1. 桐島、部活やめるってよ
《ネタバレ》 学園内のヒエラルキーを明確に描いた作品と言えば、ジョン・ヒューズの『ブレックファスト・クラブ』が挙げられる。しかし、「現実はそんなもんじゃないぜ!」とNOを突きつけたのが、ウィノナ・ライダー&クリスチャン・スレーターの『ヘザース』だった(『ヘザース』で描かれていたことが現実化したのが、例のコロンバイン高校での銃乱射事件)。学園内のスターだった「桐島」がバレー部を突然辞めたことで、平穏だった人間関係に歪みが生じ、ヒエラルキーにも変化が生じる。最下層の映画部でこそこそとゾンビ映画を撮っていたメガネ君が、「あいつらみんな食い殺せ!」とゾンビたちに命令する時の爽快感と言ったら!もちろん自分はメガネ君に終始感情移入して観ていたものだから、その瞬間にはぶわっと鳥肌が立った。好きだった女の子でさえゾンビに食い殺させる、その哀しみと切なさ。お恥ずかしい話ですが、自分も高校生の頃、ゾンビ小説なるものを書いていて、好きな女の子を登場させていました…(汗)ジョン・ヒューズからタランティーノを経て、日本はこんな凄い映画を作ってしまった。一言、傑作。 [DVD(邦画)] 9点(2013-02-28 23:02:44)(良:3票) |
2. きいろいゾウ
《ネタバレ》 前半部分は結構良い映画だな、と思いながら観ていた。何と言っても、宮崎あおいちゃんがセミヌードも辞さない覚悟で、わりとダイレクトなベッドシーンを演じているのだから、嫌でも期待が高まるというもの。ところが、後半は暗く重い展開で、そのうえ長い。正直眠くなりました。そもそもあおいちゃん演じるツマは、動植物の声が聴こえるという設定らしいが、それは何らかの特殊能力なのか、それとも精神障害の一種なのか、とにかく後半のツマの行動はほとんど異常と言って良い(ムコの手を出血するまでコップや茶碗でガンガン叩きまくる)。自分も妻帯者だが、俺だったらここでキレてるな、というシーンが数箇所あった。いくらあおいちゃんが可愛くても、こんな異常な人とはお付き合いできません。また、ムコの秘密は一体何なのかと言えば、かつて好きだった女性の夫から、妻を助けて欲しいという手紙を受け取り、彼女のために書いた小説を渡しに行く、というただそれだけのこと。拍子抜けも良いところ。前半8点、後半4点で、中をとって6点献上。 [映画館(邦画)] 6点(2013-02-09 06:31:49) |
3. キラー・エリート(2011)
《ネタバレ》 こういう男臭いアクション映画は大好きなのだが、実話を元にしているからか、本筋がやや退屈。オープニングの銃撃戦は『ヒート』を思わせ格好良いが、それ以降は地味な殺しが続き(皆で作戦を考えるところなどは良い)、あまり派手さはない。デ・ニーロにかつてのオーラは感じられず、ステイサムはどうもB級臭さが気になる。誰も死なないラストは好き。 [DVD(吹替)] 6点(2012-10-08 23:25:19) |
4. 麒麟の翼~劇場版・新参者~
《ネタバレ》 TVシリーズの「新参者」は毎週楽しみに観ていた。ひとつの殺人事件から、東京の下町に隠された様々な人間関係が浮き彫りになり、ものすごく遠回りしながら真相に辿り着くというものだった。今回はそれを2時間強でやってのけた感じで、前半~中盤にかけてはかなり集中して観ることができたが、後半の謎解き篇になるや、ご都合主義が目立つようになり何かどうでもよくなってきた。いくらなんでも偶然が重なり過ぎているし、派遣切りに遭った青年なんてほとんど何も関係ないのに死んじゃってるし…。結局いちばんの被害者であった水泳部の後輩に対する「償い」が何も為されていない点が問題だろう。阿部ちゃんと中井貴一の演技は良かった。 [DVD(邦画)] 6点(2012-10-01 22:21:18) |
5. キツツキと雨
《ネタバレ》 田舎町で低予算ゾンビ映画の撮影ってシチュエーションがもろにツボで、常にクスクス笑いが絶えなかった。ただ、沖田監督の前作『南極料理人』があまりにも面白かったので、少しハードルを上げすぎたか。役所広司の姉?一家が駅に降り立つと、村の人々がみんなゾンビになっていたというシュールな画が好き(笑) [DVD(邦画)] 6点(2012-09-09 22:25:07) |
6. キッズ・オールライト
もっとドタバタコメディを想像していたが、意外とシリアスに家族のあり方を描いており、そこは好みの分かれるところだろう。精子提供者のマーク・ラファロがいかにも軽薄そうなおっさんを好演。娘役のミア・ワシコウスカは『アリス・イン・ワンダーランド』の少女だが、色白の綺麗な子だな~とつくづく思った。もっと映画に出て欲しいものだ。 [DVD(字幕)] 6点(2011-12-22 09:20:11) |
7. ギター弾きの恋
サマンサ・モートン扮するハッティがとにかくキュート!ショーン・ペンも相変わらず上手い。ウディ・アレンの演出も冴えているが(偽伝記映画という着想が面白い)、いまいち喰い足りず。サントラは最高です(CD買った)。 [DVD(字幕)] 6点(2011-09-07 00:08:09) |
8. キラー・インサイド・ミー
《ネタバレ》 今どき珍しいパルプ・ノワールの映画化(原作はジム・トンプソン)。主人公のモノローグでストーリーは進むが、彼の行動原理を理解する助けにはならず、当たり前のように行なわれる殺人行為の数々に、観る側の正邪の判断まで揺らいでしまう。演じるケイシー・アフレックは役者としては完全に兄(ベン)を超えたと思う。また、すっかり大人の女優になったジェシカ・アルバと、いつの間にかオバサンになったケイト・ハドソンにも衝撃。 [DVD(字幕)] 7点(2011-09-06 18:18:20) |
9. 奇蹟/ミラクル
設定にかなり無理があるし、あの結末で本当に良かったのか?という根本的な疑問は残るものの、ジャッキーにしてはストーリーを重視しており、楽しめる出来。いつものジャッキー映画のメンバーが揃っているのも嬉しい(ユン・ピョウがチョイ役で友情出演している)。クライマックスの高所でのロープを使ったアクションはジャッキーの真骨頂。 [DVD(吹替)] 6点(2011-06-17 15:40:04)(良:1票) |
10. キック・アス
《ネタバレ》 オタク目線のリアルなアメコミ映画という着眼点は良かったと思う。日本公開前からかなり期待していた作品だし、高評価も頷ける出来だが、正直自分は乗り切れなかった。あまり映画にモラルは求めない方だし、グロ描写は好きな方だが(ホラー映画にグロは必然だと思う)、この映画にはそれほど必然性を感じなかった。劇中の台詞にもあるように、主人公たちの行動は自警団気取りの大量殺戮に過ぎず、後味の悪さばかりが残った。『第9地区』でも感じたことだが、殺人をエンターテインメントにするにはそれなりの作法が必要だと思う。最近の映画にはそういう「作法」とか「品」というものが著しく欠けているように思える。 [DVD(吹替)] 6点(2011-03-06 20:46:30)(良:4票) |
11. 菊次郎の夏
《ネタバレ》 社会人としては失格だが、「近所のおじさん」としては面白い菊次郎(たけし)と少年の短い夏休み。普通はクライマックスに据えるであろう母子の再会をあっさりと通過し、その後にひたすら大人たちの「遊び」を描いているところがユニーク(そこが賛否分かれるようだが)。「バカヤロー」「コノヤロー」と強がっていた菊次郎も、やくざの集団にボコられて、「子供がいるんだ…もう殴らないでくれよ」と急に弱々しくなるところが妙に人間らしく、いつもの強すぎるクールなたけしとは正反対のキャラクターに親近感が湧く。また、久し振りに見た井出らっきょの裸体に、何故か癒される自分がいた…。ここまで開放的な人間がいていいものか。 [DVD(邦画)] 6点(2010-06-03 06:59:20) |
12. キングコング(1976)
《ネタバレ》 自分にとってのコングは着ぐるみのギラーミン版なんですよ。33年のオリジナル版なんて当然古過ぎて観たことがなかったし、『ゴジラ』だって大人になってから初めて観たくらいなので、自分にとって怪獣映画の原点といえばこの作品。とにかく当時(小学生の頃)は興奮した覚えがあるし、今観たらちゃちいだけの特撮も、ピーター・ジャクソン版リメイクの流麗なCGに比べたら逆に味があってイイじゃないですか?こんなキワモノ映画のために裸体を晒したジェシカ・ラングに、人間を虐殺するコングを本気で応援するジェフ・ブリッジスがまた格好良い。最後はちょっと泣けちゃいます。 [DVD(字幕)] 7点(2010-05-06 14:05:31)(良:1票) |
13. きみがぼくを見つけた日
《ネタバレ》 タイムトラベル体質というのはジョージ・ロイ・ヒルの『スローターハウス5』でも描かれた題材だが、そこでは運命を変えることはできず、ただなす術もなく現状を受け入れるしかない。自分の意思とは無関係に過去や未来を行き来し、最愛の母の死も、やがて訪れる自分の死をも防ぐことはできない。しかし、時間旅行中にふと出会った少女と交流をもち、やがて結婚し家庭をもつことになるというのは、ずっと孤独を抱えていた主人公にとって、それこそ「運命」だったのだろう。我々にも生涯の伴侶となる誰かが必ずどこかにいる。そして、いつか別れの時が来るが、それは本当の「死」ではない。『ゴースト』の脚本家らしいテーマで、素直に感動できた。映画の完成度としては決して高くはないのだが、『タイタニック』よりも泣けます。 [DVD(吹替)] 6点(2010-03-10 08:44:21) |
14. 恐怖のメロディ
悪女映画には不思議とハズレが少ない印象を受けるが、本作のイブリンは、『氷の微笑』や『白いドレスの女』のような知的な悪女ではなく、『ミザリー』や『危険な情事』のような直情型。世の女性にはこういう傾向が少なからずあるのではないかな?イーストウッドも最初は「ちょっと面倒な女に関わってしまったな」くらいの軽い気持ちでいたら、どんどん行動がエスカレートしていき手に負えなくなる。同じイーストウッドの女難映画では、同年の『白い肌の異常な夜』よりも実際に有りそうでリアリティがある。監督第一作としては上出来の部類だろう。音楽フェスや大自然でのラブシーンなどは、イーストウッドが(趣味で)撮りたかったんだろうな。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-09 19:22:08) |
15. キス・オブ・ザ・ドラゴン
《ネタバレ》 CGだらけのハリウッド映画よりも、ベッソンと組んだ時のジェット・リーが最も輝いて見える。軌道を読んで銃弾を避けるスピードは、ジャッキーやブルース・リーをも凌駕する。ベッソンはよっぽど警察が嫌いなのか、『レオン』に引き続き無茶苦茶な警察を描いているが、一般市民を巻き添えにしてマシンガンをぶっ放したりは流石にしないだろう(すぐ悪事がバレるって)。小柄なアジア人がマッチョな西洋人をぶちのめす様はなかなかにスカッとする。ラストの北斗神拳には思わず笑ってしまうが。 [DVD(吹替)] 7点(2009-10-04 08:25:46) |
16. 96時間
《ネタバレ》 とにかく何も考えずにスッキリしたい人にはうってつけの映画。誘拐された娘を救出するため、元CIAのスーパーダディが単身、闇の組織に立ち向かう…プロットだけなら、シュワちゃんの『コマンドー』と一緒。しかし、演技派リーアム・ニーソンを配したことで、作品に重厚感とリアリティが増し、ただのバカアクションでは終わらない独特の雰囲気がある。前半、娘を溺愛するパパの姿を丹念に描くことで、後半、情け無用に敵をブチ殺しまくるパパの狂気(と言ってもいいと思う)に説得力を持たせている。こんな男の娘を誘拐してしまった連中も可哀相だが、人身売買組織という同情の余地もない奴らなので、皆殺しにしてくれて本当にスッキリします。上映時間も短めで良い。リュック・ベッソン製作の作品では、久々のアタリ。 [映画館(字幕)] 7点(2009-08-25 17:34:55)(良:2票) |
17. きょうのできごと a day on the planet
大学の映研が作った自主映画のような、な~んにもない作品。でもそこが心地よい。友達とただダベって、夜更かしをしたあの頃を思い出す。たった一夜の出来事を描いた群像劇と言えば、『アメリカン・グラフィティ』、柏原が轢き逃げされるところは、アルトマンの『ショートカッツ』のオマージュかな?行定監督の作品の中ではいちばん好き。たまになんとなく観たくなる。そして無性に友達に会いたくなる。そんな映画。 [DVD(邦画)] 7点(2009-08-17 19:42:46) |
18. きみにしか聞こえない
《ネタバレ》 予告編でほとんどネタバレしているのはどうかと思う。内容の分かった作品を2時間付き合わされるのは正直きつい(スローテンポだし)。このような物語なら、せいぜい50分程度の中・短編に仕上げるのがベスト。最初に見つけた玩具のケータイはその後何の意味もなくなるし、両者の間の時間が1時間ズレているという設定も活かしきれていない。最後の方でその「時差」の意味が分かってくるが、それは単に泣かせの演出に過ぎず、物語上、必然性のあることではない。いい加減、登場人物を死なせて感動させようとするのはやめた方がよい。成海璃子は可愛いが、なんでこんな暗い役をやるんだろう? [DVD(邦画)] 4点(2009-08-14 14:52:21) |
19. CURE キュア
《ネタバレ》 心が解放されることにより、些細な憎しみはダイレクトに殺意へと変わる。しかし、あれだけ苦悩していた役所さんが、最後にはとても活き活きとステーキを平らげている。ライターの火や蛇口からしたたる水といった回りくどいやり方で他人を「キュア」してきた萩原だが、役所さんはもっと簡単な方法で「キュア」できる。憎しみが殺意へと変わるなら、愛や優しさはどうなるのだろう?「キュア」された人類はどこへ向かうのか? [DVD(邦画)] 7点(2008-07-07 07:29:55) |
20. キング・オブ・コメディ(1982)
《ネタバレ》 パプキンの心の襞まで演じきるデ・ニーロの圧倒的な演技力には脱帽する。ジェリーからの電話を待って、公衆電話に必死でしがみつくシーンは憐れすぎて涙を誘う。問題のラストは、パプキンの妄想だと思うのだが、どうだろう?演出的にそこをはっきりさせないところも巧い。この作品は、熱狂的な映画ファンへの戒めにもなっていると思う。スコセッシの『タクシードライバー』を観て、ジョディ・フォスターのために大統領を狙撃するような人間が現実にいるような国なのだ。パプキンのような人間がいても何ら不思議はない。そして、自分にもパプキンと共通する部分を見つけたりして、ぞっとするのだ。 [DVD(字幕)] 8点(2008-05-23 07:56:59)(良:1票) |