1. アイスマン(1984)
4万年前のネアンデルタール人が北極で氷塊として発見される。科学の力で蘇生に成功するものの(こんなことは科学的に可能なのだろうか)、引き起こされる悲劇を通じ見る者に様々な問題を投げかける。ある意味奇想天外ともいえるお話しなんですが、作品そのものはやや大人向けに作られておりなかなか良く出来ています。言葉の壁はもちろんのこと、4万年前もの隔たりのある文明の壁。自由に空を飛べる巨大な鳥を神と崇める原始人に我々人類のルーツを見る。(演じるは何とジョン・ローン) 原始人を一人の人間とみなすか否か、あるいは貴重な研究材料にすべきだと意見の分かれる科学者たちなどなど…この辺り多分に考えさせられるものがあります。その一方、シリアスな展開の中にユーモラスなシーンもあり最後まで興味を持って見れる。郷愁を誘う音楽も印象的な本作は、SFドラマの隠れた名作と言ってよいと思います。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-09-16 23:43:31) |
2. 穴(1960)
《かなりネタバレ》モノクロ映像が映し出す光と影の絶妙なコントラスト、のぞき穴から鏡を通して見る独特の緊張感、深夜の地下道に響き渡るコンクリートを打ち砕く音などなど…非常に印象的なシーンと効果音がいつまでも脳裡に焼き付く。たしかにあんな大きな音を立てて看守が気付かない、穴を掘った砂利はどうしたなど基本的なトコロで引っ掛かったりしなくもない。それよりもむしろ本作は、サスペンスフルな演出の妙と独特の雰囲気を味わうべき作品でしょうね。鏡の破片はいうまでもなく、薬のビンが砂時計になったりと着想が秀逸で、どんな小道具が飛び出すか最後まで興味は尽きない。脱獄囚5人の人物描写もきっちり色分けしており、刑務所長の存在もラストでは大きく生きてくる。そして何より実話を基にしているのが良い。原作者のジョゼ・ジョヴァンニ、ロラン役のジャン・ケロディ共に元囚人で脱獄の経験者。このように経験者は語るではないが、作品に生々しさと説得力を持たせる。脱獄物の傑作と言われるだけの根拠は充分にあると思いましたね。 9点(2005-01-15 21:53:51) |
3. 仇討(1964)
ズシリと重い時代劇です。中村錦之助演じる主人公新八は些細な事から上役と果し合いとなり、その弟まで二人を斬り捨ててしまう。新八にしてみれば、武士らしく正々堂々と勝負に臨んだまでのこと。そんな新八を藩全体がよってたかって死に追いやろうとする。藩の名誉、面目を絶対的なものとする当時の武家社会の非情さ、そして下級武士に生まれた悲劇を名匠今井正は力強くリアルなタッチで描いています。このような世間体を重んじる非情な体質は、日本の政界や大企業に今だ根強く残っている闇の部分と言えるのではないだろうか。死を覚悟に太刀の刃引きをするシーン、湯につかり武者追いの歌を歌うくだりなど、新八の穏やかな表情が胸を打つ。ラスト、竹矢来の中での仇討シーンは凄惨を極めており、新八の心情を察すると言葉が出ない。たしかに、話が前後する展開で若干滞りがちなんですが、錦之助の迫真の演技にこの壮絶なラストシーンで補って余りあると思います。 8点(2004-08-08 10:44:17) |
4. アメリカン・サイコ
これはハズした。このテのミステリー/サスペンス系はヘタに前情報を仕入れ、ネタやオチを知ってしまうとマズイ。てなことでカンを働かせのるかそるかで劇場に足を運んだら、これが見事裏目に出てしまったヤツ。何やらパロディ調で物語が進んだことだけは覚えているが、内容は思い出すのもおっくうになる程クソつまらん映画だった。オチも馬鹿にしている。予備知識なしで見るのも考えものですね。スンマセン、まともなレビューになってなくて。 2点(2004-06-29 10:03:01) |
5. 愛と死をみつめて
大島みち子と河野実のベストセラー書簡集「愛と死をみつめて ―ある純愛の記録― 」を基にして作られた、実話物の映画化。ラジオやテレビでもドラマ化されており、とくにTVドラマでの主題歌「愛と死のテーマ」(歌: 青山和子)はレコード大賞を受賞していることから分かるように、年輩の方々にしてみれば余りにも有名な物語りです。私も子供の頃、「まこ 甘えてばかりで ごめんね ……」で始まる哀切溢れるメロディーは幾度となく耳にしました。主人公の女学生みこは顔の左半分を、当時では不治の病ともいえる軟骨肉腫に冒されてしまう。恋人まこのひたむきな愛に支えられながらも、主人公の希望と絶望の間に揺れ動く心理描写には涙なしでは見られない。「健康な日を三日ください」「死ぬほど家に帰りたい」「個室がほしい、そして思いきり泣きたい」…などなど。主役を演じる吉永小百合の好演が、見る者をすっかり感情移入させてくれる。恋人役の浜田光夫も誠実な演技で好感が持てる。胸を打つ純愛映画の秀作です。 8点(2004-03-30 11:04:00) |
6. あゝひめゆりの塔
本作のようなジャンルの映画は、へたにスターやアイドル達を起用すると、作品の持つテーマ性から遠ざかってしまう。題材が題材だけに、どのくらいリアリティを伴い、戦争の悲惨さが伝わるかが評価の分かれめでしょう。さて今作は。主役を演じた吉永小百合の体当たり演技(かなり汚れ役をもこなしている)と、“ギョッ”とさせられる描写も多く取り入れられており、佳作の域には達しているのではないだろうか。モノクロ映像というのが良かった。 7点(2004-01-18 11:54:12) |
7. 悪名(1961)
勝新太郎演じる八尾の朝吉と、モートルの貞(田宮二郎)との異色コンビが抜群におもしろい痛快活劇。今東光原作の同名小説を映画化したもので、今ひとつ人気の出なかった勝新太郎の持ち味が監督田中徳三の演出により開花される。共演の中村玉緒とは本作をきっかけに婚約したりで、勝新にとってはもちろんのこと、田宮二郎にとっても出世作となるなど記念すべき作品だった。昭和初期の河内の雰囲気満点で、荒くれだが人情味のある河内ことばが飛び交うのもうれしい。伊福部昭の厚みのある音楽と、宮川一夫のカメラワークも味わい深かった。ところで、この作品では朝吉という男がどういう気質で、どんな考え方の持ち主なのかがほぼ完璧に近いほど描き切れている。本質的に荒い気性だが機転が利き冷静でもある。もちろん曲った事が嫌い(ヤクザも嫌い)な一本気な性格。その一方で、多分に照れ屋なところがあり、酒は一滴も飲めないという意外な側面も見せてくれる。《ネタバレ》とくに、朝吉という男の魅力のすべてが集約されているラストが圧巻だった。愚直にも、因島の女親分のところに自ら覚悟して出向いてゆく。朝吉は女親分の仕打ちに耐え抜きながらも、決して自分の信条を曲げない。そんな朝吉に対して女親分は、屈辱と腹立たしさから一転して完敗、そして複雑な女の嫉妬感が込み上げてくる。そう、朝吉に惚れてしまったのである。そして朝吉はおそらく生まれて初めて、男としての大勝利を満喫する。監督田中徳三は、歯を食いしばり耐え抜くことが、いかに尊くカッコ良いことであるかを描き切っている。この鮮烈なラストシーンがあるからこそ、多くの観客の心を掴み(当然私も含めて)、シリーズ化されるという大ヒットを生んだのではないだろうか。 9点(2004-01-17 11:32:50) |
8. アウトブレイク
SFサスペンスの傑作「アンドロメダ …」を彷佛させるオープニングは、ゾクゾクさせてくれたわけなんですが…。本作はペーターゼン演出のマイナス部分がどうにも目立つ。説得力に欠ける粗っぽい展開。ただ、ラストに用意されたヘリコプター戦から爆弾投下までの一連のシーンは見応えがありましたね。とくに、ホフマン演じる大佐と悪玉将軍(サザーランド)がやりとりするくだりはなかなかの緊迫感。まぁ、サスペンスタッチのアクション映画として見るのが正解でしょうね。 7点(2003-12-19 17:06:21) |
9. 嗚呼!!花の応援団(1976)
う~ん、ずいぶん前に関西方面の某ローカルTV(南河内テレビ?ってのはジョーダンです)で見たことがあるゾ。青田赤道ってのは、漫画の世界でしか表現出来ない凄まじい怪人(否、怪物というべきか)なので、役者が「ちょんわ、ちょんわ! !」「クエッ、クエッ! !」とギャグをすると何とも間が抜けて見えてしまう。しかも、“売り”である過激な下ネタギャグが映画では使えないので毒気もなくなる。やはり、人気漫画にあやかった胸算用映画にしか見えなかったねんのねん。 3点(2003-11-21 12:37:54) |
10. アンドリューNDR114
「もしロボットが感情を持ってしまったら」というSF的なテーマは個人的に好きなんだが…。後半、アンドリューの姿がロビン・ウィリアムズに入れ替わったところから、もう完全に胸に染み入るヒューマンドラマ。 しかも何やら哲学めいた展開になり、人も羨む感動のラストまで強引に引っ張ってくれた。ほんと、人生はこんな形で終りたいよネ。おっと、時折はさまれる未来の都市風景は良かったゾ。 6点(2003-10-28 14:56:19) |
11. アザーズ
古典的なホラーの雰囲気をうまく醸し出しており、じわじわと観客を怖がらせる演出は巧い。やたら大きな効果音やグロいものを出しまくったりせず、死体の写真ひとつとっても品のある仕上がりになっている。《ネタバレ》実はコワいながらも母と子の悲しい物語で、エンディングはしんみりと余韻を残してくれた。ただ、この作品の“売り”とも言えるオチに至っては、某有名ホラー映画のまんまではちょっと芸がナイ。 6点(2003-10-05 22:49:48) |
12. アンダルシアの犬
監督は鬼才ルイス・ブニュエル。しかも、シュールレアリズムの巨匠ダリが共同脚本を手掛けているということもあり、当時としては衝撃的な前衛作品だったのであろう。ストーリーはと言えばあるようでないし、メッセージ性も伝わって来ないが、ダリのファンにとってはうれしい限りの出来映え。今でいうエグいグロい映画を、芸術的作品にまで昇華させた古典的傑作とでも言えば良いのかもしれない。 8点(2003-10-05 19:50:37) |
13. 明日に向って撃て!
大金の為なら人殺しをもする強盗二人を、シャレたタッチの青春映画に仕立て上げたジョージ・ロイ・ヒル監督の手腕は見事。そして、その強盗に扮したポール・ニューマンとロバート・レッドフォード。この二人、キャサリン・ロスをまん中に、魅力たっぷりに無法者を演じ切っており、思う存分観客に感情移入させてくれた。有名なバート・バカラックの音楽「雨にぬれても」も素晴らしく、二人で楽しそうに自転車を乗り回すシーンや、哀切を極めたラストシークエンス等を鮮烈に思い出させてくれる。 8点(2003-09-30 10:32:16)(良:1票) |
14. アルゴ探険隊の大冒険
ダイナメーションの巨匠レイ・ハリーハウゼンの腕が冴えまくる冒険活劇の傑作!! ギリシャ神話をベースにした展開だけに、ファンタジックに彩られ、格調高い作風に仕上がっているのもうれしい。 この映画での見どころは、もちろんモンスターの登場シーンと迫力ある特撮。 モンスターよ「早く出ろ出ろ」で中盤当たりまで若干退屈なんだが、クレタ島の上陸シーンから俄然おもしろい展開になってくる。 見上げる程どでかい青銅巨人タロスとの闘い。海中から突如現れる海神ネプチューンの偉容。骸骨戦士との剣劇シーン…等々、見どころ満載のサービスぶり。 とくに巨人タロスが“ググッ”と動き出す場面が強烈で、その怖さと言ったらトラウマになるほどだった。 8点(2003-09-23 11:08:59)(良:1票) |
15. 悪魔の手毬唄(1977)
前作の「犬神家の一族」に比べると、重厚で格調高い作風はやや落ちるものの、独創的で不気味な雰囲気を醸し出していたのは、さすが市川崑 ! ! しかしながら無理な構成も目立ち、釈然としない殺人の動機等、真面目に見るとけっこうシラけ気味。さらに、主役を演じた女優岸恵子では鬼気迫らず迫力不足。そんな中、磯川警部を演じた若山富三郎の作品全体を見据えた演技が絶品で、この作品を見事救っていた。 7点(2003-08-23 23:25:50) |
16. アトミック・トレイン<TVM>
おおよそB級の域を出ないアクション・パニック映画で、最後には胸を撫で下ろす感動のエンディングが待っているハズなんだが …。う~ん、意外性どころか一線を越えてしまった感じがする。劇場未公開も納得で、実験的なモノとして受け取るべきであろう。 3点(2003-08-23 23:25:20) |
17. 愛は霧のかなたに
実在の女性動物学者ダイアン・フォッシーの半生を描いた作品なんですが、やはり、密猟者と政治政策との闘いに明け暮れることになってしまう。しかも悲しい結末が待っているという、この世の不条理。そんな中、主人公がゴリラたちと心を通わせていくシーンは、なかなか感動的だった。純粋だが激情型の主人公をシガニー・ウィーヴァーが見事に演じ切っており、しかも顔つきまでゴリラそっくりになっているシーンもあるわで、ユーモア精神は旺盛。やはりこの人、筋金入りの役者だ。個人的には、こういう動物保護や自然破壊を取り上げた、やや大人向きの映画をもっと作るべきだと思う。 8点(2003-08-03 17:12:59) |
18. アルマゲドン(1998)
本作のようなアメリカ人によるアメリカのための映画というのは、「アホくさ…どうぞ勝手に」てな感じで、最後まで傍観者のままで終ってしまった。荒唐無稽なバカバカしいストーリーはコミックの域を出ず、リアリティも緊張感も感動もてんでちっともこれっぽっちも感じられなかった。そうか、監督はあの「パール・ハーバー」のマイケル・ベイだったのか。そりゃアホくさいわけですよ。映像のみ評価対象で、3点。 3点(2003-07-05 20:32:43) |
19. 天城越え(1983)
エキゾチックな伊豆を舞台とした、純文学の香り漂うサスペンス映画の秀作。14才の少年と大人の女の淡い恋物語でもあり、雨が降りしきる中、二人の別れのシーンはただただ切ない。娼婦役ハナを演じた田中裕子の妖艶溢れる演技が鮮烈な印象を残し、いつまでも脳裡に焼き付く。私的に大きくハマった作品です。 8点(2003-06-28 20:41:36) |
20. アナコンダ
まぁー、タイトルからして予想どおりのB級パニック映画でした。オスカー俳優ジョン・ヴォイトの、大蛇から吐き出され、ジェニファー・ロペスに向かってウインクをするシーンがエグいゲロいでインパクトあり過ぎ!! タンク・トップ姿のジェニファー・ロペスは、セクシーさと野性味で完全に大蛇を喰ってしまっていたゾ。 6点(2003-06-28 20:41:26) |