていくものと、観たときはそんなでもなかったのに自分のなかでどんどん存在が大きくなっていくものがある。この映画はまさに後者の典型。この映画はレネット(ジョエル・ミケル)という田舎育ちの少女とミラベル(ジェシカ・フォルド)というパリジェンヌの少女という対照的なふたりの物語です。レネットはフランス語で「りんご」、ミラベルは「あんず」という意味で、いってみれば、都会のネズミと田舎のネズミ的な構図。もっとも素晴らしいのは第一話の「青い時間」。まぎれもなくわたしがロメールの虜となった決定的作品。その作品は30分にも満たないのに極上の短編小説のような香りを漂わせている。「夜と朝の間には完全な沈黙が存在するのよ」と言い張るレネットに、それならといっしょに朝を迎えることを約束するミラベル。しかし翌朝、その沈黙が訪れるべき瞬間に車が通り、「沈黙」はかき消されてしまう。激しく泣きじゃくるレネットにミラベルはもう一晩泊まることを約束する。早朝、そっとひとりでベッドを抜け出すミラベル。そしていつの間にか彼女のあとにやってくるレネット。「青い時間」にミラベルがレネットを制して手をのばす場面は、映画史上最高の名場面。このときわたしはなぜかいつも泣いてしまいます。もう何度も観ているにもかかわらず。 [DVD(字幕)] 10点(2006-12-16 23:28:07)(良:2票) |
3. ゲティ家の身代金
《ネタバレ》 クリストファープラマーとロマンデュリスに華があり、ウォールバーグはミスキャストな感じだった。ミッシェルウィリアムズは知的で賢明な母親役がすごくうまくて、ファッションもスタイルもとてもすてきだった。ケビンスペイシーのセクハラ問題で撮り直しとなったいわくつきの作品だけど、わたしはプラマーでないスペイシーのジャンポールゲティが想像できないくらいだった。それくらいクリストファープラマーにはさすがと思わされた。しかしお金持ちの人の思考回路は全然理解できませんね。孫が誘拐されているのに身代金は支払いは拒否、そのくせ高価な美術品は買いあさる。だんだんと周囲の人が離れていくというのもよくわかるし、その後のゲティの一家のことをみても莫大な財産は人を幸せにするとは限らないんだなぁと、なんだか凡庸な感想をいだいてしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-04-02 10:56:52)(良:2票) |
4. プラダを着た悪魔
《ネタバレ》 よくあるストーリーなんだけれども、今までと全く違った映画という印象を受けました。安易なラブストーリーなど絡めず、人生に向き合う人間をそれぞれに描いていて秀作だと思います。ラストシーンにはほんとうにシビレました。メリル・ストリープ健在…というか、天才女優とわかっていてなお期待を裏切る素晴らしい演技。手をふるアンディにただじっと見つめ返すミランダ(手をふりかえしたら×)、車に乗りこみ微笑む(しかしそのままフェイドアウトしたら×)、そしていつもの仏頂面にもどり「go( 行って)」(運転手に愛想良くしたら×)。もう最高です。この映画もミランダ同様、完璧をめざした映画だと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2007-05-23 16:56:16)(良:1票) |
5. ハプニング
《ネタバレ》 観るつもりはなくて、でもやっぱりシャマラン監督だしってんで観はじめたら、やっぱりやめられなくて最後まで観てしまいました。怖さも普通のホラー映画とは違っていた。人間が無感情にトラクターに身を投げ出していくところとか、ためらいもなく車を激突させる場面とか、ずらっと首を吊っている風景とか、もう何か見てはいけないものを見せられているのに、映像は爽やかというか、木が揺れて不気味なはずなのにどこかきれいで、この監督の普通でない感じ方に感化されるというか、不思議な映画でした。こんなにひっぱっておいて、ちゃんとオチはあるのかと思いながら観ていたら、やっぱりオチはなく、曖昧なエンディングだったけれども、それはそれでいいと思った。ズーイー・デシャネルがすごくきれい。個人的にはエリオットが一生懸命木に話しかけていて、途中でフェイクのビニールの葉だと気づくシーンがすごくすきです。ツボにはまりました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-10-12 11:41:23)(良:1票) |
6. リンカーン弁護士
《ネタバレ》 マイクル・コナリーという作家は知らなかったけれども、この映画を観て原作を買いました。リンカーン弁護士、シリーズでやってほしい。登場人物みんなキャラがたっていて、エンターテイメントだけれど後味がいいというか、まだまだ観たいと思う映画でした。運転手のアールも助手のフランクも元妻のマギーも、検事、刑事、女性の助手、情報屋DJにいたるまでものすごく存在感がある。容疑者のライアン・フィリップも不穏な感じがよかった。後の出演作に影響しないかしらと心配してしまった。続けて2回観てしまいました。個人的にはマリサ・トメイがかっこかわいくてすき。こういう映画、ありそうでなかなかお目にかかれないのでわたしには貴重な映画です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-24 19:18:15)(良:1票) |
7. まあだだよ
《ネタバレ》 黒澤監督はこれが遺作だともちろんわかって撮っていたのだろう。題名が題名だもの。人生の最後にきて内田百閒。それでも、天下の黒澤監督をもってしても、内田百閒の魅力を描くのは難しすぎたのかもしれない。内田百閒は難しいなあ。どうしてまたあんなに頑固で我儘で、鬼のような怖い顔をした子どものような男をみな愛するのであろうか。内田百閒を読破してからこの映画を観たら、楽しくて楽しくて仕方ないだろう。だがそれでは映画としては成立しているとはいえない。ただノラが失踪して、先生が捜してくれた皆に礼を言う場面。先生の言葉に奥さんが思わず泣き出すシーンが秀逸だった。こんな繊細な感情を私は言葉では説明できない。このような感情を、果たして、たとえばアメリカの人は理解できるのかな?と思った。やはり黒澤…と寒気がした。マニア向けの映画ということで、この点数を。 [DVD(邦画)] 9点(2008-02-14 18:58:34)(良:1票) |
8. オリエント急行殺人事件(2017)
アガサ・クリスティのファンなので点が甘くなっているのかもしれません。今までにない、滑稽な小男ではない、ちょっとカッコイイポアロでした。リンドバーグに捧げられたような映画で、ある意味アガサ・クリスティの真意を汲んだと言っていいかもしれないと思う。1974年版のオリエントと比べられるのは仕方のないことだけれども、遜色のない映画に仕上がっていると思います。オリエント急行の殺人はわたしが知っているだけでも、シドニー・ルメットの映画、デイビット・スーシェのTV映画、今回のケネス・ブラナー、日本でも三谷幸喜がTVで特別ドラマにしている。よほど監督が惹きつけられるものがあるのだと思う。そしてそれぞれに最後の解釈が違っているのは興味深く、アガサ・クリスティが素晴らしい作家であることの証明のような気がする。初めて読んだときは、こんなのありか!?と思ったのに。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-09-30 08:14:59)(良:1票) |
9. シンデレラマン
本当に本当にハリウッドらしい映画なんだけど、ラッセル・クロウの嫌いなわたしでもこればかりは感服いたしました。試合のシーンでは柄にもなく熱くなってしまったし、月並みな言い方だけど元気をもらいました。やはり一生懸命生きているひとの勝ちですね。アメリカンドリームといえばそうなのだけれど、それよりもブラドッグのまっすぐな生き方に共感した。ポール・ジアマッティが出色。どこかで見た顔だと思ったら「アメリカン・スプレンダー」のひとなんですね。これから要チェックの俳優さんです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-02-28 22:05:22)(良:1票) |
10. タクシードライバー(1976)
《ネタバレ》 もう30年以上前の映画だけれども、今観ても少しも色褪せてはいない。俳優、映像、音楽、脚本、演出。すべてがこのように才能を開花させている映画はやはり珍しいと思う。とはいうものの、当時観たときは(´78)わたしにとっては何がなんだかわからない映画であった。全然先の読めない映画であったし、理解不能な映画であった。にもかかわらず、ものすごくすきな映画であった。こうして年月がたってみると、やはり自分のベスト1は「タクシードライバー」だなと思う。今観てみると、きちんと計算された脚本であることがよくわかる。マーチン・スコセッシもこの映画を超える映画はやはり撮っていないと思う(「ディパーテッド」なんてあんなの…)。ベッツィを自分のタクシーに乗せていくら?と訊かれ、ガチャッとメーターを倒すラストシーンにはいつも惚れ惚れする。ベッツィもふり返らずに行ってしまう。この映画でロバート・デ・ニーロがすきになって、このあと彼の映画をずっと追いかけたが、いつもどこかに違和感がつきまとった。自分はロバート・デ・ニーロをすきなのではなくて、トラビスがすきなのだと10年以上もたってから気がついた。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2008-05-21 10:31:49)(良:1票) |
11. 運命じゃない人
もうほんとに痛快でした。日本映画も捨てたもんじゃないぞ!こういう脚本・監督がでてくるんだからまだまだやれるんじゃないでしょうか? 最近ではむしろメジャーな映画にがっかりさせられることの方が多いような気がする。。。端役のキャラクターなど隅々まで気持ちが行き届いた作品。ラストがよくって久々に観てよかった~と心から思いました。監督・スタッフ・出演者の方々、すべてに感謝! [CS・衛星(邦画)] 9点(2006-08-28 16:28:04)(良:1票) |
12. 人のセックスを笑うな
《ネタバレ》 この映画の登場人物の中で誰が好きかと言われたら、間違いなく堂本です。自分の親友を好きな女の子をずっと想っている彼のことが映画の間中ずっと気になった。ずっとずっと待ち続けて、最後にえんちゃんにキスをする堂本のシーンを観て、とても幸せな気分になりました。松山ケンイチ目当てで観たのだけれど、ユリとみるめのことは途中からどうでもよくなって、サイドストーリーの方が勝ってる気がした。この映画はちょっとしたシーン・シーンが秀逸で、エリック・ロメールを思わせる覗き見的な場面が多くて、すごくキュートなしかし誰も見ていない知られない出来事を自分だけが目撃しているという錯覚に陥らせる、私好みな映画です。永作さんがもう少しがんばってくれればもっと素晴らしい映画になったと思う。 [DVD(邦画)] 7点(2008-12-04 09:33:30)(良:1票) |
13. 恋人までの距離(ディスタンス)
《ネタバレ》 なんでまたこんな邦題をつけちゃったのかわかりませんが、原題は「Before Sunrise」。9年後に「Before Sunset」という続編をつくっていて、それはそのまま「ビフォア・サンセット」となっている。これじゃ題名を見ただけじゃ続編とはわからないじゃないか~なんと不親切な!たまたまこっちを先に観たからよかったようなものの、先に「ビフォア・サンセット」を観てしまったらどうしてくれるんだ~という憤りは別として、わたしはこの映画、すごくすきです。イーサン・ホーク、ジュリー・デルビー(この女優さんはこの映画が初見)のふたりがたまたま列車のなかで知り合い、飛行機を待つ朝までふたりきりでウィーンの街を散策するというお話。とにかく会話会話の連続でここまで気持ちをそらさず、一気にみせてしまうリンクレイター監督の手腕に脱帽。ジュリー・デルビーさんは「トリコロール・白の愛」にもでているひとで、男を狂わす魔性の女を演じていたけれど、独特の美しさをもつ女優さんです。というか、まぁはっきりいうとわたし好みなのだ。繊細でさりげなくて、それでいて確固とした自我を感じさせる。続編はもちろん観ます。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2006-04-29 09:54:28)(良:1票) |
14. レイニーデイ・イン・ニューヨーク
《ネタバレ》 アメリカでは劇場公開されなかった本作。そのようなスキャンダルはわきにおいて観てみました。この年齢でこんな映画を撮ってしまうなんてやっぱり凄い。あちこちにウディアレンの分身らしき人物が配置されているけど、いちばん驚いたのはギャツビーの母親でした。彼女のなかにウディアレンの本音が垣間見える気がした。ギャツビーのチェットベイカーの歌のピアノの弾き語りなどジャズ好きにはたまらないシーンだと思う。すれ違いばかりの恋人同士が最後にハッピーエンドになるラヴストーリーと思いきや、馬車の中でコールポーターのナイト&デイの歌詞を口ずさむギャツビーに「シェイクスピアね」と答えるアシュレー、それを聞いてギャツビーが馬車から降りるどんでん返し。わたしはなぜかすごく泣いてしまって、いままでは「アパートの鍵かします」を自分のベストラヴストーリー映画と思ってきたけど、それに負けないくらい好きだと思った。このスキャンダルがなかったら10点をつけていたかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-02-28 09:57:53)(良:1票) |
15. モンスター上司
《ネタバレ》 脇役陣が豪華なのでうっかり観てしまった映画。コリン・ファレルは最後まで気づかなかった。なんということ。ケビン・スペイシーが嫌味な上司をとことん演じててよかった。しかしそのせいか、主人公3人の存在感がうすめられてしまったというか、あまり魅力を感じなかった。特にデイル。ジェニファー・アニストンに迫られて断る人はいないでしょう。ドタバタコメディで楽しいことは楽しいんだけど、うーん、うまく言えないけど、あまりおすすめはしません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-11-08 11:31:07)(良:1票) |
16. ナイル殺人事件(2020)
《ネタバレ》 ずっと観たかったナイル殺人事件をレンタルして観た。 思ったよりも薄味?豪華さをうたっていたけど、ゴージャス感がない。 以前の映画館で観たユスティノフのナイルの方がいいと思う。犯人役があのミアファーローだったし。なによりサイモン役の俳優さんがもっと適役だった。アーミーハマーは賢すぎる感じがする。 余計なストーリーがつけ加えられて、なんだかかえって興味をそがれていく感じがした。 犯人への感情移入ができなかった。リネットへの共感のほうが勝つ感じさえした。お金持ちで美人でそれでも本当には愛されない女性への。ケネスブラナーはなんかどこか間違っている気がする。 改変は人種問題にも気を使って変えているけど、なんだかとってつけたようだし、ミュージシャンではなく原作およびユスティノフ版では、オッタボーンはロマンス小説家であったが、それはそれなりに意味のある配役なのに考えがなさすぎると思われる。 [インターネット(字幕)] 4点(2022-08-20 09:15:10)(良:1票) |
17. ナポレオン・ダイナマイト
《ネタバレ》 話がどこにいくのか、何を表現しようとしているのか途中までまるでわからない映画です。今までに観たことのない映画でした。とにかくまずオープニングからしてクスクス笑っちゃいます。私は爆笑するってとこまではいかなかったけれど、一緒に観ていた高校生の息子はお腹を抱えて笑っていた。なんでなんだか、ものすごくハマッてしまったようです。やたら元気のいいおばあちゃんとか、32歳のひきこもりの兄さんとか、怪しげな叔父さんとか、もちろん本人のナポレオン、友達のペドロ、デビーなどなど全員キャラがたっていて、すごくよくできた映画だと思います。英語の発音とイントネーションがまた独特というか、ネガティヴな発音なのがなんか腹にきます。たるい感じの間もすごくいいです。観終わったあと気持ちがゆるゆるとハッピーになる映画ですね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2006-11-20 12:43:35)(良:1票) |
18. 花とアリス〈劇場版〉
《ネタバレ》 はっきりいってこの岩井俊二という監督はすきではなかった。たぶんすきになることはないだろうとずっと思っていた。だがこの作品に関してのみ脱帽せざるを得なかった。たぶん観ている人の視点は映画がすすむにつれ、知らずしらずアリスへと向けられていくと思う。そういうふうにつくられている。だから題名は「花とアリス」ではなく「アリス」としてもいいくらいだ。一見無邪気に見えるアリスが、いつまでも大人になりきれない母を支え、離れて暮らす父親を心の底で思慕し、幸せだった頃に帰りたいと願いながら、どうやってひとりで生きていくかを模索しもがいている。その心の澱のようなものが観ているわたしたちの心のなかにもつもってくる。だが最後にバレエを踊るアリスのなかにはその澱が微塵もない。ひたむきに踊る彼女の姿にただ澄みきった世界を感じるのみだ。そこに人生の秘密が隠されていると感じた。どんな状況・環境においても表現するものの心は何にも侵されない。エロいとかロリコンどうこうはこの映画に関してはどうでもいいと思いました。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2006-08-09 23:55:02)(良:1票) |
19. インソムニア
《ネタバレ》 「フォロウィング」「メメント」のあのクリストファー・ノーランが監督ということで期待値が大きすぎたのかもしれませんが、思いのほか評価が低いのにびっくりです。この映画を「メメント」を引きずって観ないでほしい。本当に素晴らしい映画だと思う。アル・パチーノの熱演、ウィリアムズの抑制された演技、ヒラリー・スワンクのみずみずしさ。映像の冷たい美しさ。そしてエンディングの素晴らしさ。「道をあやまるな」というドーマーの言葉に再び銃弾をしまいこむエリー。そのまま映像はフェイドアウトしてしまうけれども、彼女がそのあとどんな決断をしたのだろうかと思いをめぐらしてしまう。「俺達は似たもの同士」というフィンチの認識がまるで違っていることを私たちは思い知らされる。ただのサスペンス映画ではないと思います。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-01-26 18:52:40)(良:1票) |