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 > かたゆき さん
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プロフィール
コメント数 1973
性別 男性
年齢 49歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  アビゲイル 《ネタバレ》 
何者かによって集められた凶悪な犯罪者集団。お互いの名前や経歴など一切知らないまま、現場へとやって来た彼らは、ボスに言われるがままとある少女を誘拐する。少女の名は、アビゲイル。強固なセキリュティに守られた豪邸に住む大富豪の一人娘だ。薬で眠らせたアビゲイルとともに隠れ家へとやって来た彼らは、身代金が支払われるまでこの館で一夜を過ごすことに。だが、彼らはまだ知らない。一見普通のか弱い少女に見えるアビゲイルには、恐るべき秘密が隠されていることを――。突如としてバリケード封鎖された隠れ家の中で、次々と命を落としてゆく仲間たち。果たして彼らは無事に翌朝を迎えることが出来るのか?ぶっちゃけて言うとバンパイア映画の名作『フロムダスクティルドーン』の現代版と言った感じなのですけど、こーゆーのってネタバレしちゃうと面白さが半減しちゃうのが難点ですよね。自分も盛大にネタバレしている宣伝文句に惹かれて鑑賞したのですが、でもこの宣伝文句がなければ観なかっただろうし、難しいところ。さて、肝心の内容なのですが、全体的にすんごく惜しい映画でしたね、これ。映画って観ている間、「なんだか面白くなりそう」「やばっ、めっちゃおもろい!」「サイコー!!」と言うメーターを行き来するもんですが、本作はずっと「なんだか面白くなりそう」と「やばっ、めっちゃおもろい!」の間らへんで止まってる感じ。一瞬そのメーターを越えた瞬間もありましたが、それも1、2回程度。設定もキャラもすんごく面白くなりそうなのに、なんかすんごく勿体ない。「白鳥の湖」のバレエを踊りながら襲い掛かってくる血まみれ少女とか、最近観た映画の中では『ミーガン』に次ぐインパクトだったのにねぇ。後半になるにつれ、しっちゃかめっちゃかになる脚本ももう少し何とかならんかったんかな。最後のまさかの父親登場も、アビゲイルのまさかの豹変という中盤のどんでん返しがインパクト強すぎて霞んじゃってるし~。と、いろいろ述べましたが、それでもこの監督のとにかく面白い映画を創ってお客さんに楽しんでもらいたい!!と言う有り余る情熱には好感持てました。最後の血みどろグチャグチャクライマックスなんて観ていて純粋に楽しいし。次作に期待ってことで!
[DVD(字幕)] 6点(2025-07-21 11:54:19)《更新》
2.  悪の教典 《ネタバレ》 
彼の名は、蓮実聖司。地方の公立高校に勤務する英語教師だ。人を惹き付ける明るい性格と誰もがうらやむルックスの良さで生徒からの人気も高い。また、常に生徒のこと第一に考える熱血教師ぶりと保護者からのどんな要望にも真摯に対応する人当たりの良さから同僚教師からの信頼も絶大。授業も丁寧で分かりやすく、体育教師も真っ青の身体能力の高さ、それでいて毎日軽トラックで通勤するような飾らない人柄から、皆に〝ハスミン〟と呼ばれ、親しまれている。まさに人格者を絵に描いたような完璧な教師だった。自分の欲望にとことん忠実で、そのためには平気で人を殺すことを厭わないサイコパスであることを除けば――。人気者の顔の裏で、盗聴や謀略を駆使し、自分の理想のクラスを作り上げようとするハスミン。なんでも言うことを聞いてくれる親衛隊、弱みをちらつかせたら簡単に高級車やタワーマンションを提供してくれる同僚のお坊ちゃん教師、そしてクラス一の美少女とのとろけるような甘美な時間……。だが、そんなハスミンの完璧な生活は、ちょっとした綻びから急速に崩れ始める。その明晰な頭脳で何とか立て直そうとするハスミンだったが、様々な偶然が重なり、事態は取り返しがつかないことに。果たして彼が最後に選んだ「手段」とは?原作は、数々の賞に輝くベストセラー作家、貴志祐介。遅ればせながら、最近原作本を読んだのだけど、これが思いのほか面白くて、これほど夢中になって読んだのは何年振りだろうというくらいの傑作でした。で、その流れで映画化された本作も鑑賞。いやー、蓮実聖司を演じた伊藤英明はまさに嵌まり役でしたね。原作のイメージ通りの笑っちゃうくらい男前だけど、何処か胡散臭い感じがサイコーでした。そんなサイコーパスな彼が、自分の理想のクラスを作るために邪魔な生徒を学校裏サイトで炎上させたり、モンスターペアレントを火事で焼き殺したりする前半はその不穏な空気感も相俟って、なかなか楽しい。普段、世間体や人とのしがらみから色んなことを我慢している自分の鬱屈した暗い部分をビシバシ刺激してくれて、ここら辺は原作通りの面白さでした。ただ、後半からこの監督の良くも悪くも持ち味である「大味」な部分が目立ってきて、次第にテンションが下がってゆく自分がいました。うーん、後半からが雑すぎますかね。最大の見所であるクライマックスの生徒大量殺戮シーンも、原作ではもっと葛藤して悩んだ挙句「こうなったら皆殺しにするしかない。あいつらには悪いが早めに〝卒業〟してもらおう」と冷静に結論付けるところが、この蓮実聖司と言う強烈なキャラクターの魅力だったのに。これでは単なる頭のおかしい殺人鬼ってだけじゃん。まぁ画としては強烈で、あの傑作をここまで映像化してくれただけでも自分は満足度高めでしたけど。原作が大好きだった分、いろいろと不満点も残る作品でした。惜しい!
[DVD(邦画)] 6点(2025-07-04 12:45:36)
3.  アイアンクロー 《ネタバレ》 
80年代に活躍した伝説的なプロレスファミリー。その名も、フォン・エリック一家。父は、相手の頭をその万力のような剛腕で締め上げる〝アイアンクロー(鉄の爪)〟と言う必殺技で一世を風靡したプロレスラー、フリッツ・フォン・エリック。そんな父から厳しい英才教育を受けて育てられたのはケビン、デビッド、ケリー、マイクの4兄妹だ。しばらく地方でドサ回りを続けていた兄弟だったが、世界ヘビー級王座への挑戦権を手にするとそこから華々しく活躍してゆくことに。だが、予想だにしなかった悲劇が兄弟たちを襲うのだった――。三男のデビッドが過剰なプロテイン接種により日本での巡業中に急死。その意思を次いでチャンピオンとなった次男ケリーはその直後にバイク事故により片足を失ってまう。そして、オリンピック選手を目指していた末っ子のマイクもプロレス界に参戦すると試合中の事故により昏睡状態に陥ってしまう……。いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになったそんなプロレスラー家族の悲劇的な運命を描いたヒューマン・ドラマ。これが実話と言うこともあり、全編を覆うこの重苦しい雰囲気はなかなか見応えがあった。周りから見れば、あくまで仲の良い成功した家族のように見えるがその内幕は、それぞれの思いがぶつかりあうどろどろの愛憎劇。父親はいつも家族のことを第一に考えているように見えて実は自分の成功のことしか興味がないモラハラ親父、母親もそんな横柄な夫に従順につき従うしかない典型的な昔の女。機能不全を起こしたそんな家族の中で徐々におかしくなってゆく兄弟たちの運命をただじっと見守るしかなかった長男の目線で物語は進んでゆく。彼らがそれぞれ迎える悲劇はあまりに理不尽。華々しいプロレス業界で、重圧に押しつぶされたりトラブルに巻き込まれ、最後はみな悲惨極まりない最期を迎えてしまう。最後、長男以外の子供を全て亡くしもはや壊れてしまった母親の姿など見ていられない。これをただ理不尽な悲劇として終わらせていいのだろうか――。やはりここまでの悲劇を招いてしまったのは、父親の存在が大きいと思う。息子たちに幼いうちからひたすら過酷なトレーニングを強要し、プロレスラーとなってチャンピオンになることを強制、無理がたたって壊れそうになってもろくに相談を聴こうともしない。ここまで来ると毒親を通り越してもはやサイコパスなのではないかとすら思えてくる。家庭と言う外からは見えにくい密室で徐々に壊れてゆく子供たちをどうすれば救えたのだろうかと考えざるを得ない。ただ、本作の惜しい点は、そんな父親の狂気性への踏み込みが甘いところだ。子供たちをここまで妄信させる、狂気にも似た父親の執念にもっと切り込むべきだった。そうすればより心に残る物語となっていたであろうに。後で調べたところによると本作では描かれなかった、同じく自殺したもう一人の末っ子クリスの存在があったことを知った。彼の存在をばっさりカットしてしまったのも何か釈然としないものが残る。
[DVD(字幕)] 6点(2025-06-04 09:38:37)
4.  アバウト・ライフ 幸せの選択肢 《ネタバレ》 
仲の良かった友人たちが次々結婚し焦りが隠せない結婚適齢期の女の子ミシェル。彼女のことが普通に好きなのにいまいち結婚に踏み切れない優柔不断な彼氏アレン。些細なことから大げんかになってしまった2人は、もはや別れるかこの先永遠に一緒になるかの瀬戸際に追い込まれていた。事態を打開するためにミシェルとアレンは、お互いの親たちを招き食事会を開くことに。だが、彼らはまだ知らない。偶然の積み重ねによって2人の両親は互いの妻と夫とそれぞれ不倫関係にあることを――。何も知らないままミシェルの家に集った二組の家族は、そんな驚きの事実にただただ呆然とするばかり。果たして子供たちの結婚の行方は?リチャード・ギアをはじめ豪華キャストを揃えて描かれるのは、そんな2組の家族の恋と人生の行方を軽妙に描いたロマンティックコメディでした。正直、自分の苦手な分野の作品なのですが、もはやレジェンド級のそんな名優たちの豪華共演と言うことで今回鑑賞。結果は…、やぱ自分は観んでも良かったかな……。あたし(オレ)たち、いったい誰と一緒になったら幸せになれるの?という、どーでもいい人たちのどーでもいいお話がひたすら最後まで続いて自分はゲンナリ。お互いの妻や夫と不倫関係にある両親が一堂に会するというこの作品の肝となる設定も、それをどーゆーふうに説得力を持たせるんだろうと思ったら、たまたま映画館にいた人がそーだったとかたまたま口説いた女性がその人でしたというテキトーぶり。さすがにこれはあかんのちゃいまっか。普通に考えたらけっこうドロドロになりそうなお話なのに最後、みんな元さやに収まって楽しい結婚式を披くことができましたとさという取ってつけたようなハッピーエンドを迎えた日にゃ自分は全員に殺意さえ芽生えそうになったぞ(笑)。まぁベテラン4人の肩の力が抜けた飄々とした演技――真面目な不思議系おばさんダイアン・キートン、女癖の悪そうな無責任男前おじさんリチャード・ギア、自分の人生後悔してばかりの小心者おじさんウィリアム・H・メイシー、そして性格のひん曲がった性悪おばさんをのびのびと演じたスーザン・サランドンとどれも各々のキャラを活かしたもので、そこは楽しかったですけどね。要は、「この映画、まったく自分の好みではなかった」ということで。
[DVD(字幕)] 4点(2025-03-05 13:00:16)
5.  アクアマン/失われた王国 《ネタバレ》 
曲がったことが大嫌い、悪い奴は地の果てどころか海の底まで追い詰めるアトランティスの海のヒーロー、アクアマンが帰ってきた!!今回彼が戦うのは、何千年も昔に南極の奥深くに封印された失われた王国の悪の帝王。だが、そのためにはかつて自分が牢獄へとぶち込んだ弟の協力が必要だった。なんとか脱獄に成功させた弟とともに、アクアマンは海の底から火山島まで世界を股にかけて駆け巡るのだが……。稀代のエンターテイナー、ジェームズ・ワンが再びメガホンをとったということで、今回鑑賞。前作同様、驚異のビジュアルエフェクトは素晴らしかった!!様々な海の生き物たちが和気藹々と暮らす海底都市の映像を見てるだけで、僕はもうワクワクが止まらなかったんですけど。そこから一転、巨大なバッタの群れに追い掛けられる南の島のシーンもサイコーでした。脳みそ筋肉なアクアマンと常に冷静沈着な弟くんとの正反対なバディっぷりもなかなか楽しい。まぁ内容なんてほぼナシですけどね。あまりに荒唐無稽ですけど、これはこーゆー予定調和なお話とお金のかかった映像を楽しむためのものだと割り切って観れば全然大丈夫。さすがに何千年も海底に隠れてきたアトランティス人が最後、もういいやと姿を現し国連に加盟しますと宣言しちゃったときは、余りにバカバカし過ぎて思わず失笑しちゃいましたけど。あと、あのでっかいタコ君が大好きだった自分としては、彼の活躍をもう少し見たかったかな。結論。最後まで頭空っぽで観ていられる良質のエンタメ映画でした。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2025-02-28 10:27:05)
6.  あのこと 《ネタバレ》 
まだ中絶が違法とされていた1960年代フランスを舞台に、予期せぬ妊娠が発覚し、自らの将来を守るためにどうしても中絶しようともがくある女子大生の苦難の遍歴を淡々と綴ったヒューマン・ドラマ。まぁ確かに言いたいことは分かるし、これまで社会がいかに女性に厳しく無関心であったかを告発するという意義も分かるんですけど、一本の映画としてはちょっと微妙な印象。あまりにも淡々とストーリーが進行していくし、暗いだけで魅力に乏しい主人公にもいまいち感情移入できないし、何より全体的に画が薄暗くて見辛いところが自分の好みとしては致命的でした。数年前にカンヌでパルムドールを受賞した『4ヶ月、3週と2日』と同じく、訴えたいテーマには共感できるのだけど映画としてはいまいち面白くなかったというのが率直な感想です。最後に流産した胎児の映像を見せるのも不快感しか残らず、そこを敢えて映すところも似てます。この時代、女と言うだけでここまで不自由な生活を余儀なくされた多くの女性の人生に光を当てようというその思いには好感が持てるだけに、映画としてのクオリティももっと大事にしてほしかった。惜しい。
[DVD(字幕)] 5点(2024-03-30 08:39:35)
7.  アラビアンナイト 三千年の願い 《ネタバレ》 
古今東西の神話や物語を研究する考古学者アリシア。以前辛い離婚を経験し、それ以来彼女は仕事一筋でこれまで孤独に生きてきた。古代ギリシャの神々や中東のエキゾチックな物語がアリシアの生きる支え。そんなある日、仕事で訪れた異国の地で彼女はとある小さな小瓶を手に入れる。いかにも安っぽいありふれたもの。だが、この小さな瓶の中には、古代の魔人ジンが3000年ものあいだ閉じ込められていたのだった――。宿泊したホテルで魔人を開放してしまったアリシア。戸惑う彼女に魔人は、「お前の願いを3つ叶えてやろう」と提案してくる。古代にかけられた呪いによって、魔人は解放者の願いを叶えなければ自由を手にすることが出来ないのだ。だが、物語に憑りつかれていたアリシアは魔人と少しでも長くいたいあまり、あの手この手で翻弄してゆく……。孤独な女性学者と古代の魔物とのそんな駆け引きを独創的な映像で描いたファンタジー・ドラマ。監督は、マッドマックスシリーズで有名なジョージ・ミラー。まぁなんというか、とっても変な映画でしたね、これ。予告編だけ見ると、胸躍るストーリーや迫力満点の映像で観客を魅了するエンタメ・ファンタジーかと思いきや、まさかのホテルの一室で物語がほぼ完結するお話でした。解放されたくて願いを叶えてやりたいジンと彼を開放したくない主人公がひたすら押し問答を繰り返すだけ。しかも何故か2人ともずっとバスローブ姿(お前らは一戦交える前の夫婦か!笑)。そこにジンの過去の解放者たちの物語が回想形式で描かれるという、逆アラビアンナイトみたいな展開になるのですが、肝心のこの物語がびっくりするほどつまらない。そんなに魅力的でもない主人公がひたすらグダグダするだけ。映像も終始小汚いうえに微妙に気持ち悪くて、生理的嫌悪感が半端なかったです。特に2話目の太った女性が大好きな王子様が、全国から集めてきたおデ……失礼、大柄な女性だけのハーレムをつくるシーンは、ひたすらそーゆー女性のフルヌードを見せられてだいぶしんどかった(個人の感想)。結末もかなり強引なハッピーエンドで思わず苦笑い。この監督って、やぱこーゆーセンスがものをいう内容の映画を撮るのに向いてないんじゃないかな。
[DVD(字幕)] 4点(2023-11-27 09:14:40)
8.  アクトレス ~女たちの舞台~ 《ネタバレ》 
人気と実力を兼ね備えたベテラン女優マリア・エンダースは、私生活の方も任せっぱなしの女性マネージャーとともに充実した毎日を送っていた。そんなある日、彼女はとある舞台の出演依頼を受ける。それは彼女の映画デビュー作である『マローヤのヘビ』のリメイク。若く美しい少女がお堅い中年女性をその美貌で翻弄し破滅させるという役柄で自分は一躍有名となったのだ。だが、その役は当然かつての美少女ではなく、なんと破滅させられるお堅い中年女性の方だった――。時の流れの残酷さをひしひしと感じ当初は断ろうとしたマリアだったが、恩師である映画監督の急死を機に前向きに検討することに。そんな彼女を献身的に支えてくれるマネージャーから知らされた、かつて自分が演じた美少女役に抜擢されたという若手女優ジョアン。ネットで調べてみた彼女はまさに自分が演じた役にぴったりのスキャンダラスな若く美しい女の子だった。彼女の存在に心を搔き乱されたマリアは、出演依頼を承諾することを決意するのだが……。確かに題材は良かったと思うんですよ、これ。かつてその悪魔的な美貌で一人の中年女性を破滅させるという役で一世を風靡した女優が、今度は逆に破滅させられる役を演じるというのはなかなかに興味をそそられるお話。しかも演じるのはジュリエット・ビノシュとクロエ・グレース・モレッツという、これ以上ないくらいのまさに嵌まり役な2人。そこにクリステン・スチュワートが絡んで三角関係のような心理劇となるなんて、どう考えても面白くなりそうな脚本なのに、これが一向にそうならない。何故なんでしょう?それはやはり監督の演出が終始、見事なまでに的外れだからじゃないですかね。観客が観たいのはそこじゃないだろ!!と突っ込みたくなるほど、どうでもいいシーンの雨あられ。主人公の女優と女性マネージャーが山にピクニックに行くシーンなどやたら長いうえにはっきり言ってつまらない。恐らく監督は、この2人の友情以上恋愛未満なシスターフッド的関係をこそ描きたかったのだろうけど、いかんせん深みが足らないせいで観ていて退屈でしかなかったです。また、肝心のクロエちゃんが出てくるのが映画も中盤を過ぎてからって明らかに遅すぎ!ようやくクロエちゃんが出てきたと思ったら、ここまで破天荒キャラで引っ張っておきながら実物は驚くほど優等生な女の子。ユーチューブの映像で散々お騒がせセレブキャラみたいに煽っておいて、これはアカンでしょ。物語の焦点となるはずの最後の舞台劇もまるで取ってつけたようで肩透かし感が半端なかったです。この3人の嘘とプライドが複雑に交錯する心理劇をこそ掘り下げて描くべきだった。華のある人気女優たちの豪華共演に+1点!!
[DVD(字幕)] 4点(2023-11-06 02:51:42)
9.  アンネ・フランクと旅する日記 《ネタバレ》 
『アンネの日記』――。それは第二次大戦中、ナチスによるユダヤ人迫害から逃れ、アムステルダムの小さな一軒家に家族と隠れ住んでいた一人の少女によって書き綴られた日記だ。作者であるアンネ・フランクという名の少女はその後、謎の密告者の裏切りによってアウシュビッツへと送られ、そこで15年という短い生涯を閉じることになる。彼女の死後に発見された日記はその後、出版。そのユーモアを交えた瑞々しい筆致や鋭い人間観察眼、思春期を迎えたばかりの少女の不安や戸惑い、暗い時代にあっても常に希望を失わない彼女の強さは多くの人々の感動を呼び、世界各国でベストセラーとなる。そして現代、ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的名著としてユネスコの世界記憶遺産に登録されるまでになった。本作は、その『アンネの日記』で彼女の架空の友達として呼びかけられるキティーが現代のアムステルダムによみがえったらという驚くべき着想で描かれたファンタジックなアニメーション。監督は、パレスチナ紛争を題材にした政治的主張の強い『戦場でワルツを』というアニメでデビューを飾ったアリ・フォルマン。『アンネの日記』は昔読んで、そのキラキラとした才能の塊のような文才に感銘を受けると同時に、もし生きてちゃんとした小説を書いていたらきっと世界的大作家となっていただろうと思うと改めて怒りと切なさに打ち震えるような感情を抱いた思い出の一冊。なので今回期待して鑑賞してみた。この監督らしい独自の画のタッチに最初は戸惑うものの、空想上の存在であるキティーが日記のインクから現実世界へと降り立つファンタジックな描写に惹き込まれる。その後、まるで中世ファンタジーに現れる悪の軍勢のようなナチスドイツや彼らに立ち向かってゆく英雄たちがアンネの愛した映画スターたちという発想はオリジナリティ抜群で、アニメ作家としてのこの監督の面目躍如といったところだろう。ただ、それに対してお話の方は僕は疑問に思わざるを得ないものだった。空想上の存在であるはずのキティーが現代によみがえって?作者であるアンネを捜すというこの設定がいまいち腑に落ちない。こういう荒唐無稽なお話こそより細部の設定を細かく詰めるべきなのに、本作はそこが非常に甘いのだ。なので全体的にフワフワとした捉えどころのない作品となってしまっている。また、アンネの足跡を追って遥か異国の地まで旅していたキティーが後半、何故か現代の難民を救うために尽力する展開となるのも強引さが否めない。もう少し脚本を練るべきだった。ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的アイコンとしてもはや象徴的存在となってしまったアンネ・フランクの、その人間的側面に脚光を当てようとする試みは好感が持てるだけに残念だ。余談だが、本作を観終わって本棚の奥に眠ったままだった『アンネの日記』を久々に手に取ってみた。まるで今もどこかでこの現代を見つめているかのような生き生きとした彼女の文章に改めて感動の念を抱いたことをここに記しておこう。
[DVD(字幕)] 5点(2023-07-31 08:09:48)
10.  アンチャーテッド 《ネタバレ》 
世界を股にかけて活躍するトレジャーハンターのその誕生秘話をダイナミックな映像で描いたエンタメ・アクション。まあぼちぼちこんなもんじゃろって感じの内容でしたね、これ。まさに可もなく不可もなく。充分お金を掛けたであろうアクションシーンはさすがの迫力だったけど、3日も経てばすべて忘れてしまいそう。そーゆーもんだと割り切って観れば、トム・ホランドををはじめとする役者陣も華があるし、二転三転する脚本も分かりやすかったしで、ぼちぼち楽しめると思います。終わり。
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-05 08:02:37)
11.  アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド 《ネタバレ》 
古代の象形文字を専門とする言語学者、アルマ・フェルザー。ベルリンの博物館で寝る間も惜しんで働いていた彼女はある日、上司からとある提案を受ける。それは研究資金を調達するため、ある民間企業が実施する極秘プロジェクトにモニターとして参加してほしいというものだった。気乗りはしないものの資金調達のため、その企業が主催するディナーパーティーに参加したアルマ。すると彼女の前に、非の打ちどころのない完璧な容姿を持つ男性トムが現れる。初対面にも関わらず、トムはアルマに酒を勧めると、甘い言葉を囁きながら積極的に口説き始めるのだった。彼の正体は、最新の高性能AIを搭載した恋愛型アンドロイド。そう、トムは全ての女性の理想の男性像を基に造られた、〝完璧な彼氏〟だったのだ――。3週間という約束で、トムとともに共同生活を始めたアルマ。最初は余りにも人間離れした言動を繰り返す彼に戸惑いを隠せない彼女だったが、仕事で重大なミスが発覚ししかも離婚した元夫の再婚という事実も重なって大きなストレスを抱え込んだアルマは、次第にトムに心を許してゆく……。昔からホントよくあるお話で、演出だって極めてオーソドックスなのに、何だろう、普通に面白かったです、これ。とにかく品が良くておしゃれ!ヒマさえあれば女性に甘い言葉を囁いて口説き始めるアンドロイドという、人によっちゃ見るに耐えなくなりそうなこのキャラクターが実にいい味出してる。バラの浮かんだ泡だらけのお風呂にワインをくゆらせながら浸かるオールバックのハンサムさん……、普通にしたら寒さマックスになりそうなこのシーンがちゃんと成立しているんだから凄い(笑)。最初は反発していた主人公が次第に彼に心惹かれてゆく描写も丁寧でちゃんと説得力が感じられるのも大変グッド。悪酔いして自暴自棄になった主人公がトムに「もう何でもいいから私を抱いてよ!」と詰め寄ったのに、彼が「ムードもタイミングも今じゃない、おやすみ」と部屋を出てゆくシーン。「もっと自分を大事にしなよ」ってことですか。さすが高性能AI、女心をよくわかってらっしゃる(笑)。ここらへん、女性監督ならではの視点が冴えてますね。最後、モニター期間を終えて施設へと帰ってゆくトムをアルマが窓から見送るシーンなんてなんとも切なく、もはや彼がアンドロイドであることも忘れて「アルマ、今すぐ家を出て彼を追っかけろよ!」と心の中で叫んじゃったし。愛に傷ついた中年女性の心の機微を繊細に描いたラブストーリー。自分もこーゆー「完璧な彼女」が欲しいと思っちゃいました。誰か作ってーー。
[DVD(字幕)] 7点(2023-04-05 08:31:28)(良:1票)
12.  アンビュランス(2022) 《ネタバレ》 
白昼堂々銀行へと押し入った強盗集団が逃走手段として選んだ車両。それは、今まさに患者を乗せたばかりの救急車だった――。しかもその患者は瀕死の重傷を負った警察官で、彼を救うために全力を尽くしていた救急隊員も乗り合わせていた。これでは警察もFBIも迂闊に手を出せない。危険な暴走特急と化した救急車は、さまざまなものを破壊しながら白昼の街を疾走してゆく……。監督は、ハリウッドの破壊王マイケル・ベイ。ここ最近のこの人の映画って自分はまったく面白いと思ったことはないので正直観る気はなかったのですが、僕のお気に入りのジェイク・ギレンホールが出ているということで今回鑑賞してみました。結果は……、ちっとも面白くなかったです。とにかく演出がテキトー過ぎ!難病に苦しむ息子の為に金策に奔走する主人公、そんな彼を銀行強盗へと誘う頭のイカレタ凶悪な犯罪者、日々の激務に追われやりがいを失くしかけてる救急隊員、意中の銀行員をデートに誘うためたまたま居合わせた新人警察官――。こんなにも美味しくなりそうな食材が揃っていながら、ここまで美味しくない料理を作れるマイケル・ベイってある意味凄いんじゃないかしら。例えるなら、キャビアとかタラバガニとか松坂牛とかを水を張った鍋にぶっ込んでただ1時間煮ただけの料理を食べさせられた気分。いくら脳筋でならした監督とは言え、さすがにこれはひどすぎる!お金をアホほど掛けたであろうアクションシーンも、誰が何のために何処で何をしているのかがさっぱり頭に入ってこず、ちっともハラハラしなかったです。無駄にグロい描写も相俟って、最後の方なんて「もういいから早く終わってくんねーかな」ともはや惰性で観てました。好きな人には申し訳ないですが、自分は「観るだけ時間の無駄のちょーつまんない映画!!」としか思えませんでした。すんません!!
[DVD(字幕)] 4点(2023-04-05 07:48:11)
13.  アダムス・ファミリー(2019) 《ネタバレ》 
アメリカで古くから親しまれてきたホラーコメディ漫画『アダムス・ファミリー』を豪華声優陣を揃えて映像化したフルCGアニメ。いまだ根強い人気を誇るだけあって独特の世界観と個性豊かなキャラクターはすこぶる魅力的。おどろどろしい雰囲気なのにどこかコミカルなのもこの作品ならではで、ティム・バートン好きな自分としてはけっこうツボでした。今回悪役として登場した、髪の毛盛り過ぎセレブおばさんも負けず劣らずキャラ立ちしているのも良かったです。ただ、さすがにお話が空気すぎる!余りにも中身がなさ過ぎて心に残るものが何もないまま、さらさらっと終わっちゃいました。このオーソドックスでベタベタな物語の中に、もう少しぴりりとした隠し味が欲しかったかな。この監督の前作が『ソーセージ・パーティー』という毒の塊のようなアニメだったので、その10分の1でも盛り込んで欲しかったところ。ここらへん、ティム・バートンはやはり偉大だなぁと再確認しちゃいました。結論。可もなく不可もなくなごく普通の家族向けアニメ。でも、声優陣も豪華だし、アニメとしてもちゃんとクオリティは高いし、暇つぶしで観るぶんには充分楽しめると思います!!
[DVD(字幕)] 6点(2023-03-22 08:04:28)
14.  PITY ある不幸な男 《ネタバレ》 
都会の高級マンションで洗練された生活を送る、ある中年弁護士。常に清潔なスーツを着て、誰に対しても礼儀正しく、毎日規則正しい生活を心がける、品行方正を絵にかいたような真面目な男だ。だが、彼の最近の一日はベッドで目覚めてからしばらくの間、咽び泣くことから始まる。何故なら、彼の長年連れ添った妻が事故により昏睡状態へと陥ってしまったからだ――。もう長い間、彼の妻は病院のベッドで寝たきりで、医師も匙を投げるほどの深刻な状態。そんな彼を気遣って、周りの人々は常に優しく接してくれる。マンションの上階に住む心優しい奥さんは毎朝甘いケーキを焼いて差し入れてくれるし、弁護士事務所の事務員はいつも励ましの言葉を掛けてくれる。長年の友人は食事やスポーツへと彼をとにかく一人にさせないよう誘ってくれ、仕事の依頼主である殺人事件の被害者も自身と境遇を重ね合わせ一緒に涙してくれる。いつしかそんな周りのサポートが彼の生きる支えとなっていた。そんなある日、妻が奇跡的に目を覚ますのだが……。不慮の事故により生活を一変させられた、とある〝不幸な男〟の秘められた狂気を淡々と描いたサスペンス・ドラマ。いやー、なんか変な映画でしたね、これ。特に何が起こるわけでもない中年男の普通の日常を描いているのに、この全編に漂う言いようのない違和感。とにかくこの主人公がすんんんごく気持ち悪いんですよ!!愛する奥さんが事故で寝たきりという不幸な境遇にいるのに、何故か同情できない行動ばかりとる。「俺は世界で一番不幸な男だ」と言わんばかりの暗ーい表情でひたすら周りの同情に依存し、ピアニスト志望の一人息子には「明るい曲を弾くな、周りに立ち直ってると誤解されるだろ」なんて言ったりする。ほんとキモい(笑)。繰り返される謎のテロップも妙に心をざわつかせるものばかりだし、極めつけは息子に「妻がもし亡くなってしまったときの為に歌を作ったんだ。聴いてくれ」と突然歌いだすシーン。妻が死んだら1000匹の動物を殺すだろうと1曲丸々歌いきるところはもはや一周回って笑けてきちゃいましたわ。そして妻が回復してからは、もはやコメディ。「違う、自分が望んでたのはこれじゃない」と、周りに妻がまだ入院中だと嘘をついたり上階の奥さんにまたケーキを焼いてくれとしつこくねだったり長年飼ってた犬を海の上に捨ててきたりと、笑えないのに笑うしかない一連のシーンは白眉。全編気持ち悪いのに、変に癖になる面白さがありますね。画が無駄に奇麗で清潔感に溢れているのも良いセンスしてる。脚本は、ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスと一緒に仕事してきた人とのこと。なるほど、なんか納得。かなり癖が強いので観る人を選ぶだろうけど、自分はけっこう好きでした。最後、物語は不幸のどん底に落ちたけど、捨てられた犬が浜辺に帰ってきて観てる方はほっと一安心。人間が嫌いになりそうな映画、お薦めです(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2023-03-10 07:40:15)
15.  アイス・ロード 《ネタバレ》 
炭鉱事故により地下に閉じ込められた作業員を救うため、重い重機を載せたトラックで氷の張った湖上の道、通称〝アイスロード〟を疾走するドライバーたちを描いたサスペンス・アクション。今やすっかりアクション俳優として定着したリーアム・ニーソン主演ということで今回鑑賞。まあ普通に面白かったんですけど、何だろう、この今一つ物足りない感。いつ割れてもおかしくない脆い氷上をいかにも重そうなトラックでいくシーンとかけっこう緊迫感もあって、誰が裏切り者か分からない脚本もそこそこよく出来ていたとは思うんですけどね。クライマックス、もう少し盛り上げてほしかったような気がしなくもない。あまりにも優等生的に纏められていて、この作品ならではというもっと突き抜けたものが欲しかったところ。まぁでも暇潰しで観る分にはそこそこ楽しめると思います。
[DVD(字幕)] 6点(2023-03-02 08:34:35)
16.  アイダよ、何処へ? 《ネタバレ》 
1995年、冷戦終結により勃発した民族紛争が泥沼化していたボスニア・ヘルツェゴビナ。ムスリム勢力の町スレブレニツァはセルビア側の激しい攻撃の末、とうとう陥落してしまう。2万5千人におよぶ町の住民たちはたちまち難民化、安全を求めて国連平和維持軍が駐留していた基地へと一斉に雪崩れ込んでくる。当初は住民たちを受け入れていた国連側も余りの数の多さに途中で受け入れを拒否。結果、基地の周りには行き場を失くした町の住民たちが大勢なす術もなく立ち尽くすことに――。国連の通訳として働く元高校教師アイダは、そんな難民の中に自分の家族も含まれていることを知るのだった。夫と2人の息子だけでも基地に入れてほしいと上官に懇願するアイダ。だが、更なる混乱を恐れた上官は彼女の要望を拒否する。到底納得できないアイダは、何とかして家族を安全な基地内に引き入れようと画策するのだが、さまざまな手続きの壁に阻まれどうにもうまくいかない。そんな折、セルビア側の司令官ムラディッチ将軍から住民を安全な場所に移動させるので速やかに引き渡せとの要請が国連側に届く。何か信用できないものを感じたアイダは、家族とともに逃げようとするのだが……。デビュー以来、一貫してボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争を題材とした映画を撮り続けるヤスミラ・ジュバニッチ監督の最新作は、そんな過酷な運命に翻弄される一人の女性を通して戦争の不条理を冷徹に見つめたヒューマン・ドラマでした。この監督の作品は今回初めて観ましたが、全体を覆うひりひりするような緊張感がとにかく真に迫っておりました。この時代、この地で実際に撮られたドキュメンタリー映画なんじゃないかと思えるくらい。そんな中、ただ家族を救いたいがために奔走する主人公。国連にたまたま通訳として現地採用されたというだけで、軍人でも実力者でもない単なる一市民のエイダに出来ることなんてたかが知れている。それでも愛する子供たちをなんとしても救おうと駆けずり回る彼女には胸が締め付けられる思いでした。でも、そんな過酷な現実は彼女だけのものではなく、ここに押し寄せた2万5千人の全ての人々にそれぞれの事情がある。そう思うとやはりやり切れない思いにさせられます。みんな普通に生活していただけなのに。そして最後に辿り着く悲惨な現実――。戦争の愚かさをこれ以上ないくらい痛感させられてしまいます。過去を乗り越え、気丈に振る舞っていたエイダがそれでも最後に辿り着いた場で泣き崩れてしまった姿に自分も思わず涙してしまいました。最後に表示される、「スレブレニツァの女性たちと殺害された8372名の息子・父・夫・兄弟・いとこ・隣人に捧ぐ」というテロップが重い。ただただ最後、彼女が育てた教え子たちがいつまでも平和に過ごせることを祈るばかり。人間の愚かさと悲哀を鋭く捉えたなかなかの秀作と言っていい。
[DVD(字幕)] 8点(2023-02-10 08:33:06)
17.  アンテベラム 《ネタバレ》 
南北戦争真っただ中のアメリカ南部の田舎町。白人に誘拐され綿花農場で奴隷として働く女性エデンは、横柄な白人に日々虫けらのような酷い扱いを受けていた。日中はいつ倒れてもおかしくない過酷な労働を強いられ、夜は白人の主人に無理やり夜の相手をさせられる。少しでも抵抗しようものなら激しい制裁を受けることに。北軍が勝利しまがりなりにも奴隷が解放されるのは、まだ先の話。エデンは、生まれてくる時代を間違えたのだと自分を納得させるしかない。それでも彼女は希望を捨てず、残してきた大事なもののため密かに農場脱出を図るのだが――。一方、現代のニューヨークに生きる社会学者ヴェロニカは、黒人で女性という自身のアイデンティティ解放のために日々活動を続けている。優しい夫にも支えられ、愛する娘と充実した毎日を送るヴェロニカ。だが、そんな彼女を疎ましく思っている保守派のまなざしは、彼女が成功すればするほどより厳しさを増してゆく。ある日、仲の良い友人たちと久しぶりのディナーを楽しんでいたヴェロニカに怪しい影が忍び寄ってくる……。過酷な時代を生きたある無名の黒人奴隷と現代に華々しく生きる黒人社会学者、一見何の繋がりもない二つの物語はいつどこで交わることになるのか?実力派女優ジャネール・モネイがそんな異なる時代を生きる女性を演じたことでも話題となったサスペンス・スリラー。とにかくこの監督のセンスに尽きると思います!冒頭、不穏な音楽をバックにワンカットで撮られた農場のシーンで掴みはバッチリ。これから何かとてつもなく嫌なことが起こりそうな息詰まるようなこの空気感を、開始10分で作り出せるのは大したものだと思います。その後、主人公の黒人奴隷としての不条理極まりない現実を延々描いた後で、突如として現代の洗練されたニューヨークへと舞台が移るのも素晴らしい演出。正反対の立場にいる女性たちを同じ女優が演じることで、これまで黒人が受けてきた不当な差別の歴史を浮き彫りにさせることに成功している。彼女たちは違う時代に生を受けた生まれ変わりなのか――。そう思わせといてからのことの真相の明かし方ももはやセンスしか感じません(スマホの音!)。まぁ肝心の真相は荒唐無稽でリアリティ皆無のものだったのですが、ここまでセンス良く見せられると素直に受け入れられちゃいますね。社会派映画として充分良く出来ているのに、サスペンス映画としても普通に面白いのも大変グッド。主人公に徐々に迫ってくる危機の見せ方なんてぞくぞくする怖さがありました。特にタクシーの中で主人公が暴行を受けてるのに、隣を走る友人たちは知らずにはしゃいでるシーンは「あぁぁぁ!」と変な声が出ちゃいましたわ。この監督の知的で品のいいセンスはこれから要注目。次作が楽しみな才能にまた出会えてしまいました。
[DVD(字幕)] 8点(2023-02-10 07:31:08)
18.  アナザーラウンド 《ネタバレ》 
「血中のアルコール濃度を常に0.05%に保つと生活や仕事の効率が高まる」という説を実際に実行した4人の男たちの顛末をほろ苦いユーモアを交えて描いたヒューマンドラマ。この監督の前作『偽りなき者』が印象深かったのとアカデミー外国語映画賞に輝いたということで今回鑑賞してみました。確かに、こんな地味な登場人物たちが織りなす地味な物語でテーマだって地味なのに最後まで淡々と見せ切る演出は巧み。マッツ・ミケルセン演じる主人公が酒の力を借りて次第に生きる活力を取り戻してゆく姿はリアリティ抜群で、彼が調子に乗ってどんどんと酒の量を増やしてゆくところはアルコール中毒者の生成過程を見ているようでひやひやさせられちゃいますね。ただ、観終わってこの作品の描きたかったテーマが「お酒は楽しく適量を」くらいしか伝わってこず、自分はそこまで得るものはなかったです。
[DVD(字幕)] 6点(2023-01-27 11:07:43)
19.  ANNA/アナ(2019) 《ネタバレ》 
常に死と隣り合わせの危険な任務を颯爽とこなす凄腕女スパイの活躍を、スピード感あふれる展開で見せるエンタメ・アクション。監督は、この手のジャンルを得意とするリュック・ベッソン。まあ面白いっちゃ面白いですけど、良くも悪くも薄味作品でしたね、これ。時間軸を行ったり来たりする脚本も手堅く纏められていて、終始キレのいいアクションシーンも見応えありますし、主役をはじめとする役者陣もみな華があって、最後までそこそこ楽しんで観ることは出来ました。でも……、心に残るものはほぼありません(笑)。そういうもんだと割り切って観るのが正解なんでしょうけど、自分はもう少し内容のある方が好みかも。暇つぶしで観る分には全然オッケーなんですけどね。
[DVD(字幕)] 6点(2022-06-24 03:32:42)
20.  アリス&ピーター・パン はじまりの物語 《ネタバレ》 
誰もが知る児童文学の名作『不思議の国のアリス』と『ピーターパン』がもし兄妹だったら?という驚きの発想でもって描かれたファンタジー・アドベンチャー。率直に言ってさっぱり面白くなかったんですけど、それ以上に観終わった後、心にモヤモヤとしたものが残る何ともすっきりしない作品でしたね、これ。例えば、これまで白人の子供が演じるのが普通だったアリスとピーターパンを今作では黒人の子供たちが演じております。それはそれで別に何の問題もないし黒人の子供たちがアリスとピーターパンを演じても全然オッケーだと思うんですけど、そこには一言なにがしかの説明がないと物語にうまく入り込めませんって!あと、子供たちの母親役を白人であるアンジェリーナ・ジョリーが演じてるんですけど、これも凄く違和感ありあり。父親は普通に黒人で子供たちも見た目はハーフっぽくないし、彼女は義理の母という設定なんですかね?ここら辺も全く説明がされてないので、すんごく気持ち悪い。何か一言「これはこういう理由なんですよ」というセリフがあるだけで普通に受け入れられるのに、それも敢えてのスルーなんですかね。あらゆる人種への配慮を重視した結果、こんな感じになりましたみたいな、行き過ぎたポリコレの末路のようなものを感じて僕はどうにも受け入れられませんでした。間違ってたらごめんなさい!
[DVD(字幕)] 3点(2022-06-14 02:09:09)
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