1. クローズZERO
刃物を使ってはいけない、殺してはいけない、ただ喧嘩をしよう。それは少年たちにだけ与えられた特権的なルールだ。だから今のうちに無邪気に、ヤクザになる前に、ごっこ遊びに真剣に興ずること。遊びまくる少年たちが素晴らしい。とりわけ小栗旬のスタイルの良さ、立ち姿の素晴らしさには惚れた。「ヤッターマン」と並ぶ三池崇史の最高傑作。 [DVD(邦画)] 10点(2009-11-11 12:38:31) |
2. クラッシュ(2004)
ポール・ハギスはプロの脚本家であって、アーティストではない。書類の体裁を整えるような仕事ぶりは、実に官僚的で、おざなりで、安直で、いい加減だと思う。■冒頭に死体発見シーンを配置するエンターテインメントへの配慮。「透明なマント」や銃を買うシーンなどのうま~い伏線。なにより許しがたいのは、雪が舞い落ちる叙情的なスペクタクルにすべての救いを求めていること。私が観たいのは、映画サイズに無理矢理縮めた人生の縮小版や、実人生と映画との安易な馴れ合いではない。■確かに、適度な感動と、程よい絶望や諦感、救いを巧妙に配したその脚本は実に上手い。でもそれって、みんなが唾棄するハリウッド流エンターテインメント以外の何ものでもないじゃん。そんな程度で「映画」はいいの?映画としての面白みがまるで見つけられませんでした。 [映画館(字幕)] 0点(2006-03-27 00:19:41)(良:5票) |
3. 黒い画集 第二話 寒流
池部良、平田昭彦、新珠三千代が温泉宿で泊まるシーンのなんとエロティックなことか。三人は寡黙に、ただ互いに視線をかわしながら、その関係を変えていき、池部は静かに、無表情に嫉妬を燃やすこととなる。鈴木英夫の演出はオーソドックスに手堅く三者を捉えていく。そして三人が迎える朝の風景の素晴らしく残酷でクールな様。■このような手堅さ、丁寧に撮影された1カット1カットが丹念に紡がれること、その作家的なセンスを楽しむこと。■そのような楽しさにわくわくしながら画面を見つめていると、後半、映画は異様な様を呈しはじめる。池部の眼前に「前科○犯」の男たちが唐突に登場し、慇懃に次々と自己紹介をする。それを契機にしたかのように、池部の復讐はより絶望的に、彼の家庭はどんどんと崩壊していく。■この映画が素晴らしいのは、現実社会に潜む悪、「寒流」が唐突にその姿を現した、といったテーマに程よく収まることを拒絶し、いわばファンタジーのような様相、池部の立つ位置、そして私のいる位置すらも崩壊し始めたようなめまいを覚えることだ。堕ちていく池部良の無表情が素晴らしい。傑作。世の中には凄い映画がまだまだまだまだいっぱいある。 [映画館(字幕)] 10点(2005-11-23 19:49:08)(良:1票) |
4. クライモリ(2003)
ありきたりな物語という枠組みをあえて設け、いかに見せていくかに焦点を絞った傑作。その意気、志しや良し。■特にロングショットの使い方が上手く、例えば、一人車に残された女性を捉えるローアングルからのロングショットや、モンスターのいる小屋から脱出した後、主役の見た目による俯瞰ショットなど、アクションではなくホラーを撮るという気迫に満ちている。夜のシーンでブルーライティングなどにより満遍なく光を当てるのではない、まさに「クライ」照明もよい。■できればアクションシーンなどないまま、陰気で絶望的な脱出行に終始してほしかったのだけど、ま、しかたがないだろう。大木の上でのアクションというのも気が利いているし、爽快感のかけらもない陰惨なアクションに徹しているのも好感が持てる。いや、ほんとにがんばってるのだ。■うむうむやってるぜ、という感じ、これっすよ観たかったのは、というワクワク感。映画館で見逃したことを心底、後悔した一作でした。 [DVD(字幕)] 10点(2005-07-17 02:18:16) |
5. グラスハウス
義父が悪い人なのかそうでないのか?それとも懐かしのブルース・ダーンは悪いのか?とかラスト近くの自動車の鍵(だったと思う)を巡る攻防とか、押さえるところはちゃんと押さえていると思う。しかもCGばりばり、カットわれわれの今のハリウッドで、見つかるか見つからないか、なんて地味なサスペンスを展開しているあたり、私にはえらく好感の持てる一作であった。■要するに「青髭」や「断崖」の少女虐待バージョンなわけだが、このサイトでのどえらい低い点数、リーリーを観るだけの映画といった評を読んでると、この手のサスペンス映画は西部劇やミュージカル映画同様に、やがて死滅するね、と思う。アクション映画やスペクタクルフルなホラーやサイコパスものにとってかわられんだろうな、と。■サスペンス映画ってこんなもんすよ、というわけで義憤を感じて10点。 [映画館(字幕)] 10点(2005-06-20 21:01:44) |
6. クローサー(2004)
《ネタバレ》 人はそう論理的に生きているわけではない。特別のきっかけがなくても考えを真逆に変えてみたり、誰かの言動にふらふら左右され行動したり、まいっか、とか、何となく、ってのが人間の多くなのであって、だから、好きな女性が誰かとやった、なんてことは別に何の証拠もなく頭に浮かぶのだし、悪いと思ってても何となくやっちゃうわけだし、で、嫌々やっちゃったら好きになったりもするわけだ。やるやらないの話ばかりで恐縮だが、そういう映画だから仕方がない。■ところが、そんな人間の曖昧さを映画に描くのはとっても難しく、観客にふむふむと言わせるのは至難の業で、だからこそ映画は様々な手練手管を使ってきた。例えばこの作品でも、そんな曖昧さの意識的な演出や、「え、この二人結婚したの?」という疑問を抱かせないまま進行する時制のすっ飛び、禁煙したのかどうかとかナタリー・ポートマンの本名とか出自とかやけに小粋な台詞とか、いろんなことで人間のもつ曖昧さ、あるいは恋愛の不安定さを、なんとか映画にしようとしている。■しかし悪く言えば、人間に小器用に対している、映画が人間に程良く折り合おうとしている。それじゃ駄目っす。小手先じゃん、もっと正面からぶつかってけよ、と思うし、カサヴェテスや小津らが燦然と輝いている以上、正直、この程度では困るのだ。■でも、やっぱこの映画、それら手練手管がとっても上手くて実に楽しめる。さっすがマイク・ニコルズ、そつなし。全く何を考えているか分からないジュリア・ロバーツの無表情がなにげに良いし、ナタリー・ポートマンの「恋は消えた」の台詞や、空港で去っていく彼女の後ろ姿はとても切なく、どうでもいい恋愛話、痴話喧嘩と片づけるのはあんまりだと思う。というわけで10点。■それはともかく、この役柄で乳首すらみせないナタリー・ポートマンは90年代初期の武田久美子なのか。ナタリー・ポートマン、すごくいいんだが、その点はとても気になった。 [映画館(字幕)] 10点(2005-05-22 23:34:00) |