1. ロボジー
《ネタバレ》 群像劇を得意とする矢口史靖監督の作品、と云う事で、封切日早々、観に行った。期待通り、巧みなプロットで、観る者を引き付ける、笑わせる、そして頷かせる。 ヒト型ロボットなんて作れる筈が無いから、手っ取り早く、人に入って貰って急場を凌ごう、と云う発想をする男3人組と、奥さんには先立たれ、地元老人会に顔を出すだけが社会との接点の、何処にでも居そうな初老の男性主人公。この意外な組合せが、秀逸な展開の鍵。 展示会だけなく、駅前でもロボットをお披露目しろと社長に云われ、窮地に陥る3人組と、世間で評判を取ったロボットだけど、実は中に入っていたのはこの俺なんだよ、と云っても、誰も信じず呆けとしか受け取って貰えない不器用な主人公が、駅前交差点で遭遇する。このシーンは素晴らしい。瞬間、人の愚かさと哀しさが喜劇を生む。困った3人組を一瞥するや否や、状況を察し、不本意ながら協力することを決意するのを物語る主人公の一瞬の表情の演技に、正直、可笑しくて涙が出た。 ここからの展開は急ピッチ。先を読めない4人が、あたかもシリアスな事態になろうかというラストに向かって、行動がエスカレートしていく。ここら辺から登場するロボットお宅の女子大生の存在も良い。実は彼女も、4人同様、周りが見えないというか、深く考えずに大胆な行動を取るタイプの人間だ。この共通性が、ラスト近くのクライマックスで、そして正にラストシーンで、本領発揮する。 根幹は優しさか。立場もあろうが、無理難題を受け入れるお人好し3人組。彼らを助ける主人公は孫思いのおじいちゃん(ロボット姿で娘宅に行く?!)。ロボット騒ぎに振り回されている4人の立場の大変さを最後は慮る女子大生。皆、呆れる程、優しい。 ラストシーンの主人公の表情も最高。困った4人組(3+1になっている)を、あたかも待っていたが如く、歓待するが如く、ニヤっと笑って受け入れる。 一種、ファンタジーだけれども、また観たいと本気で思う。 [映画館(邦画)] 8点(2012-01-16 19:32:07)(良:2票) |
2. ハッピーフライト(2008)
《ネタバレ》 腹抱えて笑えるだけの映画と思って観たら、いやいや大した群像劇というのが感想。綾瀬はるか中心のコメディかと予想していたが、彼女、そんなに出番がある訳ではない。 ホノルル便チャーター機を飛ばすのに、パイロット・機内CA・地上スタッフ・オペレーションセンター・管制塔・レーダー室等々、六種類のStageが同時進行的に関わる様子が、ユーモラスに、且つリアルに、描かれている。 特にこのリアルさは、絶対に事前取材で収集したエピソードを活用しているのだろう。羽田到着後にチェックインバッゲージを間違ってピックアップしてリムジンバスに乗っちゃう若い女性(これがKYな今風の軽薄っぽいキャラ!!)を見つけるや、即、全力疾走で追い掛ける田畑智子の行動力、搭乗直前に飛行機怖いとトイレに閉じこもる新婚妻を説得する田山涼成の巧みな話術、整備場から見学中学生に工具持ち出されたとは露知らずに総出で工具探しする田中哲司達整備士の困惑、台風の風向き予想をパイロットに伝えるも、緊急着陸準備でテンション高い田辺誠一・時任三郎に怒られて交信デスクから身を逸らしてストレス表現するDispatcher肘井美佳の可愛さ等々‥、飛んでる機内と異なる職場で展開される出来事にそれぞれが必死に取り組んでいる。 この、当事者達は必死なんだけれどでも、観てて笑っちゃうシーンが、絶対に本作の見所。これが機上でも色々と有るので、必見だ。仕事って、こんなものだろう。ラスト、修学旅行生の一人に、綾瀬はるかが告げるセリフが、本作を凝縮している。あぁ、多分DVD買うだろうなぁ。 [映画館(邦画)] 8点(2008-11-24 00:46:12)(良:2票) |
3. イエスタデイ(2019)
《ネタバレ》 ビートルズの記憶を失っていなかったのは他に二人居て、その登場がこの物語の展開上、効いている。 70代で元気なジョンレノンが出てくるところ、ああ、この映画はファンタジーだったんだな、と思わせる。そこからラストまで、昇華される感じで観ていてとても気持ちが清々しくなった。 主人公を支えるヒロイン、とても魅力的、もうそれだけで君は十分、人生を謳歌しているじゃないか、と云いたいところ、それがラストで具現化される。 HeyJudeをBGMにエンドロールを眺め、元気をくれた、と貴女も貴方も思う筈だ。 [インターネット(吹替)] 8点(2020-05-06 11:30:04)(良:1票) |
4. 怪盗グルーのミニオン大脱走
《ネタバレ》 シリーズ三作目、お馴染みのミニオンが大活躍と思いきや、そこは期待外れでした。 刑務所内で囚人仲間を牛耳るところが自分のツボでした。自分達は本来、キャラは悪なのだ、と云う中途半端さが彼らの存在価値なのか。 一作目と二作目は、劇場公開後、BluーLayも購入しましたが、今作はTV放送を待とうかな、と。 ルーシーの活躍に1点加算です。 [映画館(吹替)] 7点(2017-08-26 18:03:12)(良:1票) |
5. ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
《ネタバレ》 昔、ロバートレッドフォードとダスティンホフマンが同じワシントンポストの記者を演じ、ウォーターゲート事件を描いた、大統領の陰謀、なる作品があった。本作は、それに先立つベトナム戦争の実態隠蔽をやはりポスト紙記者が暴く作品。 但し、地道な取材を通じてでは全く無く、いわゆるタレコミ的な情報ソース提供の資料を掲載に踏み切るか否かの葛藤プロセスが克明に描かれる。 記者の奮闘というより、民主主義国家に於いて報道がなすべき責務を新聞社として如何に遂行すべきか、国家反逆罪扱いなのか報道の自由なのか、揺れる者達の群像劇の映画。 トム・ハンクスもメリル・ストリープも、本来の個性は打ち出さず、役に徹した演技、それはそれで熱演だが、に終始する。が、この映画の最たる見所は、アメリカが培ってきた、否、今も培いつつある、民主主義の危機に瀕したときの具現化を丹念に描いているところだろう。 どうしても今のこの時期、59期目の元首を選挙で選出している最中の今のアメリカと比較してしまう。 第45代大統領トランプのこの4年間と選挙敗戦に際しての見苦しいこと甚しい往生際の悪さを、相当数の有権者が受け入れてきたアメリカと、この映画で描かれたアメリカ、どちらも本当に同じ国家なのか考えさせられてしまう、そんな映画。 日本も国民の半数近くは今の政府のコロナ禍対策を一定評価していると云う。劣化しているのは世界的な潮流なのかも知れない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-11-09 20:24:47)(良:1票) |
6. 南極料理人
《ネタバレ》 色んな分野のエキスパートの8名の男たちが南極で越冬する一年強の日々が描かれている。 男たちの間柄がベタベタしていないのが良い。堺雅人の視線で極地の日常を淡々と見せてくれる。皆が皆、どこにでも居そうなキャラで、観てていてこっちもリラックス出来る。 個々の仕事も誇張されている訳ではない。それは南極でも東京でも同じこと。ただ、『食べる』他はあまりに楽しみが少ない生活。ラーメンの材料が尽きると、仕事が手に付かないきたろうとか、食材に伊勢海老を見つけたのに、安易に海老フライに調理したり、抱腹絶倒と云う訳ではないが、それぞれのエピソードが心温まる。 堺雅人の調理する演技が秀逸。 私同様、ご覧になった多くの方が、多分、麺類を食すのではないか、と思います。 [映画館(邦画)] 7点(2009-08-25 19:45:46)(良:1票) |
7. 20世紀少年
《ネタバレ》 浦沢直樹は好きだが、この原作は完読していないので、逆に純粋に映画として観られた。 登場人物の構成が少し複雑で、70年代の少年達の誰がどの大人になっているのか、前半~中盤、少し戸惑う。似ているのは、ドンキー位だが、この大人は直ぐ消されてしまい、他は石チャン演じるマルオが体型的にわかる程度。 でも、映像は現代(2015年の未来も!?)と過去を何度も行ったり来たりするから、後半にはわかった気分になる。 「本格科学冒険映画」と謳われているが、「本格同窓会映画」である。豊悦がなかなか出てこないので、こいつがてっきり「ともだち」か? と思うも、実はバンコックでアウトローをやっていて、でもケンジ演じる唐沢からの連絡にいとも簡単に日本に戻り(ホントは日本が嫌いだろうに)、皆とニコニコ再会したり、原作とキャラ被る常盤貴子の頼り甲斐あるユキジの登場の仕方とか、そこらへんが印象に残る。佐々木蔵之介が後半、あっさり画面を去る。第二部には出ないのか・・・。好きな役者なのに残念。 つまりは、全3部作を前提に、今回の第一部では登場人物の紹介を主たる構成としている。どうなるのか?!どうなるのか?!一応、後半は引っ張られるが、確たる結論が先送りなので、第二部を期待するしかない。 いい味を出している唐沢だが、これも第二部以降は出てこない(だってラストに…)。 来年1月が楽しみだ。 [映画館(字幕)] 6点(2008-08-31 20:17:45)(笑:1票) |