1. 記憶にございません!
《ネタバレ》 ミュージカル映画と同じように、こういう路線の三谷コメディって、独特の演劇的な設定とかお約束のノリを共有できないと楽しめないですね。それなりに笑えるところはあるけれど、いまいち独特のノリやリアリティのない設定への違和感に馴染めないし、権力闘争の物語として見た場合にも、大河「鎌倉殿」などを書いた人の作品とは思えないほど薄っぺらいので、さすがに拍子抜けがします。いっそのことお馬鹿なミュージカルにしてもらったほうが、わりきって楽しめるのかもしれません。きっと俳優陣は、どこまで振り切るべきか匙加減が難しいでしょうけど、わたしは由貴ちゃんのベタベタなコメディっぷりがいちばん面白かったです。 [地上波(邦画)] 7点(2024-09-15 17:27:40) |
2. 今日から俺は!!劇場版
《ネタバレ》 テレビドラマと同じように楽しめました。それぞれのキャラをちゃんと立てながら、2時間の整った構成の物語に仕立ててます。とくに映画的といえるほどの特質はなく、テレビドラマと変わり映えのしない内容ではあるけれど、へたにメッセージ性のある話にしたり、地元のケンカ以上に世界観を広げるのも違うと思うので、あくまでナンセンスなバカ路線に徹するのが正しいんだろうと思う。合格点の7点。 [地上波(邦画)] 7点(2024-09-15 17:02:14) |
3. キングダム2 遥かなる大地へ
《ネタバレ》 山﨑賢人と清野菜名がありえないほど強かったり、トヨエツと小澤征悦が日本人どうしのコスプレ大会になってるのは、ほとんどギャグかコントのように見えてしまうけど、しょせん漫画の実写化なのだと割り切って観るならば十分に面白いし、2時間超えも長くは感じません。 騎馬隊を蹴散らしたり馬車を転倒させたりするスペクタクルの迫力もあるし、山﨑賢人の足の速さや清野菜名のアクションの美しさも堪能できます。ミクロな次元の描写は荒唐無稽なファンタジーだけど、マクロな次元のリアリティは担保されてるので、歴史物語としての納得感もある。 二次元推しの人は「漫画の世界を忠実に三次元化した!」と評価するかもしれませんが、三次元推しの人は「あくまで漫画の実写化」という条件付きでの鑑賞を強いられるとは思う。 [地上波(邦画)] 7点(2024-07-06 02:50:22) |
4. 魚影の群れ
《ネタバレ》 青森のマグロの物語かと思いきや、これもやっぱり生死をめぐる北海道の物語じゃないかと思ってしまう。「雪の断章」や「風花」もそうでしたが、相米慎二の描く北海道には不気味な風の音がして、死の匂いが漂い、その死のすぐそばには自暴自棄なセックスがあります。緒形拳は、ちょうど「雪の断章」の世良公則と同じにように、罪を背負って北海道へ死に場所を探しに来たよう見えるし、岸壁から船に飛び移る十朱幸代は、テトラポットへ飛び移る斉藤由貴にそっくりなのです。 はたして佐藤浩市は、青森沖で死んだのか北海道沖で死んだのか分からないけれど、彼が死ぬ前に口ずさんでいた都はるみの歌は、青森から北海道へ向かう連絡船の曲だったし、それは自暴自棄なセックスをする前に夏目雅子が口ずさんでいた曲でもある。 かりに「雪の断章」では罪を背負った人間が死に、「あ、春」では年老いた人間が死んだと考えるのなら、本作で死ぬべきなのは緒形拳であるはずなのだけど、なぜか通常の物語のセオリーとは順序が逆で、ここでは未熟さゆえに佐藤浩市が死ぬ結末になってます。これは残酷なリアリズムともいえるし、たとえば「あ、春」でヒヨコが孵化したり、「風花」でカエルが冬眠から目覚めたように、佐藤浩市の死と引き換えに夏目雅子が出産するともいえるけど、これを「死と再生の物語」と解釈するにはあまりにも無惨すぎる。 ちなみに「風花」の大友良英の音楽も、ちょっとうるさいと思うところがありましたが、この映画の三枝成章の安いサスペンスドラマみたいな音楽も全般的に邪魔でした。それこそ都はるみの音源を使ったほうがマシじゃないのかなと感じます。 なお、瀕死の佐藤浩市を放置してマグロを釣り上げる行為は救護義務を怠った法令違反じゃないかと思うのだけど、刑事役の寺田農が緒形拳を取り調べる場面がカットされたというのは、その後に入る予定のシーンだったのでしょうか。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-04-07 03:23:22) |
5. 希望のかなた
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。カウリスマキの映画は30年くらい前に何本か見たけど、今の彼がこんなアクチュアルなテーマに取り組んでいたとは知りませんでした。クールなユーモアは健在だけど、内容的にはかなり熱い。 世界的な監督が「自由」という普遍的正義をシンプルに信じていること自体に希望を感じますし、世界中のアーティストが怯むことなく、こういう姿勢に勇気づけられるべきだと思う。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-04-30 00:56:19) |
6. 奇跡の丘
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。ロッセリーニ流のネオレアリズモによる新約聖書マタイ伝の映画化。 ギリシャ神話を題材とした「アポロンの地獄」では日本の雅楽みたいな音楽を使ってましたが、ギリシャよりさらに東方を舞台とする本作ではコンゴ共和国のミサ曲やら米国のブルースやらを効果的に使っていたんですね。むしろバッハのほうが本作には不釣り合いです(笑)。キリスト教の映画にバッハを使うのは当然かもしれませんが、西欧様式の音楽はかえって東方的な雰囲気を損ねるし、とくに終盤では、バッハの音楽が否が応にも扇情的に鳴り響いて、せっかくの乾いたリアリズムを湿らせてしまう。 映像的には、さながら「顔のリアリズム」といった感じで、ひたすら沈黙する人々の顔を連ねながら聖書の神話に説得力を与えていますが、ロッセリーニの「フランチェスコ」に比べると、ちょっとユーモアに乏しい。序盤のヘロデ王の死の場面などには、どこかしら笑える要素もありますが、イエスが成人して以降はユーモアがなさすぎて息苦しいのです。 無神論者なら無神論者らしく、最後まで醒めたリアリズムに徹してほしかったけれど、ユダヤ社会の既成概念をことごとく覆したイエスの主張は、意外に現代の無神論者の立場に近かったのかもしれません。パゾリーニは、不覚にもイエスに共感しすぎたんじゃないかしら? [インターネット(字幕)] 7点(2022-04-18 05:48:33) |
7. 岸辺の旅
《ネタバレ》 だいぶ前に録画したNHK放送をようやく視聴。面白かった。クロサワ映画はこれで4本目ですが、いちばん好みに合っていたし、ようやく自分の波長にも合ってきた感じ。 黒沢清、佐々木史朗、湯本香樹実、大友良英、浅野忠信…という面子なので、否が応にも相米慎二のことを意識させるし、原作には何か相通じるテーマがあるのかもしれない。でも、映画そのものは、ことさら観客に何かを訴えている風でもなく、端的に「エンターテインメント」としての味わいを楽しむべき作品かなと思う。 死んだ夫が幽霊になって戻ってくる設定はありふれてるものの、ほんの少しずつ予想を裏切っていく展開や、うっすらした不気味さとうっすらした美しさが同居する映像は、それだけで十分に魅力があります。一貫して穏やかな浅野忠信の演技も素晴らしかった。深津絵里は、なかなか能動的に生きられない日本女性のか弱さをよく体現しています。 白玉だんご、稲荷神社の祈願書、滝の背後に通路がある、終りが近づくと指が動かなくなる、死者との性的な接触はできない… などの物語上の「設定」がある一方で、夫の語る「宇宙物理学」の世界観があり、他方では三途の川を信じてきた日本人の「伝統的観念」がある(それが「岸辺」というタイトルの前提でしょう)。それらが渾然一体となって、一種独特な死生観を形づくっています。まあ、ただそれだけの映画だと言ってもいい。 このレビューサイトで、こういう作品を「エンターテインメント」と評したところで、ごく一部の人にしか理解されないと思いますが、けっして泣いたり笑ったりビビったりするだけが映画にとっての「エンターテインメント」じゃないだろう、とだけ言っておきます。 大友良英の音楽は、昭和の松竹映画風の曲からドイツロマン派様式の曲まで多彩でした。ちなみに子供がピアノを弾いている後ろでは、やはり井之脇海のときのようにカーテンが揺れていました。 [地上波(邦画)] 9点(2022-01-29 00:30:23) |
8. 鬼滅の刃 那田蜘蛛山編<TVM>
《ネタバレ》 スゴい内容でした。完全にハマってしまった感じです。 この物語には、2つの重要なメッセージがあります。しかし、その2つのメッセージは、互いに矛盾します。この矛盾こそが最大の魅力なのだと思います。 ひとつめのメッセージは「全力を尽くして戦え」ということです。主人公はどんどん強くなるのですが、つねにそれを上回るような強い敵が現れます。味方の側にも、自分よりはるかに強い先輩たちが現れます。つまり、敵であれ、味方であれ、自分よりも強い者たちがたくさん存在している現実が分かってくる。しかし、それでも逃げることができません。主人公のテーマ曲には「我に課す一択の運命と覚悟する」とあります。どんなに強い鬼が現れても、「一択の」(ほかに選択肢がない)運命に対して、最大限の力で立ち向かって、その鬼を倒していくしかありません。そこでふりしぼる最大限の力とは、そのつどそのつどのギリギリの限界値であることが繰り返し描かれます。 ふたつめのメッセージは「鬼は悪ではない」ということです。どんなに残虐で罪深い鬼であっても、それは本来的な悪ではなく、むしろ不幸な人間であることが示されます。那田蜘蛛山の累は、鬼になる以外に生きる道がなかった不幸な子供であり、鬼になったことで親と殺しあうほかなかった子供です。その境遇を描くことによって、彼がたんなる悪ではないという事実が明かされます。 物語の構造は非常に明解。次から次に前回を上回るような強い敵が現れる。その繰り返しです。人物造形もきわめて明快。怖いもの知らずの伊之助に対して、軟弱で臆病な善逸。ルール破りの炭治郎や冨岡義勇に対して、ルールに忠実な胡蝶しのぶや栗花落カナヲ。男性隊士が情に厚いのに対して、女性隊士はドライで血も涙もない、という面白い対比になっています。 物語の構造が非常に明解なぶんだけ、生きることの矛盾と葛藤がクリアに浮かび上がってきます。この物語から何を学ぶべきなのかと子供に問われても、大人たちは容易に答えを出すことができないはずです。強いていえば「人生は複雑で矛盾に満ちている」と答えるしかありません。 [地上波(邦画)] 7点(2020-10-24 14:23:40)(良:1票) |
9. 鬼滅の刃 兄妹の絆
《ネタバレ》 世にいう「キメツノヤイバ」なるものにまったく無知でしたが、やっとその魅力の一端が分かった気がします。 物語の冒頭は、目を背けたくなるほど絶望的な場面から始まります。しかし、そこから先は、ほぼ無双状態でサバイバルしていく展開になっており、いわば不遇な子供の自己実現の物語のように見えます。 きっと現実の社会にも、絶望的な状況から人生を始めなければならない子供は存在すると思うので、そのような子供たちにとって、こうしたサバイバルなストーリーは夢があるのかもしれません。 ただ、絶望からスタートする人生というのは、たいていの場合、自分自身が「鬼」になって社会への復讐を目指すような生き方になるケースが多いと思うのですが、この物語の場合は、復讐すべき相手のほうがそもそも「鬼」なので、自分自身はけっして鬼にはなれないのですね。そこがユニークなところだと思います。 主人公は、文字通り「心を鬼にして」鬼を殺していくのですが、じつは鬼と同じ悲しみを共有しており、つねに敵が鬼になった境遇や背景を意識せざるをえません。ある意味では自分の境遇も鬼と同じなのであり、さらにいえば、唯一残されている肉親の妹もまた鬼だからです。 主人公は、情け容赦なく鬼を殺していくけれど、心の底から鬼を憎むことができません。したがって、これは「復讐の物語」ではあるけれど、けっして「憎しみの物語」にはなりえない。それが、この物語の秀でた点であり、同時に倫理的な希望にもなっていると思います。 これは「鬼とは何なのか」という社会学的な問いであり、日本古来の桃太郎伝承=勧善懲悪神話に対する痛烈な批判でもあるはずです。 [地上波(邦画)] 7点(2020-10-11 14:11:49) |
10. 君の膵臓をたべたい(2017)
《ネタバレ》 こんな俗受け狙いの陳腐な物語を、わざわざ高く評価するのもどうかとは思うのですが、脚本や演出の技術面では意外なほどしっかりしているし、主演2人の魅力も存分に引き出せているし、映画的にみれば大きな欠点はありません。 強いて欠点をいえば、あまりにも丁寧に作られすぎていて、上映時間がやや長いことでしょうか。正直、長すぎてちょっと疲れました。たかだか少年少女向けの娯楽映画なのだから、サラッと100分以内にまとめてもよかったんじゃないかと思う。とくに「元カレ」のエピソードは省いてもよかった気がします。 この物語の裏テーマは『星の王子さま』なのですが、せっかく主人公がその本を読んでいるのなら、王子さまと薔薇のエピソードなどを2人の会話のなかに取り入れてもよかったかなと思いますし(薔薇とサクラじゃヤヤコシイけれど)、冒頭に出てくる「肝心なものは目に見えない」の一節も、もっと物語全体に活かして響かせていれば、陳腐な物語なりにもテーマ性が深まったかもしれません。 ちなみに、少年の名前が志賀直哉と村上春樹を足したっぽいのは、ちょっとダサい気がしました。どうせなら『星の王子さま』にちなんで「航士くん」とかのほうが可愛いと思うのですが。 いずれにせよ、これが美波にとっての代表作にもなったし、『セカチュー』以来の青春ヒット作にもなったし、それなりの技術的な水準にも仕上がっていますから、大衆映画としては十分に成功といえるでしょう。ためしに木下惠介や澤井信一郎あたりの作品に比較しても悪くないかと思います。 [地上波(邦画)] 7点(2020-09-05 07:39:20)(良:1票) |
11. 今日も嫌がらせ弁当
《ネタバレ》 「親子愛」というよりも「共依存」のように見えた。子供とコミュニケーションが取りたい母親の気持ちも分かるけど、過干渉にさらされる子供が気の毒に思える。母親自身の楽しみとしてお弁当を作るのならいいですが、結局は子供に何らかの期待や依存をしているようにしか見えません。いちばん気の毒なのは、お弁当による嫌がらせではなく、結果的に親の期待を意識させられて子供の人生が委縮していくことです。当事者に罪があるとは思わないけど、映画作品にする場合、これはたんなる「美談」というよりも、むしろ現代にありがちな「症例」として扱うべき題材じゃないでしょうか。一般に、母子関係を安易な美談として描くことには注意を要する時代だと思います。 [地上波(邦画)] 5点(2020-07-25 18:29:12) |
12. キングコング: 髑髏島の巨神
《ネタバレ》 前半部分は、70年代のワシントンやサイゴンの雰囲気が良かったし、前作『GODZILLA』との作風の違いも楽しめたし、軍用ヘリが嵐に突入していくあたりのスペクタクルにも迫力がありました。 ただ、相変わらずトルーマンの水爆実験を正当化している前提や、わざわざ白人を正義にして黒人を悪者にしている図式や、自然界を善悪に分離するような設定が出てくると、根本的な違和感を拭えません。そして、やっぱりガッツ石松が登場するやいなや、その表情や動作があまりにも人間的すぎて、リアリティを失ってしまう。島の原住民の描き方も、あまりに紋切り型すぎて安っぽいです。 そもそも、人間が飼い慣らしでもしない限り、自然界の生き物が自主的に人間の味方をするはずがないですよね。むしろ人間の側こそが、生態系とどうやって折り合いをつけるべきかを模索しなきゃならないはず。そのあたりの基本的なコンセプトが本質的に間違っているし、あまりにも漫画じみている。日本の漫画でさえ、これほどバカな認識で自然のことを描いたりはしないと思います。 今後、このシリーズには、ゴジラだけでなく、モスラやキングギドラも出てくるのでしょうか? かなり日本のことを意識していますよね。冒頭にも日本兵が出てきましたが、ちょっとジャパニメーションっぽかった。今のハリウッドは、日本のアニメや映画の雰囲気を醸し出すのがカッコいい、みたいな価値観をもってるのでしょうか。そのくらい日本のアニメや映画は一定の文化的支配力をもってるのかもしれませんが、そこで日本がどんな風に表象されているかについては、注意ぶかく見ていくべきだと思います。 ストーリーは4点ぐらい。スペクタクル要素に加点して6点です。 [地上波(字幕)] 6点(2020-06-28 18:56:13)(良:2票) |
13. キングダム(2019)
《ネタバレ》 物語の題材にも、出演陣にも、何ひとつ期待ぜずに見たのですが、けっこう面白かった!(笑) まず脚本がシンプルなところがいいですね。非常に明快で、欠点の少ない脚本だと思いました。古代中国の戦争物語ではありますが、日本人が中国人を演じることの違和感もそれほど障害にならなかった。石橋蓮司や六平直政などは、むしろ中国人にしか見えなかったくらいです。大沢たかおのウッフンキャラも魅力的でした。 とりたてて大掛かりなセットが組まれているわけでもないし、CGが多用されているわけでもないし、王宮のシーンなんかはわりとミニマムなセットで撮影されていたように見える。でも、けっして物足りないとは感じませんでした。金をかけりゃあいいってもんじゃないのですよね。しっかりした物語と想像力があれば、限られた予算内でも十分に出来るのだなと思います。エンターテインメントだと割り切って見れば、やたらとスケールだけが大きい陳凱歌の中国映画なんかより、ずっと出来がいいかもしれません。 最後になって気づいたけど、これって始皇帝のお話なんですね。このシリーズが海外でも成功するようなら、日本の実写映画の可能性はかなり広がる気がします。 [地上波(邦画)] 7点(2020-06-01 07:24:08) |
14. キャンディ(1968)
『トミー』とか『ロッキーホラーショー』などの病弱で陰鬱な英国ロック映画にくらべて、このアメリカ的な逞しいロック・カルチャーのほうが、わたしの趣味には合う気がしました。はじめのうちはブニュエルを見るような気分で楽しんでいたんですが、どのシークエンスにおいても、その諧謔的表現が結局は「エロ」に行き着いてしまうので、さすがに途中からは飽きました。ブニュエルに見られるような20世紀初頭の諧的的精神や革命文化は、ある程度はロックの精神にも受け継がれているかもしれないけど、やや多様性に乏しいし、重みにも欠ける。ひっくり返すべきものが単純すぎて軽いんだと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2008-01-13 17:23:33) |
15. CASSHERN
2004年度のキネ旬のベストテンでは10位内にも入ってなかったけど、もう少し畏れをもって評価すべきであって、それほど自信をもって無視したり切り捨てたりもできないと思います。 この映画が「2時間20分を費やしたプロモビデオだ」という言い方は、わたしも同感なんだけど、別にそれはこの映画を非難する意味でじゃなく、むしろ、それ以前にこの監督が作ってきたプロモビデオが、とても4~5分の時間枠にはおさまらないほどの豊かな作品性と思想性をもつものだったので、これを見ると、「あらためて2時間20分かけたプロモビデオなんだ」という気がします。ただし、この映画、「PV的」なわりには、意外に“音楽的なセンス”には欠けてる。使ってる音楽の問題だけじゃなく、ストーリーテリングそのものにも、いまいち音楽的な感性が足りない気がする。なんか、ガクガクしてる。一枚一枚の絵はとても感性的に作られてるのに、それが時間の流れの中では十分感性的にメロディを奏でられてない。本来なら、物語そのものにも激情と静寂があったり、抑揚とか緩急みたいなものって必要だと思うんですけど、なんだか、ずっと金太郎アメみたいに、同じ感情、同じ速さ、同じ重さが続いてしまうみたい。よくいえば、それだけ緊張が持続しているってことなんだけど、もう少し音楽的な膨らみとか感性的な豊かさがあったほうがいいと思います。つまり、この「2:20の Music ビデオ」は、映像そのものは頑張って作ってあるけど、むしろ音楽的な面においてあまり出来が良くないんじゃないかってのがわたしの感想です。 説明的なセリフがくどいという批判もあるけど、あそこまで各人物がグルグル語り続けるってことは、ほとんどポリフォニー的なものなんだと思う。そのへんの表現も、もうちょっと器用にできてればよかった。 [地上波(邦画)] 6点(2006-02-13 05:25:02) |