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プロフィール
コメント数 565
性別 男性
自己紹介 三度の飯より映画好きです。どうぞよろしく。
※匿名性ゆえの傲慢さに気を付けながらも、思った事、感じた事を率直に書いていますので、レビューによって矛盾が生じていたり、無知による残念な勘違いや独善的で訳分らん事を書いているかもしれませんが、大きな心でお許し下され。
※管理人様、お世話になっております。
※レビュワーの皆様、楽しく読ませて頂いております。

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1.  アリス・イン・ワンダーランド 《ネタバレ》 
《2D版鑑賞》100分弱のコンパクトさでまとめたのはさすがでそれなりに楽しめますが、例えば、ヘレナ・ボナム=カーター側は異様さや残酷さが物足りないですし(ディズニー作品なのでムリだったのかもしれないが)、クライマックスのアリスとドラゴンの死闘にしても螺旋階段を舞台としたのは良いですが活劇性が乏しいです。 それからアリスがワンダーランドから現実世界に持って帰ってくるものが2つ。ダンスのステップを披露するのは素敵ですが(このシーンが最も好きだ)記憶に過ぎず、より重要なのは猛獣によって生身の肉体に刻まれた腕の傷痕の方であり、それをしっかり見せてくれないのが気になります。この傷は決して猛獣との友好の印に残されたわけではなく、ワンダーランドの実存の印として残されたはずですが、ワンダーランドへの冒険を終え時間もほとんど経過していないと思われるプロポーズ会場に戻ったアリスは腕の傷痕を確認することもしません(私は必死に確認した!)。わざわざ傷をつけたにもかかわらずバートン監督はこの問題を回避したいかのようにしっかり見せてくれないのです。
[DVD(字幕)] 6点(2011-06-14 18:46:54)
2.  赤い河 《ネタバレ》 
ラストの鬼気迫るジョン・ウェインとモンゴメリー・クリフトの対決は圧巻ですし、牛の群れの凄さ、それを平然と掻き分けるジョン・ウェインのさらなる凄さ(どうやって牛を動かしてるんだ?)、旅立ち直前の静けさ…と見応え十分なシーンがあるのは分かりますが・・・期待し過ぎていたせいか少々物足りない箇所があります。 例えばファーストコンタクトで台頭する若者同士の対決を予感させたチェリーの扱いは中途半端で肩透かしを食らいますし、あるいは100日を超える大移動ではあるものの、過酷な移動描写よりも休憩地点の方が印象が強いのもいかがなものかと(つまり私はラオール・ウォルシュ監督の「ビッグ・トレイル」のような移動の方が好みなのだ)。  暴君と化していたウェインがジョーン・ドルーに黙らされるあっさりした結末や(意地を張る男同士を仲直りさせるにはあれしかないが)、誰も書き残しそうもない手記で物語を進めるあたり、映画としては当然だと言わんばかりの豪快さです。
[DVD(字幕)] 7点(2011-06-03 18:48:33)
3.  アンタッチャブル 《ネタバレ》 
なかなか面白いですし丁寧に作ってあるとは思うのですが・・・例えばネスの家の前に脅迫者が現われるシーンであるとか、騎兵隊たちと捕り物をするシーンであるとか、あるいは証人を連れて行く帳簿好きのメンバーがエレベーターで撃たれてしまうシーンであるとか、ショーン・コネリーが襲撃されてしまうシーンであるとか(あの家の長い廊下は好きですが)、白服の男との屋上での銃撃シーンであるとかは、もう少し緊張感を巧く出せたのではないかとも思ってしまいます。  役者で言えばケヴィン・コスナーの正義の男ぶりはハマっているものの同時に主役としては存在感が希薄な気もしますが、その分、コネリーが渋くて格好良いです。ただ、コネリーの絶命間際とラストにアンディ・ガルシアに託される鍵とメダルのアイテムは、使うなら使うでもっと小出しに見せてくれないと効果的ではありません。 ・・・それでもやっぱり、マシンガンで蜂の巣にされシャツが血だらけになたって執念で即死せず情報を伝えるコネリーの姿と、その警官魂を継承しようとするかのように手を触るガルシアの姿には泣けてしまうのです。
[ビデオ(字幕)] 7点(2010-11-02 18:17:32)
4.  アデル/ファラオと復活の秘薬 《ネタバレ》 
率直に言って何を見たのかよく覚えていないほどスカスカのバラバラで、そもそもアデルがそれほど美しいわけではありませんし、ベッソン監督にしても彼女を本当に魅力的に描こうという意識があったか疑わしいものです(無意味なお風呂のサービスシーンも撮るならちゃんと撮ってくれ。色んな意味で)。では何を見せたかったのだろうか?と想像するに、それはコメディに他なりません。アデルの妹が、不治の病に冒された薄幸の美少女ではなく、デコにピンが突き刺さったグロテスクにして滑稽な姿で登場した瞬間に、〝はいっ、とことんコメディやりま~す!〟と声高に宣言しているようなものです。そして、ここでベッソンが見せる笑いは繰り返しによるもので、例えば、教授を牢獄から脱走させようと試みる刑務所の件では、幾度もアデルが外につまみ出されるシーンを見せることによって、つまみ出される姿だけで笑いを誘うように仕組んでいます。この反復の笑いは割りと好きなのでウケてしまったのですが…それにしても、不必要に多い登場人物といいタイタニック号での終幕といい、結局のところ壮大な予告編を見せられた感じがします。この予告では仮に続編が公開されたとしても期待は抱けませんが。
[映画館(字幕)] 6点(2010-07-21 18:20:09)
5.  アウトレイジ(2010) 《ネタバレ》 
まずタイトルが出るまでのオープニングがとても良いです(この冒頭部が最も好き)。〝全員悪人〟という宣伝文句に違わず悪人だらけで、カッターナイフから菜箸まで生々しく痛覚を刺激し目を覆いたくなるばかりに狂気で凶器が満ちており、もはや銃なんぞ映っても全く怖くならないほど暴力全開です。また各々別世界から集めたようなキャラクターもしっかり立っていて、髪を撫で付けず煙草プカプカでヘラヘラの椎名桔平の魅力は否定できないですし(警察署前の煙草ポイ捨てのやりとりが面白い)、加瀬亮の風貌といい英語ペラペラのインテリ具合といい漫画から飛び出してきたみたいなキャラクターももっと見せてくれと思わせます。それに頭パカパカ叩かれてもオトボケ顔の三浦友和(吠えない犬ほど噛む)、時代劇から出てきたような石橋漣司(彼の登場シーンは喜劇だが、この皮肉な笑いも残酷なものだ)、人が良さそうな北村総一朗と小日向文世(彼らこそ最も計算高い悪党だ)と一人一人が本当に良い味を出しています。しかも誰もが口を揃えて〝バカヤロー〟〝コノヤロー〟と言うので、これはコントでそのうちダンカンも登場するのではないかと思ってしまう一方で、とても冷め切ってもいる不思議な世界になっています。  ・・・ただ、いつもより説明台詞が多いのが気になります(おそらく無くたって問題無いのだが)。例えば何処かの国の大使は完全にコメディーパートを勤めていますが、あの笑いはTVでやるようなしゃべくりによるものです。
[映画館(邦画)] 8点(2010-07-07 18:16:31)(良:1票)
6.  アバター(2009) 《ネタバレ》 
(3D版を鑑賞)メガネの向こうに、あるはずのない架空の世界が現実に存在しているかのように思えたのは、やはり凄いですし、やたら空を飛びまわり、木が柳のように枝垂れているのも3Dを意識してのことでしょう。クライマックスの一大バトルも迫力がありますし、先ごろ見た「パブリック・エネミーズ」のおかげで、その顔をすっかり認識できたスティーヴン・ラングの力強い悪役っぷりも頼もしい限りです。 (ここからは3D環境の話)ただ大きな問題点として、あのサングラスの如きメガネのせいで光と闇が制限されてしまうということがあげられます。常に薄暗がりにいるようで、もっと明るくなければならない所も、もっと暗くなければならない所も表現しきれないでしょう。 (ここからは個人的肉体の話)それとあの重めのメガネを160分も掛けているのは耳と鼻につらく、字幕も何だか見辛かったです。さらなる進歩によりメガネを掛けずに見られるようになれば…全て解決なんですけどね。 
[映画館(字幕)] 7点(2010-03-26 18:41:34)
7.  アパルーサの決闘 《ネタバレ》 
無骨なエド・ハリスと寡黙で熱いヴィゴ・モーテンセンの男臭いコンビはかっこいいですし、いくつか良いシーンもあり、望遠鏡で覗くとレネー・ゼルウィガーがスッポンポンだったりするのも笑えますが、次々と男をモノにするレネーはもっと美しくなきゃいけないんじゃないかと…。それはレネーをキャスティングした時点でもう問題だったかもしれませんが、例えば彼女がアパルーサの駅に下り立った初登場シーンなどは、砂埃なんて必要なく(もしかして嵐の前触れってことかもしれないが)美しく撮るべきだったと思います。また何回かある銃撃戦も悪くはないのですが、〝間〟と言いますか開始前の緊張感というものが、どうもあんまりよろしくありません。
[DVD(字幕)] 6点(2009-12-10 18:33:37)
8.  あの夏、いちばん静かな海。 《ネタバレ》 
主人公は耳が聞こえないですが、これは耳の聞こえない者の物語ではないようです。つまり言葉なんてのは、さして重要ではなく排除しても差し支えないものであるから、主人公から台詞を奪うために、あえて耳を聞こえなくしたのではないかと思います。実際、ほとんどの台詞が無意味でしょうもないもので、例えば、バスで距離がひらいた恋人二人が歩いて再会するシーンだけで台詞など無くとも充分に物語っているのです。  さらに、ラストの楽しい思い出のようなシーンの数々は作中では省かれてしまっています。強面の河原さぶさんがトロフィーを手にし嬉しそうに酒を飲む姿などは感動的で、普通なら本編に挿し込んで簡単にお涙頂戴モンにしそうなものですが、そんなことはせず、ただただ黙々と歩き移動する姿を映し続けていて、それでも胸に響いてしまうところが凄いです。 ・・・と言っておきながら、私のお気に入りのシーンは思い出の方に近い、彼女がサーフボードの後ろを持ってあげるところだったりします。サーフボードが持ち上がり二人が顔を合わせニッコリと笑うのが微笑ましいですし、それを後で男のコンビで笑いとして使ってしまうのも良いですね。  それから、これは海の映画なんですが海そのものよりもビーチの方が魅力的に見えます。
[DVD(邦画)] 9点(2009-08-28 18:36:26)(良:1票)
9.  暗黒街の弾痕(1937) 《ネタバレ》 
最初の再会シーンで鉄格子ごしにキスをするのですが、これは如何なる障壁も二人の間を裂けないことを思わせるもので、その後も度々、確認するようにキスするのが逆説的に今後の悲劇的な顛末を予見させ、どこか悲しい心持ちになります。 またサスペンスとしても素晴らしく、運送屋の雇い主を殴った直後に土砂降りの銀行へとカットが変わり、車から不気味な目が覗き、ガスマスクを被る犯人の顔は分からない…。観客をミスリードしていく巧みさがそこにはあります。運命の分かれ道となる刑務所のシーンもモヤモヤとかかる霧が視界不良の退っ引きならぬ状況を見事に表しており不安感を募らせています。 ・・・ただ一つ、二人の逃避行の時間経過の感じさせ方が希薄で、どうしても赤ちゃんの誕生が唐突な感じを受けます(「ベイビーって呼んでるの」というシーンは凄く良いのですが)。例えば、浅はかな考えで物を言えば、輪転機を回すだけで全然違ったと思うのです。まぁそんな安っぽいことしたらあの雰囲気には合わず世界観ブチ壊しかもしれませんが。 
[DVD(字幕)] 8点(2009-07-21 18:34:40)(良:1票)
10.  或る夜の出来事 《ネタバレ》 
お嬢様は何にも知らんだろうと、クラーク・ゲーブルがさも得意げにヒッチハイクの講釈をたれるシーンが何ともおかしいです。実践してみればカーレースのようにビュンビュン通り過ぎて行く可笑しさ。柵の上で優雅に横たわり〝しょうがない私の出番ね〟となり、女がそのおみ足をチラッと見せれば車が急停車する。もう分かりきったコメディなんですけど、これこそがエロティックなのだと思います。しかも上品かつロマンティック。ジェリコの壁の使い方なんぞ、その極みですね。当時は倫理規定の問題で性描写ができなかったのかもしれませんが、そんなのは物語る上で何の障害でもないことを証明しています。壁の上に掛かる下着、揺れる壁、ラストにはその壁が崩壊に到りハッピーエンドとなるわけですが、たった毛布一枚でこういった表現ができてしまうのが凄いことです。現在では退屈と言われても仕方ないこういう演出こそが、本当の豊かさなんだと思います。
[ビデオ(字幕)] 8点(2009-02-03 18:22:20)(良:3票)
11.  アバウト・シュミット 《ネタバレ》 
社会や家庭における立ち位置が無い帰属の消失によるアイデンティティの喪失という深刻な問題も、ジャック・ニコルソンの怪演のおかげで見事にコミカルな描写となっています。ニコルソンがヤケになってカートいっぱいに冷凍食品を積めこんでいるシーンなんぞ最高に可笑しいです。そして始まる旅。このロードムービーの道中の空っぽの田舎町、はっきりしない天候などがシュミットの心象風景のようで悩みや虚無を感じさせます。さらに花婿の実家はシュミットの家とは180度違った色使いであり、到着早々、近所の裸のオヤジがゴミ出しする姿が何気なく窓からチラリと見えます。これが自身に理解不能な別世界へ突入した合図となっていて面白い。加えて奇妙な食事会の風景、ウォーターベッドでの奮闘ぶり、ジャグジーではニコルソンはパンツ履いているのにキャシー・ベイツは豪快ヌードと、畳みかけるような未知の試練がシュミットに迫ってきて悲しいまでの滑稽さについついシュミットに肩入れしたくなる作りが巧いです。ただ、ラストのオチ…言いたいことは分かるのですが子どもの絵とニコルソンの泣き顔アップで締めるのは少々ズルいかなと。確かに堰を切ったように感情が爆発する場面ではあるのですが、もう一歩引いた演出で見せた方が深かったと思いますし、映画にも一貫性があったのではないかと思います。でもそれ以外はかなり気に入っています。  私にとって定年退職なんてまだ想像もつかない先の話なのですが、シュミット化の危険性も孕んでおり胸にグッサリ突き刺さってしまいました。自身が同じ年頃で観ていたらもっと痛い思いをしていたでしょう。 
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-25 18:27:40)(良:1票)
12.  アメリカン・ギャングスター 《ネタバレ》 
なかなか過激なシーンから導入し、これから凄いことが始まると予見させておいて、実話を基にただただ事の顛末をハイスピードで追って行きます。70年代のギャングを現代の速度で撮り、ついてこいとばかりにバンバン切り替わり動くカメラは軽快で疾走感に満ちていますが、目まぐるしく私の動体視力ではちょっとついていけません。例えばデンゼルとミス・プエルトリコの出会いのシーン。初対面で好意を示し握手した手を離さないのですが、握手のショットが全くなく言葉だけで簡単に処理されています。同様にボクシング会場で帽子が邪魔なら帽子が邪魔だと言い(コートを燃やしてしまうシーンは印象的ですが)、亡きボスの写真を飾りキング牧師と同じくらい尊敬していると説明させます。ボスにどんどん似てくる過程でしっかり描かれていないのです。またデンゼルに迫ってくるラッセルとの距離感がほとんどつかめません。なにせ教会の前に突如出現…ですからデンゼルは捕まったわけですが、ラッセル視点の時には獲物に近づいていく感じをもっと出して欲しかったです。  渋くきめたデンゼルとふっくら体型で善玉ぶりを演出した?ラッセルら俳優さんが良かっただけに、もっともっとと期待してしまいます。 
[映画館(字幕)] 5点(2008-02-05 18:13:34)
13.  アイ・アム・レジェンド 《ネタバレ》 
なんだろう…想像していたものと反してビックリしてしまったのですが、よくよく考えてみれば〝地球最後の男〟で〝オレが伝説〟って、ちょっと宗教っぽいですね…と思ったらこの監督さんはキアヌの「コンスタンティン」を撮った人で、この手の世界が好きなんでしょう。蝶の啓示とかおそらくアメリカ人自体もこういうのが好きなんでしょうし。まぁでも、この類の映画で説明台詞が極力削られているのは好感が持てますし、〝ウィル・地球を救う男・スミス〟が頼りなげでいつもより魅力的に見えましたし、前半の方はけっこう良かったです。大都会を鹿の群れが駆け抜け車飛ばしてハンティングするシュールな画や、暗がりのビル中を明かり一つで進むところの緊張感など面白かったです。ただ、感染者に露骨に襲われるようになったあたりからは急激につまらなくなります。遊んで散らかしたオモチャを片付けなくちゃいけないみたいに退屈なのです。せっかく光に弱いという単純で使い易い弱点を持っているのに、〝これだっ〟と言う見せ場に乏しかったのはちょっと寂しいですね。
[映画館(字幕)] 6点(2007-12-25 18:09:21)
14.  あるいは裏切りという名の犬 《ネタバレ》 
漂う犯罪の香り、暗闇に雨で濡れた地面、これはフィルム・ノワールをやるんだな!?と思っていたら警官でしかも人の好さそうなダニエル・オートゥイユが登場してあれれ?と、そうこうしている内に「ヒート」が始まる。あの車で擦れ違い様に会話する決別のシーンは、お互いの肩越しから撮られ「ヒート」でパチーノとデ・ニーロが喫茶店で宣戦布告するシーンのようではないですか!…こっちは面白味に欠けますが。で、結局は力入れて作ってあるのですけど煮え切らない感じです。というのもオートゥイユは良い役者だと思いますが、やはりいささか善人過ぎて暗黒映画の主人公には向かないように思います。それとノワールの定義のようなものは知りませんが、最後はドパルデューを撃って表に出たところでオートゥイユが射殺されたらもっと凄かったと思うのですが…、というよりも早い話、オートゥイユよりドパルデュー視点中心に描いた方が〝あるいは〟ノワールらしくなって面白かったのになぁ。だってドパルデューの方がヤバくて良いでしょ。オートゥイユはどんな目に遭っても金太郎飴の如く基準が正義で行動が明白ですが、ドパルデューは完全に出世に取り憑かれているようで何が何だか判らなくなっていますし。それにオートゥイユはドパルデューと闘わず信念で生きているから対決という感じではないですね。まぁ何だかんだいってこの〝男の世界〟は好きで、ドパルデューがドンパチやらかす前に景気付けにウィスキーの小瓶を空けてしまうところなどはとっても良いと思うんですけどね。
[DVD(字幕)] 7点(2007-12-17 18:24:37)
15.  アポロ13
極限状況における宇宙船のクルーと管制官の危機感を持った連携プレーが、絶妙な配分で描かれており作品の世界に引き込まれてしまいます。死と隣接している当事者は喧嘩、管制官たちは眠気覚ましのコーヒー片手の姿に温度差を感じさせるあたりも巧妙です。大作にして、宇宙船、管制センター、家の三空間だけで構成される一種の密室劇にし緊迫感を損なわず最後までもっていくのは見事です。感動の無理強いせず淡々とした作りになっているのも好感が持てます。ただ人物描写に関してはやや甘く、個々の演じる役者さんのそれぞれ特性に頼りきっているように思えます。つまりは見事なタイプキャストでもあるわけですけど。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-11 18:31:19)
16.  アザーズ 《ネタバレ》 
屋敷の外は霧がかかりボヤけているし、何より屋敷そのものの構造をしっかり把握させてくれない。何処にどの部屋があるのか正確には分からないのだ。この曖昧さが恐怖を煽っている。またピアノや鏡などクラシックながらホラー味あふれる道具の使い方も素晴らしい。その中でも特に鍵付きのドアが印象的である。別次元への空間移動の如くいちいちガチャガチャガチャガチャくどいまでにするのが何とも凄い。部屋ごとに隔てられ視界が限られる上に、一つ一つのドアが重要に思えドアの向こう側に恐怖を潜ませているあたりが本当に上手い。そしてニコール・キッドマンの透き通るような美しさも十分に活かし、この世界に力を与えておりとても良い。 ・・・ただ、惜しむらくは視点こそ違えど「シックス・センス」と同じオチになってしまっていることだ。あの映画とは全く別物だと思うのだが、これではどうしたって比較されてしまうし、免疫のできた観客には驚愕のラストというわけにはいかなくなってしまっている。「シックス・センス」に触発されてできたのではない、ただの後発の作品だったとしたら丁寧に作られているだけにそこが残念である。
[映画館(字幕)] 8点(2007-08-01 18:40:02)(良:1票)
17.  明日、君がいない 《ネタバレ》 
子どもと大人との隔たりを主張しているためか型にはまった大人たちの描写は希薄で、ドキュメンタリー調でインタビュー形式の告白を聞かせてしまうのは映画としてはどうかと思いますが…最後まで緊張感を保ち若者特有のヒリヒリを感じさせてくれます。学校を舞台に肩越しから覗くように撮られた日常風景、人物と時間の交錯はガス・ヴァン・サントの「エレファント」と似た手法ですが、本作はあれよりずっと劇的であり感情的です。サスペンスタッチで冒頭から誰かの死を予見させる命の重みで訴える構成は、その後始まる一人一人の声に真剣に耳を傾けざるを得なくさせます。そして大き過ぎる問題を抱えた生徒たちはドラマチックですし、それでいて唐突に核心を衝くあの結末はヘビーな問題ではなく無関心による孤独という日常的な悩みがいかに重いかを気づかせてくれます。さらに〝予想外の自殺者〟は観客にも無関心への荷担を強いているのです。衝撃的なリストカットのシーンは画面から目を背けたくなるほど鮮明で痛々しく〝生〟への証として描いているように思えます。  監督が自らの体験をもとに本作にとりかかったのは弱冠19歳の時というのですから驚きですが、言われてみればで良い意味でも悪い意味でも若さを感じますし、若者らしい心の叫びが伝わってきます。
[映画館(字幕)] 7点(2007-05-07 18:03:09)
18.  アメリカン・ヒストリーX 《ネタバレ》 
人種差別という重過ぎるテーマで、問題視されて久しい現在でも尚起こっている現実に警告するかのような内容でしたが、静かにも熱く心動かされてしまいましたね。兄弟の物語が軸となっているのが観易かった要因だと思います。割と単純な展開で聡明なはずのデレクの改心理由がいささか甘い感じがしますが、ラストにダニーが撃たれてしまった事に抜けることのできない負の連鎖と根深さを感じさせますし、主題が明確になっています。また、人種差別の契機として若者の怒りが扱われているのも興味深いです。大概において自分自身でもその源が不明瞭な衝動的な若者の怒り。これはどんどん蓄積され何か不快な事に対して発散させても、それは所詮真の理由ではないので怒りのゲージはすぐに元通りの満タンになってしまう。そんな虚しい様が良く描かれています。実際にデレクが怒りのままに暴れ殺人を犯してしまうシーンがバイオレンスに痛々しく描かれているのは、逆説的に暴力を否定しているように思えます。・・・それにしてもエドワード・ノートン!恐ろしく巧いです。前に観た彼の出演作が「世界中がアイ・ラブ・ユー」の優男だったので尚更ビックリしてしまいましたよ。それからファーロングも何かこんな役ばっかりな気がしますが、似合っているので良いでしょう。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-05-01 18:07:43)
19.  アンビリーバブル
ともすれば未来という設定も忘れてしまいそうな近い将来が舞台ですが、これはシュールレアリスムをやりたい監督が冒険し過ぎる危険性を回避して、観客に歩み寄り少しでも物語性を備わせようとしている印象を受けます。なんせ既成概念無視の不可解な現象の連発。説明無し、物語の関連性無しにウガンダ人が空を飛びますし、異常気象を装い夏に雪が降りますし、水が凍結します。この不合理さは未来科学的と言うよりも完全に超現実的であり、同時にその画は詩情的なのです。ですから物語としては不親切と言いますかイイカゲンなのですが、私は何だかとっても惹きつけられるのです。まず最初の異変としてエスカレーターに死体が当たり前のように転がっていてホアキンと共にミステリアスな世界へと誘われる。そして錯覚のようにクレアのそっくりさんが登場するシーンにドッキっとさせられる。この奇妙な謎の数々の答えは提示されませんが、これは〝無人島に行くなら何を持って行く?〟みたいな極論に過ぎず意味など無く、愛についての追求なのだと思います。ショーン・ペンをストーリーテーラーとして使ったのは少々ズルい気がしますが、解り易さも提供してくれるしオトボケ学者キャラは味があります。ホアキンとクレアも役にはまっていますし、特にホアキンの無口で少し困惑気味の表情のアップが良いです。ただこの〝アンビリーバブル〟って邦題はどうなんでしょう?風船の如く空飛ぶウガンダ人だけに捧げられたようで、この題をつけたことがアンビリーバブルです。
[DVD(字幕)] 8点(2007-03-30 18:20:48)(良:1票)
20.  アメリカ,家族のいる風景 《ネタバレ》 
もうのっけから良い。西部劇を匂わせながら現代に突入し徐々に本題へと入っていく。情報量が少なく主人公と共に物語を紐解くように進み興味が湧いてくる。一貫してカウボーイルックのハワードは時代に取り残されているようで孤独を感じさせる。他の登場人物たちもまた同じであり遺灰を胸に抱くスカイの姿や路地裏で泣くドリーンの姿、部屋を破壊するアールの姿、TVで野球を観戦する母の姿、ハワードを追跡するサッターの姿にそれぞれの孤独を感じさせる。また、舞台である寂れた町の景観も抜群であり一つ一つのカットが芸術的であることに驚かされる。作中に漂う雰囲気も素晴らしくその世界観にただただ引き込まれてしまうばかりである。ただ後半は少々展開が早い、と言うか甘い。短時間でハワードは目的を達し満足するし、アールともけっきょく簡単に和解する、町は淋しくも画面も決して寒々とはしていない。最後にティム・ロスに厳しい台詞を言わせるが変わり者であるサッターは観察者であるからして学者の戯言にしか聞こえないし、大局的過ぎる視点は現実味が薄い。そんなところにヴェンダース監督の温かさや優しさを感じる。まぁ結局のところこれもこれで好きなのだが、個人的には同時期に似通ったテーマ性で撮られたジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」の方が若干好みである。
[DVD(字幕)] 8点(2007-02-20 18:07:54)
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