1. クイン・メリー/愛と悲しみの生涯
「1000日のアン」のDVDが欲しくて通販サイトを漁っていたら本作とのダブルディスクのパッケージを発見して入手しました。主演女優の美しさとスコットランドのスケールルの大きな風景が印象的でアカデミー賞の複数ノミネートも頷けますが、主題が何なのか今いちわかりませんでした。メアリー・スチュアートはフランス皇太子とのおままごとのような結婚で夫と死別した後、スコットランドの王位継承権もある純粋スコットランド種のお坊ちゃんと結婚、坊ったま旦那が政治音痴で「我こそはスコットランド王なり」なんて言うのに辟易するわけだけれど、この時点迄は坊ったまに本気で惚れていたのかはたまたボッタマの血統に惚れていたのかようわからないです。我が国でも年齢こそこ皇女様より何日か年上だけど何でも皇女様の言いなりになった挙句「俺様を殿下と呼べ」などと宣う毛並みの悪いお方がいませんでしたっけ? まあいいけれど、一国の君主の配偶者というものは良くも悪くも君主の一生、そしてその統治する国を大きく左右します。本作ではメアリーが従姉のエリザベス一世に処刑されるところまでは描いていませんが、両女王のどちらが君主として優れていたかと問われれば十中八九は「わたしはイングランドと結婚した」というエリザベスに軍配を上げるでしょう。でも歴史の面白いところは、跡継ぎを残さずに亡くなったエリザベス一世の跡を継いだのがメアリー・スチュアートの息子のジェームズだということです。西洋史家で西洋美術の解説で有名な中野京子さんあたりはメアリー・スチュアートのことをぼろくそに言っていますがスコットランド王ジェームズ六世にしてイングランド王ジェームズ一世となったメアリーの息子は外交が上手な結構賢い王様だったようです。でもメアリーに育てられたわけではありませんからね。なお今日本でかしがましい女系天皇の可否論争との絡みで言うとメアリー・スチュアートは男系女王でその子供は女系継承となるところをでしたが結婚相手によって息子のジェームズが父系でも血統の正当性を主張できるようにしました。日本の今後の参考になるようなヒントも見つかるかもしれない作品です。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2022-07-05 21:52:48) |
2. 蜘蛛巣城
巻頭の蜘蛛巣城跡の史跡と背後に流れる能の謡(うたい)が純日本的な雰囲気が醸し、画面は一気にタイムスリップして蜘蛛巣城があった頃の迷路の様な原始林を駆ける二人の武将の騎馬の姿に焦点を合わせる。。。ここまでを事前の情報なしに見たならばこれがシェイクスピアの戯曲に基づいていた物語だとは誰も思わないでしょう。でもわたしが読んだシェイクスピアの「マクベス」の解説書には本作品が「マクベス」の映画化作品、しかも英語圏で作られたどの舞台・映画作品よりも原作のテーマと雰囲気を再現しているといる作品として紹介されているのです。そして二人の武将が運命のお告げを聞くシーン、原作では荒野で邪教のぎしきを行う魔女、本作品では原始林で系を紡ぐ山姥。。。どちらもイギリス(スコットランド)と日本の風土と文化を反映した設定ですが魔女はヨーロッパの原始宗教の産物でイングランド人はもちろんカトリックに染まった近代スコットランド人は「おやおや、こんなのが言うことを信じたらまずいのでは。。。」と思うはず。。。でも清教徒の天地だったアメリカでも魔女狩りが行われたほど土着の異教は英語国文化の根底に巣食っているのです。かたや山姥は日本古来のアニミズムの象徴的存在です。近代の自意識や秩序への信頼感と潜在意識に巣食う原始宗教のせめぎ合いが伏線として提示され、物語は武将鷲津(マクベス)と主君との関係に象徴される近代的秩序と山姥に象徴される原始的野望のせめぎ合い、そして運命をテーマとして展開していきます。舞台を前近代のスコットランドから戦国時代の日本に移したからこそシェイクスピアが意図した人類共通の真実がより効果的に炙り出されたのかもしれないと思った次第です。 [DVD(邦画)] 9点(2020-03-13 05:18:19)(良:1票) |
3. クロッシング(2008)
今から60数年前、日本では天皇の威光を笠に着たエリートを自称する軍人集団は自分たちの体面を守るために国民を盾にしました。「硫黄島からの手紙」に描かれているように、国民を守るために体を張って玉砕した軍人もいないわけではありませんでしたが、「日本の一番長い日」に描かれた本土決戦の主張は国民を盾にすることに他ならず、空襲での市民の死と戦場での兵士の死のそれぞれに本作品のようなドラマがあったわけです。そして、ドラマが入り込む余地もなく広島・長崎の原爆投下で蒸発して消え去った何万人かの市民とドラマにするにはあまりに痛ましい原爆後遺症でなくなった数十万人・・・。でも、軍人の復員と海外からの引揚者によって起きた戦後の食糧難の時代、日本人には「これさえ我慢すれば・・・。」という希望があったと思います。一方、この作品を見る限り、今の北朝鮮は日本が60数年前に相次いで経験したことを一度に、しかも希望なしに経験しているようです。他国人を拉致するテロリスト国家」と北朝鮮を非難してみたところで、北朝鮮の国民が民主的な方法で拉致を合法化したわけじゃなし、食料などの人道支援をしても、軍人や官僚の私腹を肥やすだけかと思うとやりきれないです。作品中で主人公が韓国の薬局で北朝鮮の医者に処方された薬を買おうとし、店員が「結核の初期治療は全て無料だから本人が保健所に行けばこの薬も無料。」と言う場面があります。つまり、日本や韓国では伝染病の予防など、国民の生活を守ることが国家の存在意義なのですが、北朝鮮では国家とは国民を犠牲にしてでも体面を保ち、存続しなければならない怪物なのです。この作品は多くの脱北者の証言に基づくリアリティと家族愛のドラマで迫ってくるものがありますが、この内容が早く時代遅れになってほしい、現状が変わってほしい、こんなことが長く続くはずがないと思わずにはいられないのでそこそこの点数をつけます。 [DVD(字幕)] 8点(2010-05-30 03:39:49)(笑:1票) |
4. クィーン
主人公エリザベス二世を始めとして、そっくりさんのオンパレードながら良く出来た作品。ダイアナ元妃の事故死の際、私も含めて「一体、イギリス王室はどうするのだろうか?」と成り行きの注視したものですが、内部の状況、とりわけ女王エリザベス二世の心情をヘレン・ミレンの好演で描ききった完成度の高い作品でした。(でも、本物のほうは、人目があろうがなかろうが絶対に泣いてはいないと思います。)エリザベス一世(こちらも「エリザベス」のタイトルで映画化されています。)のお父さん、ヘンリー八世なんて、一体何人の妃と結婚し、そのうちエリザベス一世の母を含む何人を斬首刑にしたのか・・・こういう歴史のある国ですから、ダイアナ元妃の件でももしかしたらもしかするかも・・・なんていうのを見る前には期待していたのですが、メディア隆盛の民主主義の世の中、そんなことがあるわけないですよね。映画作品がそんな憶測を語ったりすることはなおさらありえないです。地味な作品なので総合点は低めですが、脚本と演技には満点です。 [映画館(字幕)] 7点(2007-07-23 00:00:36)(笑:1票) (良:1票) |
5. クレオパトラ(1963)
エジプト王宮の豪華なセットやエクストラを多用したスペクタクル、エリザベス・テーラーを始めとする名優を投入した豪華キャスト・・・なのに「ベン・ハー」のように好きになれないのは、やはり、プトレマイオス朝エジプトやクレオパトラの生き方そのものにあまり魅力がないせいだと思います。クレオパトラを最後に滅亡したプトレマイオス朝エジプトは元来ギリシア人の征服王朝で、ギリシア系の王族や貴族の白い肌と彫りの深い顔立ちを維持するために近親結婚を繰り返したので、遅かれ早かれ王室や高級官僚にとんでもない劣性遺伝が顕在化して滅びる運命だったのです。それに王朝の存続だけを考えてローマの武将に肌を許すクレオパトラは女王というよりも超高級娼婦だし、シーザーにとってはクレオパトラを愛人にすることはエジプトを征服するのに自分の部下の血を流さずに済む一挙両得の方法だったし、アントニーに至っては悲しいかな、本国ローマでシーザーほどの人望もなく、帰国してもシーザーの養子のオクタビアヌスに頭を押さえられてうだつが上がりそうにないのでクレオパトラと結んでエジプト王になろう、と考えたのに決まっているのです。いくら名優でも史実を超えることはできないということだと思います。だったら、いっそのことレックス・ハリソン主演で「ジュリアス・シーザー」という映画を作り、「ブレイブハート」のような北方民族とローマ軍の戦闘もふんだんに描き、E.テーラーが助演としてシーザーの最後の勝利を恋愛で飾ったクレオパトラという女を演じたら(アントニーはコケになりますが)もっとダイナミックで納得のいく作品になったと思うのですがもう遅い。また、歴史に翻弄される男女関係の無常をテーマとしてストーリーを構築するのならスペクタクルではなく、女王や武将の地位を忘れさせるようなシンプルな舞台で照明だけを使ってシェークスピアの台詞を語るようなのがいいんじゃないでしょうか・・・? 5点(2004-04-07 02:17:43) |
6. グリーン・デスティニー
ワイアーを使った不自然なアクションさえ無ければ、二人の女性カンフー戦士の対照的な生き様や愛情のせつなさなどが伝わってくるすばらしい作品だったんですけれどね・・・。CGを使ったもっと自然な作品にリメークしてください。そしたら満点をあげます。それから中国映画に変なカタカナのタイトルや説明的蛇足(たとえば「覇王別姫」の「さらば、わが愛」など)をつけるのは止めてほしいと思います。中国映画のタイトルはそのままにしてほしいです。そのほうが想像力をかきたてるし原作を尊重していることになると思います。 6点(2004-02-23 12:38:48) |
7. グリーンマイル
死刑囚の話だというのでスーザン・サランドンとショーン・ペン出演の「デッドマン・ウォーキング」と同じ系列の社会派の作品を期待してがっかりしました。死刑囚には超能力があるって言いたいのでしょうか?それとも同じ題材を使ってまともに映画を作ったらスーザン・サランドン/ショーン・ペンのコンビに勝てないからオカルト風にアレンジしてみただけ? コフィーに超能力(?)がなかったら冤罪だろうが見向きもしなかったくせに「冤罪の人の処刑に手を貸すのは嫌になったから看守を辞めた。」なんてお涙ものにもならないし、ましてや冤罪の人が電気椅子の露と消えるのは看守の責任ではなくて司法制度の責任です。問題意識を持った方は「12人の怒れる男」を見てください。ただし、トム・ハンクスは何を演じてもうまい。彼が出ているのでないればめちゃくちゃに悪い点をつけたところです。 3点(2004-02-02 12:59:39)(笑:1票) |
8. グッドナイト・ムーン
ニューヨーク(市内とアップステート)の四季の映像がきれいでした。今はもう存在していない世界貿易センタービルの映像も出ます。 6点(2004-01-28 13:23:35) |