1. 天井桟敷の人々
《ネタバレ》 あ、いかん、他の映画に10点つけてしまった。11点は無いのか、11点。高校生の大昔見たときは、ただの長い映画でした。歳を重ね、映画の本数を重ね、再見してみると、あら、大変、凄い映画じゃないの。最初から最後までうっとりしてしまいました。そんな映画はなかったなぁ。メタ映画というか、劇中に劇があるというか。しかも、その劇中劇以外の部分も演劇的にしている。閉じられた空間ではなく、開かれた空間で、演劇を見る感じ。映画が演劇に勝負しようとしているのか。恋愛を語るならフランス人には勝てない、って言いますが、その感じそのままの台詞、台詞、台詞。悪党もいる、狂言回しもいる、決闘なんてものもある、古典的恋愛ストーリー。演技をするのを演技するという役者。たくさんの、たくさんの人。天井桟敷の人々は映画の中では劇を見る人々。私達も映画を見ている天井桟敷の人々。映画の中で天井桟敷の人々を愛すべき人たちのように描いていました。だから、この映画は見ている私達を愛してくれている、という暖かさも感じさせてくれました。 [DVD(字幕)] 10点(2008-01-26 14:40:37)(良:3票) |
2. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 彼の心変わりが分からない? そんなコメントを散見しますが、それならば、の私なりの一言。盗聴の後、街灯の明かりも暗い、静かな街をこつこつと歩くシーンがあります。こつこつと、です。皆さんも夜歩かれたら感じると思います。そんな時頭の中のいろいろな思いが奥へ奥へと沈んでいくのを。まさに、その象徴。自分の足音を聞きながら、彼は考えが深まっていきます。最初は女優が好きだったのでしょう、次に芸術家が自分の理想に近い社会主義者であるのも知ります。それだけではありません、芸術家の人生を見て自分の心の中にも芸術の心があるのが分かってきます。(映画の中の芸術家分析のタイプ4とは彼のことでもあるのでしょう、また、ソナタはそのことの象徴でもあります)。自分の孤独と愛し合う二人の幸福も比べます。最後に、体制側の腐敗も(見て見ぬ振りをしてきたのでしょうが)我慢ができなくなってきます。夜の道をこつこつと一歩ずつ進む姿は、その音一つ一つにあわせ、彼の頭の中でそんな思いがこつこつと重なるのです。それは、限界点に来ます。ある時、そう歩いて、エレベーターに乗り、子供と居合わせます。「ボールの名前は?」この瞬間こそ、彼が全てを覚悟した瞬間だと分かるのです。迷いが消えます……人間の(優しい)思惑のため(たとえば、彼女を巻き込みたくない、たとえば、今回は見逃してやろう)少しずつ少しずつズレができて、ドラマが進み。クライマックスへと向かいます。「私のための本です」の二重の意味で、ラスト、画面は止まります。彼の人生に、見ている私達もプレゼントを(本のプレゼントもモチーフです)してあげた気持ちになりました。涙が止まりませんでした。 [DVD(字幕)] 9点(2008-03-11 23:26:17)(良:2票) |
3. キック・アス
《ネタバレ》 予言。公開時はそう話題にはならなかったこの映画、DVDが日本で出る頃、または、2が公開される頃には、この名が知られることになるでしょう。凄い映画です。ここのレビュー数も100は軽く超えるでしょうね。駄目高校生のお馬鹿映画と思いきや(みんなそう思っているから見てないんだ)、後半にマカロニウエスタンになる展開に、心が燃えたね。 [インターネット(字幕)] 9点(2011-02-06 13:57:33)(良:2票) |
4. HANA-BI
《ネタバレ》 子供を失った悲しみ、これが映画の底流にあって、その胸を裂くような辛さを感じなければ、この映画の味わいは分からない。あとの不幸は、追加。花火を見上げる親子の絵、絵自体がいかにも子供のお絵かき、マンションにとめてあった三輪車、それを片付ける元刑事、しかし、小さな子供の靴はちらっと見るだけ。お寺の鐘に来た子供、元刑事は妻が思い出して辛い思いをするのだろうなとわざとオチャラケて鐘を鳴らす。最後の凧揚げの女の子は、二人が本当に見たかった光景。元刑事も傷ついてはいるが、妻の方は絶望している。その絶望を埋めるべく、静かに(妻がいないところで)荒れ狂い、妻に優しくする夫。夫の心を知っている妻。だから、「ありがとう、ごめんね」と言う。私達は二人の愛の形を静かに味わうしかない [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-04-05 12:03:56)(良:2票) |
5. 地球が静止する日
《ネタバレ》 ある勝手な想像。これはアメリカの民主党が大統領選挙の資金稼ぎに使うために作ったと見た。We can change. とあのキャッチフレーズが強調される。そう、変われるのだ、と選挙民に刷り込もうとした。だが、あまりに出来の悪い映画のために、その効果が逆になると判断した。ヤバイ、これは地球が静止した日ではなく資金が静止した日になる。だから、公開を選挙後の今にした……私の1800円は民主党員の選挙勝利新年パーティーの料理代にでも回されるのだろう。人生初の政党への資金援助。落涙。 [映画館(字幕)] 3点(2008-12-27 09:50:35)(笑:2票) |
6. ラスト・ショー
《ネタバレ》 世界の片隅で、しかも、廃れていく一方の町で、自分の人生、これでいいのかと誰しも悩む。特に青年は悩む。嫌いなんだけど愛しているから辛い。このアンビバレントな気持ちの目盛り上のどこを針が指すかで、飛び出す者、留まる者、が別れる。親の世代は、まだ、栄光のテキサス時代(劇中映画の「赤い河」の有名なヒーホーシーンが示唆している)の名残(サムがその代表)があり、留まる。彼らの世代には、もう引き留める魅力はない。最後の最後の砦、映画館も閉じた。だから、ラスト・ピクチャー・ショー。映画もその閉店の寂しい外観で終わる。一人青年が残るが、母の代役のような、彼女の元に戻る。しかし、その若さですでに、幸福がそこにはないことは知っているかのようだ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-01-21 21:53:17)(良:2票) |
7. 宇宙人ポール
《ネタバレ》 IMDb のTrivia やMessage Board を見ると次の映画へのレファレンスがあるとか。ET、スターウォーズ、バック・トウ・ザ・フューチャー、未知との遭遇、イージーライダー、ジョーズ、1941、ブレード、エイリアン、レイダース、脱出、スタートレック、ホット・ファズ、恋はデジャブ、ブルースブラザース、メン・イン・ブラック、ショーン・オブ・ザ・デッド、プレデター、ロレンツォのオイル、トータル・リコール、ベスト・キッド、タイタニック、銀河ヒッチハイクガイド、スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団、スターマン……スターマン以外は全部見ているのですが、この映画を見ている時は、ET(人形の振りをするPaul、お手々繋いで歩くシーン)、未知との遭遇(岩山、花火屋さんで聞こえた五音)、スターウォーズ(バーの音楽)、トータルリコール(胸が三つの女性)、エイリアン(主人公登場)位しか気づきませんでした。へぇー、って一番思ったのが、ベストキッド。傷を治す前に手を擦るミヤギさんだとか。そうだったような。他にも、なるほど、はありましたが、言われてもぴんとこないものも多かったです。詳しく知りたい人はサイトの英語を根性で見て下さい。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2012-04-08 13:00:39)(良:1票) |
8. ゼロ・ダーク・サーティ
《ネタバレ》 歴史モノというのは、作者の主観が入らないと成り立たない。しかし、どう入ろうと大昔の事だから、だれも正確なところは知らないし、真偽で議論になったとしても、議論のための議論となるだけだ。しかし、近い歴史は危ない。そこに関与する人が多すぎる。だから、主観を排除したような、「ドキュメンタリー」風な客観的な方向に傾かざるを得ない。ハートロッカーは特に歴史を述べていないので、作者の方向性を打ち出せた。しかし、本作品ではどうもここでブレがあるように思える。覚悟が見えない。戦争プロパガンダと反戦という両極の物差しの上をあっちにいったり、こっちにいったりしているような感じがする。否、わざとブレているのを狙ったの、と言わんばかりなのだが、もしそうだとしてもうまく言っていないような気がする。監督の中に迷いがあったのではないか、それとも、制作側との妥協なのか。最初の拷問シーンで、私は女だけどこんな絵を取れますわよ、と力んでいるような感じだし、ラストシーンでは、女性の複雑な心は女性しか分からないから、ってスカしているようでもあるし。アメリカは強い、っていいたそうだけど、恨みは永遠に終わらない、っていっているようでもあるし……で、私の読みは、繰り返すが、この矛盾を一切抱えて、さぁみんなどうぞ、この複雑さを取り上げる私の感性が分かるかしら、ってのを狙っているということ。それが、うまくいっていない、と私は言っている。最後のサスペンス的展開はそこを隠したかったのではないか。 [映画館(字幕)] 7点(2013-02-19 20:14:38)(良:1票) |
9. バベル
《ネタバレ》 四つの話が、密接に繋がってないところがミソで、そうなるとどこか作って「お話」的になってしまう。ほんの少し掠る程度で、繋がっていることで、四つの話を一つの話に入れる契機としているだけ。この監督は、「不可避的、運命的出来事に押しつぶされる人間とそこからの再生の可能性」を歌っている。テーマを一般化するために、四つの話を並べているだけである。「バベル」というタイトルを付けたのも、言語は違うけど、人間同じなんだ、という人間の性を一般化したい監督の意図が伺える。最後のうまさは、見ている人は、「女の子」死ぬんだと思わせて(彼女は死に場所死に方を探していたのでしょう。その前に、アレを、ってことですね、最後に分かります)、実は、「救いの手」を差し伸べた点、ある意味、どんでん返し。監督の人間性を信じる姿を感じる。メキシコのおばさんが救われないのもワザとらしくなくていい。むしろ、ラストのどんでん返しの布石になっている。刑事さんの手紙は、きっと「私、死ぬのを辞めます」だったはずだ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-01-02 19:58:59)(良:1票) |
10. カリガリ博士
《ネタバレ》 これ、1921年制作です。日本では大正10年です。大正デモクラシーとかいっています。でも、遠いドイツでは、この映画です。狂人の映画です。セットが曲がっています。話も曲がっています。メイクも変です。字幕の文字も尋常ではありません。狂人の見る世界を私達が見ます。現代の私達だから、あれやこれやの批判もできる。ドイツにはすでに、狂人の夢を語る映画を作る人がいる、見る人がいる。文化の進化度が分かります。ドイツ表現主義。ヨーロッパでは絵画にキュビズムが出た時代。夢を語る、精神分析の影響の強いシュールレアリスムの夜明け。日本は夢野久作の「ドグラ・マグラ」が出るのをあと10数年待たねばなりません。 [DVD(字幕)] 8点(2008-02-11 14:07:55)(良:1票) |
11. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 「マトリックス」以降、「メメント」「ドニーダーコ」「エナーナルサンシャイン」などと流行りの多重世界もの。バタフライ効果、昔、ブラッドベリーだかアシモフだかのSF短編でタイムマシンで行った過去の恐竜世界に足跡一つを残したために現代に戻ったら世界が変わっていたという話があったが、その発想と同じ。確か藤子不二雄も同じような短編があったと思うが、それは近所の花の色が変わっただけだった。その発想が元になって、black out と絡めてアイデアを捻り出した時点で勝利。脚本はあれこれといろいろな設定ができるので楽しかっただろうなと想像。演じる方もいろいろな人生を演じられるので楽しかっただろうなとこれまた想像。そして、見ている側もどう終わるか、また、どう終わるべきか、といろいろと想像ができて、楽しい。人生がころころ変えることができる映画が出るなんて、「失敗したらリセット」という、RPG世代ならではの映画なんでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2008-11-30 12:19:58)(良:1票) |
12. ラブ・アクチュアリー
《ネタバレ》 ロックスターの本当の恋に嬉しく思い、少年の走りに声援を送り、その父の悲しみの立ち直りに安心し、夫婦の危機で妻の心が痛く分かり、首相の恋は王子様物語のように夢を見させ、アメリカへの妄想兄ちゃんの成功に苦笑いし、言葉を越えて愛が成り立つ事を再認し、仮の愛が本物になる裸の二人にくすりと笑い、身内を優先させて恋を駄目にした彼女に自分を重ね合わせ、紙芝居で語る男に一番かっこいい失恋を見る。Love acutally is all round. 「愛は実に周りにあふれてるではないか」そう映画は言う。たくさんの愛の形を揃えて、そう映画は言う。愛の素晴らしさを心の宝物のように大事にしている人は、幸福感で胸が一杯になったことでしょう。個人的には紙芝居の兄ちゃんの台詞 Enough. は一番心にしみたなぁ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-03-05 23:36:48)(良:1票) |
13. 地獄の逃避行
《ネタバレ》 この監督、極端が無い。というか、極端が無いのが極端。エロくもなく、グロくもなく、演技が過剰でもなく、ストーリーも普通、という。主人公の彼は、ハンサムなんだがスター的に中途半端、彼女は美人とも言えない。象徴的表現があるのか、というとそうあるようでもない。そんなこんなの平凡さ。でも、魅了される。あまりの普通さに魅了される。何でだろう。この監督、自分を神様だと思っているのか、とても、人に優しい。そこかな、この映画の秘密は。神様の優しさ、である。悪人に怒らない、というか。人間の罪を許している、というか。説教がない。そうだ、そうなんだ、ふーん、って見てくれている感じがする。まあ、人間だからなぁって。馬鹿だからなぁーって。自然も、神が自分の作品を自慢するかのように、美しい。あの荒野が、バッドランドですよ、でも、美しい。不思議な映画だ [DVD(字幕)] 7点(2008-02-21 22:21:08)(良:1票) |
14. ホビット/思いがけない冒険
《ネタバレ》 なっがーいし、えっ?話終わらないの、また三部作なんだ。うわーって感じ。これ、LOTRに比べて、サスペンスが無いのですよ。だって、主人公が死なないって知ってるし。で、でてくる悪役が醜いし、トロールとオーカーとゴブリン同じだし、人間族いないし、特撮に目立った進歩があまり見られないし、雑魚キャラの大群を薙ぎ払うパターン一緒だし、最初から鷲に乗っていけよ、って全世界で百万人は思っただろうし、ゴラムをお笑い担当にして長丁場を乗り切ろうとしてるし……最後まで見るから、はい、次っ、て感じです。 [映画館(字幕)] 7点(2012-12-26 17:59:42)(笑:1票) |
15. 8 1/2
《ネタバレ》 作家の苦悩が映像に映し取られているという表現の凄さ。映画とは外面を切り取るだけのものです。人物の内面を表現するなら、演技表現はもとより、夢や妄想という頭の世界かメタファーを配置するしかないのでしょう。これはその映像表現の頂点と言える作品。おそらく、幾万の映像作家が挑んだテーマなのでしょうが、タルコフスキーやベルイマンあたりを除いて自爆したのではないでしょうか。難解な映画?、いえいえ、そんなことはないですよ。心の中の苦しみ、を丁寧に拾って見てもらえれば、だんだんと周りの人物もが疎ましく思えるようになってきますよ。そうなると、どうにも救えない映画なのですが、ラストでちょっと光を与えてくれます。喜劇なトーンを見せてくれました。私たちはこの映画は「人生は祭りだ」そういう事が分からない男の喜劇なんだと少し安心したりする訳です。 [DVD(字幕)] 10点(2009-03-31 11:46:01)(良:1票) |
16. 去年マリエンバートで
《ネタバレ》 映像が物の客観を伝えるもの。しかし、事柄は、各人格の主観のからみでしか、浮き上がらせることはできない。男の主観が語る、女の主観が語る、現在を描写する客観が挟まる。その客観をカメラが補足する、もう一人の男の話が客観として割り込む。そういう構成で、作者は考えた。後は、どう組み合わせるか、この組み合わせのはめ込みに、工夫を懲らそうか、む、それが芸術だねって感じでおしゃれに行こうか。ばらばらにはめ込んでね。時間という客観を破壊しなきゃ。舞台が同じだから、過去と現実をちょっといじくってみようか、ほら、過去の回想場面に現在の会話をいれるとか、その逆だとかおもしろいんじゃない? マイナーな役の人は、ちょっとじっと静止してくれない。そうすると、ほら、なんかマネキンを配したみたいに、映像に立体的な感じが出るし、全く本件に関係ない外野って感じもでるし、思考が回る瞬間の一瞬を表していそうで、頭の中がくるくる回るって感じが出るでしょう。それに、フランス語の語感も、なんか、アンニュイな感じ、これを繰り返すと、不思議だが、心の苦しみの感じでたりしてね。バラック風なBGMも苦悩を表現するのにいいよね。画面のシンメトリーも映画自体が細かく作られていることを表すのにいいよね。または、人間心理の構造を示しているし、心理主義かって…… なんて、考えて作った映画なのじゃないかしら。話は、三角関係でどっちを選択するのかって、単純なんですけど。でも、最初は、男性の妄想と、女性の恋に対する、恐ろしいばかりの、忘却、って、平行線で最後までいくのかな、とか思ったら、(そこら辺を「羅生門」を参考にしたんでしょうけどね)、それなりに、女性の葛藤があって、普通のエンディングになりました。平行線のままのほうがよかったりしてね。 [DVD(字幕)] 9点(2010-05-05 22:30:17)(良:1票) |
17. 甘い生活
《ネタバレ》 この監督は、映像にメタファーを散りばめているんですね。ストーリーなんか二の次。真の映像作家。そう思えば、難しくもなんともない。一シーン、一シーン、あ、これはそうだ、あれはこの例えだ、と勝手に思えばいい。冒頭のキリスト像の宙づりから、あ、もう、宗教をコケにしているな、と思うし、それが、ローマの街だと思うから、ほほうって、そういうことね。トレビの泉のシーンも、ベッドシーンの代わりと思おうが、歴史を無視している現代性と思おうが、それも自由。パパラッチ(この映画からこの言葉は出たのかしら)なんて、腐った物(退廃した貴族とインテリ)にたかる蠅とでも思えばいいし、主人公のお父さんも、善人を狂わせる街ローマって言いたい材料かもしれない。そんな街早く逃げなさいって、ね。ひっきりなしにアメリカへの傾倒があるが、どこか明るいアメリカをローマの対照物と出しているような感じ。最後の魚、それは、主人公の姿でしょうし、最後の少女、健康的な正常な世界へ戻る差し伸べられた救いの手、正常になる最後のチャンス。それに背を向けた。夜の世界でしか生きられない。踊らないと生きられない。酒だ、女性だ。そして、この監督、横の動き、横長に人物、物を配置する構図が好きですね。それに横といえば、行列好きだなぁ。アメリカ女優で一回、田舎の屋敷で二回、最後のパーティ退場シーンで三回、もっとあったかな? この行列になんとも哀れさと滑稽さを出すのを発見したんでしょうね。8 1/2 でもやってたなぁ。この退廃映画、不思議なのは、こんな不道徳いかんと思うのではなく、どこか憧れてしまうんですね。映像の魔力ですよ、きっと [DVD(字幕)] 9点(2008-02-06 22:31:42)(良:1票) |
18. ワンダとダイヤと優しい奴ら
《ネタバレ》 笑いました。イギリスのすました顔して裏では捻くれていじけた悪趣味のユーモアとアメリカの裏も表も無い分かりやすい馬鹿ジョークとの激突。むしろ、うまい混ざり具合。生理的に気持ち悪いところを責めるイギリス、言葉で、パンチラインで、相手をねじ伏せるアメリカ。一番良い例は、熱帯魚を食べて、口を割らせるシーン、「緑はまだ熟してない」と来た。他にも、弁護士の家での隠れん坊、突然のスパイ活動「イギリスはソ連の一部」、窓から逆さ吊りの謝罪、ロシア語を言いながら、洋服を脱ぐ男。お婆さん殺しと犬の犠牲、法廷でおかしくなっていく弁護士、などなど可笑しい所が次々。アメリカの男のシーンは全部おかしい。でも、私の一番は、ロケットのチェーンを食べるところ。たまらなかったなぁ。ジェントルマンが完全な馬鹿になった瞬間。イギリス人はやっぱり自虐的なところで笑いをとるなぁ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-02-24 15:44:40)(良:1票) |
19. レ・ミゼラブル(2012)
《ネタバレ》 点数は悩みました。この映画のために脚本演出歌等全てがオリジナルで作られているのならば、最高得点でしょう。ですから、レミゼラブルを全く知らない人にはお勧めします。だけど、これはやはり舞台で見るほうが良いと思います。舞台で磨き上げられた作品です。全く同じ内容を映画に移しているのですから、例えて言えば、料理は同じで、店の雰囲気とか店員を変えただけのような感じがしてます。やはり、内容を作るところに大部分の力がいるのですから、だから、この点数。同じ内容を映画とどう変えるのか。おそらく、CGを使って映画的映像でスペクタクルな感じを出すんだろうかな、と思ってましたら、冒頭からその通りでした。それから顔の大写しを執拗にしてましたね。まさに、舞台との差異化を図った演出なんだろうなと思いました。客席からは見えませんから。でも、どうでしょうか、ちょっと疑問です。舞台は顔がよく見えないからこそ良いのではないのか、つまり、感情表現を、音楽と歌と体の動きなどで観衆に想像させるのがいい点なのではないかと思うのです。「悲しいです」みたいなことを言って、悲しい顔を大写しで見せることはどうも映像の力で勝負する映画としてはマイナスのような気がします。是非、舞台の方をご覧下さい。それに、舞台の方では、ちゃんと拍手することができますよ。 [映画館(字幕)] 7点(2013-01-13 22:39:46)(良:1票) |