1. 怪獣ゴルゴ
《ネタバレ》 穏当に言えば行方不明になった我が子を親が捜し連れ帰る、辛口でいえば誘拐された我が子を奪還する物語、と言えばいいだろうか。親子の愛情という一本の筋を通したストーリーが良い。このプロットは後の「モスラ対ゴジラ」”卵を返してください”や海底原人ラゴン、「大巨獣ガッパ」に繋がる。親ゴルゴの行動は自然の摂理に従った行動と言える。 ゴルゴの造形はゴジラ型で、上半身に重量感があり古代生物然とした風貌に魅せられる。だが下半身は貧弱で物足りない。口をパクパクもいただけない。 特撮は見ごたえがある。ロンドンの街中で子供を捜し歩くシーンは出色の出来で、特にピカデリー劇場のゴルゴ出現場面は見事の一語に尽きる。逃げ惑う人々のパニック描写や崩れ落ちたビルの下敷きになる人々もリアルで丁寧な作りである。 1960年代、少年漫画雑誌に“ゴジラの隙をうかがっている怪獣”として紹介されたことを思い出す。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-02-25 13:34:14) |
2. 樺太1945年夏 氷雪の門
南に「ひめゆりの塔」あれば北に「氷雪の門」あり、か。 1945年8月、日ソ中立条約を無視しソ連軍が樺太を侵攻。ソ連の攻撃を受けた住民たちの逃避行と、最後まで通信を守ろうとした女性電話交換手たちの悲劇を描く。 旧満州では、ソ連軍によって悲惨な境遇を送った日本人たちの話がよく知られている。当時の苦難は宝田明など映画人の証言でも見聞きした。それに比べると樺太での苦難はあまり知られていないように思える。 概ね史実に沿った演出であり、樺太が地理的に戦地から離れているため当初は住民が楽観視していたことがよくわかる。次第に戦火が近づく中で葛藤する交換手を演じる女優陣の演技は当時の緊迫感を漂わせている。交換手たちも早く逃げれば済むことであるが、いざという時に使命感をみせる人はいつの世にもいる。たとえば天災の時など。 海上の戦闘シーンは特撮がしょぼくて残念。ラストの平和へのメッセージはとってつけたような印象で心に響かない。 [映画館(邦画)] 5点(2023-09-24 14:33:46) |
3. 片目のジャック
M・ブランドの監督・主演作。初見は吹き替えだったが字幕で改めて観るとブランドの演技の特徴が垣間見えた。内容は悪くなかったが、ぼそぼそ喋るセリフ回しに違和感を覚えた。吹き替えでは全然知ることができなかったこと。リアル志向のメソッド演技で注目を浴びた彼の演技かもしれないが観客は置いてけぼり。 日本映画含め、原語で聴いているとセリフの聴き取れないことがなんと多いことよ。そんな時は自国の映画でも字幕をつけたらどうかと思うことさえある。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-07-23 16:33:32) |
4. カサブランカ
《ネタバレ》 何度か観たが1942年製作を意識し改めて評価。 戦時下に作られたメロドラマという印象だけでなく、ドイツに占領された自由の女神の故郷・フランスの人々への連帯を示すアメリカ人の心意気が強く感じられた。酒場での「ラ・マルセイエーズ」合唱は自由フランスの応援歌とも言え、彼らやアメリカ国民を鼓舞し勇気づけたことだろう。 苦虫噛み潰したような表情のリックと、陰影を含んだイルザの表情が、パリ時代との落差を引き立たせる。名曲「時の過ぎゆくままに」が運命的な再会を導き、ふたりの心を揺さぶる。 イルザへの愛情と自尊心の葛藤に、苦悩しながらも義侠心を見せるリック。男の美学が泣かせる。霧の空港で旅立つ者、残る者。仕事を口実にした強がり、通行証をもらうためイルザが愛したふり、リックが信じたふりという、心のせめぎあいが深い。 お世辞にも端正な顔立ちとは言い難いH・ボガートだが、名セリフ「君の瞳に乾杯」を4回も発すれば苦み走った二枚目になろうというもの。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-01-31 14:58:40)(良:1票) |
5. 華麗なるヒコーキ野郎
《ネタバレ》 真面目にバカやる姿は「明日に向って撃て!」に通底する。一方で、少年の父が語る「堅実に生きることが特別だ」も見逃せない人生観だ。 車輪脱落、納屋への飛込みなどちょっとしたユーモアが光る。中でもメアリー・ベスが曲乗りで固まってしまう姿が可笑しい。搭乗前の勇ましさ、息巻いている姿との落差が効果的。一転、墜落死はまさに“喜劇と悲劇は紙一重”そのもの。自由と自己責任、冒険と規制のせめぎ合いは、まさにアメリカの価値観を投影する。 曲技飛行における冒険心はあっさり描写だが、命がけケスラーのセリフ「正確さより真実をいかに描くかだ」「詩的な表現もある程度許される」・・・これは映画作りの肝をも語っている。 ケスラーとペッパーの会話が冒頭のペッパーが子供に語るホラ話と重なる。憧憬の眼差しがいいね。ラストは戦闘のない空中戦が魅せてくれる。翼のぶつけ合いにヒコーキ野郎の意地を見た。空を飛ぶってこんなに楽しいものなのかと思わせてくれる映画。最後の敬礼も心に残る。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-07-07 15:04:09) |
6. カメラを止めるな!
《ネタバレ》 「桐島、部活やめるってよ」映画部員の後日談を観るような思いで楽しんだ。が、肝心の「ワンカット・オブ・ザ・デッド」40分間の映像は退屈(それも計算済み?)。その後の展開は青春ドラマありホームドラマの要素もありで、現実と虚構が入り混じって独特の面白さがある。また、映画制作の舞台裏を見せる楽屋落ちとしても楽しめる。 [地上波(邦画)] 6点(2019-05-19 13:51:01) |
7. 家族(1970)
《ネタバレ》 石炭から石油へのエネルギー革命を背景に、長崎から北海道へ新たな仕事に向かう家族の葛藤、挫折と再生を描くロードムービー。 ドキュメント風の演出で、生き生きとした方言が印象深い。反面、中標津の歓迎会はプロの俳優陣と素人さんの会話が少し浮いている感じ。 万博の開催で日本中が浮き足立つ中、公害や都会の冷徹さなど高度成長のひずみも見逃さない。東北本線の列車内で交わされる減反の会話は、さりげなく農政の転換まで描き、開拓に向かう家族ともども時代に翻弄される庶民の思いに共感を寄せる。 長旅の末、中標津で最後の生の輝きを見せる祖父に人生讃歌を見た。祖父の死後、再起を期す民子の瞳の輝きが印象的で、2つの新しい命が一家の再生を象徴している。 欲を言えば、ラストは「北の大地の春は花々が一斉に咲く」場面を観たかった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2019-03-31 11:51:37) |
8. カリートの道
《ネタバレ》 ノワールの雰囲気はよく役者もハマっているが、全体的にテンポが悪く冗長感は否めない。長尺を詰めてテンポよくすればもっと引き込まれたろうに。 クラインフェルドが刺されても死なず、カリートの面会も警官のあっさり身体検査で実現等、ご都合主義が目立つ。クラブ・パラダイスからカリートが逃亡する間、のほほんと待っているマフィアもマヌケな展開。 コートを着たカリートがホームから列車に乗って逃走するシークエンスは、監督の敬愛するヒッチコック映画を思わせる。だが、妙にコメディまがいの印象で、ドリフのコントを観ているような脱力感を覚える。 「パチャンガがベニーに買収されて俺たちを見張ってる」・・・このセリフは伏線というよりネタバレだね。忠告を無視し、買収されたと知りながらパチャンガにゲイルを駅まで送らせるのは(文字通り)致命的だ。冒頭の回想でカリートの運命を認識済みとはいえ、同行させた時点でその後の展開が容易に想像できる。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2018-11-25 11:18:59)(良:1票) |
9. 影の車
自身の幼い頃の殺意がブーメランとなり、子供から殺されるという妄想を抱いて疑心暗鬼になる青年。その内面を描く心理サスペンスが秀逸。 善人然とした加藤剛が、じわじわ迫りくる恐怖に追い詰められる主人公を好演。自らの過去に苦しめられ破滅に至る男の姿は強く印象に残る。主人公を心理的に追い詰める子役の表情も怖さを増す。 [映画館(邦画)] 7点(2018-11-04 14:01:37) |
10. 蒲田行進曲
カツドウ屋魂あふれる展開でテンポが良く、銀四郎とヤスのはじけっぷりが楽しい。小夏の愛しさ・一途な女心も花を添える。騒々しいのが玉にキズ。 人生においては一瞬であれ長期間であれ誰でも場の主役になる時がある。その意味ではひとつの人生讃歌と言える。階段落ちは見ごたえがあり劇中劇の面白さも味わった。ラストの大団円は爽快で後味が良い。主題歌もいいね。 [映画館(邦画)] 7点(2018-02-25 12:40:49) |
11. カンバセーション・・・盗聴・・・
“盗聴”という現代社会の病巣を抉り出すとともに、製作当時のアメリカの自画像を描く。昨今のスノーデン事件等を考えれば、より深刻な将来を予言するかのような作品だ。 男女二人をめぐる公園での盗聴シーンを繰り返し、少しずつ会話を明快にする演出は秀逸。むくつけき男どもや魅力に乏しい女たちの中で、二人を演じるF・フォレストとC・ウイリアムスは隠し味的な味わい。盗聴特有の音の演出やジャズの使い方も効果的だ。 主人公の輝かしい実績とは裏腹に、内面に抱える孤独感や苦悩が描かれる。盗聴する側が逆に盗聴されて動揺し、追い詰められる皮肉。その強迫観念から苛立っていた精神が徐々に崩壊し主人公の焦燥感も頂点に達するが、やがてサックスに安らぎや救いを求める。プロなら覚悟しろよと言いたくなるが・・・。終盤のどんでん返しは平板な印象。 サスペンスや恐怖の味わいはあまり感じられず、社会派ドラマと受け止めた。アスファルト・ジャングルの中の孤独、人間性の喪失・・・ベトナム戦争で疲弊したアメリカ国民の心情やウォーターゲート事件とオーバーラップする。 映画全体を覆う暗さは如何ともしがたく、好きな映画ではない。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-07-17 16:44:06) |
12. 眼下の敵
《ネタバレ》 前半から中盤にかけてはアメリカ駆逐艦とドイツ潜水艦内の人間模様が描かれ、終盤は神経戦を交えた緊迫感あふれる攻防が続く。お互い死力を尽くし、ドイツ側勝利!と思ったら最後は駆逐艦が潜水艦に体当たりし相打ちとなる。R・ミッチャム、C・ユルゲンス演じる艦長の的確なリーダーシップとともに細やかな人間性を描いており、前者は兄貴分的な、後者は父親的なリーダー。特に、ナチスに対する批判的な思いを抱きながらも任務として戦うという、複雑な心情を表すユルゲンスの演技が光る。両艦の衝突後、海上では敵味方の区別なく乗員たちが助け合う。ラスト、潜水艦に残ったドイツ艦長とその部下をアメリカ艦長が救い出す。アメリカ艦長「次はロープを投げんぞ」のセリフに、救出されたドイツ艦長が「いや、君なら投げるね」と返すシーンは名場面だ。海の男ならこのような展開もありえるかなと思わせるリアリティがあり、敵味方の枠を超えた物語としては「戦場にかける橋」より数段上だ。ケネディが乗った魚雷艇109と日本海軍の駆逐艦「天霧」もひょっとして・・・気づいていたら・・・???と思わせるような?・・・なんてね。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-09-27 12:40:53) |
13. 怪獣大戦争
「少年ブック」江原伸作画の漫画版とともに忘れられない映画。レディガードも面白いアイディアだったし、X星人役土屋嘉男のラストのセリフ「我々は未来に向かって脱出する、まだ見ぬ未来に向かってな」は、滅びゆくものの美学も込めた、負け惜しみの名セリフだ。だが、怪獣映画はこれで行き詰まりではないか。怪獣が宇宙人や地球人に操られるようになったら、その魅力も半減してしまう。ゴジラの「シェー」は、可もなし不可もなし。 [映画館(邦画)] 6点(2012-12-22 23:39:33) |
14. カプリコン・1
「アポロ11号の月着陸はねつ造」説の元ネタのひとつ。前半は快調で、テンポよく進み面白いのだが、後半は意外性のない展開で、残念な結果だった。ちなみに、アポロのねつ造説は、”この映画を真似て月着陸シーンを製作した”とされているが、もしこの説が正しいのなら、ねつ造そのものよりすごい「世紀の発見」ですよ。なぜって、この映画の製作は1970年代、アポロ11号の月着陸は1960年代ですからねえ・・・。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-12-22 18:58:26) |