1. アイアンクロー
《ネタバレ》 ケヴィン・フォン・エリックが好きでした。 身体的には細く小さいけれども、イギリスの貴公子と見まごう気品のある細い顔立ちに鍛え上げられた身体。そしてあの過酷で危険なリングに常に裸足で参戦する、気品と野性味が入り混じった唯一無二の存在で、ヨーロッパ出身のレスラーなのかと勘違いしてました。 本映画で米国で一家でやってたのがわかったのと、誰かが亡くなって日本のTVに登場しなくなってなぜなのかと思ってたら、こんな大変なことになってたのか、というのを映画で知った感じになります。 なのでケヴィンが主役になったのは私的には非常に嬉しかったんですけど、訪日の話がケリーが一人で行ったみたいに描かれてるのがちょっと違うなと思ったのと(タッグでタイトル取ってたはずだし(混乱))、あと、ケヴィンが髪型を似せて裸足なのは良いとして、ちょっと身体は大きいし骨格ががっちりしすぎててイメージがちょっと違うかなーと思いました。 あと個人的にはアイアンクローは好きなので(めっちゃ真似した)タイトルになってるのは良いんですけど見せ場があまりなく物足りなかったのと、あと一家の中で何故ケヴィンだけ裸足でリングで上がってたのかとか、興味深い深掘りしてほしいエピソードがいろいろ足りない印象で全体的に物足りなかった感じでした。 とはいえ昔の好きだったレスラーの話がわざわざ映画化されたのは嬉しかったです。 [映画館(字幕)] 6点(2024-04-19 12:04:39) |
2. 哀れなるものたち
《ネタバレ》 ロングランしてて、アカデミー賞も各賞とってちょうどいい時間にやってたので観ました。 スタイリッシュな芸術的作品も割と好きな口です。 R18なんで大人向けの寓話的な作品という事で、まあ面白かったんですけど、個人的にはコメディっていってるけど、ある種、今のリアル過ぎ、生々しすぎじゃね?(寓話的幻想的作品が、現実以上に現実的に見えてしまう瞬間があるみたいな)という感じがして、ブラックユーモアとして笑わせようとしてるっぽいけど笑えないかな(苦笑)て感じでした。フェミニズム的題材作品としてみると、今だとちょっと古めかしいというか、時代設定が昔なので仕方ないかもしらんけど、せっかく寓話的ファンタジー作品をやるならもっと先端的にえぐったのをやってくれると逆に痛快で好きだったりしますが、そこまで振り切れてはおらず、差し引き今の現代的感覚と同じくらいになっちゃったかな、という感じ。 斬新さがちと足らんかな? あとはなんだろう、下世話ですけど、アカデミー受賞作で話題になった女優が2~3年後くらいに濡れ場とかの多い汚れ役をやり出すサイクルがありまして、典型的なそういうサイクルの作品だなあと思ってしまったのと(とはいえビジュアルは素晴らしいのに当たって各賞も受賞して良かったなというところではありますが)、主人公が子供から現代的な女性に成長して魅力的になってくのは良いんですけど、最終的にたどりついた安寧の地が自らの力で勝ちとったものではなく 「たまたま運よく獲得できただけ」 なので、じゃあこの話が終わって平和な人生が続いてくかというと次の瞬間無慈悲な理不尽によってすべてを失っても全く不思議ではない状況で、ハッピーエンドと言えるのかどうなのか何とも言えん終わりだなあと思ったのと、最後のオチは割とベタなブラックジョークなんですけど、中盤で不遇な人々に対する慈悲の心は学んだのに、キリスト教的な、 「汝の敵を愛せよ」 は学習しなかったんだなあという、精神的に成長して大人的人格を身につけたけど、それには欠陥があったみたいな、そんなようなことを思いました。 あと、(映像作品での)フランケンシュタイン的映像表現があるせいで、画面が結構グロテスクだったりして、私はグロいのは苦手なのでちょっと受け付けなかったのと、話のメインの動機や道標が、性的快楽とか結婚とかになってるのが、今だとセックスレスとか、そもそも結婚自体しなくなってきている現状を踏まえると、生々しいだけで、ちょっと価値観が古めかしいかなとも思ったり。個人的には、ペドロ・アルモドバル監督の「私が生きる肌」くらいやってくれたら、ひゅー! って思ったんですが。 とはいうものの、ビジュアル(衣装や舞台)は素晴らしいし(私は主人公の服のパフスリーブが赤毛のアン(映画)のスタイルなので時代は1920年代前後くらいかなあとか思ってたのですが)、エマ・ストーンの演技も素晴らしくて総じて楽しませていただいた感じです。 ああ、あと、主人公が「世界を見る」というので、もっとアレコレいろんな場所に行っていろんな経験を積むのかと思ったら、意外とそんなにどこにも行かなくて、物足りなかったかな。旅程は船に乗ってアフリカの辺? にちょろっと立ち寄ってお金無くなって、パリに舞い戻って、家に帰ってきただけですからね(上映時間は長いんですけど)。 そんなところです。 [映画館(字幕)] 7点(2024-03-25 13:44:10) |
3. アイの歌声を聴かせて
《ネタバレ》 良かったです。 AIものロボットものの最新の研究成果を超絶前向きな青春エンタメに昇華した作品と言っていいかと思います。そして、土屋太鳳さんの歌の表現が声がのびやかでとてつもなく素晴らしい。声の表現も、ネット上でネタバレがちょっとされてましたが、人工声帯による発音がされてるということで、AI・ロボットなのに、歌うために呼吸の動作をするのが、こだわりすぎにもほどがある。 あと、この手の話でよくあるAI/ロボットには人間的な"意思"を持ち得るのか、という問いに対して、 「そんなのどうでもいい」 観る人の受け止め方によってそのようにも見えるし、まったくそうでないようにも見える表現にしてるのが非常に新しくて、この手の問いに対しては逆説的に、 「そもそも、人間が、自由な意思とか心のようなものが存在してると思ってるのはただの錯覚ではないか」 という話もあって、その辺も踏まえてて良かったです。 AIの深層学習については、ちょっと前にネット上のニュースやSNSの記事の情報などを大量に食わせまくったら、ものすごい毒舌を吐く邪悪な? AI(モデル)ができてしまったのでリセットされたみたいな話が流れてましたが、本作では「前向きで肯定的な指示」によって、こんな素敵なAI・ロボットができるのではないか、という夢物語をエンタメとして非常に肯定的に前向きに提示してるのが、いっそ潔く、気持ち良かったです。 というわけで、最後のオチをわかった上でまた頭から見直すとグッとくる作品でもあるということで、もう1回くらい観たい印象なのですが、地元の上映館ではロングランしてるものの早朝上映しかしてないので時間的に合わなくて観られなくて悲しい思いをしており、マイナー作品の扱いでよくある状況ではあるのですが、こういうロングランしたマイナーな良作を、一般の人が観やすい時間帯に上映できる上映枠を各映画館が設置して欲しいなあと、切望する感じです。 そんなところで。 [映画館(邦画)] 9点(2021-12-04 08:08:11) |
4. アナと雪の女王2
《ネタバレ》 映像はとにかく美しく最高で、前作で決着のついてなかったエルサが本来の自分のあるべき姿を獲得していく過程は、映像としてとても感動的で素晴らしかったです。 しかし、断片的イメージは技術の粋を尽くした素晴らしいものであるものの、話のつながりとしては結構弱くて何となく旅してる感がぬぐえず、エルサとまともにコミュニケーションする相手が基本的にアナしかいないので、人間関係が薄いなあって感じがあり(この二人の関係も今回はあまり起伏がなく)、アナとクリストフの関係も序盤中盤上手く行かせないためのすれ違いやり取りがあからさまで結構イライラするのと(クリストフの歌もコメディとしてスベってるのをさらに助長する感じで乗り切れず)、自然主義的オチも、ダム大国日本の感覚からするとかなり安直だしスケールも小ぶりだし微妙なところよのう、て感じでした。 売りの音楽・曲については前作ほどのキャッチーな曲はないものの、北欧&ネイティブアメリカン? の土俗歌をベースにしたあるあるな感じの曲で結構好きでしたが、ストーリー上最も重要な「北から聞こえてくる声」が、歌なのか、悲鳴なのか、中途半端なヒステリックな声に聞こえてしまって、あれさえ、美しい、何らかの情感を強く掻き立てる声としてきっちり聞こえてたらまだ話の推進力として説得力が付けられたのではないか(そういう話は結構好き)というところに、惜しいなあ、と思いました。 [映画館(吹替)] 6点(2019-11-30 14:09:33)(良:2票) |
5. アベンジャーズ/エンドゲーム
《ネタバレ》 とりあえず、長年の壮大なシリーズをまとめ上げたのと、あのすべてのヒーローが大集結する壮大でワクワクする山場を構築したスタッフに敬意を表したいと思います。素晴らしい作品をありがとうございます! そしてお疲れさま! ……という前置きをした上で以下文句を書いていこうかと思います(強ネタバレ注意)。 -- 一つ目、前回のエンドが納得できなかったのでタイムトラベルでやり直そう、というのは、安直にもほどがあると思いました(笑)(キャラクター能力的に可能でも不思議ではないけど)。 いちおうその辺は、作品自体がかなり自覚的で、作中過去のタイムトラベル映画のギャグをやってたりするし、ネット上でもその辺に言及した製作者側の情報が出てきてるみたいですが、前景の結末が納得できないので、時間を巻き戻してやり直しましょう、と言いだしたら、もう何でもやりたい放題になってしまって、これまであった制約や葛藤が、あそこで悩んでたのはいったい何だったんだろうという脱力感に見舞われました。 一方、そういうちゃぶ台返しを用意してあるからこそ、前回の決定的完全敗北を容赦なく描けたとか、MCUシリーズヒーロー総集結総活躍の展開を描けたというのはあって、またタイムトラベルで発生する色々な矛盾点などは練り込まれた脚本と映像で、だいたい違和感が漏れなく取り除かれてあまり気にせず見られるようになってたとは思います。 あと、エンドでキャップの最後の場面もタイムトラベルネタで、いかにもいい話っぽいオチにしてるけどあそこだけちょっととってつけたような感じがあって(おそらくテイクをいくつも撮って協議の上、あの結末にしたと想像しますが)、加えて私自身がMCUシリーズの中のキャプテンアメリカシリーズだけぽっかり穴が開いたように観られてなかったので(評判良いので観たいなとは思ってたんですけど)、わざわざあそこまですることに対する思い入れが何もなく、蛇足感が半端なかったです(キャプテンアメリカ、ウィンター・ソルジャーは必須ということでしょうか?) 一応時間ネタについては「ドクター・ストレンジ」で実はそんな裏技も使えるんだよと伏線が張ってあったりはしました(こちらは履修済み)(これも必須?)。 -- 二つ目、重要キャラが死んでお涙頂戴展開は好きじゃないなあ。というのがありまして、昨年あたりからそういう傾向の作品が多いんですけど、そういうのが出てくると「良いハッピーエンドのネタが今年は思いつかなかったんだろう」(確かに難しいので)と思ってしまうのがあり、この作品もその例に漏れなかった、というのが多少がっかりでした。あれだけの資金と知力を集結しても誰も死なない良いオチはそうそう出てこないものなのか。 最終的に救われなかった人が何人か出ますが(そのせいで、またもう一回タイムトラベルでやり直そうという気も起こらない仕掛けになってる)、個人的にはネビュラさんが、あの過去の回心前のネビュラさんをぶち殺して終わりだったのは、まあまあまあ、ちょっと待て、と突っ込まずにはいられなかった(笑)。割と脇のキャラクターで、十二分に出番があったので話の尺上仕方なかったであろうとはいえ。 -- ……というようなわけで、ストーリー的には正直かなり安直な作りになってて、話の筋への革新的アイデアとか技巧的な挑戦というものは全く見られない代わりに、すべての仕掛けは、あの大量のヒーローたちを漏れなく活躍させる舞台をお膳立てしよう、というところに注力された作品だったのかなと思います。これらすべてはヒーローを活躍させるためのアトラクションショーであり、ストーリー的奇抜さはバッサリ捨て、とにかくわかりやすく単純化しました、という創作の指針の選択でしょう。そこにハリウッドの、日本とは桁違いの、マネーと頭脳を総集結投入すればこれだけのものができる、という答えの一つかと。そしてそれはnot for meかなあとも感じました(キャプテンアメリカも観られてなかったし)。 そんなわけで、演出は素晴らしいけどストーリーとしては安直なので、そのまま点を付けると7点くらいかなあと思ったのですが、最後のヒーロー大集結のワクワク感と、タイムトラベルネタで大好きな「Time After Time」と「Somewhere in Time」への言及があったので、+1して8点くらいかなあということになった次第であります。 [映画館(字幕)] 8点(2019-05-01 23:41:59) |
6. アリータ:バトル・エンジェル
《ネタバレ》 3D版吹替で見ました。 原作からのファンですが、あのクズ鉄町の街並みと空気感が3DCGでこんなにリアルに描かれる時が来るとは思いもよらず、感無量で感動してしまいました。アクション、映像はとにかく素晴らしい。 原作に準拠した、目の異様な大きさが前評判で話題になってましたが、映画中は全く気にならず、むしろ主人公の心情を表情で雄弁に語って3DCG表現として新しい境地を切り開いたように思います。だんだん見てると可愛く見えてくるところも、前作アバター以上によく感じられました。 ストーリー的にはユーゴ編終了までで、細かい印象的なエピソードが大方盛り込まれ、ファン的には非常にうれしいですが、やはり詰め込みすぎ感はぬぐい切れず、感情展開に無理やり的な部分がそこかしこにみられます。 そこは主人公はとにかく勧善懲悪的にひたすら悪者をバッタバッタとなぎ倒していく、という単純さで乗り越えようとしてて大方許容範囲かなあと思うんですが、唯一「ユーゴの回想シーン」……なぜユーゴが命を懸けてまで空を目指そうとしたのか……だけでも入れた欲しかったかなあと。 そこだけが、原作「銃夢」はサイバーパンクなビジュアルだけでなく、日本的なドロドロした心理展開もきちんとエグって回収してくるのが、とても好きなところなので、今後、その辺もうちょっと補足されて改善されるともう完璧なんじゃないかなと思いました。 当然続編もやるんですよね?(期待 [映画館(吹替)] 6点(2019-02-23 12:14:34) |
7. アリー/スター誕生
《ネタバレ》 主演が世界トップクラスの歌手というとても贅沢な映画で、歌はとにかく素晴らしい。 しかし、デビュー前の素人時代からアーティストとして貫禄がありすぎるのでは、というのはありました。 いちおう、ガガ自身、メジャーになる前の体験に重なる部分があるということで頑張ってはいましたが……。 話の展開は以前の版を観てたのでわかってて、ああ、やっぱりという感じでした。 曲が、作品的にわりと清純な曲をメインに持ってきてるんですけど、ガガの曲のイメージとか、今どきの普通の曲のイメージからするとそればっかりなのもどうなんだろう、ちょっと時代錯誤的ではないか? と考えたりもしました。たとえば、新しい時代に合わせてリメイクする場合に、たとえば全部ラップに置き換えるみたいなそういうチャレンジはないんだろうか、とかそんなのです。 エンド曲およびその演出は、過去作同様「素晴らしい」の一言に尽きました。 うむ。 [映画館(字幕)] 7点(2018-12-29 00:47:48) |