1. グラン・トリノ
《ネタバレ》 まず最初に書いておきたいのですが、タオの家が襲われて以降のあの一連の物語の流れ、あれに関しては僕は釈然としない思いを拭い去れません。僕自身は、「死をもってささげる好意よりも生きたままで持ち続ける交流の方が守りにくく、それだけに一層そちらの方が尊い」と感じるからです。それに普通に考えても、「復讐よりはまずは『警察に通報』だろう」と考えてしまいます。ましてや映画の中盤まで、あれだけ「掛け替えのない」交流を深めてきたウォルトとモン族(とりわけタオ)との「関係」があるのだし、たとえウォルトが病気で死にかけていたとしても(もしかしたらそれゆえ先が長くないだけ余計に)、残された時間における彼らとの「関係」は一層貴重なものになるのではないかと思ってしまうのです。 また、「『あいつら』がいる限りタオとスーには平和は訪れない」といった内容のウォルトのセリフがあり、そのセリフの意味に乗っかった上でのあのラストの展開がやってきますが、僕はあれも結局は対症療法でしかなく、厳しい(そして身勝手な)言い方になってしまいますがそれは最終的にはタオ自身の問題の解決になっていないのではないかと思うのです。劇中のタオ自身には、劇が進むにつれて「たくましさ」の感触が少しずつ感じられてくるのですが、それを差し引いてもなお、「『あいつら』みたいな『やつら』がゴロゴロいるこの世界にあって、あんな解決ではタオ自身が、この先自分の力だけで新たな『あいつら』に対処していけるかわからない」という気持ちが残ってしまいます。 ・・・と、ここまで不平みたいなものを述べては来たのですが、しかしそれにも関わらず、僕はこの映画が大変好きになってしまいました(今回レンタルで見たのが初見です)。それは何を置いても、劇中でのウォルトとモン族、そして言うまでもなくタオとの交流が非常に心温まるものに感じられたからです。同胞であるモン族のギャングたちは「一人前になるための儀式」としてタオにグラントリノを盗ませようとしますが、本当に「一人前」になるためのきっかけを与えてくれたのは、そのグラントリノの持ち主である異人種の老人であり、また血を分けた家族の中で寒々とした思いを味わい続けてきたウォルトの心を再び暖めたのは、やはり異人種の人々であり、とりわけ一人の少年の存在でした。 僕自身は以上の理由から、単純に彼ら二人を「精神的境遇の似た者同士」と見ていたような気がします。そしてそんな潜在的な「似た者同士」を、全くの異人種間でお互いが見出したことが、僕にはとても印象的でした。 また上記僕の不満めいた感想にもかかわらず、例えばラストのあのウォルトの遺言状の口ぶりが、相変わらず辛辣な皮肉屋っぽい響きを失っていなかった点などによって、何だかんだ言ってそういうご都合主義的なように見えるところまで「これは映画だ」と割り切らせる気持ちにもさせます。そしてその結果、映画を観終わった後に残るのは、僕にとって一番印象深かった「老人と少年の交流、そして双方の成長」という大変優しい、そして力強い光景なのです。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2010-08-11 23:47:12)(良:3票) |
2. 雲のように風のように<TVM>
TV放送当時は、結構テレビ局でも宣伝に熱心だったことを憶えています。CMを見て、「これは見てみたい」と結構楽しみにしていました(見ようと思ったのは、絵柄がジブリアニメっぽくて、本当に「ジブリアニメ」なのではないかと半分思いこんでいたからということもあるのですが・・・↓他の方のレビューを見ると、実際にジブリ作品に関わったスタッフが参加しているとのことで、びっくりしました)。別に不思議な出来事が起こるわけでもないのに、どことなくファンタジックで、とても印象的でした。一本の作品として見ても、とてもよくできたアニメだと思います。 7点(2003-11-12 19:53:41) |
3. 紅の豚
《ネタバレ》 あの『飛ばねぇ豚はただの豚だ』という決め台詞、捉えようによっては、カッコよく聞こえたり、あまり良い様には聞こえなかったりと様々だと思いますが、僕としてはこの台詞はとてもカッコイイと思いました。こういう台詞を吐いて一人「豚」であろうとする気概がどうも僕には欠けているみたいで、その実現できそうもない「自分」をポルコに投影している面もあるのかもしれません。突っ込みどころもあるかもしれませんが、個人的には好きな映画です。個々の点では、敵味方双方の飛行機が空の高みへと昇って行くシーンや、加藤登紀子のエンディング曲がとても印象的でした。 8点(2003-10-18 02:05:19) |
4. グロリア(1980)
色々な理由があってかなり期待しながら見たのですが、どうも先の展開だけが見えてしまって、映画の内容を味わうところまで気が回りませんでした。ただ、やはりグロリアのカッコ良さは印象的でした。映画全体の雰囲気も個人的に嫌いではありません。 5点(2002-07-11 02:23:25) |
5. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
<ネタバレあります>何だかやたらに評判が良いので、ちょうどTVで放送していたものを見ました。いやぁ、これは本当に面白かったです。しんちゃん、相変わらず笑わせてくれました(それと今回は相当健気ですね・・・)。まぁしんちゃんのおバカ振りはいつものこととして、かなり深い内容でした。高度経済成長期の下町の「ニオイ」とか大阪万博の雰囲気とかは世代の相違でよくわかりませんでしたが、「やたらに懐かしがる」気持ちは僕にもよくわかります。こういうどうしようもないノスタルジーを抱えつつ「今」を生きることを決意するヒロシたち大人の姿が、やたらに切なかったです。 8点(2002-04-13 02:28:00) |