1. 崖の上のポニョ
正直なところ、よく分からない。宮崎氏自身が「子どもたちのために作った」と公言しているのだから、分からなくても文句を言うべきではないのかもしれない。いずれにしても間違いないのは、僕にとっては面白くも何ともなかったということ。 この程度の映像であれば、それだけを見て大人が賞賛するほどではない。ストーリーは無いも同然。宮崎氏の、ほのぼのとしたファンタジックな世界観を表現しただけ。 宮崎駿は世界最高のアニメーション作家であり、世界最高の映画監督の一人であると思う。しかしながら、残念なことに世界最高の脚本家ではない。<改行> すでにかなりのお年寄である。この巨匠が映画を作れる時間は、無限にあるわけではない。早くナウシカ、カリオストロ以上の、いやせめてそれに次ぐ傑作を。切に求める。 そういえば宮崎アニメの、というかジブリ作品について他にも文句があったのを忘れていた。声優以外のタレントを使うのをやめてほしい。有名人の集客効果を期待しているのか。しかし日本映画において、「宮崎駿」というブランド以上に集客効果があるものなんぞ、無い。タレントは声優ではない。しかも観客は顔を知っているから、顔をイメージしてしまって映画に入り込めないことが起こりうる。ただの邪魔なのだ。 [映画館(邦画)] 4点(2008-08-27 18:15:17)(良:4票) |
2. ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1
このシリーズの今までの作品とは違って、サスペンス調。 あまり面白くない。僕が思うに、ファンタジーとサスペンスというのは非常に相性が悪いのではないかと。何がどうなったら安全でどうなったら危ないかという、観客に緊張感を与える元になる設定が、完全に架空のものだからである。 だから我々は、箱が壊せなくて非常に困った、幻の剣が見つかってよかった、妖精が意外と強くて助かった、などの一つ一つのイベントを見終わってから、「そういうもんなのね」と思うしかない。途中経過でハラハラすることがない。 だがかといって、リアリティーを強めるとこんどは「ハリー・ポッター」ではなくなってしまう。ハリポタという名の下で観客に緊張感を与えるのは難しいのではないか、と僕は思う。 [映画館(字幕)] 4点(2011-01-11 16:39:02)(良:3票) |
3. プロメテウス
SFホラー/アクションとしてはまあまあだったのかなあ……。一応最後まで、緊張して見たので。 ただ、映像が「怖い」よりは「気持ちわりい」の方に寄っていたので、多分もう一回見ることはない。 話の構成から舞台、細かい描写まで全体として「エイリアン」第一作を踏襲してるのは苦笑。何しろやってるのが同じ監督だから、オマージュでもなしパクリでもなし、何と言っていいのか分からん。「横着」かな(笑) 話の大きな流れから細かい部分まで腑に落ちない点は大量にあるが、もういいっス。個人的には、リドリー・スコットの力量は信じてない。こんなもんでしょ。 あ、そうだ。この3Dは不要です。映像の作り物っぽさが増すだけ。 [映画館(字幕)] 6点(2012-09-03 11:50:53)(笑:1票) (良:1票) |
4. ベイブ
これは笑う。動物たちのやりとりがとにかく可愛く、ほほえましい。動物の擬人化映画にしては珍しく、その姿も動きもあくまでもリアル。現実にない動きといえばせいぜい、若干の表情があることぐらいか。従って当然、豚は豚なのである。現実そのもの豚というのは、あまり可愛くない。その豚ちゃんが映画を見ていくにつれ、可愛くてしかたがなくなってくる。これがこの映画の力だ。リスや子犬など、可愛いものを可愛く見せることはアホでもできる。豚ちゃんをその姿のままで可愛く見せることは、なかなかできない。個人的には、ベイブが「ラーラーラー」とクリスマスソングを歌うところと、羊たちを強引に従わせようとして失敗し、素直に謝り和解する場面が一番好きだ。 [DVD(吹替)] 8点(2008-11-25 10:50:46)(良:2票) |
5. アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン
《ネタバレ》 残酷なシーンも、サスペンス要素を盛り上げ緊張感を高めるためなら意味があるだろう。しかしこの映画ではそうではない。血なまぐさい場面が、だらっだら延々と続くだけ。 不快。極めて不快。 キムタクは常に血まみれで、どういうわけか怪我人を直す不思議な力があるらしい。ハートネットはキムタクを必死で探すでもなく、以前の猟奇殺人の犯人を思い出してはわめきちらしている。イ・ビョンホンは仕事をミスした部下を金槌でぶっ叩いて殺し続ける。 それぞれ全部、気持ち悪い。そして全部、話として面白くない。 最後のシーンでキムタクがキリストに模されていることが暗示される。一応その不思議な力とか、自分を犠牲にして他人を救っていることの説明にはなるわけだ。しかし、だからどうしたというのか。それでこの映画のつまらなさが変わるわけではない。その程度の理由付けで、この映画の全編にわたる不快さを正当化できると思うなよ、と もしかして、男性スター3人の裸の上半身を見せることが主眼の映画じゃねーの? それだけじゃあまりにも露骨なんで、一応映画としての体裁ととのえたるか、みたいな。 [映画館(字幕)] 0点(2009-06-28 01:30:18)(良:2票) |
6. エイリアンVS. プレデター
《ネタバレ》 本気で期待したらガッカリするかもしれんが、キワモノであることを承知の上で、暇つぶしに観るなら悪くない。 この映画が作られると聞いたとき、少々疑問に思う点があった。見た目と行動がまるっきり野生動物のようなエイリアンと、高度な科学技術で作られたらしき防具と武器で武装しているプレデター。プレデターは透明になれるし、飛び道具まで持ってる。この二つが対等に闘うのは不自然だ。 で、この映画の設定はこうだ。プレデターは、「エイリアン狩り」をおこなうために、(人類にとって)太古の昔に自らエイリアンを地球に持ち込み、飼ってきた。飼育はすべて機械がおこない、プレデターは常駐しない。その 「狩り」 をするためだけに、プレデターは100年に一度地球にやってくる。 これは、映画 『プレデター』 を観たことのある者なら、うなずける話だと思う。プレデターは大量殺戮をするためではなく、自らの武勇を証明するためだけに、強い地球人を選んで 「狩り」 をするのだ。基本的にプレデター優位の戦いである点も納得できる。これを説明する場面が出てきた時、わたしゃ満足しました。それまで下の方をうろついていた目盛りが上昇し、「最低限の満足レベル」を越しました。 あと映像的には、エイリアン、プレデターそれぞれキモいし、グロいし、上出来かと。ああいうもんだから。 途中からプレデターと主人公が仲間になるっつー奇想天外な展開も、考えようによってはよし。人間とは全然力の違うバケモン同士の戦いに人間が一枚かむには、あれしかないわな。で、組むとすればさすがにエイリアンの方はあり得んだろ。 ただ、エイリアンは確かに見た目と行動からすると野生動物としか思えんが、もともと宇宙船を作るくらい高度な文明を持っていたはずなんだがなあ……。もっとも、食物を採る時は一切料理などせず生身の獲物にいきなり食らいつくばかりだから、少なくとも食文化はまったく発達していないと思われる。 それから最後の最後、ラストシーンもいい。あの後味の悪さ、こういう映画には不可欠だろ。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-10 02:48:34)(良:2票) |
7. 告発のとき
《ネタバレ》 戦争の悲惨さを描いてさえいればいい映画、というわけではない。ドラマとしての見ごたえがなさすぎる。 携帯電話の映像がもったいぶって少しずつ見られるようになり、イラクでの実態が明らかになっていくが、それほど衝撃的な事実があるわけではない。犯人探しのミステリーとしては、結局同僚の兵士が嘘をついていました、てだけのこと。ひねりもなし、サスペンスも無い。捜査を巡る軍と警察の対立も、軍の犯人隠匿工作などが絡むわけじゃないんで話に関係ない。 兵士の人間性をゆがめた戦争が、真の犯人だ……てことだろうが、そういう立派なメッセージがあっても映画として訴える力が弱くては仕方がない。 しかし被害者のあの無残な殺され方は何だったんだ……。ものすごい陰謀がにあることを想像するじゃねえか。何も無いのに。 最後まで見るのに非常に苦労した。 [DVD(字幕)] 4点(2009-03-21 22:59:20)(良:2票) |
8. クローバーフィールド/HAKAISHA
《ネタバレ》 エンドロールで流れるゴジラ調音楽。なるほど、納得だ。 素人ハンディカメラの映像に見せかけるという手法はそもそも、リアリティを演出するためのもの。「もしかして本当にあったことなんちゃうん」と観客に思わせるためのもの。ところがこの映画では、巨大怪獣が街を襲う。そもそもあり得ないことを描いているわけで、リアリティも何もない。いわば水と油、矛盾するものを混ぜているわけで、そうする事によって何かを生み出そうというアイディアとチャレンジ精神にまずは拍手したい。 が、その素人ハンディカメラ、結局映画にとってプラスだったのかマイナスだったのかというと、マイナスの方が大きかった。「こんな状況で悠長にカメラ回してるわけねーだろ」と百回ぐらい思う。誰かが「撮ってんじゃねーよ」と言わないわけねーだろ、と二百回ぐらい思う。最初の30分ぐらいは、素人カメラが一刻も早く終わって通常の映像になることを願ってた。次にカメラのぶれ。90分あれを見させられるのはきつい。そして素人カメラらしい手ぶれがありながら、バケモノが目にはいったらご丁寧にアップしてピントを合わせる、てどういうことよ。それと、場面がとこどころ飛ぶことが、ビデオを編集しているということを感じさせる。リアリズムにこだわるなら、編集無し、リアルタイムにまでこだわらなきゃいけない。 上手かったのは、こういうカメラだからこそ起こりうる、バケモノのチラ見せ。徹頭徹尾チラ見しかできなかった怪獣が、最後に全身カメラに映る場面は、それまでじらされただけに壮観だ。怪獣は見たらがっかりしない程度に、気持ち悪くてよくできてます。 トータルで見れば、パニック映画として及第点なんじゃないでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-21 00:21:15)(良:1票) |
9. JAWS/ジョーズ
この映画の中に、僕が今まで観た映画の中で最も印象に残ったシーンの一つがある。最初に見たのはテレビで、確か小学生の時だったと思う。 鮫退治のために、ベテラン漁師とともに船で沖へ出たブロディ署長。署長は横柄な漁師にこき使われ、罵声を浴びせられ、ぶつぶつ文句を言いながら船尾で鮫のエサをまく。「てめーの顔を見るぐらいなら、人食い鮫と顔をつきあわせてる方がマシだ――」署長が船長に対する憎まれ口を言った瞬間に海面が二つに割れ、ドラム缶ほどの大きさがありそうな巨大な鮫の頭が、何重にも生えた牙の列のある口中を見せながら現れる。鮫はエサである肉塊を数個まとめてガブガブと飲み込み、そのまま、その頭と同様巨大な波しぶきと波紋を残して、海中に消えてゆく。署長、一言も発せず立ち上がり、そのままフラフラと後退し、船室へと入っていく。そして横にいる船長に言うかのように、また独り言のように、つぶやく。「…………この船じゃ、小さすぎる」 この、「この船じゃ、小さすぎる」 以上に署長の鮫への恐怖と、これから始まる壮絶な死闘への予感を表現する言葉は他にあるのかと、僕はいまだに考える。 そのシーンに衝撃を受けた僕は新聞のテレビ欄を見て、本当は見なくても分かっている 「スティーブン・スピルバーグ監督」 という文字を確認し、そしてその名を心に刻みつけよう、と思った。 僕の記憶の限りでは、それが映画において「演出力」というものが何か、ということを知った最初の瞬間だった。 [地上波(吹替)] 10点(2008-02-11 22:12:46)(良:1票) |
10. トータル・リコール(2012)
《ネタバレ》 オリジナルの方はアクションもさることながら、ストーリーが魅力的だったと思う。キモはやはり、マインドコントロール前の主人公がモニタに現れて「現在の」主人公に裏切りを迫る場面。今この新作を見る観客のほとんどが、そういうストーリー展開も結末も知っているのではないかと思う。となると、アクションを盛りに盛って見せるしかない。 そういうわけでこの映画は、アクション映画になってしまったのではないかと思う。 やっぱ多少、メリハリがないとなあ……。静かな場面、激しい場面のバランスがとれてこそ、緊張感も増すでしょ。なんつーか、別に聞きたくもないバンドのライブ会場に放り込まれたみたいな感じかな。騒々し過ぎです。 [映画館(字幕)] 4点(2012-09-03 12:07:57)(良:1票) |
11. ダンサー・イン・ザ・ダーク
こいつァ、好き嫌いの大きく分かれる映画だろうなあ……。 俺はどうかというと、めっちゃめちゃ嫌いだね。こういう映画は。 はいそりゃもう、かわいそうです。気の毒です。悲しいです。 だけどさ。悲劇であると同時に問題を提示するとか、社会の断面を切り取るとか、あるいはかすかにでも希望を見せるとか、何かないとさ。ただの不幸の押し売りじゃんよ。 こんなもん、見ず知らずの人のお葬式に参加して泣いてくれ、てのと同じ。流す必要のない涙よ。仮に泣くとすれば、だが。 ビョークは大したものだ。言ってはなんだがあまり綺麗でないあの顔で、あれだけ可愛さを醸し出せる人って本職の役者さんでもあまりいないんじゃないか。驚いたのは、鼻歌うたってる時点でそれがすでにアートになってることよ。 ビョークの力を再認識した。それ以外何もなし。 そういえば手ぶれの激しいハンディカメラ風映像だったが、何か意味あるのか。ドキュメンタリー的ストーリーじゃないんだから、無意味だろ。 [DVD(字幕)] 3点(2009-08-04 17:05:36)(良:1票) |
12. アバター(2009)
三次元効果の加わった映像は、驚異の映像と言っていい。映画の開始から5分間、僕は画面を唖然として見ていた。その間字幕をよく読まなかったため、話の流れを追うのにしばらく苦労した。 だが……それでも、これだけの力をもった映像でも、しばらくすると慣れてくる。飽きてくる、と言ったら残酷だが、より正確だろう。30分もすれば、シーンが切り替わるたびに興奮していた心は、次第に落ち着きを取り戻してくる。 しかし映像が立体的であることよりも、もっと大きな驚きがあった。 映像のCGっぽさが無い。 ここでいう「CGっぽさ」とは、もちろん良い意味ではない。CG独特の、質感のない映像。パソコンのモニタのドットが見えるかのような映像。画面上でどんなにものすごい事態が描かれていても、「しょせんCGだから」と吐息がもれるような、そういう映像のことだ。 しかし『AVATAR』では、それがない。CGと実写の間の違和感がない。 これが、この映画の成功の最大の要因である。 このことが3D効果によってもたらされるものなのかどうか、僕は知らない。だがその可能性は高い。なぜなら、『AVATAR』の映像をテレビやネットの動画で見ると、その印象は全く違うからだ。テレビで見る『AVATAR』の予告は、まさにCG。一瞬にしてCGと分かる、僕が最も嫌いなタイプの映像だ。その激しい「CGっぽさ」は、CGというよりもアニメーションと言う方がふさわしい。だから僕はもともと、この映画をあまり見る気がおきなかった。 もしジェームズ・キャメロンがCGの弱点を克服するために3Dという手を打ったのだとしたら、その功績は非常に大きい。宣伝文句は確か「驚異の映像革命」だったか。確かに革命だ。だがその内容は3D映像ではなく、CGの弱点の克服だった。 CGについて書くだけで長くなった。ここ数年いろんな映画を見るたびに、CGのもつ限界について懸念していた。これをどう克服するかが、映画界の一大ミッションだと思い続けていた。その懸念への回答の一つが『AVATAR』で示された。非常に喜ばしいことである。 内容の方も良い。もし上に書いたような「映像革命」が無かったとしても、この映画は非常に好きな映画の一つになっただろう。アメリカの、他国を武力で制圧しようとする姿勢をまっこうから批判したことは、大いに評価されていい。 映像革命の意味は果てしなく大きいが、それだけの映画ではない。傑作である。 [映画館(字幕)] 9点(2010-03-01 01:45:57)(良:1票) |
13. スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
《ネタバレ》 シリーズ第1作、エピソード4の次に良い。とにかく映像がよくできている。映像のすごさという点では今まで僕の観てきた映画のなかでは 『ロード・オブ・ザ・リング』 が最高だったが、 『エピソード3』 もそれに匹敵する。コンピュータ・グラフィックの進歩の波に完全には乗り切れず、他の映画に少々遅れをとった感のあったスターウォーズ・シリーズだったが、最終作にしてまた映像技術の第一線に躍り出た。文句をつけるとすれば、この映画の中でも最もすごい、戦艦と戦士が空中で入り乱れて闘う場面、あれを映画の前半にもってきたのは構成上よかったのかという疑問は残る。 アナキン・スカイウォーカーがダース・ベイダーへと変貌するに至った過程は少々冗長ではあるが、それがこの映画のテーマなのだから仕方なし。そこそこ納得できる過程にはなっている。 全体的にシリーズ中で最もシリアスで、暗い。他の作品では戦闘シーンでも生身の人間を感じさせない、ゲーム感覚にあふれる映像だった。エピソード3では画面に現れるのが全て架空の物体・人物であるにもかかわらず、どこかベトナム戦争や第二次大戦の映画に通じるようなリアルさがある。というか、明らかにアメリカ海兵隊をモデルにしたような軍隊も出てくる。映画自体のテーマがアナキンの暗黒面への転落という重いテーマであるため、戦闘シーンもそれに合ったものにしたと思われる。 前から思っていたのだが、宇宙で最強の戦士であるジェダイ/シスの騎士の戦いが、最終的にはライト・セイバーによる斬り合いに集約されるのはどうなのかと。私らチャンバラは見飽きてるせいもあって、どーも迫力が感じられないのよね……。 エピソード1・2はスターウォーズ・シリーズにふさわしい傑作ではなかった。だがそれも、『3』 に至る壮大な長編の前編・中編だったと思えば納得もできよう。 映画史上最大のシリーズの製作が終了した。できれば、前言を撤回してでもよいから、エピソード7以降を作ってもらいたい。ルーカスが監督をやる必要はない。エピソード3を誉めた後でなんだけれども、ジョージ・ルーカスがプロデューサーとしてはともかく監督として現代最高の人物でないことは明白である。 [映画館(字幕)] 8点(2008-01-27 02:03:51)(良:1票) |
14. 明日に向って撃て!
激しくつまらないですな。 確か「名画」扱いされていたような気がするが……間違いだったか? こういう、社会的に見て「悪人」が主人公の時は、観客が感情移入しにくいから、引っ張り込む何かがなきゃいけない。話が圧倒的に面白いとか、キャラがめちゃめちゃかっこいいとか、もっとあくどい巨悪に一泡吹かせる、とか。 この映画の主人公の二人、ただの悪党やん。そりゃ追われもするし、大勢の警官に囲まれてめちゃめちゃ撃たれもするわな。 強盗してる奴らを好意的に描くこと自体気持ち悪い。軽妙なんてものじゃなく、ただのモラル欠如だろ。 [DVD(吹替)] 3点(2009-07-06 01:03:03)(良:1票) |
15. ガタカ
《ネタバレ》 割と面白かったです。ただ、見る前にここの平均点を知っていたのだが、そこから期待したほどではなかった。 近未来の管理社会に対する抵抗。生まれながらの素質だけで人の運命を決めてしまう社会に対する抵抗。使い古された、陳腐なテーマではあるが、魅力的だ。その力のせいか、いつのまにか主人公に共感している。 ストーリー的には、殺人事件の操作を巡る話で最後まで行くとは思わなかった。映像的にすごい場面はないし、サスペンス要素も強くない。 ラストの少し前、検査官の先生の「告白」が良かったね。管理社会を最も象徴しているはずの検査官が、実はそれに疑念を持っていて、DNAを偽装する主人公の気持ちを理解していた。あれでグッと好感度が上がりました。 ものすごく面白いってわけじゃないが、好感のもてる作品ってとこですかね。 [DVD(吹替)] 7点(2009-08-09 21:35:48)(良:1票) |
16. ダークナイト ライジング
《ネタバレ》 歴史的傑作であった前作と同じ監督・ほとんど同じ出演者となれば、仮にその80%の出来としても充分おもしろい映画になると期待したが……。そうはならなかった。面白い/つまらんの二択を迫られたら、「つまらん」の方になっちゃうね。 理由の一つは悪役が、前作のジョーカーほどには魅力的でなかったこと。 もう一つは、こっちの方が大きいのだが、場面と場面のつながりが出来てなくて、見る上で何に注目すればいいか分からないことが多いこと。 野球に例えると、2アウトランナー1塁の場面があったとする。バッターがライト前ヒットを打つ。これで1・2塁か、あるいは1・3塁かと思ったら、ランナーは3塁を回ってホームに帰ってきた。実はそのバッターの2球目にランナーが盗塁をしていたが、その部分の映像がカットされていたのである。 もし観客が「ランナー2塁」と分かっていれば、シングルヒットが出た時点で点が入るかどうかを緊張して見守ったはずだ。ところが知らないから、あくまで長打が出るかどうかだけに注意していた。いわばその部分の緊張感を「損させられた」のである。 こういう風にダークナイト・ライジングは、何がどうしてこうなり、この場面の一番注目すべき点はこれだ、と思わせる展開のスムーズさが欠けている。 アクションはすごい。しかし、個々の場面はバラバラだ。大きな期待をしていただけに、極めて無念である。 ラスト、ウェインが死んでいたら駄作とまで思ったかもしれん。人の死をドラマ性を盛り上げることに使うのは、大嫌いだ。自動操縦の伏線も生きたし、良い結末です。 あ、そうだ。核爆弾が沖で爆発して一安心、てのはやっぱり、被爆国とは核兵器に対するリアリティの持ち方が違うのかなと感じた。風下には恐ろしい量の放射能が降り注ぎ、地獄が現出する。 [映画館(字幕)] 5点(2012-08-04 11:31:52)(良:1票) |
17. 風と共に去りぬ
《ネタバレ》 スカーレットのキャラクター、自由奔放なようでいて一人の男をずっと慕い続けるという、いまいちよくわからない面もあるが……基本的には「小悪魔キャラ」だと思う。で、そういうキャラが魅力的であるためには、可愛いことが絶対条件。しかしこのスカーレット、生意気なだけで立ち居振る舞いと言動に可愛さがない。顔は……少なくとも現代の日本人から見て、とりたててものすごく魅力的ではない。 なのでこの人、ただの「いやな奴」なのだ。 そういう人間に善良な人々が振り回され続ける、不愉快な3時間40分。 まあ必ずしもすべての言動がエゴイズムから発生しているわけではなく、時々他人のことをおもいやっていることもある。しかしそれも、全体の不快さを覆すほどではない。 南北戦争により没落する南部の地主を描く大河ドラマとして前半部分を見るなら、見る価値がある。冒頭のスカーレットたちの優雅な暮らしぶりも、没落してからの苦闘と対比するために意味がある。 映画全体として価値を持つためには、後半部分はいらない。妹の恋人と結婚したり、その人が死んだり、アシュレーが大好きだったり、バトラーとケンカしたり、娘さんが亡くなったり、全部いりません。 映画の名声と、実際の内容の差が映画史上でも最も大きい作品のひとつだと思うね。 [DVD(字幕)] 3点(2009-07-27 01:42:42)(良:1票) |
18. キング・コング(2005)
《ネタバレ》 全体として眠い映画だった。 ピーター・ジャクソンと言えば『ロードオブザリング』である。で、この『ロード』シリーズの最大の見どころは何かというと、特殊メイクとCGでできたクリーチャー(化け物)と、同じくCGでできた壮大な戦闘シーンである、と僕は思っている。しかしその二つが映画史上でもまれな高いレベルに仕上がっていたため、それだけでも充分に見る価値があった。 『キングコング』でも、見るべき箇所はCG場面だけ、という意味では『ロード』と同じ。だがこっちは、見る価値のある場面がロードに比べて圧倒的に少ない。 3時間という長丁場のうち最初の1時間は登場人物の事情やら舞台背景やら何やかんやの説明に費やされる。はなはだ退屈な時間帯。 そいで島についたら、驚いたことに「コングの島」じゃなくて「恐竜の島」なんだこれが。コングよりでかい恐竜たちが、何十匹も我が物顔で徘徊しておる。キングコング、島の主役じゃねーじゃん。人間が恐竜に近づいたら、大人しいはずである首長竜(ブラキオサウルス?)が一匹残らず、猛スピードで人間を追いかけ始める。で、なぜか崖っぷちまで追いかけてきて恐竜は足を滑らせてどんどん谷へ落ちていく。そういう意味のない独り相撲を描いてどうする。 それから、例によってコングが女性をさらって住処へと持ち帰るのだが……。コングの身軽なこと身軽なこと。丘から丘へひょいひょいと飛んで、土が崩れないし地面も揺れないてのはどういうことよ。その間、手につかんだ女性をブンブンと振り回しておる。全身粉々になってなきゃおかしいだろありゃ。 それからこの映画の最大の見せ場である、コング対ティラノサウルス?3匹の戦いとなる。ここも化け物どもの動きが速すぎて、重量感が全くないのよ。そういう数々の文句がありながらも、この場面は緊張感があってなかなか良い。 この場面に次ぐ見どころは、人間よりでかい巨大なヒルやらクモが人間を襲う場面。その気持ち悪さに(悪い意味で)背筋がゾクゾクしましたわ。あのキモさからするとこの監督、ホラー大好きだとしか思えん。 映画の見どころ、以上。コングがアメリカへ連れて行かれてからは、特記すべき場面なし。 [DVD(字幕)] 5点(2008-01-27 01:45:04)(良:1票) |
19. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 けっこう面白いです。映像は安っぽくてテレビドラマの雰囲気なんだが、話が面白い。 よくあるタイムスリップ系ハッピーエンド話かと最初は思ったんだが、そうじゃなかった。誰かを救うと、誰かが不幸になる。のみならず、主人公含め主要キャラの人間性と人生がまるっきり変わってしまう。いくらなんでもそこまでは変わらんだろ(笑)と思ってたが、だんだんと、こんどはどんな風に変わるのか楽しみになってくる。最後のチェンジの一回前、日記も何もかも主人公の妄想だというセリフがあり、おっとこりゃやられたかな、と思わせるけどもそこからまた一回転があった。 何度チャレンジしても全員が幸福になることはなかったという展開は、人生の岐路で違う道を選んだとしても、それを根本的に変えることなどできない、というメッセージがあるような気がしないでもない。 7歳のアヴァン、神経質で根性が悪そうで、いいねえ。彼が影の主役だな。いちばん人生が変わっちゃうのはケイリーだな。あの豹変ぶりには笑ったよ。 [DVD(吹替)] 7点(2009-08-02 13:04:50)(良:1票) |
20. ノーカントリー
《ネタバレ》 最初から、わけがわからない。大量殺人の場面に偶然でくわした主人公があわてるでもなく騒ぐでもなく、平然と金を探し、持ち去る。もともと主人公自身が持ち逃げ犯だから、義も理もなし。追われるのも仕方ない。 とてつもなくサイコで不気味なあの殺し屋も、追われる者への共感がなければ怖さ半減。 さらに保安官トミー・リー・ジョーンズ。主人公と殺し屋の足跡を後から追いかけてブツクサ言うだけで、存在する意味なし。 主人公が殺し屋に追いつかれると、大した抵抗もなく、従って盛り上がりもないまま殺される。そこでさっさと終わりゃいいものを、またジョーンズが事件を回顧してブツブツ言う。 個々の場面の緊張感はある。冒頭の荒野の映像は、殺風景な風景なのに息をのむほど美しい。演出90点、脚本10点。そんな映画だ。 [DVD(字幕)] 5点(2009-02-01 22:01:56)(良:1票) |