1. 穴(2001)
《ネタバレ》 いかにもな内容と展開で「それっぽい」気にさせられるが、実はそんなに大したことのない映画の典型。すべてが物足りない。プロット、映像、人物描写どれも未熟でありザツだ。ドンデン返しというほどのエンディングでもないし、この種の作品に付き物の不気味さ、不快さ、窮屈さも足りてない。彼女の殺害動機を「思春期特有の我」で括りたかったのなら、もっと丁寧な心理描写をする必要があった。見る者への恐怖心の煽り方も稚拙。ある意味、本作の完成度こそ皮肉にも思春期的で中途半端だ。ただ単に「すごーく不愉快な女」を見させられてただけ。鬱屈さがない。慰めがあるとするなら、今をときめくキーラ・ナイトレイの初々しさが垣間見れたことだけだ。 [DVD(字幕)] 3点(2006-06-06 00:56:28)(良:1票) |
2. あの頃ペニー・レインと
はっきり言ってアイデアも二番煎じなら、人物設定も焼き直し、リライトで新鮮味はまったくない。けれど、古き良きアメリカ、今ではまるでお目にかかることのない「アメリカの良心」が全体から感じられ悪くない。こうなるであろう展開、こうなるでろうキャラクターの心模様が裏切りも驚きもなく映し出されている。同時代を生きた人は回顧を、そうでない人は想像をする「あの頃のアメリカ」とはきっとこうだったのだろう。郷愁と、ほんの少しの切なさを誘う「遠い日の少年」のみずみずしい物語。いかにもキャメロン・クロウがメガホンを握った作品だ。ペニー・レイン・・・いい響きである。 [DVD(字幕)] 5点(2005-10-01 03:16:20) |
3. アバウト・シュミット
評価するのが難しい作品。このどこにでもいそうな人の、どこにでもありそうな晩年を、多少の毒ッ気を放ちつつ、あまりにキレイ事すぎるオチを持ってくることで「さぁ、感じろ!」という訴えを感じることは確かにできる。素直に受け取れば、実にキリスト教的な人生訓だ。「けれど・・・」。最後までこの言葉がついて回った。ジャック・ニコルソンの主演でなければ、はたして最後まで鑑賞できたかと言えば甚だ疑問。それは見る側の年齢だとか経験の有無、世代的なことが起因ではないように思う。アメリカという国が持つ脂っこさ、アクの強さのひどく代表的な役者であるニコルソンが何一つ人生の楽しみを持たずに生きてしまった老いぼれを、多少のコミカルさを交えて演じるというのは、なるほど役者の実人生とシュミットの人生とを対比的に表現する上で効果的であるし、時の流れを映す上でシンボリックですらある。そこが製作者の意図ならば、まずは成功だ。けれど、その意図はあまりにも浅く陳腐で、脚本は拙いと言わざるをえない。鑑賞者は、少なくとも私には「鈍感かつ単純な発想」としか受け取れなかった。しかしながら、あえてそう描くことで「単純な現代アメリカ」を暗喩し、なおかつ皮肉っているのであれば、「お見事だ」と言い換えることはできる。さぁ、本作の真の意図はどっちだ? [DVD(字幕)] 5点(2005-05-03 03:12:00) |
4. アニー・ホール
世間的にはウディ・アレンの一番の出世作であり、代表作である、ということになっている。確かにグラミー賞の主要部分を総なめにし、かのチャップリンも絶賛。それまでドタバタ・ナンセンスコメディばかりを撮っていたアレンが初めて本格的な人間ドラマを描いたということで、マジメな映画関係者のお偉いさん方がやっと“見るに値する”ものとなった記念碑的作品でもある。既に幾人かの方々が指摘されているように、この作品は映像的な手法(分割カット、字幕の工夫、時系列が前後する編集など)だけに注目しても楽しめる。しかし、それだけではない別の様々な要素が含まれていて、たとえばアメリカ国内における東部と西部の地理的な対比、そこに住む人々の気質的なそれも上手に描けている。しばしばニューヨーカーはロスの能天気なキャラクターを今でもバカにしたりするが、この部分を本作では“嫌味ギリギリ”のところで描いている。この点に注目しても楽しめるはずだ。他にも時代色の強い言葉だったり、インテリが嬉々としそうな単語を羅列させたり(それを自慢ではなく皮肉の道具としているのはさすが!)、と複数の内容を盛り込んでいる。もちろんアメリカという国の予備知識や、いかにも映画的な見方をしなくとも、単なる男女の恋愛映画として見ても楽しむことができる。メインとなる2人の恋の行方を伝えつつ、サブ・コンテンツも無理なく同時に盛り込むという多面的かつ多角的な作りは、なるほど秀作と呼んでいい出来栄えであり、ウディ・アレンがただの映画作家ではないことを如実に物語っている。 8点(2004-10-20 00:23:50) |
5. アザーズ
《ネタバレ》 某CS番組での放送で見たため、どうしても途中CMが入ってしまうのだが、せっかくこの世界に酔おうとしていた矢先、いきなり西田敏行のそれが画面に登場したため一気に興が覚めた。評価としては、キッドマンが一生懸命イギリス英語で発音しようとしていた努力に1点。トム吉と別れてキレイになったという事実に3点。憎たらしいほどヒステリックな女を上手に演じていたことに2点。ということで合計6点がいいところ。ゴシックホラーの定番とも言える要素(離れ小島、歴史的因果のある大邸宅、巨大な庭園、霧など)は揃えていたが、出来そのものは「スリーピーホロウ」のティムバートンの方が遥かに上だと思うし、みなさん触れられているように、「シックスセンス後」であることは減点対象にならずにはいられない。ということで本作の見どころは、ホラー映画として完成度より、いち女優として大輪の花を咲かせ出したキッドマンに見入る作品である、と一応結論づけたい。 6点(2004-02-07 23:44:42) |
6. 雨に唄えば
「アメリカが誇れる自国文化とはなにか?」と問われたなら、まっさきに「ミュージカルだ!」と、私なら答える。もっと誇れ、アメリカ人!軍事力よりも先に、政治力よりも前に、この素晴らしきOwn Cultureを!! 9点(2004-01-25 22:29:09)(良:1票) |
7. アンフォゲタブル
甦らせる記憶が多かったかなと思う。フラッシュバックもありすぎると飽きてくる。あと1人削ってストーリーをまとめられたら良作だった。ただ、必要以上に泣かせよう、複雑怪奇にしようとする意図がなかったのは良かったと思う。リンダ・フィオレンティーノの演技力は本物。自分の研究に誇りを抱きつつも、しかしどこかでその単調な人生に少し自嘲している女の「陰」を巧みに演じてみせた。スターのいる映画もいいが、巧い役者がいる作品はピシッとしまって、観る側の気持ちまでも締まってくる。 5点(2004-01-25 22:12:25)(良:1票) |
8. アパートの鍵貸します
コメディ映画にとって、「完璧」という言葉が許されるのなら、本作こそふさわしい。「粋」を貫いたワイルダー、レモンに乾杯!そしてシャリー・マクレーンの愛くるしさにもう一杯! 10点(2003-05-20 23:33:23) |