1. アナログ
《ネタバレ》 映画を観るときに私が重視しているのは、その映画の空気感と言うか、全体に漂う匂いみたいなものじゃないかと思う。 この映画は舞台設定もキャストもあんまり癖がなくて、デジタルなものとは違う、明確な線引きのない柔らかな匂いが非常に心地よかった。抑えて抑えて演じている感じ、かな。 悲しくもあるけど、いくらか希望も見えるラストもちょうどいい温度だったと思う。 波留さんもいいんだけど、二宮君、やっぱりいいなあ。好きな役者だな。 そしてエンドロールでちょっと驚いたのは、原作ビートたけしだって。そうかあ。いい本書くなあ。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-01-06 15:23:33) |
2. 悪魔と夜ふかし
《ネタバレ》 まあ普通に撮ってもつまんないから、ドキュメンタリー風(あくまで風に)に撮ってみよっか、って感じの本作。 視聴率を狙って危ういところを綱渡りするのは日本でも同じで、時々稲川淳二氏の「生き人形」を扱ったテレビ番組のYouTubeとか検索しちゃうもんなあ。でも、一番観たい部分がなくて結局がっかりするんだよね。 だからこの映画のプロットはとても魅力的。面白いもの撮ろうと思ったら本物が出てきちゃった的なね。出演者の煽り方も上手いし、問題のシーンを巻き戻して確認するところなんてゾクゾクが止まらない感じ。ラストはポルターガイストとスキャナーズを混ぜたようなクラッシックな映像で大満足。 [映画館(字幕)] 7点(2025-01-05 11:45:06) |
3. ありふれた教室
《ネタバレ》 強烈。 現代の教室というか教育界の持つ得体の知れなさは、万国共通なんだね。 正しい主張も、やり方を少しでも間違えれば逆に断罪の対象になってしまうという何とも恐ろしくも現実を捉えた映画。 先生たちも決して一枚岩ではなく、もろい関係性の上に何とか職務を遂行している、なんとも夢も希望もない教員の仕事を描いた映画で、これ観たら先生になりたいなんて思ってた若者も、躊躇するだろうな。 でも、現実。 いや、日本ではもっとひどいよ。 [映画館(字幕)] 8点(2024-10-10 18:16:11) |
4. アビゲイル
《ネタバレ》 誘拐した少女が実はヴァンパイアだったなんて、予告編だけで観たくなること請け合いの筋立て。 しかし、誘拐犯たちを返り討ちにしたところでよくあるホラー映画になってしまうので、そこはいろいろと仕掛けが設けてあって、最後までけっこう退屈せず面白く観ることができた。そもそもホラー映画なんだから、あんまり小難しいこと言わないで、怖がらせてくれたらいいのだ。 誘拐犯たちを集めたのは実は少女自身だったり、凶悪に思える少女にも実は弱い部分があったり、予想外の展開につぐ展開だし、誰が先に殺されるのかもなかなか見えなくて興味深いし、盛大に血しぶきが上がるしで、ホラー映画としても満足の一本。 [映画館(字幕)] 7点(2024-09-24 14:27:29) |
5. アス
《ネタバレ》 そもそも人の言葉を話せるのは例の彼女だけなんだろうか。 残りのいったい何億人いるのかわからない人たちが言葉を話せないとしたら、そもそもどうやってこの決起を成功させることができたのか。 まさかテレパシー? で、これはアメリカだけの話なのか全世界的なことなのかも判然せず、なんだか感情移入できないままハサミで殺戮、という痛いシーンを観ることになってしまった。 仲良しの家族役、いけすかない人たちだったけど、あの妻は透明人間に出てた女優さんだったのかな。なんてことを考えたり、主役のニョンゴさんはアクションホラーに引っ張りだこだなあなんてことを考えながらの鑑賞。 でもね、例の偽?一家が家を狙うシーンはけっこうな恐怖感だった。やっぱり種明かしはあんまりはっきりしない方がホラー映画としては成功するのかもなあ。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-07-14 08:09:31) |
6. あなたが寝てる間に・・・
《ネタバレ》 これ観たの二回目かなあ。 やっぱりサンドラ・ブロックって魅力的だよね。女性らしさを売りにしてないって言うか。 いや、もう男性らしさとか女性らしさとか定義づけする時代ではないんだけど、適当な言葉が見つからないのでご容赦を。 まあ私としてはピーターが全く魅力的に思えず、なんでこんな男に惚れちゃうんだ!ってのが先に立つんだけど、昏睡から目覚めたあとのピーターもやはり人間性に疑問符がつく設定で、観ている側としてはジャックを愛することに対する葛藤が必要ないのが映画としてはもったいない感じ。でもこれラブコメなら深く考えないでいいのかもしれないけど、けっこう家族愛を描くヒューマンな作りだったから、そこのところはもう少し丁寧に描いて欲しかったかな。 クリスマスを孤独に過ごすことは、アメリカではかなり孤独で寂しいことなんだね。寂しさを拭うために恋人というよりも家族と過ごすために嘘を貫いたルーシーが切なかったなあ。だからラストで指輪を改札口に出すシーンはぐっと来た。 電子マネー全盛の現代では、改札口でのあんな演出はもうできないのかと思うと、それも切ないね。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-06-19 10:22:02) |
7. ある男
《ネタバレ》 原作を読んでからの鑑賞。 小説が原作の映画のほぼ全てにあてはまることではあるが、どこに焦点を当てて映像化するか、ということが映画の肝になる。原作では、「或る男」とその妻、そしてその依頼を受ける弁護士がそれぞれに一人の人物として描かれているのだが、2時間の映画でそれを実現するのはやはり難しい。 結局三人それぞれの重みが希薄になってしまった印象が拭えず、誰にも感情移入できないまま観終えてしまった。父親を殺人犯に持つ少年と家族がその後どんな人生を送ることになるのか、非常に重たいテーマで観ていてつらくはなるものの、俯瞰で観ることしかできなかったのは残念。 しかし、安藤サクラと窪田正孝の演技は素晴らしく、引き込まれるものがあり、見応えとしては充分。安藤サクラって、どんな役でも「そんな人いるよね」って感じで違和感なく演じてしまうところがやっぱり上手いんだろうな。そこに加点。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-02-11 09:41:37) |
8. あん
《ネタバレ》 予備知識なしで鑑賞。 徳江さんの手がハンセン病によるものだとは全く予想しておらず、映画の中の人物と同じく、そうと知った時の衝撃は大きかった。 身の回りにある自然の声に耳を傾け、感謝する。 隔離政策で人生を奪われた徳江さんの思いが伝わってくる映画だったように思う。 学校なんていいから、一日だけでも好きなことすればいいんじゃない? その一日も与えられなかった人生が透けて見えた気がした。 樹木希林という役者はやはりただ者ではない。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-01-02 19:38:33) |
9. アンホーリー 忌まわしき聖地
《ネタバレ》 キリスト教のいわゆる「奇蹟」としての筋立てとしては非常に面白いと思ったのだが、謎解きに説得力がないとは言わないまでも、驚きとか悲しみという要素が欠けているために、少し中途半端な印象で終わってしまった。 しかし特筆すべきはジェフリー・ディーン・モーガン。 海外で「ウォーキング・デッド」の浸透度がっどれくらいあるのかわからないが、見事に極悪非道な敵役からの脱却に成功していると思う。連続ドラマって売れる上では大きなチャンスなんだろうけど、一旦それで知名度が上がると、ずっとその役のイメージがついて回って、結局役者として悲しい結末を迎える、という例は多いが、彼にはその心配は不要のようだ。そもそも声も顔も声も渋い男だから、こういうちょっとやさぐれた感じの役は見事にはまる。彼の今後に期待。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-08-08 12:43:07) |
10. アンモナイトの目覚め
《ネタバレ》 予備知識なしで鑑賞したのだけれど。 なんだか同性愛を描く作品が多くなって来たなあと。 いや、私がそういう映画ばかり観てしまっているだけかもしれないが。 「燃ゆる女の肖像」のよう燃えたぎる愛は実はそんなに描かれてなくて、それを激しい性行為の描写で補っているように思えた。 シアーシャ・ローナン演じるシャーロットは、女性が好きというよりも、自分を強く導いてくれる相手を欲しているのではないか。それが男性であろうと女性であろうと。 メアリーを愛しても、夫の言うことに逆らうだけの勇気も知恵もない。そしてロンドンで夫の目を盗んでメアリーを囲おうとする。そこにメアリーの誇りとか生きがいを想像する思考を彼女は持っていない。夫がシャーロットにしたように。そのあたりの経験値の低さと傲慢さをシアーシャは見事に演じていたと思う。 対するケント・ウィンスレットの演技も素晴らしかった。 「タイタニック」の頃の彼女を好きになれなかった私だが、年齢を重ねて円熟味を増した彼女は本当に魅力的だ。無骨な彼女が徐々にシャーロットに惹かれ、抑えることのできない熱情を開放するシーンのなんと美しくエロティックなことか。 メアリーの「生きがい」である恐竜の化石を挟んで対峙する二人の成り行きが知りたくなる絶妙なラストシーンも良かった。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-12-30 10:58:43) |
11. アンチャーテッド
《ネタバレ》 ここのレビューを見て、原作はゲームなんだということを知ったくらいの予備知識なしで鑑賞。 アクション映画であることは間違いないのだが、隠された秘宝を探す!みたいな展開だと、どうしてもインディジョーンズと比べてしまう。 とにかく謎解きがスピーディ、と言ってしまうと良く聞こえるが、謎解きが雑。 解いてやったぜ!っていう達成感を観ている方も味わいたいのに、そんな暇など一切与えてもらえない。とにかくたくさんのアクションシーンを詰め込まないと今時の映画は作れないのかもしれないけど、なんだかせわしなくて落ち着かなかった。街中の教会で謎を解くっていうのがそもそも特別感が感じられなかった原因かも。 トム君とマークのコンビネーションが割に良かっただけに残念。 まあ元のゲームに忠実に作っているのなら、観る方はそれで納得なんだろうね。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-11-23 11:59:55) |
12. アナベル 死霊人形の誕生
《ネタバレ》 まあそれを言っちゃあおしまいよ、なんだけど。 そもそもあんな気持ちの悪い人形を作って飾ろうという神経が理解できないのだが。 日本人形もかなり不気味な雰囲気を醸し出すが、その比ではない造形の薄気味悪さ。 私なら絶対にあんな人形を買わないし、部屋にも置かないとそればっかり気になってしまった。 ホラーとしては驚かせ要素も満載だし、椅子付きの移動エレベーター?といった小道具も充実していて見応えはあるのだが、驚かせる相手がいたいけな少女なので、ちょっと気の毒。 シリーズものとしてはまあ及第点ではないかと。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-10-18 17:56:39) |
13. アタック・ザ・ブロック
多分かなりの低予算映画。 しかしエドガー・ライトの上手いところは、焦点を絞って地球の危機を切り取って見せてくれるところ。 モンスターなんてほんとやる気の感じられない造形だし、弱い。 でも対決するのはその辺の市民なんだからこのぐらいが妥当。 そしてなんと言っても、悪ガキ軍団と行動を共にする女性がキュート。正直この人を予告編で観て鑑賞を決めたと言っても過言ではない。 そこに加点、だけど意外な佳作。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-08-18 08:06:36) |
14. アオラレ
《ネタバレ》 スピルバーグの「激突」をイメージして鑑賞を始めたので、追っかけるドライバーの切れっぷりが想像を超えていた。 まあラッセル・クロウが悪役なんだから、最後まで姿を見せない、なんて演出は無理なんだろうけど。 しかしね、あおられる側の女性に全く同情できない設定なので、あおる方にも頭にくるし、あおられる側にもイライラするしで、モヤモヤ感が非常に強い映画。 あまりの不条理な執念深さに、我を忘れたらこんなもんかなと思いつつ、ラストのハサミ串刺しにも全くカタルシスが得られず。 ちょっと困った映画。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-06-25 10:23:46) |
15. アバウト・タイム 愛おしい時間について
《ネタバレ》 恋愛において、「出会い」は非常に重要な要素ではないかと。 だから、二人の出会いの場面は、タイムトラベルで操作して欲しくなかった。 この出会いって嘘だよね、という思いが最後まで払拭できなかった私は、愛すべき映画であるということを感じながら、その一点が気になって、というか妥協できなくて、映画に入り込めなかった。 父親を思い、二人の思い出を大切にするティムは素晴らしい青年に成長したし、彼が息子であることを誇りに思うとスピーチした父親にも胸打たれた。 一緒に暮らすいつも正装のちょっと変わった叔父さんが、家族の一員として普通に生活を送る懐の深さがイギリス映画の魅力。 破天荒なキットカットが自分の近くにあった幸せに気づくのも憎い演出。 母親の「お父さんのいない世界に全く興味がないの」にはうなったし。 いい映画。 なんだけど、出会いの一点のみ物申したい。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2022-05-17 10:25:50) |
16. 悪人伝
《ネタバレ》 主演のマ・ドンソクは、いかつい顔なんだけどなぜか悪党には見えないという稀有な役者。 どこか憎めない、愛すべきキャラクターを演じさせると、右に出る者はいないかもしれない。 一方の刑事役は、残念ながら迫力が少し足りない。正義感もそんなになさそうだし、マ・ドンソクとのコントラストでどうしても負けちゃうのは仕方ないか。 そしてこの二人が追っかける連続殺人犯が、また憎たらしい。無意味に殺人を重ねていく様は、異常な迫力に満ちていて恐怖すら覚える。 極道と刑事が甘っちょろく手を組まず、反発し合うのも面白くて引き込まれた。 ラストは主役の二人共が望む結末でスカッとした。 ハリウッドが好きそうな映画。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-02-26 18:18:32) |
17. ALONE/アローン
《ネタバレ》 なぜ最初の狙撃を実行できなかったのか。 なぜ愛した女性と別れようと思ったのか。 一歩踏み出せ、自由であれ、と言う現地の男とこの二つの疑問が自分の中でつながらず、ただ地雷を踏んでひとりぼっち、という極限状況を楽しむだけになってしまったのが残念。 もはや何が現実で何が幻なのか区別がつかなくなってしまった。 踏んだ地雷が作動しない確率が7%なら、踏んだのが地雷じゃない確率は0.5%くらい? 彼女役の女性がとても感じが良かったので、そこに加点。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-02-12 00:31:19) |
18. アトミック・ブロンド
《ネタバレ》 スタイリッシュでありつつ、傷つくリアリティもちゃんと描いたところは、これまでにないやり口。 シャーリーズ・セロンの凄みを感じさせる映画。 ただ、ストーリーが複雑で彼女が何のために戦っているのか、何のためにあそこまでズタボロにならなければならないのか、が共感できなかったのが残念。 で、無駄に脱ぎすぎだよ。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-11-23 01:49:05) |
19. アフガン・レポート
かつてソ連のアフガニスタン侵攻の時代に埋められた地雷原に、タリバンと戦うアメリカの同盟国であるイギリスの兵士が迷い込む。 いったい誰のための戦争なのか、虚しさが残る作品ながら、そこには一切触れず、淡々と事実だけを描く映画。 しかしその絶望感たるや、なかなか例を見ない程の圧倒的なもの。 戦争後も被害と恐怖を与え続ける地雷の恐ろしさをまざまざと感じさせる佳作。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-08-11 16:48:18) |
20. アリオン
《ネタバレ》 壮大なオリンポスの国風土記。 神話の世界は、洋の東西を問わず魅力的だ。 しかも主人公はかなりの二枚目。安彦良和氏のキャラクターデザインで、それも二倍増し。 おまけに音楽は久石譲で、映画のスケール感を増すことに一役も二役も買っている。 ゼウスを倒すためにオリンポスへ向かう動機があまりにもパーソナルなものなんだけど、所詮世の中は男と女でできているのだ。 嫉妬に狂ったアテネがレスフィーナを鞭打つ所もなんて人間的。 アリオンを密かに慕うセネカの切ない告白も嫌いじゃない。 ただ、肝心のアリオンの人間が見えてこなかったのが残念。 他のキャラクターが魅力的だっただけに、余計にそれが目立ってしまった。 古き良き日本のアニメーション。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-07-01 21:13:59) |