1. 青空娘
《ネタバレ》 ウジウジ悩まない、恨まない!(とりわけこれ!)、低レヴェルの諍いに与しない、青空を仰いで苦境をどんどん乗り越えてゆく。昭和32年の快作である。湿っぽい日本映画にあからさまに対抗している。 [ビデオ(邦画)] 9点(2015-09-14 13:33:59) |
2. アルファヴィル
《ネタバレ》 いまとなってはゴダールにしては甘口である。が、我が国の国立大学を「役に立つ」学部のみにしていこうという例の「改革案」とかは、まさにアルファヴィル的だと思わせる作品。とりわけ、アルファヴィルでは深く問う概念というものがどんどん変更・抹消されていく、という設定に、ゴダールの真面目な主張が見える。 [ビデオ(字幕)] 7点(2015-08-28 23:48:45) |
3. 赤ちゃん教育
《ネタバレ》 ストーカーだな、この女性は。ホークスの語りのスピードは映像自体の原理で動くスピード(彼女の破れたドレス姿を覆うケーリー・グラントの運動)でもあるし、編集のスピード(アヒルの姿→豹→アヒルの羽毛に埋まるケーリー・グラント)にもよる。 [ビデオ(字幕)] 8点(2015-03-19 21:50:02) |
4. ある女の存在証明
《ネタバレ》 探し当てた彼女の窓を見上げる、と、彼女の側からのショットになり、窓のフレーム内に、こちらを見上げる主人公の姿がある。構図/逆構図がしばしば美しいし、ヴェネツィアの水面も美しいので6点献上。。 [DVD(字幕)] 6点(2015-03-11 20:11:36) |
5. アーティスト
《ネタバレ》 トーキー映像部分(映画内映画)をもサイレントで描くという破天荒な試みもある(トーキーに慣れ切っている状況をあらためて相対化してみるのも悪くはない)。さて突然声が出なくなるというサイレント俳優の悪夢は、サイレント映画の中ではまさに声を根こそぎ奪われた感を表出する。 [DVD(字幕)] 7点(2015-02-20 13:21:23) |
6. 暗黒街の顔役(1932)
《ネタバレ》 おそろしくスピーディーな語りのリズムが(現今の『ジャージーボーイズ』を連想させる)伸し上がっていく暴力的野心家の勢いそのもので、これぞ形式と内容の一致である。マシンガンの速射がカレンダーをめくっていく奇抜な画像は典型例だ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2015-02-10 23:57:58) |
7. 暗黒街(1927)
《ネタバレ》 スタンバーグの繊細さは特別だ。ボスの情婦の首回りに揺れる羽毛、情婦がボスの手下を誘惑するシーンのクロースアップの神秘的な美しさ。 フィルムノワールの白黒のコントラストで突き進むなんてことはしない、陰影に富む。 [ビデオ(字幕)] 7点(2015-02-03 00:25:30) |
8. 兄とその妹(1939)
《ネタバレ》 主人公は正義を貫いて潔く会社をやめる、そして「外地」(満州)に移る。この「爽やかな」決断が拡張主義的時代に支えられているわけだ。松竹小市民映画のモダニズムが戦争の犠牲になるというよりはむしろ同じ枠組みを積極的に共有していたとは、小津や成瀬(→PCL)でも。 [ビデオ(邦画)] 7点(2015-01-26 20:23:14) |
9. 暗黒街の弾痕(1937)
《ネタバレ》 あのドイツ時代の『M』の暗さからすれば、すっかりスッキリした画面に変貌したラングである。そのうえこの映像はとくにスタイリッシュな美しいものである。 [DVD(字幕)] 7点(2015-01-19 09:44:02) |
10. 愛、アムール
《ネタバレ》 ハネケ映像のそっけない痛々しさは、ドキュメンタリー調とはまた違うものだし、ましてやフィクションの画調とはまったく縁がない。「そっけない痛々しさ」は、剥き出しになった危険な状態である。 [ビデオ(字幕)] 7点(2015-01-03 21:29:36) |
11. 暗殺のオペラ
《ネタバレ》 「真実」を求めての異邦人モティーフ、といえばカフカ調で、しかも話は逆説的で、『城』の主人公Kがじつは「測量技師」ではないらしいのと同様に、この映画では責めがあるのは探す主体の側(「不当に」殺された父)であるという相対化が良い。映画語りとしては意図的に鈍いが、それが程よくリアルで、「退屈」に耐える云々というアリダ・ヴァリの台詞も効いている。多少うとうとしたが、それもふくめて楽しめる。ベルトルッチでは『殺し』に続くぐらいの良さである。 [ビデオ(字幕)] 7点(2014-01-15 20:28:43) |
12. アメリカン・ラプソディ
《ネタバレ》 産みの親と育ての親の間で悩む娘という構成では足りないからと冷戦による不幸(「自由の国アメリカ」はやはり強調される)を絡ませるが、凄く退屈である。映画の前提部にすぎない設定から映画が結局ほとんど動いていない。スジ不足。 [DVD(字幕)] 4点(2012-11-19 10:40:09) |
13. アンダーカヴァー(2007)
《ネタバレ》 内容的には他愛のないもので「警察友の会」的ですらある(アウトローの人物を掘り下げた方がほんらい意味深いかもしれない)のだが、この重量感はどうだ。形式面のこの充実!怖いシーンのもの凄い怖さ。 [DVD(字幕)] 6点(2012-06-18 15:04:31) |
14. アジョシ
《ネタバレ》 正視し難いくらいの残酷さ・阿鼻叫喚である。せっかくだからこの機会に、臓器売買の原因たる臓器移植や、「殺す正義」(死刑制度なども含めて)は、ほんとうに「あり」なのかどうか、深く考えてみたい。それくらいの問題提起をしているのでなければ、大いなる無駄ではないか、このような映画は。 [映画館(字幕)] 4点(2011-09-24 22:51:17) |
15. アジャストメント
《ネタバレ》 ドアとともに映画史はある。ドア一枚で異界と日常世界が接しているという発想は面白いし、映像的にも刺激的である。とくに主人公が、異界から日常へドアを介して投げ込まれるとき。 [映画館(字幕)] 5点(2011-06-11 22:55:31) |
16. 蟻の兵隊
《ネタバレ》 この映画を観ながら私は、比較の意味で、アイヒマンを扱った映画『スペシャリスト』を思い浮かべていた。個々人としてはみな小心で凡庸なのに集団としては残虐なことをしてしまう、とは『スペシャリスト』の認識で、そういうふうについ言ってしまうが、そういう理解の仕方ではものの役には立たない。もっと正確には、集団の上下関係の残虐性ということなのだ。集団の上下関係の残虐性に歯止めを掛けるような仕組みを制度化すること(いかにして可能か?)が必要だ。ターゲットは中国人というより、ひょっとしてむしろまず日本人下級兵だったとしたら?このことをあの『ゆきゆきて神軍』も強力に取り上げたのだった。これは過去のハナシではなく、集団の上下関係の残虐性が現在の日常において批判的に検証されているかどうかが問題なのである。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-26 10:34:12) |
17. 歩いても 歩いても
《ネタバレ》 限られた場面で面白みを繋いでいく演出が立派である。この人がなんで『空気人形』なんかを撮るのかわけがわからない。 [映画館(邦画)] 6点(2011-03-19 11:14:11) |
18. 愛怨峡
《ネタバレ》 フィルムセンターでついに観ることができたときは嬉しかった。期待通りの凄い作品であった。映画館という「暗い部屋」でこの映画の暗さに包まれなければならない。ほんとうに暗い。だがこれは克服されるべき暗さであるというのが溝口の仕掛けなのである。堕ちたときから強くなる女性という溝口パターン。 [映画館(邦画)] 10点(2011-03-19 10:32:04)(良:1票) |
19. アバター(2009)
《ネタバレ》 3Dの値打ちは、怪物に実際に襲われたとおもえたことくらいかな。人間の代表が白人で、人間は自然破壊の権化なのだが、悪い人間(白人)ばかりというわけではない(良い白人もいる)という話。これで人間=白人の罪滅ぼしとなるかなのだが、なるのだなこれが、なんと便利な白人中心主義。 [映画館(字幕)] 5点(2011-03-14 20:29:10) |
20. 熱い夜の疼き
《ネタバレ》 クラッシュ・バイ・ナイトのこの邦題はどうかな、誤解を呼びそう。フリッツ・ラングのアメリカ時代作品の白眉。ひょっとしたらフィルム・ノワール作品よりもこういう恋愛ドラマのほうが得意だったのかも知れない「ドアの映画監督ラング」。人妻バーバラ・スタンウィックの住居の中のドアを押し開けて観客の目に触れるのが、間男ロバート・ライアン、もうそんな仲だったのかという完了形をふりまいて。抑圧の心のドアを押し開ける欲望。 [映画館(字幕なし「原語」)] 10点(2011-03-13 14:55:06) |