1. 髪結いの亭主
アホか?この亭主は。働け! [DVD(字幕)] 4点(2007-09-03 16:26:23)(笑:4票) |
2. 風船
《ネタバレ》 『浮雲』と並び、名優、森雅之の男の魅力が存分に凝縮された名編。 ラストシーンの、娘である芦川いづみとの再会シーンは、鳥肌が立った。 表題の「風船」とは、男の生き様を表している。 同じ処に留まらず、常に新しきもの、人生の刺激を求め、自分の欲求に正直に人生を選択し、自らの意志で人生を切り拓いていく。 まさに、私自身の理想の生き様であり、私が思うところの男の生き様だ。 60に達しながらも、森雅之は惰性で生きることなく、やりたいことを貫き通す。 しかし、時にはそれは自分勝手な人生選択であり、妻や子供を振り回す。 それはそれで人間的欠点であるかもしれない。 いや、少なくとも、一般社会的観念からみれば、間違いなく無責任な男だ。 しかしながら、何かを選択する時、その背景には必ず何らかの犠牲というものが並存する。 その犠牲をあくまで認識した上で、敢えて森雅之は自分の希望する生き様を選択し、決行するのだ。 そういう男の生き様を徹底的に描いたという点では、本作はまさに男のための映画である。 だが、森雅之は誰よりも深く真剣に娘の幸せを願っている。 理屈で全てをうまく整理できるほど、人生や社会は単純ではない。 それを考えれば、結局のところ、自分が望む人生選択を行うことが一番大切なことではなかろうか。 子供は子供としてどう生きるかを自分自身で決めていけばいいし、妻も妻で自分が良いと思う生活を選択すればよい。 自分が良いと思って選択した人生ならば後悔もしないはずだ。 まさにこれらの考え方は、私の理想とする人生論であり、本作はそうした自分の人生観と見事に一致した。 妻も息子も、結局は一家の大黒柱である森雅之に依存して生きてきたにすぎない。 それを考えれば、60になった森雅之は、そろそろ自分の自由を主張しても、ばちは当たらないんではなかろうか。 そう考えたりして本作を観ていたら、とめどもなく深い味わいのある作品であることに気付かされた。 最後の最後で気付かされたのだ。 なんという味わいのある奥深い作品であろう。 というわけで、私は本作を川島雄三監督の最高傑作の一つに推したい。 (P.S.)北原三枝の衣装と、そこから伸びる脚線美、そしてクール・ビューティな雰囲気にやられました! [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-10-05 15:00:20)(良:3票) |
3. 素晴らしき休日(2007)
《ネタバレ》 『キッズ・リターン』は最も好きな映画の一つなので、それが題材にされていた時点で、もう半泣き鳥肌モード。 モロ師岡が観客の役を演じているのだが、そこで映写される『キッズ・リターン』はビートたけしが映写をしている。 しかし、そこで映写される『キッズ・リターン』は、モロ師岡が出ている部分が欠落していたり、エンドロールでもモロ師岡の直前で切れるなど、イタズラ心満載なのだ。 この短篇の題材に、私の最も好きな武映画である『キッズ・リターン』を選んでくれたことに、ただただ感激! [映画館(邦画)] 7点(2007-10-08 14:08:24)(良:3票) |
4. 男はつらいよ 望郷篇
佐藤蛾次郎氏に、つい最近、偶然その辺りの路上で出くわしました。 自分の名前の入ったTシャツに、奇妙な手押し車を押してました。 背丈が思っていた以上に低く、驚きました。 [ビデオ(邦画)] 6点(2007-10-04 22:59:12)(笑:3票) |
5. ある映画監督の生涯 溝口健二の記録
溝口映画ゆかりの人達が、次から次へと39人も登場する。 本ドキュメンタリーは、 1.溝口作品の出演者達を、映画以外では知らない 2.溝口作品の出演者達の、その後の姿を全く知らない 3.溝口作品を沢山観たことがある の3つの条件を満たしていれば満たしている程、楽しめるに違いない。 それ以外の人が観ても、何てことのないドキュメンタリーか、もしくは、ただ単に古い人が沢山出てくるだけの退屈なインタビュー映像集になってしまうだろう。 また逆に、現在を起点に考えれば、本作は30年以上も前の作品となるわけで、現在は大半が亡くなられた人達ばかりでもある。 そういう点で考えても貴重なインタビュー集なわけで、特に宮川一夫、川口松太郎、依田義賢、増村保造等の映像を観れたのは良かった。 さてさて、本作を観る上で個人的に一番楽しみにしていたのが、溝口作品ゆかりの女優達のその後の姿をおがむこと。 特に、木暮実千代、山田五十鈴、入江たか子辺りのインタビュー映像は楽しみで仕方なかった。 39人のインタビューの中で、一番衝撃度が高かったのが木暮実千代。 『祇園囃子』でその妖艶さに打ちのめされた私は、すっかり木暮実千代の虜(とりこ)になった。 そして本作で60歳近くになった彼女と“再会”ができるわけである。(実際は、既に『男はつらいよ』で晩年の彼女を観ていたのだが、全く記憶にない) それはとても怖くもあったが、同時にそれ以上にわくわくもした。 そして、『祇園囃子』の過去の映像の直後に、“その後”の彼女が登場・・・ おぉぉぉ・・・・ うーん・・・ これが正直な感想。 でもとても嬉しかったのも事実。 何故なら他の女優達の“その後”が、妙に神経質っぽかったのに対して、木暮実千代のインタビューの受け答えは、とても明るかったから。 “妖艶さ”の面影は消えていたが、親しみやすいマダムな感じで、これはこれで楽しめた。 しかし、インタビューをした監督の新藤兼人さん、「祇園囃子は力の抜けたいい写真でしたね」って、それはないんじゃないの?? それを聞いた木暮実千代も、同意しかねていたではないですか! もちろん悪い意味で言ったのではないだろうけど、個人的には溝口作品の中で一番好きな作品なだけに、木暮実千代同様、私も同意しかねますねぇ~ [DVD(邦画)] 8点(2007-09-02 22:41:32)(良:3票) |
6. 真空地帯
《ネタバレ》 戦時下における、軍隊の内幕をリアルに描いた作品。 軍隊内部ではイジメや暴力が日常茶飯事に行われており、むしろそれが内部では当たり前のこととされている。 上層部は物資を横流ししたり、人事を不当に行ったりと、こちらも腐敗し放題である。 そういった軍隊内部の内幕を、嫌というくらいにリアルに見せ付ける。 これが本当にリアル過ぎて辛すぎて、観ていて嫌になる。 作品の出来具合としては、文句のつけようがない。 時間の経過を忘れる程の力作である。 しかし、先に書いたように、観ていてどうも嫌になる。 気分が悪いままに二時間が経過するのだ。 「良い物観た」ではなく、「胸くそが悪い物を観た」。 観終えた後、そんな気分になってしまう。 そこがこの作品の良い所であり、悪い所でもある。 いずれにしても、本作が非凡な作品であろうことは間違いない。 久しぶりに凄い邦画を観た気がする。 [DVD(邦画)] 8点(2008-01-26 00:08:59)(良:3票) |
7. 少女ムシェット
《ネタバレ》 ううむ・・・これほどまでレビューを書くのが難しい作品は久しぶりに観た気がする。 言葉で表現するのが至極困難だ。まず、本作は間違いなくロベール・ブレッソンの最高傑作であろう。 淡々と繰り広げられる薄幸な少女の生涯。そこには、少女ムシェットにとっては日常的でありながら、普通に恵まれた人間からみれば、極めて非日常的な日常が横たわる。それをブレッソンは感傷に浸ることなく、冷徹なまでに静かに淡々と描写する・・・少女ムシェットの日常を描いただけの内容だが、そこには生まれもって不幸な境遇に置かれた少女の、静かな心の叫びがビシビシと伝わってくる。静謐でいて、荘厳さも伴った映像の数々。実に映画的な美しさと残酷さ、そして魅力にあふれた作品である。雨で濡れたソックスを履き直す少女、少女の前でズボンを下ろす少年、ミニスカートを履いて逆上がりをする少女たち。そこには、何気ないエロスが横たわり、少女にこれから起るであろう出来事を観る者に予感させる。又、ワナにはまり苦しみもがく野鳥や、猟銃で撃たれのた打ち回る野うさぎなどをじっくりと映し出すことにより、生命のもつ根源的な虚しさと残酷さを演出してみせるブレッソン。過剰な演出を嫌ったといわれるブレッソンだが、本作ではその演出技法がいかんなく発揮されていた。「不幸な少女はこうもつめたく世をみつめているのか。」「不幸な少女から見たら、周囲の大人というのはこう映っているのか。」「こうした思春期を送っている少女は、いかに大人になっていくのか。」観ているうちに色々な興味が湧いてくるが、それらの興味の一切は、情け容赦のないラストシーンにより吹き飛ばされてしまった。少女は命を断ちさえしなければ、不幸なりにもそれなりの大人にはなれただろうに。それを思うと、何とも哀しくて虚しい気分に襲われた。ほんとの意味で、こうした苦しみにもがく少女を助けることのできる大人って、どれくらいいるのだろうか?いや、いないと悟ったからこそ、少女は自殺の道を選択したのではないだろうか。そう考えると、この世は無常で、どうにも救い難い。こうしていくら書いても、本作を観て感じたことの全てをうまく表現できないし、実際に自分の中でも咀嚼できていない気がする。本作は、そういう意味でも、何度も鑑賞すべき作品であり、何度の鑑賞にも堪えうる魅力と深さをもった作品である。 [DVD(字幕)] 9点(2008-09-15 22:13:57)(良:3票) |
8. 君と別れて
《ネタバレ》 なんという切ない話なんだ・・・ 「別れ」をテーマに扱った映画で、これほどまでに哀しい映画は観たことがない。 切なくて哀しくて仕方ない。 主人公の青年の気持ちがよく分かる。 綺麗な女性に頼ってもらい、相談まで受けて、余計に好きになったところで、一方的な「別れ」の通告。 そして、その女性が大切にしろと再三言っている母親を捨てて、彼女と一緒に旅立てない事情。 切ない。 切なすぎる。 これより以前の成瀬作品にはない叙情的な作品で、それ以降の作品ともまた異なった、瑞々しさをも兼ね備えた逸品。 成瀬巳喜男のキャリアの過程で、この時期にだからこそ生まれたであろう奇跡的な作品で、心を鷲掴みにされた思いがする。 電車の中で、チョコレートを食べるシーン。 まるでチョコレートの甘い香りがしてきそうなワンシーンだ。 青春の一瞬の輝きを、見事画面におさめた奇跡的なワンシーンである。 成瀬巳喜男のサイレント作品としては、自分の中で最上位にくる作品。 もう一度、書く。 私はこれまで、ここまで切なくて哀しい「別れ」を描いた映画を観たことがない。 そしてこの作品は、そこに瑞々しさをも兼ね備えている。 あぁ、自分の辛かった頃の青春が甦る・・・ [インターネット(字幕)] 9点(2012-10-07 22:51:43)(良:3票) |
9. 知らない、ふたり
《ネタバレ》 今泉監督に降参!参った! これは面白い。 レオンが最初に登場した時、なんだこのカッコつけた野郎は!と思って見ていたけど、終わってみると凄い良い奴に見えたりして、ハイ、わたし単純です。 時間軸がいったりきたりするのは『運命じゃない人』を思い起こさせるが、これが実に効果的。 イケメン揃いの為、男性陣の見分けがつきにくく、人物相関に関して少々混乱する部分はあったものの、なんとか話についていった。 でもそれはラストシーンでレオンの表情が一気に明るく変化するところで消し飛んだ。 あれは良いラストシーンだなぁ。 これは良い映画だ!見て良かった!と思えた。 ついでにエンディングソングも良い! これから遅らばせながら、今泉監督の作品をどんどん見ていくつもりです。 素晴らしい監督に出会えて良かった。 男女の出会い、一目惚れ、もとさや、色んな要素が奥深く表現されていて、とっても魅力的な作品でした。 [インターネット(邦画)] 9点(2020-08-30 01:31:34)(良:2票) |
10. 修羅雪姫(1973)
1973年の作品とは思えない程の映像美! これは素晴らしいの一言に尽きる。 雪が降り、紫紺の着物が風に舞う。 そこに同じく紫紺の和傘。 そこに佇む梶芽衣子。 これだけで十分、画になるのに、映像まで素晴らしい。 ただし、その映像センスに比し、どうも演出が稚拙。 ストーリーもやや破綻気味で、リアリティの欠如は否めない。 しかし、そこが逆に言えば本作の楽しみ所で、それをどれくらい素直に受け入れられるかで、本作の評価は決まってくるであろう。 でも、当時、梶芽衣子は20代中盤。 それにしちゃあ老けてる。 なんか目にクマもあるし。 確かに色っぽいが、もう少しみずみずしさがあったら、もっと完璧なのだが・・・ [DVD(邦画)] 7点(2008-05-19 22:40:20)(良:2票) |
11. 雨に唄えば
身体能力が高いだけの男と、線が太すぎて繊細さに欠ける女とが、踊って唄うミュージカルコメディ。 センスの悪い衣装、豪華が過ぎるセット、トーキーに順応できないリナを悪者扱いする差別的な内容、人生の悲喜こもごもが伝わってこない浅いストーリー、そしてミュージカルというリアリティを欠くジャンル、全てが私の肌に合わない。 私のミュージカル映画嫌いを決定づけた、偉大なるアメ公映画の決定版! [CS・衛星(字幕)] 0点(2009-03-19 03:59:49)(笑:2票) |
12. 銀座化粧
本作は地味ながらも、実にいい味が出ている。 銀座を中心とした風景描写も素晴らしい。 成瀬監督は、ほんとに風景描写がうまい。 そして香川京子。 成瀬監督の『おかあさん』では溌剌とした魅力をふりまいていたが、本作でもそれに匹敵する魅力を感じた。 特に、堀雄二と目を合わせた時の、あのはにかんだ表情。 あれは、当時の香川京子にしか出せない、とてつもない魅力を含んだ表情だった。 「香川京子の周りにだけ爽やかな高原の風が吹いている」 まさしくその通りである。 本作は、一般的には特別に評価の高い作品ではない。 しかし、ここでの平均点数が示す様に、本作は地味ながらも紛れもない傑作であった。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-08 12:02:58)(良:2票) |
13. 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間
本日、念願の新文芸坐へ行き、「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」を観てきた。 すると・・・ なんと、1Fまで行列が伸びているではないかっ!! これは完全に予想を裏切られた。 いくら“キング オブ カルト”、石井輝男監督の追悼上映とはいえ、こんなにまで混んでるとは思ってもいなかったのだ。 あきらめて、列の最後尾へ。 私は時計に目を遣った。 上映時刻を間もなく過ぎようとしている。 なのに、列はちっとも前へ、いや、上へ進んでいかない。 あまりの混雑の為、上映時刻に客の入場が間に合わない状況だった。 座れるか不安になったが、何とかギリギリ座れた。 「それでは上映を開始いたします。」 のアナウンスが流れる。 後ろを見渡すと立ち見が。 最新のメジャー映画じゃあるまいし、立ち見が出るとは・・・ しかもミニシアターとかじゃなく、普通に立派な映画館だというのに、何たることだ。 どうやら私は、石井輝男人気を侮っていたようだ。 そして上映開始・・・ 評判通りの“カルト”映画であった。 それにしても苦痛だったのは、隣の客が“キ○ガイ野郎”だったこと。(石井輝男監督に敬意を込めて敢えてこの表現を使わせて頂きました。) とても笑うようなシーンでないところで笑い出すのだ。 しかも頻繁に。 99分の間じゅう、ずっとその笑い声に悩まされ、席が2列目であったこと、映画の内容自体が濃かったことと相まって、非常に疲弊した。 映画そのものも「カルト映画」だったが、隣りの客も「カルト客」だったというわけだ。 ラストの有名な「花火シーン」は確かに凄かった。 あれはやり過ぎだ。 でもこれでやっと“キング オブ カルト”、石井輝男監督の代表作『恐怖奇形人間』を観ることができたのだ。 それだけで十分満足である。 [映画館(邦画)] 6点(2007-09-01 20:28:24)(良:2票) |
14. 洲崎パラダイス 赤信号
映画館まで観に行った作品。 映画館で観てよかった。 “洲 パラダイス 崎”と架かったアーチが何とも印象的な作品だ。 あのアーチを観ただけで、心が躍ってしまった。 勝鬨橋や都電、そしてこのアーチなどが鮮烈に映像に焼きついており、それだけでも貴重極まりない本作。 本作『洲崎パラダイス 赤信号』は、成瀬巳喜男監督の代表作『浮雲』を思わせる“男女の一筋縄ではいかない後腐れな関係”を首尾よく描いている。 さすが川島雄三監督の代表作の一つと呼ばれるだけあって、独特の余韻を残す紛れもない傑作だった。 それにしても、蕎麦屋のお姉ちゃんを演じていた芦川いづみだが、めちゃくちゃキュートだった! 夫である藤竜也がニクイ!! 最初は7点をつけようと思ったが、あまりに脳裏に焼きつく映像の数々に、1点プラスの8点を献上したい。 [映画館(邦画)] 8点(2007-11-01 20:58:16)(良:2票) |
15. あの頃、君を追いかけた(2011)
《ネタバレ》 序盤の下ネタの嵐には、正直、この映画に不安をおぼえたが、その後は実にすばらしい内容で一安心。 メインに描かれている内容は、実に真っ当な青春映画なのだが、随所に下ネタが出てくる。 メインの部分が素晴らしいだけに、おふざけ下ネタの出し過ぎは逆にもったいない気がする。 コメディタッチの青春映画という位置づけにしたかったのだろうが、この素晴らしい内容なら、シンプルにただの青春映画で十分なのに・・・ だけど、そのどっちつかずなコメディ部分を考慮しても、これはアジアン青春映画の傑作だ。 もう戻らない、「あの頃、君を追いかけた」思い出。 そして彼女の存在。 あの時、あの場所、あのシーンに戻れたら・・・と、思いを馳せてしまう、そんな青春時代のホロ苦い思い出。 それが実に切なく素晴らしく、甘美に描かれていて、むしろこの主人公に嫉妬してしまうほどだ。 あんなに可愛い女子と青春時代に触れ合っていたら、きっと気がふれてしまう。 それこそ勉強どころじゃない。 だけど、その恋は成就しなかった。 成就しなかったから不幸だと短絡的にならず、「かけがえのない思い出」として、胸の中にしまい続けながら大人として生きていく。 切ないし、耐えられないけど、実現しなかったからこその輝ける青春。 実現していたらきっと、失望してしまう何かを目の当たりにしてしまっただろう。 いくら可愛い女子でも、欠点はあるし、オナラもする。 実現しなかったからこそ、そういった幻滅するような部分を知らずに済んだ。 知らずに済んだからこそ、かけがえのない思い出として、永遠に胸の中に残り続けるのだ。 そんな彼女の結婚を、心から祝福する主人公。 私はこんな立派な心境にはなれないだろうと思うけど、実際、そこまで素敵な思い出をくれた彼女の幸せなら、祝福できるのかな? 残念ながら私には、ここまで素敵な青春時代の思い出がないので、知る由もない。 だけど、この映画を観て、そんな青春時代を体験したかのような気分になれた。 それだけで胸いっぱい。 ヒロインの女の子のかわいさ、やっぱり制服を着ていた頃が一番良い。 大人になってからの彼女は、平凡にさえ見えた。 学校、制服、限られた時間。 そんな制約こそが、輝ける青春の条件か。 [DVD(字幕)] 8点(2016-03-10 23:42:20)(良:2票) |
16. アウトレイジ(2010)
北野武監督作品の中では、『座頭市』と並ぶ完成度の高い娯楽作品。 現在の日本人監督の中で、単純に楽しめる作品を撮らせたら、最近の北野武監督に勝る者はいないのではないか、というくらい良くできている。 ストーリーの顛末よし、音楽よし、映像よし。 特に、ヤクザものを撮らせたら、間違いなく現在においてはナンバー1の監督だろう。 北野武が、ただ撮りたいものを撮っていた初期の頃と比べて、“職人監督”と呼ぶべきに相応しい、監督しての巧さを感じさせる。 ただし、それが良いか悪いか。 個人的には、少し残念だと感ずる。 初期の頃に感じた、心に深く突き刺さるものが感じられない。 何か、角がとれて丸くなった印象。 監督としての総合的技量は、年数を経るにつれ、格段にアップしていると感じるが、逆に初期作品の頃に感じられた、鋭利なナイフのような切れ味がなくなっている気がする。 だが、それは北野武の計算なのかもしれない。 何故なら、比較的最近でも、『TAKESHIS’』の様な、自分の撮りたいものを好き勝手に撮っただけの作品も、撮ってはいるから。 商業的な作品と、自分の取りたい好き勝手作品とを、器用に撮り分ける北野武。 それはそれで凄い。 でもできれば、娯楽性が低く世間一般の評判は低くとも、初期の頃の様な作品や、最近で言えば『TAKESHIS’』の様な自分勝手な作品を、もっと撮って欲しい。 [DVD(邦画)] 7点(2011-01-26 01:00:36)(良:2票) |
17. ナイト・オン・ザ・プラネット
私の好きな映画「TOP5」に入る、宝物の様な作品です。 特に盲人役のベアトリス・ダルが出るパートが大好きです。 あの暗い夜のタクシー中で、あの会話。 う~ん、たまらないですね~ 次に好きなのが、ウィノナ・ライダーの出ているパート。 ウィノナ・ライダーのませた生意気な感じが至極お気に入り。 タバコのふかし方なんかもイチイチかっこいい! 個人的に、ジム・ジャームッシュ監督の最高傑作だと思っています。 [DVD(字幕)] 10点(2007-10-10 20:12:19)(良:2票) |
18. リミッツ・オブ・コントロール
《ネタバレ》 ジム・ジャームッシュはK点を超えた。 ノー・リミッツ、ノー・コントロール。 主人公の黒人俳優。 表情が良い。 姿勢が良い。 歩く後ろ姿が良い。 工藤夕貴が思いの他、美しくなっていた。 髪の毛が美しい。 スタイルと服装が良い。 紙を飲み込み過ぎても、体にはそんなに悪くない。 エスプレッソを二つ注文すると胃に悪い。 そこかしこに散りばめられた映画へのオマージュ。 気づいただけでもちらほらと。 他にもオマージュが沢山あったに違いないが、気づけなかった。 まだまだな私。 久しぶりに会えたクリストファー・ドイルの映像。 BGMも良い。 序盤に出てくるタワーマンションも個性的で印象的。 最期の要塞への忍び込みは不可能。 これ無理。 だけど、ノーリミッツ。 しかし、スーツが良く似合うなあ、この主人公。 極めてクールでかっこよい。 [DVD(字幕)] 7点(2012-08-17 00:07:02)(良:2票) |
19. 雪夫人絵図
《ネタバレ》 木暮実千代出演作を観るのは、自身二作品目。 この作品においても彼女は艶やかで美しかった。 仕草や話し方が素敵である。 特に、畳に座るときの姿勢が大好き。 ちょっとはかなげに斜めに座るあの感じ。 それに対してその旦那の醜さときたら・・・ この美と醜の対比が、否応なく観る者を興奮させる。(いや、自分だけかな?) 印象に残ったシーンをいくつか挙げてみる。 まずは冒頭の、雪夫人(木暮実千代)を慕う久我美子演ずる少女が、お屋敷のお風呂場に案内されるシーン。 だだっ広いタイルの間に、ポツンポツンと浴槽が地面に埋め込まれている独特なお風呂場。 別に入りたくなるような、いい雰囲気のお風呂場ではないのだが、それを映し出した映像は輝かしく、息をのむ程に美しかった。 久我美子演ずる少女が、ここで同性愛的な発言や仕草を見せる。 「ここで毎日、雪夫人がお風呂に入られているんですね・・・」 水面に目を遣りながら、こうつぶやくのだ。 眩しくて美しいこの映像の中でのこのセリフ。 やっぱり溝口健二の描く世界は美しい。 それともう一つの印象に残ったシーン。 それはラスト近くの、雪夫人が湖に姿を消してしまうまでのクライマックス・シーンである。 雪夫人は湖近くのホテルに姿を現し、屋外の椅子に腰掛ける。 そこにボーイが近寄り、声をかける。 ボーイはその後、建物の中に何かを取りに行き、それと共にカメラも建物の方へ動いていく。 ボーイ、そしてそれを追うカメラが再び屋外に戻った時には、雪夫人の姿は見えなくなっていた・・・ このシーンが雪夫人の最期を演出するシーンなのだが、とあるお方のお言葉を頂戴するならば、 “霧深い芦ノ湖の山のホテルに現れた雪がまたすぐに消えてしまうラストはぞっとするほど幻想的で美しい。” といった感じで、まさしくその通りのラストであった。 戦後の華族制度廃止によって没落していく旧華族を描いている点についても、非常に興味を持って観ることができた。 [映画館(邦画)] 9点(2007-09-02 11:14:57)(良:2票) |
20. 黄昏(1981)
観ている間、なんか不思議と心が安穏としました。 安心して観ることのできる作品です。 実際にも不仲だったフォンダ父娘が、本作を通して和解したというエピソードがとても素敵です。 映画ってやっぱり素晴らしいですね! [DVD(字幕)] 7点(2007-12-06 23:32:44)(良:2票) |