1. アメリカン・ビューティー
主要キャストから脇役まで綺麗にアメリカ白人で揃えられた映画。プロットだけ見れば中流家庭が崩壊していく暗い内容になるはずなのだが、レスターたちが平凡な日常から抜け出していくというあくまでもポジティブな視点で作られている。そこがこの映画の最大の皮肉だろう。とくにレスターが笑顔のまま死んでいくラストにはやや戦慄を覚える。もうアメリカ人は「普通の人々」ではいられないのかもしれない。アメリカ人の感想が1番気になる映画。 [地上波(吹替)] 8点(2005-12-20 12:23:36) |
2. アルマゲドン(1998)
映像と豪華キャストだけ見てもどうしてもっと面白く作れなかったんだ、と思ってしまう。とにかく、自然現象を扱っているだけあって突っ込みどころが多すぎる。おまけに3時間もかけているわりにキャラクター描写も浅いし、逆に無駄なエピソードが多い。ただ、隕石落下シーンはマイケル・ベイだけあって迫力がある。さすがにあのシーンはハリウッドでしか作れないだろう。 [地上波(吹替)] 5点(2005-12-18 21:10:59) |
3. アイランド(2005)
たしかに前半の出来はなかなか良かった。コンピューター管理社会の中で主人公が自分たちの正体に気づくまでが近未来描写(博物館内に流れてそうなメッセージ映像は結構好き)を織り交ぜてミステリータッチで展開されていく。しかし、後半はアクションシーンに力を入れたためか、話が雑になり、盛り上がり方も中途半端なまま釈然としないラストを迎えてしまった。しかし、それだけに肝心のアクションシーンの迫力はさすがである。とくにカーチェイスや、看板が落ちるシーンは一瞬自分がその場にいるような錯覚に陥ってしまうほどの臨場感があった。しかし、これだけのシーンを撮れるならもうちょっとシチュエーションに凝っても良かっただろう。「ザ・ロック」の人気が高いのはアトラクションのような舞台設定にしたからではないか。シチュエーションにさえ凝ればキャメロン監督のようなアクションシーンを撮ることも可能だと思う。俳優に関してはジャイモン・フンスーとショーン・ビーンの二人が役のイメージにピッタリで存在感があったのだが、フンスーの心理描写がおろそかなために後半の彼の行動が説得力にかけるのが残念。 [映画館(字幕)] 6点(2005-07-28 20:25:36) |
4. アリス(1988)
《ネタバレ》 ディズニーの「不思議の国のアリス」よりも面白い(あっちの白兎もおっさんみたいだったし)。原作のストーリーをある程度忠実に再現しつつ、机、少女の唇(拙~い英語吹き替えはいらない・・・)、はさみをキーワードにシュヴァンクマイエル独自の世界を作り出しています。シュールレアリスムだけに少しばかりグロテスクで理解に困るところも出てきますが、日常の道具だけで作り上げられた世界は少女の存在感を消すこともなく、とても魅力的でした。彼の映画にファンタジーとしての味付けをしたものがギリアムの「バロン」、ジュネの「ロスト・チルドレン」になるわけですね。もちろん、逆にストーリー性を排除するとブリュニエル、ダリの「アンダルシアの犬」という芸術作品になるのですが。ちなみに原作のラストではたんなる夢オチに過ぎなかったのに対し、本作では少女の残酷性と結びつけているのはシュヴァンクマイエルの完全な脚色であり、それまでの世界観を壊さないための工夫といえるでしょう。しかし、ここのレビュワー見てると「乙女の祈り」と同系列の映画として見ている人もいたのはちょっと驚き。制作会社もどうせなら「これはシュヴァンクマイエル氏の考え出した世界であり、実際の少女の頭の中とは何の関係もありません」みたいな注意書きを入れてくれても良かったのに(笑)。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-07-25 19:28:29) |
5. アビエイター
やっぱり2時間以上の上映時間は長く感じました。率直に言うと前半の映画撮影のシーンは必要なかったと思います。ひたすら飛行機の映像にこだわる一方でヒューズの苦悩にもスポットを当てているのでテーマが何なのかもハッキリせず、ラストも非常に中途半端でした。ハーキュリーズの飛行の場面で主人公の成功を暗示していたようにも思われましたが、苦悩のシーンが長かった割にはカタルシスが得られなかったのはとても残念です。ディカプリオの後半の精神病の演技のはうまかったと思いますが、それでもオスカーを取れなかったのは判るような気がします。一方でケイト・ブランシェットの演技は本当にストイックで脱帽しました。 [映画館(字幕)] 6点(2005-03-31 17:00:19) |
6. I am Sam アイ・アム・サム
初めて見たときはなかなかいい映画だと思ったけど、今見てみるとやっぱりイマイチなところが多かった。やはり最大の問題点はルーシーの位置づけが少し曖昧なところ。サムと一緒にバスで逃げようとしたり、里親を嫌ったりするエピソードはいくらなんでもやりすぎなんじゃないかと思った(里親役がローラ・ダーンなので一層可哀想に思えてしまった)。監督は女性らしいが、ミミ・レダー監督同様ドラマの作りが少々あざとい。あくまでも「7歳の娘」として登場させているにもかかわらず、制作者の「とにかくいろんな事させておいて観客の同情を誘おう」みたいな下心がみえてくるようで、おかげでルーシーの事をいじらしいというより子憎たらしく思えてしまった。ショーン・ペンの縁起は文句なしに良かったけれど。個人的にはラストで法廷シーンを入れて検事の唖然とする姿を見たかったなぁ(それじゃ映画の主旨が違うか)。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-03-06 20:47:12) |
7. アトランティスのこころ
原作のファンだけにどんな脚色をしたのか気になっていたが、やはり一話でまとめるには少し無理があった。何せ、ラストで伝える事が全く違う。原作のラストではそれこそ並々ならぬ余韻を残してくれるのだが、それがなかったのは少し哀しかった(映画のラストも良いけれど)。原作の後半部で壮大なストーリーへつながるため、伏線として未消化になるエピソードも多く、とくにサリーの死が本作では唐突過ぎる。これならもうちょっとエピソードを減らして1つ1つ丁寧に作ったほうがよかったのではないかという脚色だった。しかし、それ以外ではファンタジーとしてなかなかの出来だった。作者の持つ60年代への郷愁がよく出ており、幻想的で心に残るシーンも多く、特に観覧車でのキスシーンは「リトル・ロマンス」のサンセット・キス並みに最高にロマンチックだった。アンソニー・ホプキンスもいいが、やはり子役2人の演技が自然で心に残るものだった。本当は8点ぐらいつけたかったが、前者の点を踏まえ7点。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-01-05 11:11:59)(良:1票) |
8. アンブレイカブル
非常に評価するのが難しい映画。この映画でやっていることは「バットマン」や「スパイダーマン」でやっていることをとことんリアルに描いた映画だと思う。もっともヒーロー物としてはイライジャがあの格好なのでラストはだいたい納得がいく。しかし、ヒーロー物と割り切って作っていないためか、娯楽色が薄くなってしまっている。デヴィッドの存在が曖昧なため、ジョセフとの銃のシーンなどで彼らがイライジャという異常な男に振り回されているだけのような印象すら受けてしまう。そういったわけでヒーロー物だという事に気付かなかった人からは酷評されても仕方ないとは思う。でも、プロット自体はしっかりしているのでその点を評価。 [ビデオ(字幕)] 6点(2005-01-03 01:00:05) |
9. アモーレス・ペロス
個人的に気に入ったエピソードは3つ目だけでした。オクタビオのキャラとストーリーには感情移入できず、2つ目のエピソードも消化不良な感じでした。この時点で見るのをやめようかとも思いましたが、3つ目は全体的に寂しい雰囲気とエルの境遇がツボにはまり、好印象でした。荒野を旅立っていくラストシーンも好きです。話のまとめ方はといえば、あまりうまい演出とは思えませんでした。3つのエピソードが交錯するシーン以外は印象に残らず、効果的とはいえません。音楽も前半部はその場のノリでつけたような曲で後半部でやっと画面になじんでくる、という次第。ただ、3人が事故によってどうなったかの対照はいいですね。ある者はわずかな希望すらも失い、ある者は絶頂からどん底まで落ち、ある者は人生を見つめなおす機会を得る。それぞれのエピソードに絡む犬も象徴的に用いられており、テーマを作り出しています。そんなわけで、踏みとどまって7点です。 [ビデオ(吹替)] 7点(2004-11-08 18:35:45) |
10. あなたに降る夢
《ネタバレ》 見た後に本当に心温まるお話でした。犯罪が多発する社会のなかで人を信頼する事も大切だ、と思わせてくれる映画です。マスコミに対してはあまりよく思っていませんでしたが、この映画のラストでちょっと考え直しもしました。善人である二人はラストでちゃんと幸福を得ているし、奥さんはあんな結末を迎えるし(笑)、結局もとの状態に戻っていくんですね。なによりも典型的な「お人よし」の役がN・ケイジのハマリ役でした。子どもたちを連れてスタジアムで野球するところがお気に入りです。冒頭から登場する語り手の使い方も効果的でした。ただ、前半部はだらだらした感じがあるので、そこのところをうまく処理できていればもっと高得点でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2004-10-31 17:14:15) |
11. “アイデンティティー”
《ネタバレ》 これは・・・正直ヤラレました。でも、最初っからわからない話かっていえばそうでもないところがわざとらしくなくていいです。最初のキャラ説明からうまくできているし、演出もかなり効果的でした。あまりにも都合よく出会うのでこの中の誰かが仕組んでるんじゃないか、それにしてもうまくいきすぎている・・・まあこんな感じでストーリーが進んでいきました。とくに、レイ・リオッタは最初っからクリーンでないイメージなので適役ではないでしょうか。ただ、映画を見て思ったのは中年のおじさんに子どもか、女の人格だけが残ったらどういう人間になるんでしょうか?まぁ、映画にはあまり関係なさそうですけどね。とにかく、完成度は結構高いと思いました。 [映画館(字幕)] 8点(2004-10-24 18:25:20) |
12. アマデウス ディレクターズカット
《ネタバレ》 3時間もあったのにあっという間に終わってしまいました。主演の二人の演技は素晴らしかったです。とくに、エイブラムの苦悩に満ちた表情がとても印象的でした。サリエリはモーツァルトを憎むと同時に自分の無力さを感じる、という設定が絶妙ですね。ストーリーはといえば、サリエリに同情する一方で彼に生活を追い詰められていくモーツァルトにも同情を覚えてしまうのですが、ラストで彼の執筆を手伝っているところを見てほっとしました。冒頭のサリエリの演奏がラストで意味を持つというのもいいです。彼はモーツァルトの謝罪を聞いて後悔もしたのでしょうが、それ以上に彼の曲だけが世の中に残る事が神が彼に下した裁きだったのでしょう。単純にサリエリの死で終わるよりずっと深い終わり方でした。 [DVD(字幕)] 9点(2004-07-22 18:35:37) |