1. カリートの道
《ネタバレ》 普通の成り上がり系のマフィア映画かと思いきや、感動的な人間ドラマでした。この映画のアクション、サスペンスはもちろん素晴らしいのですが、何と言ってもカリートという人物の放つ魅力がたまらないのです。 裏社会で伝説のような人物になりながら、ここまで恋人や友情や信頼関係というものを大切にする人間がいるでしょうか。おそらくリアルな世界ではいないと思うわけです。これはフィクションの世界だからこそできた人物像であって、私たちが憧れるような人物像のひとつのモデルとも思えるんです。 だからこそ、カリートの一挙手一投足、ナレーションの一言一言に必要以上に感情移入してしまい、等身大のカリートをとにかく応援してしまいます。 ただ、カリートはちょいちょい失敗もします。彼は決してヒーローではないんです。ミスジャッジしちゃうんです。そしてそのミスのつけっていうのは、すぐには返ってこないのです。後半に向けて、少しずつ蓄積されていくんです。 蓄積されるのはそれだけではありません。時間が経過するほど、カリートの貯金も貯まっていきます。夢がすぐそばまで近付いてきます。彼女ともうまくいきます。子供ができ、3人の未来がよりいっそう現実味を帯びてくるのです。 そして終盤、もう夢がかなう、目の前にある、と同時に、次々と、今までの失敗のつけや、過去の亡霊が、不安要素として一気に噴出してきます。 それはサッソでありパチャンガであり、クラインフェルドであり、イタリアマフィアであり、ベニーブランコでした。 ただ、終盤は、「いったい誰が、彼の夢を砕いてしまうのか」ということが考えられないくらいカリートのハッピーエンドを本気で信じてしまいます。嫌な予感は全然なくならないのに。そして、イタリアマフィアをふりきり、ホームで彼女と再会してほっとした瞬間、最悪のデジャヴを感じるわけです。『・・あれ、このシーンって。』 そしてはっきり思い出す間もなく、最悪のラストを迎えます。 映画全体が完璧なひとつの流れを作っていて、最後はもの凄く感動的で、もの凄く最低な余韻を残してくれる素晴らしい作品です。 でもラストがやるせなさすぎて、悲しすぎて、もうこの点数が精一杯です。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-05-23 14:32:49)(良:5票) |
2. ゼロ・グラビティ
《ネタバレ》 3D映画を初体験。IMAXではなかったのですが、その映像と臨場感に圧倒されました。今まで『めがねの上にめがねをかける』というのが何となく抵抗があって3Dを敬遠していました。ですが、実際映画が始まると全然気にならないものなんですね。 「みんなのシネマレビュー」で平均点8.9点!好きなジャンルのSF!そんなわけで、連れに「面白い映画があるから見に行こう」と行って一緒に見に行ったわけですが、感想は正直微妙です。 これほど凄い映像技術とリアリティで、なぜか終始第三者の視点で見てしまうんです。最後までいまいち映画に入りこめないのです。でも連れの感想を聞いて、その理由がわかりました。『U○Jのアトラクションみたい。』そうなんです。映画を見に行ったというより、アトラクションに行った感覚が強いんです。連れも自分も3Dが初体験で慣れていないということもあったでしょう。ですがそれより何より、ストーリーが足りないんです。映画としての面白さが足りないと言い換えてもいいかもしれません。 破片が来襲する場面では緊張しました。腰が浮きました。ライアンが宇宙空間に一人放り出されたときは、えもいわれぬ恐怖感を感じました。(正直ゆうと、序盤のこのシーンが一番怖かった。)マットが助けにきたかと思いきや、それが空想の産物だと知ったときには切なくなりました。ライアンが地上に降り立ったときには、もの凄い重力を感じました。一つ一つのシーンが素晴らしいんです。その臨場感だけでも、素晴らしい映画であることは間違いないのでしょう。だけど、人に薦められるほど自分自身が面白いと思えなかったのもまた事実。 映画が凄いということと、面白いということは、必ずしも一致しないようです。 [映画館(字幕)] 5点(2013-12-30 03:23:51)(良:5票) |
3. アベンジャーズ/エンドゲーム
《ネタバレ》 前作の『インフィニティ・ウォー』で最悪の終わり方をしたので、一刻も早く続きが見たかった本作。ですがこれを見る前に、『アントマン&ワスプ』と『キャプテン・マーベル』は見ていたほうが良いみたいなので、『ああ、もう!』って思いながら2作とも見ましたよ。ほんとにもう。ここに来るまでが長いったらありゃしないよ。 やはり映画は1話完結を守ってほしいものです。たとえシリーズものであっても、それは最低限守られるべきだと思うのですが。『続きが見たい』とか言っている時点でもはや連続ドラマでしょう。 で、本作。アントマンからの知恵によって、過去からインフィニティ・ストーンを取ってくる作戦。みんなで手分けして手に入れるその展開はテンポよく、軽いアクションあり、ドラマあり、なかなか楽しませてくれました。ドラ○ンボールみたい。 全部手に入れて指パッチン。みんな復活。手ぐるぐるの、勢ぞろい。もちろん敵もフルメンバー。そして最終決戦。そりゃあ盛り上がります。映画でこんなテンション上がったのは久しぶりかもしれないです。 ただねえ。最終決戦にブラック・ウィドウがいない。それはだめじゃないですか。女性ヒーローが勢ぞろいする瞬間があって超かっこいいんですけど、ここにブラック・ウィドウがいないのはどー考えてもおかしいでしょ。 せめて最終決戦、戦いで散ってほしかった。 基本的にこーゆー『お祭りヒーローもの』でヒーローが死ぬのは好きじゃないんです。そのプロセスにおいてはいくらピンチがあっても構いません。それを乗り越えるカタルシス。それが見たいのです。死んじゃだめ。 どーしても死んでもらう必要があるのであれば、それ相応の納得できる理由、相応しい散り方ってもんを演出してくれないと。今までずっと見てきたなかでも、ブラックウィドウは大好きなキャラ。なのにこんな最期、ひどいじゃないですか。 しかも前作でガモーラが同じ運命辿っているわけで、それを今作もう一度今度はブラック・ウィドウでやるってのはいくらなんでもあんまりじゃないですか? 映画は面白かったけどさ!! [ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-07-05 05:06:35)(良:5票) |
4. リバー・ランズ・スルー・イット
《ネタバレ》 評価が分かれるのもうなずける作品。なぜかって、これは男兄弟の家庭で育っている人にとっては、シンクロする可能性は非常に高いと思われるからです。言ってしまえば、こういった家庭というのは世間一般にはよくあって、だからこそ自分や自分の家族と重ね合わせて物語に入りこんでしまう人は少なくないと思うんです。 もちろん、それはこの映画の完成度が高いから成せる業であって、クレイグ・シェーファーやブラッド・ピットだけではなく、トム・スケリットとブレンダ・ブレッシンの迫真の演技があってこそ成り立つものだと思います。 特に両親、父親は弟のほうに愛情の天秤が傾きがちなのに対し、母親は中立で平等に愛情を注ぐ存在。兄にとって母親は救いであると同時に心に平穏をもたらしてくれたはずだし、父親にはもっと『自分のことだって認めて欲しい』と思っていたのが伝わってきます。 兄は少なからず不公平感を感じ、弟に多少なりとも嫉妬していた。そしてそれ以上に弟と両親を愛していたのです。 兄に転機が訪れたのが、シカゴの大学での教授職に採用が決まったこと。そして恋人との恋愛がうまくいき、結婚を考えていること。いままで、弟に偏りがちだった両親の愛情、弟に対するコンプレックスを払拭した瞬間。 父親が食卓で、いつものように『弟』の話を聞こうとします。「今日のニュースはなにかな?」って。借金で首が回らない弟、心ここにあらずといった感じで、「そうだなぁ」と考えていると、兄が「じゃあ、今日は僕がニュースを話そう。」と言って、教授職に就くことを報告します。父親は感動し、ただ一言、「素晴らしいニュースだ。」と。弟も「兄さんを誇りに思う。」と。 本当に感動的なシーンです。いつもマジメに、地道に頑張ってきた兄が、とうとう家族全員の祝福を一身に受けるシーン。 ところが、その直後、兄がシカゴに出発する直前。弟は右手を砕かれたうえに殺害されます。弟はきっと家族の中で神格化され、二度と兄が弟を越える(越えるという表現は適当ではないかもしれませんが)ことはないだろうということが、ラストの母親の表情と父親の台詞から感じられました。 ラストの年老いた兄が一人で釣りをするシーン。 感動的なラストであると同時に、もしかするとあの事件以来筆者の心は孤独だったという暗喩的な意味もあったのかもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2013-05-15 13:29:09)(良:4票) |
5. コンテイジョン
《ネタバレ》 淡々としたドキュメンタリーチックな映画。 2年前にコロナが世界中に流行し始めた頃を思い出します。 クラスターやロックダウン、濃厚接触者の隔離に、ウィルスの変異、実行再生産数から導き出される予想感染者数、この映画で想定されていたことはコロナ禍においてすべて現実のものとなりました。奇しくも感染源までほぼいっしょなのがまるでコロナを予言しているかのようで恐ろしい。 誇張した表現や演出はほとんどありません。リアル路線。リアルな作風は退屈と結びつきがちですが、この作品ではリアルな作風が感染症の恐ろしさと崩壊していく社会を強調していて効果的に働いています。 子供やケイト・ウィンスレットといった、普通の映画では犠牲にならないような人たちが次々と犠牲になっていきます。ケイト・ウィンスレットがその他大勢の人たちと埋葬されていくのは胸が詰まります。 世界規模のパンデミックを題材にしているわけですから、膨大な情報量をまとめなければなりません。1つ1つのエピソードが薄味になってしまうのは致し方のないことなのでしょう。だからこれだけリアル路線でいくのであれば、映画ではなくドラマでじっくり見せたほうが良いのかもしれません。 一番最後に『1日目』をもってくるストーリー構成は素晴らしいと思います。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2022-06-21 01:32:25)(良:4票) |
6. グリーンブック
《ネタバレ》 当時の人種差別の実態を、きっと誇張することなく描いているであろう作品。 富も名声も手に入れたピアニストでさえ差別の対象だったというのが興味深いです。 行く先々で歓迎されながらも、トイレは別、控室は物置、演奏するホテルのレストランすら入店拒否とは、当時の差別意識がいかに根深いものだったかがよくわかります。 この映画は、伝記的かつ教科書的な側面を持ちながらも、ちゃんとエンターテイメントとして楽しませてくれます。 何がすごいって、大きな山場はそんなにないのに、なぜか『感動』『カタルシス』『多幸感』を感じられちゃうことです。 黒人だけれど教養、富、名声を手に入れているドクター・シャーリー。 教養も富も名声もないけれど、温かい家族がいる白人のトニー。 最初は相反する二人が、いつの間にかお互いのことを信頼し始め、足りないところを補い合う関係性がとても良かった。 警官から理不尽に逮捕され、バーに行けばからまれるシャーリー。なぜなら彼の肌は黒いから。かと言って、育ちの違いのせいか身なりのせいか、黒人の輪にも入れないシャーリー。雨の中車を降り、『白人でも黒人でも男ですらない私はどうしたらいい』と訴えるシャーリーの言葉が胸をうちます。 そんなシャーリーにとって、トニーは初めて自分を孤独から救ってくれた存在なのかもしれないですね。 終盤、シャーリーが黒人たちのバーで演奏するシーンや、トニーの家にやってきたシーン。 ずっと孤独だったシャーリーが、ついに世界に自分の居場所を見つけ始めたところで幕を閉じます。 なに、この幸せな余韻。名作です。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2024-07-14 03:00:09)(良:4票) |
7. 風の谷のナウシカ
《ネタバレ》 記憶が正しければ、アニメで泣いてしまった唯一の作品です。 そして、おそらく最も数多くみているアニメです。 当時テレビで放映されたものをビデオに録画し、ビデオが擦り切れるまで見た記憶があります。この映画をかわきりに、「天空の城ラピュタ」、「となりのトトロ」、「魔女の宅急便」と見続けて、すっかり宮崎駿のアニメのとりこになり、「もののけ姫」あたりで彼の映画を見るのをやめました。 (「千と千尋の神隠し」だけは、嫌がるのを無理矢理連れて行かれて見ましたが。面白かったけど。) この映画が宮崎アニメの中で一番好きです。 世界観が最も好きだし、ナウシカ、ミト、クシャナ、アスベル、戦車をうばうじいさんズと、好きなキャラクターがたくさん出てくるからです。 そして、やはり一番感動したのもこの作品ですね。とくに後半はもうやばい。ストーリー構成と伏線が完璧すぎる上に、ナウシカの自己犠牲がミックスされて、後半の盛り上がりが半端じゃないです 今でも、「宮崎駿」、「ジブリ」、というワードを聞くと、真っ先に思い出すのはこれと、兄の、大ババ様のものまね。あのモノマネも脳が擦り切れるほど聞かされました・・・。 [地上波(邦画)] 10点(2012-05-17 04:03:22)(笑:2票) (良:2票) |
8. トイ・ストーリー3
《ネタバレ》 短いレビューが多くなりがちなアニメ作品やエンターテイメント作品において、同ジャンルにもかかわらず、これだけたくさんの方が長いレビューを書いていらっしゃる時点で、もはや驚愕の作品と言わざるを得ません。 ラストのアンディとおもちゃ達の別れのシーンが、今まで見たアニメの中では『風の谷のナウシカ』と同じくらい感動します。ただこちらは、現実世界で実際に起こりうる日常の1ページを切り取って、そこに感動があるというのが素晴らしいです。 感動は、映像の中の作られた世界の中にだけあるものではなく、現実世界の中にもたくさんあるようです。多忙な人生の中でそれに気づけないようになってしまった自分に、そのことを気づかせてくれた大事な作品となりました。 個人的には、おもちゃと同じくらい感動させてくれたのがお母さんです。『2』ではヤードセールでウッディを買おうとした客に、「それは息子の大事なもので、売り物ではないんです。」ときっぱり言うお母さん。今作では、荷造りの終わった息子の部屋を見て涙します。このシーンは、序盤でアンディとアンディの妹がおもちゃで遊んでいるところをお母さんが録画しているシーンがあって、これが完璧な伏線として効いています。 アンディがおもちゃを大切してきたという気持ちが、痛いほど伝わってくる本作。それは子供とその子供の人生を大切にしてきたという母親の気持ちでもあるみたいです。 トイ・ストーリーが1995年、そのときに7歳の人がリアルタイムで見ていたとしたら、トイ・ストーリー3と出会うのが22歳。もしそこまで計算して本作を作ったのだとしたら、この作品は『シリーズ』ではなく、1~3で、1つの壮大な、そうまさに『トイ・ストーリー』なのかもしれません。 観る人たちといっしょに歴史を刻んできたトイ・ストーリー。使い捨てが主流となり、壊れる事を想定した製品をメーカーが作っちゃうのが当たり前になってしまった現代において、この作品はそんな世界を変えてしまうかもしれないですね。 [ブルーレイ(字幕)] 10点(2014-07-07 01:22:26)(良:4票) |
9. ゼイリブ
《ネタバレ》 サングラスくらいかけたらいいやん!!! ・・・しかし彼はかけなかった。頑なに断り続けた。 そして始まる殴り合い。 そう、これは「絶対にサングラスをかける」と決めた男と、 「絶対にサングラスはかけない」と決めた男の、避けられぬ戦い。 決して時間稼ぎではありません。 [DVD(字幕)] 6点(2012-05-24 13:09:24)(笑:4票) |
10. ファイナル・デスティネーション
《ネタバレ》 幽霊もゾンビも殺人鬼もクリーチャーも出ないのに、これだけ面白くハラハラできる映画が出来ることが素晴らしい。今まで見たホラー映画の中でも1,2を争う面白さです。 今作の最大の長所は恐怖を煽る演出。『トッド』や『先生』のように、『死ぬまでのプロセス』をじっくり見せるパターン。『テリー』や『ビリー』、ラストの『カーター』のような瞬殺パターン。つまり、『死の見せかた』が大きく2パターンあります。 実際、実生活において『事故死』っていうのは一瞬のうちに起こるものがほとんどです。それをただ垂れ流しただけでは、ただの事故映像であり、映画にはならないでしょう。『テリー』や『ビリー』のような瞬殺パターンっていうのは、従来のホラーでは、ホラーにはなりえなかったと思うんです。 ところが、それを『トッド』、『先生』のパターンと交互に見せることで、とたんに従来にはない新感覚のホラーになります。前後の文脈がなければただの『事故』ですが、前後に文脈があることにより、ただの『事故』から『ホラーによる惨劇』になるのです。つまり今作の『死の筋書き』というストーリーの存在により、今まで映像では成しえなかった新しい形のホラーができあがっちゃっているんですね。 また、それぞれの順番も非常に大事になってきます。『トッド』⇒『テリー』⇒『先生』⇒『ビリー』。野球でいうなら、速球とチェンジアップを交互に投げているようなもんです。この順番だったからこそ、21世紀を代表するホラー映画の傑作になったのだと思えます。 このシリーズは、どうしてもそのアイデアの性質から、一番最初に最大の見せ場である『大量死』をもってくる必要があります。最もインパクトの強い映像を一番最初に見てしまうわけです。最初のインパクトが強すぎると、それ以降は何を見せられても刺激が足りなく感じてしまうものです。これはホラー映画では大変危険な行為でしょう。 にもかかわらず、ちゃんと最後まで緊張感が持続するのがこの作品の凄いところです。 ディテールにも非常にこだわっていて、雑誌のきれはしに書かれた『Tod』、ビルの窓に映る『バスの影』、『シートベルトがちぎれる白昼夢』、その予見の演出は見事すぎます。ただ非常にもったいないのは、その演出が上手すぎるうえに、展開がスピーディーなので、初見では気づかずに見過ごしてしまう可能性が高いことでしょう。(※特にバスの影は、重要な会話シーンの中でさりげなく挿入されるので、一番難易度が高い。)この『予見の演出』に気付くか気付かないかで、この作品の面白さの感じ方って、また変わってくると思います。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2015-05-05 03:15:57)(良:4票) |
11. ヒューゴの不思議な発明
《ネタバレ》 正直言ってなかなか退屈な映画。いつか面白くなるだろう、いつか面白くなるだろうと思っていたのに、ちっとも面白くならない。 大人たちのヒューゴに対する扱いが冷たくて、見ていて不愉快。子供からノートを取り上げて、『これをどうしようがわしの勝手だ。』で、後日灰を渡すなんて、ドン引きです。結局燃やしてはいなかったみたいですが、それもイザベルのフォローがあってわかったこと。こんな大人気ないパパ・ジョルジュが、なぜかこの物語の中心人物かつ悲劇の主人公みたいな扱い方をされてついていけません。 そう、この映画って主人公が2人いる。ヒューゴとジョルジュ。 てっきりヒューゴが天才的な才能を持っていて、その発明でみんなを幸せにし、自らも幸せになっていく、そんなストーリーを勝手に想像しちゃった自分も悪いのかもしれませんが、そんな感じのジャケ!タイトル!中身は全然別モノ! 一応サクセスストーリーではありますが、爽快感、カタルシス共に弱い。 かといって、コメディ的面白さはない。感動もない。美しい映像はありますが、心躍るようなアニメーションはない。ハラハラするシーンがあるにはあるが、そのほとんどが公安との追いかけっこ。 映画は娯楽。『楽しませてくれなきゃ。』と思っている私にとって、なんとも相性の悪い作品です。 ただ、ジョルジュ・メリエスの作品をいくつか見られたことだけは収穫でした。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2019-10-21 03:22:49)(良:3票) |
12. レッド・ドラゴン(2002)
《ネタバレ》 『レクター博士が鉄格子の中からプロファイリングをし、推理する。』このスタイルが、やはりこのシリーズ一番のウリなのかもしれません。手負いの獣が危険であるように、鎖でつながれているほうが、レクター博士の狂気が滲み出るような気がします。 ですが、本題は、悲しき殺人鬼ミスターDの物語。 彼の犯した罪に同情の余地はありません。ですが彼の生い立ちは同情を誘うものです。 鑑賞者の心の琴線に触れるバランス感覚が絶妙な脚本。いえ、これは原作があるわけですから、原作が素晴らしいのでしょう。 リーバ・マクレーンという女性とのエピソードを通し、ダラハイドの善良性を前面に押し出す描き方は最早卑怯な感じすらします。 観客はいつの間にかダラハイドに感情移入します。そしてその一方で、いつ彼が暴走するのか、不安な気持ちがいつもつきまといます。 もともと人の心の闇を描くサイコスリラーが好きなので、好きなジャンルをこの完成度で仕上げられると、ため息しか出ません。 ただ一つ注文をつけるならば、犯行動機についてです。『幼き頃の虐待』という抽象的で曖昧な表現にとどめてしまっています。 標的となる家族の選び方の基準も、『自分の会社にビデオ製作を頼んだから』というだけのもの。 そうではなく、なぜあの二家族が標的にされたのか、それこそがこの作品で一番知りたかったことです。肝心の部分を描いてくれていません。ダラハイドの生い立ちと、彼が狂気に走った理由を、もっと明確に結びつけてほしいのです。 ラストは、ダラハイドがサプライズを仕掛けます。 エンターテイメントとしは成功でしょう。映画としては間違いなく盛り上がります。 ですが作品の格はどうでしょうか。 ラストの仕掛けによって、よくある娯楽サスペンスに成り下がってはいませんか。 ダラハイドが愛する女性を殺せずに、自殺して終わる。 美しく悲しくやるせないラストとして相応しいと思ったんですけどね。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2016-06-26 17:46:59)(良:3票) |
13. トト・ザ・ヒーロー
《ネタバレ》 誰しも、特に劣等感に苛む男の子であれば、いわゆる「厨二病」みたいに憧れの自分や憧れの世界をイメージしては楽しむ期間が来るのでしょうか。 現実世界におけるトマ自身の人生と、メタファーとも言える「トト・ザ・ヒーロー」の空想部分とは、まるで逆のストーリーが進行し続けます。当たり前ですけど・・・ 現実世界では、幼少期にみんなからばかにされ、愛する父を失い、自分のせいで溺愛していた姉を失い、青年期には愛する姉似のエヴリーヌと自らの意志で別れます。そしてそのほとんどに、アルフレッドが関わってくるわけです。 彼の精神状態は、「トト・ザ・ヒーロー」というもう一人の自分を空想の世界に創り上げることでバランスを保とうとします。普通は早い時期にこの精神状態から脱却するものですが、姉が死んでしまって、姉の成長があそこで止まってしまったことと、彼の恋愛に必ず一歩先をゆくアルフレッドが登場することで、彼はこの世界から全然脱却できません。 この映画の唯一の救いは、終盤、彼が真実を知り、現実の世界を生まれて初めて肯定するところにあるのでしょう。 アルフレッドの身代わりになって撃たれる瞬間と、「トト・ザ・ヒーロー」が撃たれる瞬間、今まで全く違う人生を歩んでいた二人の姿が完全に重なります。そう、この一瞬でずっと憧れていたもう一人の自分に、「トト・ザ・ヒーロー」になることができたのです。 なんかこうして書きながら整理していると、すごく良い映画のような気がしてきた・・・ ですが見ていたときは本当に面白くなかったのです。 いや、もうやばいくらいに。 ですので、勇気を出して、正直な気持ちを打ち明けます。 3点です。 周りを気にする「たきたて」は10点の評価をつけていますが、「タキタテ・ザ・ヒーロー」が3点の評価を出しています。 [DVD(字幕)] 3点(2013-05-26 15:38:42)(良:3票) |
14. コマンドー
問題【『ターミネーター』との違いを答えよ。】 解答【・・・口数が少し多い。】 「どんべえ」が「うどん」ではなく、もはや一つの「どんべえ」というカテゴリーを成立させてしまったように、「シュワルツェネッガー」は「人」でも「ロボ」でもなく、「シュワルツェネッガー」という一つのカテゴリーなのだと思う。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-01-23 23:56:15)(良:3票) |
15. ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON
《ネタバレ》 落ち武者の幽霊をアリバイの証人として証人喚問する発想がすでに秀逸で、そのアイデアを映画に活かしてくれただけでも大満足です。 ただ、ほかの方達も言及されているように、同居人のTKOとの別れのシーンや、阿部つくつくの2度目の登場シーン、極めつけは父親の宝生輝夫の登場など、蛇足感満載の雰囲気が中だるみをひきおこし、映画全体にとって邪魔なスパイスになっているのもまた事実。 ですが小ネタのシーンが邪魔に感じてしまったということは、それだけ、本筋のストーリーに魅力があり、楽しませてくれる映画であったとも思えます。深津絵里、西田敏行、阿部寛三人のやりとりは何とも魅力的だったし、あの三人が頭を悩ませながら裁判を闘っていくシーンをもっとメインに見たかったものです。 やはり詰め込みすぎ、盛り込みすぎ、遊びすぎの感は否めないでしょう。 ラストも、宝生エミに六兵衛の姿が見えなくなってしまった瞬間、なんともいえない切ない気持ちになり、なんて素晴らしいラストなんだろうと思っていたのに、なぜそこからさらに続けてしまったのか・・・・しかも父親の姿を出すなんて、しかもそれが草薙剛なんて、しかもコメディタッチでしめくくるなんて。はあ、もったいない。 [DVD(邦画)] 7点(2013-04-20 15:54:19)(良:3票) |
16. 魔法にかけられて
《ネタバレ》 ディズニーの懐の深さが味わえる作品。ディズニーアニメの住人が現実の世界へ。こーゆーの大好きです。わくわくします。夢があります。 実際、ロバートの娘はジゼルに夢中。あれぐらいの年頃の女の子は皆プリンセスに憧れるものなんだと改めて実感。プリンセスは何も容姿だけで、プリンセスなわけではないみたいですね。『心の在り方』みたいな、そーゆーものもプリンセスにとって大事なようです。こーゆー描き方は、ディズニーの一番良いところかもしれません。 とにもかくにも、この作品はとにかく面白い。ファンタジーだけでなく、コメディとしても抜群に面白いです。ジゼルとエドワードが、『ディズニーのノリ』で、ニューヨークを駆け回る様子がおかしくてたまらないです。 『真実の愛に気付き、ニューヨークに残るジゼル』 『もう一度、真実の愛を信じることができたロバート』 『最初から最後まで王子であることがブレないエドワード』 『現実主義と見せかけて、ロマンチスト、その本質はプリンセスのナンシー』 最後に求めたものは、それぞれ違えど、そのどれもが『正解』であると言ってくれるラスト。素晴らしいぞディズニー。皆それぞれのハッピーエンドを迎えられて良かったねと、素直に思える良作。更には斬新なアイデアと、コメディ色豊かなエンターテイメントをプラスしたことで、もう傑作と言っても良い作品に仕上がっています。 好きなシーンは数多くあれど、一番好きなシーンは排水溝からわらわらと出てくるゴキブリたち。それに悲鳴をあげる妻。普段は『掃除される側の生き物たち』に掃除させるそのセンス。脱帽です。 [DVD(字幕)] 8点(2017-06-28 00:36:55)(良:3票) |
17. ノッティングヒルの恋人
《ネタバレ》 誰もが一度は憧れる有名人との恋。土台が面白いのですから、どう料理しようが面白くなるに決まっています。いえ、むしろ素材が良いからこそ、あれこれ手を加えずに素材の味を楽しむほうが良いのでしょう。だからあえてベタでストレートな脚本にしたのだとしたら素晴らしい。 アナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)が大女優であり、その設定を活かしたプチドッキリ満載の演出が、ストーリーに起伏を生み出しています。特に妹の誕生日に参加するシーンは一番好きですね。ここでの脇を固める人たちのリアクションは理想的すぎます。心は舞い上がっているのに、平静を装おうとする感じが微笑ましくて楽しすぎます。アナに出会う人たちが、すぐにはアナと気づかないベタな演出は最高です。 はじめは何故タッカー(ヒュー・グラント)にアナが魅かれたのか意味がわかりませんでしたが、彼の普通すぎる人物設定が既に普通ではない魅力となっていたのでしょうか。大女優が目の前に現れて、少々驚きながらも自然体で振舞えることはすでに一つの個性なのかもしれないです。そこにアナが魅かれたのだとしたら、後半のアナの科白とも合ってくるし、至極納得です。ヒュー・グラントは『普通すぎる魅力』というものを上手く表現していたと思います。 本作はべたなラブコメの『べた』の良さを存分に引き出しています。本作は夢を見させてくれる映画。逆に、映画だからこそ可能になる世界。見た後、ハッピーになれる作品。ラブコメはこれくらいわかりやすくて、ハッピーなものが良いですね。 [DVD(字幕)] 8点(2015-03-22 19:38:41)(良:3票) |
18. ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結
《ネタバレ》 こーゆー長尺作品って、最初はもったいぶっていることが多いんですが、本作はいきなり本題に入ります。 このスピード感は好感度大。 まるでメインキャラクターのように大物の風格で登場するサバント。 そして癖の強い新生スーサイド・スクワッド。 前作からおなじみの面子はリック大佐とハーレイ・クイーンと、キャプテン・ブーメラン。 古参も新規も、いったいどんな活躍をするのだろうと、冒頭からワクワクが止まりません。 さあ、敵地に上陸だ。みんなどんな戦い方を見せてくれるんだ?と思ったら、まさかの全滅。そう、まさかですよ。これには度肝を抜かれます。 ひときわインパクトの強いイタチ人間なんておぼれちゃうし。 大物サバントは敵前逃亡。戦いもしません。 もう予測不能の展開です。 ただこれだけの個性をあっという間に強制退場させちゃうのは・・・・なんというかもったいないというか。 脇役好きとしては、彼らの戦う姿や活躍する姿を見てみたかったものです。ちょっとがっかりしちゃったかな・・・。 キャプテン・ブーメランまで死んじゃって・・・。 で、こっから選手交代。本命の新生スーサイド・スクワッド登場。 囮メンバーより人数は少ないものの、個性、能力ともに申し分なし。 特に今作は対人戦がとても多くて、スーサイド・スクワッドのメンバーのバトルセンスが光りまくりです。 ハーレイ・クイーンも本来の魅力をとりもどし、好き勝手やってて最高。ルナ将軍の瞬殺シーンは衝撃。 オープニングの上陸作戦や、ルナ将軍の最期からもわかるように、次に何が起こるかわからない、だれがいつ死ぬかまるで読めないのは、本作の魅力のひとつかもしれません。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2024-06-30 11:53:17)(良:3票) |
19. コラテラル
《ネタバレ》 普通のタクシー運転手が、殺し屋の仕事になぜか付き合わされる物語。 この『なぜか』の部分の説得力が弱く、多少強引な展開ではあるが、許容範囲。 登場人物が多すぎないのが良いですね。自分好みです。 それに大部分はヴィンセントとマックスの二人が中心となっているため、変に凝ったサスペンスよりすっきりして見やすいですね。 ただ、シーンとシーンをつなぐ『タメ』のようなものが長すぎて、ややクドイ。 そーゆー雰囲気を作りたいのはわかるのですが、中だるみを引き起こす原因になっているような気がします。 ストーリー自体は、ある種の哲学を感じますし、何かのメタファーなのかなって思う部分もありますが、やはりシンプル。 こーゆーストーリーであれば、変に間を置かずに、テンポよく進んでいったほうが良かったんじゃないかな。 要所要所のアクションは瞬殺パターンが多くて好き。迫力があるし、サスペンス色が強くなります。 ラストの攻防も見事でしたね。 こんなに怖いトム・クルーズを見たのは初めてです。 特に地下鉄での『降りたいけど降りられない。』という状況の作り方がうまいです。 いたってシンプルな構図だけに、緊迫した雰囲気がよく伝わってきます。 総評。中だるみする部分はあるものの、気にならない程度。全体的にスリリングかつサスペンスフルで面白かったです。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-03-25 04:30:48)(良:3票) |
20. マンイーター
《ネタバレ》 『こんなジャングル・クルーズは嫌だ!』みたいな作品。 何かの陰謀とか、実験とか、生物兵器とか、遺伝子操作とか、そんな雑味はいっさいなし。ただでかいワニがいた。そして人を食う。それだけの映画。なんと潔いのでしょう。 このリアルワニワニパニックの巨大ワニの存在を、地元の人間が誰も知らない。なぜならこれはB級だから。 パニック映画としては一定の水準を満たしているのではないでしょうか。 『ジョーズ』の舞台を『ジャングル・クルーズ』に変えただけですね。 ホラーやパニックにたいして新しい風を求めない私とは、とても相性が良い。 ワニの巣穴に迷い込んでからの攻防はなかなかの迫力。リアルな恐怖心を感じられます。ワニが水中に入ってスーってこっちにやってくるときの恐怖はジョーズに通じます。 ただねえ。こーゆー映画ならではの『登場人物たちにイライラ』なーんて悪習まで踏襲する必要はないんです。その筆頭はケイト。ツアー客を自分の勝手な判断で巻き込むなんて非常識。更にはツアー客に死傷者多数。自身も大怪我して、みんなにこれからどう償っていくんだい、と心配していたら、そんな彼女がピートに一言。『ツアーはどうだった?』いやいやいや!これだけ死人を出しといてその冗談!こいつまじか! ピートはピートで会ったばかりのガイドの女性のために、そこまで命をかけるかね。 何とも理解に苦しむ人たちです。今回ばかりは二人ともワニに食べられちゃっても良かったです。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-04-12 21:12:57)(良:3票) |