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プロフィール
コメント数 22
性別 男性
年齢 50歳

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1.  阿弥陀堂だより 《ネタバレ》 
(2002年、新宿文化シネマでの鑑賞時のレビュー)  「雨上がる」で黒澤明の遺稿となったシナリオを映画化した、小泉堯史監督の作品。  奥信濃に移り住んだ夫婦と、村の人々の生活を描いています。  舞台も地味ならキャスティングも地味(寺尾聰と樋口可南子という夫婦が主人公)。そのうえタイトルも地味という、どう考えても若者受けしない作品であり、実際私が観た上映館でも、9割以上は中年・老年層でした。  そんな、若者への媚びへつらいを拒絶したかのような作品なだけに、興行的には低調のようで、実際私が観たスクリーンも、50席足らずの極小スクリーンでした。 しかし、このまま野に埋もれてしまうのはもったいない、とてもいい作品でした。  「農村を美化しすぎている」という批判があります。確かに出てくる人みな善人ばかりで、浮世離れしているかもしれません。 しかし、それでいい、と思うんです。理想社会なのかもしれないが、こんな社会もあるよ、こんな生き方もあるよ、と提示してくれただけでもうれしい。社会の暗い面、いやらしい面を描く作品が多いなか、その対極にあるような善意溢れる作品があったってい そして、この作品には何よりの「宝」があります。「阿弥陀堂」に住むおうめ婆さんを演じた北林谷栄さんの演技が、神がかっていると表現したくなるくらい、素晴しい。91歳のおばあさんが、どうしてこうも躍動感溢れ、ユーモラスなのに情に厚いという役をこなせてしまうのか。  このおうめ婆さんの言葉である「阿弥陀堂だより」がまた素晴しい。 例えば、こんな調子。  「目先のことにとらわれるなと世間では言われていますが、春になればナス、インゲン、キュウリなど、次から次へと苗を植え、水をやり、そういうふうに目先のことばかり考えていたら知らぬ間に96歳になりました」  そんな美しい言葉を紡ぐおうめ婆さんを見るだけで、この作品を観る価値はあります。それくらい素晴しい演技です。  小手先の目新しさではなく、正統的なつくり方で良質の作品を作ることができる、こういう監督が映画を作り続けられる限り、日本映画も捨てたもんじゃない、と思います。
[映画館(邦画)] 8点(2021-02-02 01:11:52)
2.  OUT(2002) 《ネタバレ》 
 (2002年、劇場での鑑賞時のレビュー)  桐野夏生の小説「ターン」を平山秀幸が映画化。「弁当工場で働くパート女性たちがバラバラ殺人に加担する」というオドロオドロしいプロットですが、不思議と後味の良い作品でした。思えば平山監督の過去作「愛を乞うひと」も、「児童虐待」という暗澹たるテーマながら、観終わった後は不思議と爽やかさの残る作 品でした。平山監督は、重いテーマを描いてもどこかに希望を残しておきたい人なのかもしれませんね。  だいたい、風呂場で主婦らが死体を包丁でバラバラにしてしまうのだから、正視に堪えるものではありません。首を断ち切られた死体が転がっていたり、バラバラにした手や足をポリ袋に包んでダンボールに 詰めてたりするのだから、凶悪そのものです。それなのについニヤニヤとして観てしまう。  凶悪犯罪を犯しているはずの主婦たちがあまりに平凡で、そのうろたえっぷりが可笑しいんです。また、慣れてきた主婦たちが機械的に、まるで弁当屋での仕事のように手際よく死体のパーツをダンボールに詰めていく「作業」をしながら談笑するさまが、どこかズレていて可笑しいんですね。  そんな可笑しさを支えているのが、主婦たちを演じた原田美枝子や倍賞美津子、室井滋といった芸達者な女優たち。なかでも原田美枝子はさすがでした。誰もが認める大女優ですが、やはりこの人の演技力はずば抜けています。  意外だったのが、香川照之。竹中直人ばりの迫力演技では存在感がある役者だとは思っていましたが、さほど幅のある演技ができる役者というイメージはなかったので、この作品での抑えた演技での存在感には驚かされました。要注目の役者ですね。  重いテーマを娯楽作として描きながら、上質の人生賛歌に仕立て上げる平山監督には拍手を送りたいところです。そして、原田美枝子と倍賞美津子の水着姿には、10点満点をあげたい。
[映画館(邦画)] 7点(2021-02-02 01:05:34)
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