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1.  アンナ・カレーニナ(2012) 《ネタバレ》 
キーラ・ナイトレイは、確かに大変な美女だけれども、どうにもその笑い方に品がなく、また、致命的に色気がない女優さんである。まあ、ソフィー・マルソーのアンナもイマイチだったのだが、まだ彼女は男に惑い惑わされ、というのに説得力がある。・・・というわけで、キーラがアンナを演じるということと、過去に何度も映像化されていることを考えると、この演出は大正解であったと思う。非常に工夫された、それでいて無理がなく面白い方法だった。どこかコミカルな趣を感じさせてくれたのは有り難い。これでシリアス路線まっしぐらだったら、悲惨だったと思うので。ただ、あの社交ダンスの踊りは???であった。腕をうねうねさせて、あんなの初めて見たゾ。ああいうのが、当時のロシアで流行ってたのかしらん? それにしても、アンナという女性は、超が付く身勝手なお人。若い愛人に走るも、夫に戻り許しを請うたかと思えば、やっぱり愛人を愛していると言い、愛人の愛も信じられなくなり発狂、薬漬け、自死・・・、と、まあ当然のルートを辿るので、見ている方は同情も何もなく、ふむふむ、そらそーだろ、としか思えないというか。夫も愛人も、何だかなぁ、という印象で。しかし、「愛」って何なんですかねぇ。肉欲が盛んな頃は、単なる発情期であって、愛してる、ってのとはちと違う気が。発情期を過ぎた後、それでも、愛しい、会わずにいられない、その人のことを思わずにいられない、というのが愛情の芽生えでは。そういう意味じゃ、アンナは発情期を愛と勘違いしたまま、勝手に死んじゃった、ということもできるかな。随分意地悪な見方だけど。歳をとると、人を愛することって、そんな単純な話じゃないでしょ、とか思っちゃって、ダメだねぇ。勢いで突っ走る、そう、それも愛でしょ。そーでしょ。そう思いたい、若いころのように。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2014-01-03 03:13:19)(良:1票)
2.  愛のメモリー 《ネタバレ》 
G・ビジョルド“だけ”が目当てで見た次第。ですが、これはなかなか面白かったです。『めまい』からの翻案だそうで、確かにまあそういう部分もあるけど、私的には、本家よりこっちの方がゼンゼン好きですね。あの共同経営者はその容貌から裏の顔が丸見え、というミステリーとしてはいささかマヌケな作りなのですが、冒頭の「いきなり妻子が事故死」で、え~~っ! て感じで掴み、生き写しのサンドラが現れてからはラストまでテンポよく展開し、ジ・エンド。なにより、サンドラに恋するマイコーが、本家のスコティみたいに気持ち悪くないのが良い。でも、この映画のキモは、やっぱし、ビジョルドでしょう。彼女の魅力と演技あっての本作ではないでしょーか。ま、私はビジョルド大好きなもので、ついつい彼女にばかり目が行ってしまう訳ですが。しかし、どーして彼女はああも魅力的なんでしょうか。もんのすごい美人、という訳ではなく、むしろ童顔、なのにセクシーさも持ち合わせているという、類まれな役者さんですね。特典映像で最近の彼女が出ていて、さすがに老けましたが、やっぱり素敵でした。『めまい』がオカルトチックでイカレたストーカー中年オヤジの変態ミステリーだとすれば、こちらは、ミステリーの顔をしたラブストーリーですな。デ・パルマらしいけれども、らしくないともいえそうな、ものすごく真っ当な作りで、楽しませていただきました、ハイ。
[DVD(字幕)] 7点(2013-12-25 22:18:29)
3.  アンコール!! 《ネタバレ》 
まあ、良いオハナシなんだけど、既視感バリバリ、展開が読め過ぎちゃって白けました。偏屈爺ィが歌を通じて心を開く、って、あーた、新人シナリオコンクールでも「ありがち」なんてコメントされそうです。あらすじは知っていて見たわけですが、作品もまったくの「まんま」って、これ、あんまりじゃない? 音楽は、一応まあまあ。というわけで、作品自体へのコメントは、正直ほとんどする気になりません。・・・しかし、何なんですか、この邦題は。「!」マークを付ければ免罪されるとでも思うのでしょうか、この作品のどこに「アンコール」の要素が? 配給会社の方は、もっと作品を愛して邦題を付けていただきたいですねぇ。金取って公開しようってんだからさー。ホントに作品見て付けたの? と言いたいくらい、お粗末な邦題ですな、これは。それにしても、テレンス・スタンプです。すんごいフツーのおじいちゃんになってまして、拍子抜けしました。私の中では『コレクター』とか『私家版』とかのイメージが強いんで、こういうフツーな彼、ってのは違和感が・・・。作品中、若い父と息子の写真が出てきて、そこに若かりし陰影のあるオーラをまとった彼(とても人の親には見えない)が写っていまして、懐かしかったですね。まー、うっすーくて香りの全くないレギュラーコーヒーみたいな作品でした、ハイ。
[映画館(字幕)] 5点(2013-07-31 23:15:42)
4.  アフター・ウェディング 《ネタバレ》 
マッツ・ミケルセン目当てで見た、この監督作2本目の鑑賞です。本編の前に、いくつかこの監督作の予告編が入っていたのですが、なんつーか、こう、どれもこれも、まあ、よくもこんだけ似たようなテーマのハナシを何本も撮る気になれますねぇ、、、と思って、本編を見る前にいささかゲンナリしてしまったのはちょっと残念な出だしでありました。でもって、本編ですが。・・・暗い。すげぇ暗い。どん底の闇に引きずり込まれそうな暗さがあります。確かに、人生は、大切な人との別れの連続です。その喪失感たるや、筆舌に尽くしがたいものです。だからといって、人生は、失うばかりのものではありません。得るものも同じくらいあるはずです。暗い映画が嫌いなわけではありませんし、喪失を描いたものが嫌いなわけでもありませんが、この監督は、自分の喪失体験をこれでもかと人に押し売りしている感じがしてしまって嫌なのです。実際のところは知りません、この監督の過去がどんななのかなんて。しかし、共感を強いるような哀しみの押し売りはいただけない。泥の中を這いまわっているだけのような日々というのは、生きていれば誰にも一度や二度はあるでしょう。でも、人生のハイライトはそこじゃないはず、と私は思ってしまうわけです。でもって、病死するヨルゲンの言動も、非常に嫌悪感を抱いてしまいました。人の人生を引っ掻き回して、悲劇のヒーロー気取りで(かどうか知りませんが)死んでいく。人はみんな死ぬんですよ、例外なく。早いか遅いかの違いだけです。それなのに、ヤコブにはヤコブの人生があったのに、何なんでしょうか、あの死に様は。そして、それをまるで咎めもしない妻。実の娘がいるからって、ヤコブが選んだからって。ま、でなきゃ映画にならない、お話にならない、と言っちゃえばそれまでですが。死に際は、よく考えねばなりませんね。考える時間があれば、ですけど。突然死を切望している自分には、いささか矛盾した感想を抱かざるを得ない作品でした。というか、実際はいつ死んでもいいように、考えているといえば考えていますけれどもね。もう、この監督の作品は見たくないなぁ、見るかもしれないけど。・・・あ、マッツ・ミケルセンは、やはりイイ役者さんですね。マッツ株、引き続き上昇中。
[DVD(字幕)] 4点(2013-07-29 23:31:16)
5.  愛、アムール 《ネタバレ》 
正直、ショックです。ハネケの作品が、こんな、、、直球ストライクでくるなんて。すごく良い人目線になってしまって。さしもの彼も、歳とったってことでしょうか。いや、、、本当に、これはショックでした。テーマ的に、毒の入り込む余地がない、と言えばそれまでなんですが。・・・しかし、ジャン=ルイ・トランティニャン、『Z』で切れ者の予審判事を演じていたあの颯爽とした男っぷりは最早跡形もなく、ひたすらに愛する妻を支える好々爺となっておりました。時の流れを嫌でも感じさせられます。そしてまた、彼の夫ぶりがあまりに崇高で素晴らしく、もう、涙も出ません。なんてわがままな妻だろう、とも思わなくはないのですが、その妻の願いに一途に尽くすのです、夫は。そして、妻はきっと、夫の最後の選択をあの世で感謝こそすれ、恨みはしないでしょう。そう思わせるラストシーンです。「コート、着ないの?」の一言にKOされました。これがハネケの妄想でしかない、と、思う人も多いでしょうが、でも、究極のラブストーリーだと思えば、決して妄想ではないと思いますね。ハネケの境地に脱帽とともに、ここが終着点だなんて思ってほしくない、きっと次回作があるはずだと信じます。
[映画館(字幕)] 8点(2013-04-12 22:33:02)(良:1票)
6.  アポロンの地獄
なかなか面白かったです。思ったより大人しいというか、真っ当で拍子抜けした部分もありますが。ギリシャ神話を題材にしているとはいえ、背景は荒涼とした砂漠だったり、音楽は日本のお神楽だったり、西欧文明がナンボのもんじゃい!みたいなパゾリーニの気概が感じられて楽しいです。ただ、タブーを犯したことを知った後のオイディプスが喚き過ぎで非常にうるさく、ドン引き。あんな大声で喚く演出の意図は、一体何ぞや?と、ちょっと考えてしまったけれど、まあ、これは分かりません。オープニングとラストで現代のイタリアが舞台となるのも、なかなか面白い。父親にナチスの服着せるあたり、キョーレツな悪意を感じます。そして、あの魅惑的な母親。まぁ、パゾリーニにしてはかなりフツーの映画だと思いますが、見て損はないと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2012-05-23 22:23:11)
7.  悪人
地上波のカットしまくり版を見てレビュー書くのってどーよ、と思うが、お金払ってDVD借りる気にはならんだろうし、多分カットされたシーンは、お茶の間に流せないようなシーンばっかだったんだろうから、別に大勢に影響ないか、と思って書くことにしました。というわけで、原作は既読。吉田修一ファンの方には申し訳ないんだが、私はこの人の作品2本しか読んでいないけれども、嫌いです。もう1本読んだのは『さよなら渓谷』。選択が悪かったんだろうけど、まあ、嫌いになっちゃったもんは仕方ない。なので、本作もゼンゼン期待しないで見た次第。というか、むしろ、こき下ろしてやろうと手ぐすね引いて見たといっても良いくらい。ところがところが。あら、結構イイじゃない。原作じゃムカついた、佳乃の殺害シーンの描写も、こっちは見ていて「ひでぇなー」としか思わない。これは、多分、満島ひかりの演技が上手いからでしょう。始めから終わりまで、まあ、ムカつくことなく見れたのでした。脚本に原作者も参加しているけれども、こういうのって、むしろ失敗するケースが多いと思うが、本作に限っては成功していると思う。そうか、吉田氏は、こういうことが書きたかったんか、と、原作を補うものがあったような。この人は、小説家より、脚本家の方が向いてんじゃないか? とさえ思った。・・・とはいえ、まあ、だからもう一度見たいかと聞かれると、別に見たいと思わないし、心を動かされる何かがあったかというと、それもない。ふわ~っとイイ作品、でしかない、私には。でも、それはそれで十分良いとも思う。吉田作品を他にも読もうとも思えないけどね・・・。あとこれ、CMが一杯細切れで入っていたんだけれども、日本の企業ってのは、もう少し、ショーバイ根性よりも、文化とか芸術とかの精神性を尊重するっていう度量はないのかね。ある程度まとめてインターミッション的にCM流すとかさー。そういう企業だったら、同業他社の製品より高くても私は買うぞ、率先して買うゾ。そういう、芸術に理解ある(上っ面じゃなくて)本物の経営者っていないのかねぇ、・・・ということを、本作を地上波で見て一番強く感じました。
[地上波(邦画)] 6点(2011-11-29 21:49:40)(良:2票)
8.  アリス(1988)
彼のアニメ作家としての名を不動のものにした作品、、、なんだろうけど、まあ、確かに面白いし、アリスの女の子も可愛いし、出て来るキャラも素晴らしいし、飽きずに最後まで一気に見られるんだけど、やっぱり、『悦楽共犯者』の後に見ると、パンチ不足というか。こっちを先に見たら良かったんだよな、きっと。見る順番を間違えたのかも。彼の絵本の世界が動いていました、そのまんま。楽しかったです。
[映画館(字幕)] 7点(2011-10-24 23:30:28)
9.  赤い靴(1948)
名作の誉れ高い旧作をスコセッシが監修してデジタルリマスターされたってんで、これは見なくっちゃと、猛暑の中、見に行きましたよ。あー、あぢかった。・・・で、感想ですが、汗だくになって見に行った甲斐はありました。とにかく画が綺麗。やはり衣装や髪型などで古さは感じるものの、劇中バレエ『赤い靴』の延々バレエシーン等、素晴らしい。ストーリー的にはどーってことないんですが(つーか、アンデルセンの話の方が百倍恐ろしい)、この作品は、見て感じるだけで十分なんです。「愛か芸か?何で二者択一なんだよ」とか「なんだあの作曲家の夫は。妻を追い詰めてバカじゃないのか?」とかっていう尺度で考える必要はないんです。美しい画、音楽、素晴らしいバレエ、これを堪能するんです。なのでスクリーンで見たのは正解でした。劇中バレエ『赤い靴』の中で一番素晴らしかったのは、何と言っても靴屋のラストシーンの踊り。これは本当に感動的。・・・と思ったら、あのニジンスキーの後継者といわれたダンサーだったと分かって感激。ニジンスキーの後継者・・・、はぁ、嘆息。・・・いやぁ、これは、四の五の言わず、一見の価値ある作品でしょう。
[映画館(字幕)] 7点(2011-07-15 23:54:19)
10.  愛を読むひと 《ネタバレ》 
原作未読。前半は村上春樹ばりのお坊ちゃまクンのドリームワールド全開で唖然・・・。訳知りの年上女が勝手にズボンのファスナー下ろしてくれるどころか、いきなり全裸で背後から襲って来てくれるなんて。しかも、ひと夏限りであっちから勝手に去ってくれるという、なんちゅう都合の良いオネエサマ。そりゃあ、忘れられないわけだよ、坊やは。果たして、後半は雰囲気一転。オネエサマは被告席に。そこで坊やはオネエサマが文盲だったことにようやく気付く(かなり鈍い)。かつてオネエサマご教授のテクを駆使して(かどうか知らんが)若いコとSEXしたりしながら一応悩んでもみたりする。でも結局、彼は見ているだけ。こうして、彼は大人になって弁護士になって、贖罪のつもりか「朗読者」になるんだけれども、これ「傍観者」だよね、実際は。唯一、救いのある解釈をすれば、彼が敢えて何もしなかったのは、彼女の「全てを犠牲にしてでも文盲であることを明かさない」そのアイデンティティーを最後は尊重したからだ、と。でも、違う気がする。それを建前に、本音は自己保身・・・。いや、でもそれを責めるには可哀相だよね。なんたって、彼は坊やなんですから。ラストシーン、娘に話すって、意味が分からん。どこまでも独善的なマイコー。う~、こんなハナシ、父親から聞かされる娘の身にもなってくれ。それにしても、これ、何で英語なのでしょう? ドイツ語でやって欲しかったなぁ。違和感ありまくり。レイフ・ファインズも何だか色褪せちゃいましたねえ・・・、好きだったんだけどなぁ。ケイトは頑張っていました。ダルドリー監督、過去2作品はその評価も納得だけど、この作品については??な演出でございました。次回作、期待しています。
[DVD(字幕)] 4点(2010-09-12 22:41:28)
11.  アンナと過ごした4日間
オープニングからの展開で、一体どんなグロい展開になってしまうのやら、とビビッたけれども杞憂であった。かなり悲惨なオハナシで、全体に話も画面も暗いんだけれども、結構笑ってしまうシーンが多かった。主人公は、とにもかくにもツイてない、分かりやすく言えば鈍クサイ男。この男の描写がとにかく素晴らしい。紛れもないストーカーなんだけど、不器用そのものの情けなさが、それこそ情け容赦なく描かれていて憎めないというより可笑しさに転じている。何度もスッ転んで、その時の彼の表情なんかはその最たるもの。あらあら、と、つい手を差延べたくなるほど。こりゃ、男の悲しい(でも愛すべき)性(サガ)を笑い飛ばす作品、という見方もアリじゃない? ラストもファンタジーに貶めていないところが素晴らしい。美しい風景と、地味な音楽もgood。彼に小さな幸せが訪れて欲しいなあ、と心底思う。
[DVD(字幕)] 8点(2010-09-05 22:33:30)
12.  哀愁のトロイメライ 《ネタバレ》 
これは、クララとロベルトの愛の試練物語ではなく、クララと父親の近親相姦&親子離れの葛藤物語、ですな。クララの父親がとんでもないステージパパだということは知っていたけれども、映画ということで7割差っ引いて見たとしても、それでもありゃ父娘愛ってよりは、男女のそれに近いでしょうが、ってな具合でハッキリ言ってかなり気持ち悪い。クララが性格破綻気味のロベルトに惹かれたのもある意味分かる。あれじゃ、男を見る目を養うなんて無理だもの。まあ、おかげで後世の我々はシューマンの名曲にも、そしてブラームスの数々の名曲にもあやかれるわけで、娘の幸せなんてそこのけで蹴散らし自分の名誉欲最優先でクララをこき使ったパパに感謝せねばなりませぬ。さて映画としての本作を考えてみると、昨秋、ブラームスの子孫とやらが撮ったクララの映画よりは百倍見るに値すると言えましょう。なにより、ナタキンの溜息の出るような美しさだけでも一見の価値はあり。クレーメルって顔に似合わずあんなに指が長くて美しい手してたのねぇ・・・、ってことも分かって一つ収穫。あ、彼はパガニーニに扮して超絶演奏を聴かせてくれるのでこれも一聴の価値大有り。なんだけれども、最悪なのはロベルト役のグリューネマイヤー。彼の奥目の顔は、あのB級ホラー(?)映画『デビルスピーク』のクリント・ハワードを思い起こさせ、雰囲気ぶち壊し。これは、役者には何の罪もないんだけれども、一旦脳味噌がそう認識したらもうダメなのよ。というわけで、ヒジョーに評価の難しい作品でござんした。
[DVD(字幕)] 7点(2010-07-20 23:22:38)
13.  アルテミシア 《ネタバレ》 
美術史上における初の女性画家として位置付けられているらしいです、このアルテミジア・ジェンティレスキというお方。あのユーディットの怖い絵も描いていて、本作では、そのデッサンシーンが情事の端緒として描かれているのが面白いかも。まあ、でもタッシとの間に愛があったという脚本はちょっとなぁ・・・。クサイというか。個人的には、タッシが結婚を餌にたぶらかして若い女性の肉体を貪り尽くした天才だけどド助平な俗悪画家、って方が好きだけど(史実としては今や当人のみぞ知るだそうですが)。実在のアルテミジアは、この裁判後、出世街道まっしぐらで、結構恵まれた人生だったみたいなんで、本作も脳天気に見られました。しかし、こういうマイナービデオを置いてくれていたお気に入りのビデオ屋がいよいよ閉店だなんて・・・。哀し過ぎる。また今度借りようと思っていたものも結構あったのになぁ。う~、これで引越しをためらう要因が一つ減ったかも。
[ビデオ(字幕)] 6点(2010-05-06 23:50:28)
14.  あるスキャンダルの覚え書き
ジュディ・デンチがっ! すげぇーー! こぇーー!! でございますっ。・・・でも、実際います、こういう人。もの凄く世界の狭い人、恐ろしく対人関係構築がヘタな人。彼女、かなりの高確率でバージンだろうな。いえ、別にバージンが悪いのでなく、彼女がそのことに絶望的なコンプレックスを抱いちゃっているからヤバイんです。ちょっとレズっぽい描写がありますが、彼女は違います、多分。男を知らな過ぎる反動です、きっと。これは男性には分かりにくいかも。女子同士が手をつないでトイレに行くのと、感覚としては同じでしょう。男児にはありませんもんね、そういうの。オンナ特有のものだと思います。バーバラの人生の道幅は狭く、モテない我が身を片方の「男」という側から遠ざけることでずっと自己防衛してきたんだけど、それが反対側の「女」(しかも彼女の歪みに気付かない女限定)に極端に接近(つーか激突してますな)する結果となっただけ。彼女だから孤独なのか、孤独だから彼女なのか、ニワトリと卵だわ~。なかなか面白い作品でした。
[DVD(字幕)] 7点(2009-12-02 16:37:53)
15.  穴(1960) 《ネタバレ》 
作業過程をひたすら映しており、それがまた面白い。房の床をいきなり鉄パイプで叩き出したのには唖然・・・。砂時計には、やるなぁー、と感心。その手際のよさといい、的確な動きといい、感動モノ。・・・それもそのはず、調べてみれば、あのロラン役の俳優は実際の脱獄囚だったとか。ジョゼ・ジョバンニ自らが脚本も手がけ、本職がその技巧をカメラの前で披露したのだから、リアルでないわけない、ってことか。ラストは、あの「アルカトラズ」とは異なり苦いものなのだが、それがまた味わい深い。とにかく男臭い、でも裏切りに女が絡む、The“男の映画”。
[ビデオ(字幕)] 8点(2009-10-21 16:38:38)
16.  ある公爵夫人の生涯
キーラ・ナイトレイは確かに整った顔だけれど、社交界の人気をさらったという魅力――滲み出る品性と知性美がまるでないのが致命的。なんでこのキャスティングなのかなぁ。レイフ・ファインズは良いのだが、こういう主人公が不遇であることがウリの映画では悪役を魅力的に描くのが鉄則なのに、デヴォンシャー公爵はただの冷血漢でイヤなヤツという単純な描かれ方なのもいただけない。衣装はさすがに見応えがあって良かったけれど。・・・まあ、ちょっと年齢的に厳しいかも知れないけど、キーラよりヘレナ・ボナム・カーターの方がハマったんじゃないかなあ、公爵夫人には。
[DVD(字幕)] 5点(2009-10-21 15:49:48)
17.  愛のそよ風 《ネタバレ》 
これは隠れた佳作だと思います。同じ歳の差恋愛を描いた『エレジー』より遥かに素敵です。どこが? そりゃ、恋に落ちる2人がです。『エレジー』は下心満々のエロ爺ィと、自分の魅力をしっかり自覚した若い女性のオハナシでしたが、こちらの初老のおじさんは、エロ爺ィではありません。子どもに毛の生えたような少女も、ヒッピーで素直で可愛らしい。別に恋愛の形なんかそれぞれなので、どっちでも結構ですが、映画として見ていたくなるのは明らかに本作です。ラブシーンの描写も素敵です。ただ、奇しくも両作品が共通して描いた歳の差恋愛の挫折要因は「男の方の自意識過剰」でした。「オレみたいなオッサンがこんな若い娘と・・・、何と思われることやら」ですね。そりゃまあ、色眼鏡で見る人は多いでしょう。世間体をより気にしてしまう、男の方が社会的生き物なんでしょうかねぇ・・・。こちらは、ちなみにハッピーエンドで、爽やかなラストシーンが用意されています。『エレジー』みたいに深刻な病気を持ち込まず、それもポイント高し。これは、きっとイーストウッドに同じような経験があるのだろうな、と思います。恋多き男ですから、彼は。彼のロマンチシズムが凝縮された、そして、彼の監督としての才能の片鱗が感じられる逸品です。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-20 14:11:50)
18.  あなたになら言える秘密のこと 《ネタバレ》 
イイ映画だと思います。ティム・ロビンスって、別に好きでも嫌いでもない俳優でしたが、これを見てかなり好きな方に傾きました。大やけどしてベッドの上のシーンがほとんどなんですが・・・。実にいい味出しているのです、これが。大海原の孤島がごとく浮かぶ油田掘削施設、という設定がミソですね。ハンナの告白シーンですが、日の光に体の線がブラウス越しに透けて見えるところで「ただならぬ話」が始まる予感がします。でも、その内容は見る者の予感を大きく超える凄絶さで、痴情話の延長くらいにしか想像していなかったその「秘密」の内容に、ベッドの上のジョゼフ同様、激しい衝撃を受けます。そしてやはり、ハンナはブラウスを脱ぐのですが・・・。ジョゼフが回復後、ハンナを求めて訪ねるのは想像通りだったのですが、その後、ラスト近くの2人のやりとり「私の涙であなたは溺れてしまう」「泳げるようになるよ」でKOされました。ハンナの心を氷解させるのにはこの一言で十分だったのだと思います。こんなことイイ男に言われたら、女としては受け入れなきゃアホでしょう。ユーゴ紛争を下敷きにした重い映画とも言えますが、究極のラブストーリーだと、私は思いました。
[DVD(字幕)] 8点(2009-07-02 14:15:46)
19.  赤い風船 《ネタバレ》 
絶賛の嵐の中、書きにくいのですが・・・。私には、この映画はかなり怖いです。映像や音楽の美しさはナルホド素晴らしいと思うのですが、あの赤い風船に心が宿ったかのような(というか、宿ったということなんでしょうね)物語の運び、しかも最後、心配しながら見ていた通り、風船たちにどこかへ連れて行かれてしまった少年・・・。あの後、あの少年はハッピーなんでしょうか? 私にはそうは思えないのです。風船が人形だったらホラーじゃないでしょうか? 子どものころ見ていたら、また違う感想だったんでしょう。恐らく、こんな風にしか感じられない私の感性がおかしいのでしょう。でも、あそこまで少年に執着する赤い風船も、あのラストも、やっぱり私には「ファンタジー」で片付けられない「何か」を感じてしまって、感動などできませんでした。
[ビデオ(字幕)] 6点(2008-11-04 15:01:13)
20.  アパートメント(1996) 《ネタバレ》 
よく出来た謎解きドラマです。でも、それだけです。主要人物である男女4人ですが、ロマーヌ・ボーランジェ演じるアリスが唯一人、人間味を発揮していただけで、あとの3人は都合よく配置されていた、という感じです。特に、肝心の、ヴァンサン・カッセル演じるマックスの行動は理解不能。そもそも、リザを重要な仕事をすっぽかすほど愛していたの? だったら、リザが姿を消したときにもっと必死に捜せばいいじゃん! かと思えば最後はなにかい、アリスちゃん選ぶんかい? いや、じゃなくって、やっぱ婚約者かい!! と、まー、次々呆れさせてくれるんです。しかし、この映画は「謎解きありき」で作られたと考えれば、そういう疑問はむしろ瑣末なことなんでしょう。おかげで、やたら作りこみすぎです。マックスとリザが、会いそうで会わずにすれ違いを繰り返すところなんか、鼻白むのよ。ただ、謎を解きたい、というのは人間の根源的な欲求ですから、人物造詣なんかお粗末でも、「たった一つの謎」だけで最後まで引っ張られちゃうんです。で、見終わった後、残るものは何もない。「あー、アリスちゃんは、そんなにマックス君が好きだったのねー」という感想を除いては。それにしても、マックスにしろアリスにしろ、一目ぼれだけであそこまでの執念って、それも不可解といえば不可解。フランスじゃ、ああいう恋愛の始まりはフツーなんですかね。とにかく、イロイロ不満が残る作品だけど、モニカ・ベルッチが相変わらずの美しさで、それが鑑賞の目的の一つだったんだから、ま、いいか・・・、とも思うわけです。
[DVD(字幕)] 6点(2008-09-08 11:07:14)(良:1票)
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